大長編ジータちゃん ~ルリアと小さなカリオストロ~ 作:コモリモリオ
☆【episode4 1/4】
残る幽世の使徒は四人。
誰一人立ち去る事無く
残っていた食堂の仲間達を
改めてチェックすると、
その場にいた全員、
本物の仲間達である事が
確認を取れた。
ジータは今
グランサイファーで起きている
今回の事態を団員達に説明し、
必ず五人以上で行動をして
グランサイファーの各所を警戒、
隠れている者が居ないか捜索。
疑わしいものは食堂へ連行、
無闇に暴力的な対応は行わず
ジータ達の確認を待つ事など、
ひととおりの対応策を指示した。
プチカ
「さて、あとはつめしょうぎだな。
のこりのやつらをひとりひとり
かくにんをしていくさぎょうだ。」
プチカ
「みかけなかったやつの
なまえをみんなであげていくぞ。」
ジータとプチカで
幾人かの名前を挙げた後、
ルリアとビィも
それぞれ一人ずつ名前を挙げる。
ルリア
「ルナールさん、居なかったですね。」
ビィ
「ヴィーラの奴も見てないぜ。
あいつは朝ごはん
食べない時があるからなぁ。」
ルリア
「なんでですかねぇ。」
どうにも緊張感が無い
ルリアとビィは、人を疑う時でも
世間話に気が逸れるようだ。
プチカ
「おんなにははくちょうのような、
つらくてながいどりょくが
つねにひつようなもんなのさ。」
プチカ
「ぷちかちゃんはぁ、
そんなことしなくてもかわいいけど☆」
錬金術とはお得なものだ、
美容に役立つと言えば、弟子入りを
希望する者は一人二人では無いだろう。
結局、自分もプチカも
世間話に興じてしまったようで、
ジータも思わず苦笑する。
プチカ
「おしゃべりしているばあいじゃないな、
まずはるなーるでもみにいくか。」
☆【episode4 2/4】
ジータ達はルナールの私室へと向かう。
プチカ
「しかし、るなーるか。」
ルリア
「ルナールちゃんの事、
なにか気にしてるんですか?」
プチカ
「あいつのかくえは、あるしゅの
すぐれたれんきんじゅつといっても
かごんじゃない。」
プチカ
「くらりすもそうだが、
なにかひとつのほうこうにだけ
とっかしたさいのうはおそろしい。」
プチカ
「だからといって
あいつらになりたいとは
べつにおもわないが…。」
プチカ
「てんさいのおれさまでも
いまだりろんをこうちくしきれない、
かみのみわざというやつさ。」
ビィ
「へー、すげーな。
オイラ、ルナールには
鼻血を吹き出す印象しか無かったぜ!」
ルリア
「ダメですよビィさん、
ルナールさんと会う時には
そんな言い方しないでくださいね。」
ビィ
「うん、オイラが悪かったよ…。」
☆【episode4 3/4】
トントン。
ルリア
「すみません、ルナールさん。
ルリアです。」
ルリア
「少しお話したい事があるんですが、
良ければお部屋に
入れてもらってもいいですか?」
ノックをして、
声を掛けてみたが返事が無い。
ルナール
「フヒ!フヒヒ!フヒヒヒヒ!
天は今まさに我に
千載一遇のチャンスを与えたり!」
………。
不在と言う訳では無さそうだが、
何度ノックしても反応が無い。
少々悩んだものの今は緊急事態、
ジータだけが持つマスターキーで
ルナールの私室の錠前を開ける。
ビィ
「悪いなルナール、
入らせてもらうぜ!
いま大変な事が起きてんだ!」
真っ先に飛び込んだビィとプチカが
奥の部屋へと上がり込んでいく。
ルナール
「ぎゃあああああああああああ!」
プチカ
「ひっ、でえなこれ!」
ビィ
「なんだこりゃあ!
お前ら男同士で何してんだ!」
ガターン!ドサッ!ビシャア!
ルナール
「うひゃー!
描いている途中の絵が!絵が!」
なにがなんだかよく解らないが
阿鼻叫喚と言った様子の
叫び声や物音が次々と聞こえる。
ビィとプチカだけには
任せておけないと、
ジータも中に入ろうとするが、
私室の更に奥にある部屋で、
一人わめいていた
ルナールと目が合うやいなや、
両手で大きくバッテンの
マークを取られ、
入室拒否の意思表示をされる。
ルナール
「えっ、やだ!待つのよ!
いま入ってはいけないわ!ルリア!
30分でいいの!お願いジータ!」
ルリア
「長過ぎますよそれ…。」
プチカ
「ばか!そんなこといってる
ばあいじゃねえ!
こいつらかくりよのしとだ!」
ルナール
「かくり、何それ…ひゅいっ!?」
ルナールの背後に忍び寄った
半裸のパーシヴァルが、
ルナールの首筋に剣を添えると
同時に幽世の使徒へと変化していく。
ルナール
「ああ!ランスロット様が怪物に!」
同時に、もう一人居たらしい
幽世の使徒も元の姿に戻ったようだ。
幽世の使徒
「このハーヴィンの命が惜しければ
カリオストロの写し身よ!
その命を差し出すのだ!」
ようやく状況を飲み込めた
ルナールは足をガクガクと震えながら
謝罪の言葉を口にする。
ルナール
「ひぐっ!うう、ごめんなさい、
ジータ、ルリア!
助けに来てくれたなんて知らずに私。」
プチカ
「ちっ。」
幽世の使徒
「さあ、どうする人間どもよ。」
プチカの命か、ルナールの命か。
選べる筈もない選択肢を
ジータ達は突き付けられていた。
☆【episode4 4/4】
プチカ
「わかった、おれさまのまけさ。」
ルリア
「プチカちゃん!?」
ビィの背中から飛び降りると、
両手を上げて幽世の使徒へと
降参の意思を示すプチカ。
プチカ
「まるごしでそっちにいくから、
ほどよいところで
そいつをはなしな。」
幽世の使徒
「よかろう。
元よりこのハーヴィンの命など
我々には何の意味も無い。」
ルナールは自らの
不甲斐なさと屈辱からか、
血がにじむほど唇を噛みしめる。
プチカ
「あとはおれさまぬきになるが
じーた、るりあ、まかせたぜ。」
このままにはしておけないものの
状況を打開出来るような材料は
この部屋には何処にも無かった。
せめて出来るのは時間稼ぎ。
何の方策も無いが、
何もしないよりはマシだろうか。
幽世の使徒
「何?自分の命ではダメかと?」
プチカ
「おい、じーた!」
それは悪手だと言わんばかりに
声を上げるプチカ。
幽世の使徒
「ふーむ」
嫌味のつもりなのか、
たっぷりと時間を掛けて
考え込む幽世の使徒。
幽世の使徒
「そうだな、
思えば我々は貴様にも随分と
苦渋を舐めさせられたものだ。」
幽世の使徒
「その命、せっかくだから
貰ってやろう。」
幽世の使徒
「お前はそっちに居る
私の仲間に殺されろ。」
幽世の使徒
「カリオストロの写し身を
殺すのは、その後にしてやる。」
ビィ
「ちくしょう!卑怯だぞてめーら!」
幽世の使徒
「何とでも言うがいい。」
元より信用出来る相手では無かった。
だが、いまさら話を断れば
その瞬間にルナールは殺される。
ルリアには申し訳ないなと、
振り返って顔を見合わせてみれば
彼女も覚悟を決めていたようだ。
同意をするように頷くルリア。
それでも時間は稼ぐ。
先ほどのプチカと同じように
両手を挙げ、降参の意思表示をし、
ジータはゆっくりと
幽世の使徒に近付いて行った。
そう、ゆっくりと、ゆっくりと…。
耐え切れず、プチカは叫ぶ。
プチカ
「やめろ、やめてくれじーた!
おまえまでおれさまを
おいていくのか!」
時間稼ぎの意図は
伝わっているはずだが、
死ぬ気である事も見抜かれていた。
幽世の使徒
「ふん、愁嘆場も
ほどほどにするんだな。」
幽世の使徒が
痺れを切らし掛けた瞬間。
ルナール
「ひゃあー!?」
何の予兆も無く
地面に突然空いた穴から
落ちていくルナール。
虚を突かれた幽世の使徒達は
とっさに対処が出来ず、
みすみす人質を逃がした形となる。
プチカ
「このわざはくらりすか!」
なるほど、
建築物を音も無く瞬時に壊すなら
クラリスはうってつけの存在だ。
どうやら仲間達が事態に気付き、
下の階から救出案を立てたらしい。
土壇場で賭けに
勝つ事が出来たジータ達は
幽世の使徒に剣を向ける。
幽世の使徒
「み、みすみす好機を逃すとは。
だが我々も幽世の使徒の端くれ、
目にものみせてくれるわ!」