東方世界録   作:猫のみこ

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人里編② ~人形劇~

 

 

 

 

 

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「ねぇおじさん、もうちょっと安くならないかしら?」

「勘弁してくれよ~巫女さん!うちにも生活ってもんが………」

 

 

 

 

「霊夢の奴、かれこれ30分は値踏みしてるぞ……?何か八百屋のおじさんが可哀想に見えてきた……。」

 

『物を出来るだけ安く入手するということは大切なことだ 唯斗も見習うと良い』

 

「ちょっと違うような気がするけど

そんなもんなのか……?」

 

『そういうものだ』

 

 

 

時刻は昼前。

俺たちが人里へ足を踏み入れてから、2時間ほど経過しただろうか。まだ買い物の半分も終わっていない。

最初の方こそ順調に物を買い揃えていたが、途中から、霊夢が行く店行く店に値踏みを交渉し始めた。俺は、止めようにも止めることができず―――――――今に至るわけだな。

止めないのかって?いやー霊夢はお金が関わる事になると目が恐いからな。飛び火くらうの嫌だしな!

 

 

「じゃ~暇だし、俺はその辺でも見て…………ん?」

 

 

霊夢の戦いを遠巻きに見ているのもさすがに飽きてきたので他の店でも見て回ろうと思ったところに、遠くの方で大きな歓声が聞こえた。

それと同時に一人の若い男が走ってくる。

男は物凄いけんまくで、近くにいた男に大きな声で、

 

 

 

「おーーーーーーーーい!!!!」

 

「どうした?そんな慌てて。」

 

「ハァハァ。ふぅ。まぁ聞いてくれや!なんでも、向こうでとんでもねぇほどのべっぴんさんが人形劇をやっているらしいぜ!!!」

 

「おおっ!!本当か!そいつぁ一目見ておきてぇな!早く行こうぜ!」

 

「ハァハァ。待ってくれよ……。俺今まで走っきて………。」

 

「じゃ、先行ってるからな!!」ダッ

 

「お、おい!!ハァハァ。待てって!!ヒィヒィ。」ヨロヨロ

 

二人の若い男は声がした方へ向かって行く。

すると、回りにいた子供や大人達もそれにつられるかの様に走っていった。

 

 

 

 

「人形劇?」

 

『簡単にいうならば 人形というものを使って物語を演じることだな 』

 

「実際に見た方が早いか!」

 

『霊夢はそばからを離れるなと言っていたが』

 

「好奇心ってやつには勝てないからな。」

 

『私は唯斗の判断に任せよう』

 

「賛成2票って事で出発出発!早く行かんと終わっちゃうぞ!」

 

『迷子にならないように気をつけるんだぞ』

 

「分かってるって。」

 

 

 

俺達も里の人々についていくように声がする方へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「―――――お姫様は王子様と幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。」

 

 

「今日の人形劇はこれで終わりです。お集まり頂きありがとうございました。」

 

ワァーーーーー パチパチパチパチ

 

 

 

魔法の糸で操っている人形にお辞儀をさせ、今日の人形劇の幕を閉じる。

里の人達は人形の周りにお金を置いていき、一人また一人と人混みの中へ消えていった。

別にチップの欲しさで人形劇をしているわけじゃないけど、人の思いが形として分かるのはとても嬉しい。

人形にお金を集めさせ、私の所へと運ばせる。

お金を運んでいる所もまた愛らしい。

まぁ作ってるのも動かしているのも私だけどね。

全部集め終わり家に帰る支度をしていた頃、若い男が二人私に近寄ってきて

 

 

 

「なぁ人形劇のお姉さん!これから俺らと一杯どう?」

 

 

(また……………?)

 

 

 

いわゆる、ナンパというやつだろう。男二人は色目全開だ

最近、こういうのが増えてきて参っている。

私は純粋に人形劇を楽しんでもらいたいだけなのに……。

男という生き物はどうしてみんなこうなのだろうか。

 

 

 

「も、申し訳ありません。帰ったら、次の人形劇の準備が……。」

 

 

「そんなつれないこと言わないでよ!!ほら、俺達の奢りでいいからさ!!!」

 

さらに、言い寄ってくる男達、

 

 

「そうさそうさ!!俺達と一緒にはめはずそうぜ!少しだけでもいいしよ!」

 

 

「で、ですから!」

 

 

 

 

「いやーーぶらぼーぶらぼー。」

 

客席の方から聞こえてくる声。

劇が終わってからはまだそう時間は経っていないはずだが、客の大多数は解散の合図とともに消えていく。

劇が終わったにも関わらず残っているの客は、今回のような色目目的の男か、ただ単純に劇の感想を言いにくる小さな子供位なものだ。

 

 

 

「俺、人形劇という奴始めてみたけど、あれだね。すごいの一言。んーと?……そうそう。天晴れって奴だな!」

 

その声をする方を見てみると、大人というわけでもなければ少年というわけでもない変わった服を着た青年が軽い拍手をしながら立っていた。

 

 

「なんだ?おめぇ喧嘩売ってんのか!?」

 

「え、いや何でだ?俺はただ感想言っただけじゃんか。」

 

「んだと!!!」

 

男達の一人は私から離れ、男の体より一回り小さい青年へ詰め寄る。

 

「ちょっと痛い目見なきゃ分からねぇようだな。」

 

「待って!!その人は関係ないでしょう!!」

 

「はいはい!お姉さんは俺達と飲みに行く準備でもしてましょうね!」

 

男の一人に腕を捕まれる。

魔法を使えばこんな男を捻るのも簡単だけれど、ここは人里だ。そういうわけにもいかない。

私の信頼が無くなるのは別にいいが、変な噂が立って人形劇を楽しみにしてくれている人達が来なくなってしまうのはどうしても避けたいからだ。

 

「ふむ。やるのか?まぁ別に構わんけど。」

 

「ああ!?舐めるのもいい加減にしろよ!!ちょっとこっちこい………!」

二つの影が路地裏へと消えて行く。

 

 

ドスン!! バァン!! ドコォ!!!

 

 

 

「あーあ。怪我じゃすまねぇなこりゃ!あいつは腕っぷしに関しては、里の四天王って呼ばれてるんだぜ!あんなガキ捻り潰すのは朝飯前ってもんだ!!」

 

鈍い音が聞こえてくる。

私の手を掴んでいる男が何か言っているが、そんなもの全く耳に入らない。

 

「あ………ああ……。」

 

 

ものの数秒だろうか。

音が聞こえなくなり、辺りの音は道行く人の声だけになった。

 

「どうやらぁ、終わったみたいだな!」

 

「………………」

 

こんなにも怒りが込み上げたのも久しぶりだろう。

あの青年は何ら悪いことをしたわけでもないのに、彼らの仕打ちを受けた。敵討ちといっては大袈裟かもしれないが、この男達には必ず報復をしなくてはいけない。例え……それが里の人達からの信頼を失ったとしてもだ。

 

 

 

(この男達を許すわけにはいかないわ……!!)

 

 

 

私は手に魔力を溜め、男の顔へ放出しようとする。

死なない程度に加減はするつもりだ。

大丈夫、これくらいの威力ならそれほど大事にならず済む。自分にそう言い聞かせながら、男の頬に標準を合わせる。

いざ、発射!しようとする時

思いがけない声が聞こえた。

 

 

「一応チャンスはやったんだけどな。それでもやるって決めたのはアイツ自身じゃん。」

先ほどの青年の声だ!

 

 

 

「だから分かってるって。もう目立つようなことはしないよ。」

 

 

消えていった路地裏から、姿を表す。

信じられなかった。

お世辞でも腕に自信がありそうには見えなかったからだ。そんな青年は頭の後ろで手を組み、余裕そうな表情で、

 

 

「お前もさっきの奴の仲間? かかってくるんなら相手になるけど。」

 

「………ア、アイツは四天王の中でも最弱の存在……!!浮かれていられるのも今のうちだぞ………!次に第2、第3の刺客が……!!!」ブルブル

 

「おおっそうなのか? してんのーって奴は何だ?食べれるのか?」

 

 

…………不思議な青年だ。

悪い人では決してないだろうが、

どこか抜けているのは確か。

 

 

「お、覚えてろよ~~~!!」ダッ

 

「うお、逃げてった。」

 

 

私の手を掴んでいた男が一目散に逃げていく。

なんて逃げ足の早さ。男の姿はもう見えない。

青年は追おうとはせず、ゆっくり私に近づいてくる。

 

「あれ、もしかして知り合いだった?」

 

「い、いえ違うわ。助けてくれてありがとう。」

 

「?何でお礼なんだ?別に感謝されるような事してないぞ。」

 

「へっ?」

 

「アイツが俺に突っかかってきたから返り討ちにしただけだじゃん。」

 

「ふふっ。それもそうね。」

 

「ん?なにか変なこと言ったか?俺。」

 

「言ってないわよ。別に。でも、ふふっ。」

 

「なんなんだ…………?」

 

 

(ふふっ…………やっぱり不思議な男の人ね。)

 

 

 

この青年からは男独特の物を感じない。

普段あまり人と会話しないこともあってか、新鮮でとても楽しい。

 

 

「私は、アリス・マーガトロイドよ。よろしく。あなた、お名前は?」

 

「名前?俺の名前は唯斗、神威 唯斗。

初めまして、どうぞ宜しく。」

 

 

 

(えっ……?唯斗…………?………まさか!)

 

聞いたことがあるその名前。

人里ではまずいないであろう、変わった名前だ。

 

 

「あ、あなた。昔、魔界に来たこと無い?」

 

「ん?ああー。小さい時に何回か行ったかも。」

 

「………!!そ、そう!」

 

「それがどうかしたのか?」

 

「な、何でもないわ!」

 

 

私はこの青年に昔会ったことがある。

私がまだ“子供“だった頃に、一度だけ。

 

 

「あ、あの『「唯斗!!あんたどこ行ってるのよ!」』

 

「うわっ、霊夢だ。」

 

『「うわって何よ、うわって!!離れるなって言ったでしょ!」』

 

「ごめんごめん、すぐ戻る。」

 

『「もう、早くしなさいよ!」』

 

 

 

こちらは、聞き覚えのある声。

小さい頃から魔界を荒らしていた三人組、いや二人組の一人博霊の巫女“博霊霊夢“の声だ。

どうにも唯斗は彼女には頭が上がらない様子だ。

まぁ霊夢に大きい態度をとれるって人は、私が知ってる中でもそう多いわけじゃないけれど…。

 

 

 

「と、いうことすまんね。主からの帰還命令だ。」

 

「え、ええ。大変なのね、唯斗さんも。」

 

「唯斗でいいよ。年、そんな離れてないだろ?」

 

「そ、そうね!よろしく唯斗!」パァー

 

「ああ改めてよろしく、アリス。それじゃまた今度。」

 

「……!!ええ!また今度!!」

 

 

 

 

そういって、唯斗は人混みの中へ消えていった。

だがしかしこんな急に会えるとは思っていなかった。私が“大人“になろうと思ったきっかけに。

 

(しかも、また今度って…!また会いたいってことよね……………?)

 

 

 

次また会えたらどんな会話をしようか―――そんな事を考えていると思わず顔がにやけてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、お母さん。あの人ずっとニヤニヤしてるよ?」

 

「見ちゃいけません!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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