「えっ!!」
自分が発動したはずの魔法が返ってくると感じた赤髪の美少女は驚く暇もなく背中に生えてる漆黒の翼を広げ防御した。防御は無事成功したが謎の光が漆黒の翼を中心に眩い光が照らし、やがて光は消えた。
謎の魔力のこもった光を直視してしまい、怯んで動けなかったが、時間が経つにつれ辺りが見えてきた。そして、自分の身に何が起こったのか頭の髄から足の先まで何も異常は無いか確かめた。
「何だこれは…私の発動した魔法を跳ね返したのか?そんな魔法聞いたことないぞ」
謎の力に警戒を強め自分の放った魔法が何なのかそして体の周りについてる光の粒は何なのかを考え込んでいた。
「もしや、これはエンチャント系の魔法か!でもフェニーは攻撃系の魔法と言っていたはず…でもこのまとわりつく感じエンチャント系しか考えられない。フェニーめ情報を間違えましたわね」
怒りをあらわにしながら、体の周りに付いている光り輝く粒を払う仕草をした。エンチャントされた魔法は当然払っただけでは解除されず、発動した術者を倒さないといけない、それを分かりつつもするのは平然を保っていなく沸点が低いからであろう。
「このエンチャントの効果はなんだ?フェ二ーに聞きたいが今は寝ているみたいだし」
拳を強く握り一人ぶつぶつ呟いていると対立していたはずのカズキがグラサンのおっさんとケンカをしているのに気づいた。
「お前、いくら何でもやりすぎだろ!!アパートを壊すなんて」
「壊してねぇーよ!!それより、俺の車破損してるところが木っ端微塵じゃねぇーか!!お前がやったんだろ」
胸ぐらを掴みながら言い合いが始まり、終いには泣いてしまうという始末。それを見た赤髪の美少女は唖然としていた。アパートも車も破壊したのは間接的とはいえ私だ。それに数分前まで生死の境をかけた戦闘中だったはず、なのに何故私を無視してるのだ。
あれこれ考え困惑してる中、殴り合いを始めた二人を見て遂に限界がきた。
「私がこの状況をいまいち理解しきれず色々と悩んでるというのにあの二人はーーっ!!!!」
怒りというより私だけが悩んでる状況が許せず、一歩足を踏み入れ渾身の魔法を獣の如き声量で叫び赤いレーザーを二人に向けて放ったのだ。
本来の目的を忘れて…
■■■■■
――数十分前に遡る。
カズキが赤髪の美少女の魔法を吸収し放った魔法が漆黒の翼に直撃した瞬間、カズキ、グラサンのおっさんの周りにいた者から赤髪の美少女の概念、存在つまり記憶が消去されたはずだったのだが加護である初見ダメージ半減により、存在は何とか留められ、眩い光を浴びた生物の記憶から赤髪の美少女の存在が消えてしまったのだ。それ故に二人はケンカを始め、赤髪の美少女は無視されていたのだ。それを知らない赤髪の美少女は怒り、感情の思うままに魔法を放ったのだ。
「お、おいお前後ろ」
「は?向くわけないだろ、向いた瞬間殴る魂胆はお見通しだぜ」
カズキはグラサンのおっさんが言った忠告を無視し、殴りにかかった。
「この馬鹿やろぉがぁー!!」
グラサンのおっさんはカズキを押し倒し、思わぬ力に押し倒されてしまったカズキは呆気に取られた。そこで我に返ったカズキは反撃にでようと拳を握り殴りかかろうとしたが殴る前にグラサンのおっさんがカズキの体に向かって倒れてきた。
「お、重ぃぃっー!!、降参だ降参!!」
今にも押し潰されそうなカズキは必死に叫んだが反応がなくグラサンのおっさんの体をどけようと必死に力を加えなんとか横にスライドさせることで何キロものの重力から開放された。
荒い息をたてながら立ち上がり、手に付いているべっとりとした鉄臭い液体がついてることに気づいた。それが何であるか最初は分からなかったが、足元に倒れてるグラサンのおっさんを見た時その液体が何であるかが分かった。脊椎動物にとってその赤い液体は無くてはならない存在。もし足りなくなった場合には死に至る。生きるためには必要な液体がまさに今目の前で欠落しかけようとしているのだ。
「あらら、二人いっぺんに殺そうと思ったのに、そこの汚らわしいグラサンだけ死んじゃいましたね」
怒りがこもっていたがどことなく微笑みのある表情で呟いた。
「何なんだよ…これ…」
初めて見る人間の最後の姿、そこから漏れ出る液体、普通に暮らしていたら絶対に見ることのない光景。数分前まで殴り合いををしていたとは思えない無残な姿、相手への恐怖心、今すぐにでも逃げたい気持ち。色々と積もり積もり精神が追い詰められ、やがて精神は負の感情に包まれた。
■■■■■
赤く染まってゆく地面、それはまるで薔薇畑のようだ。綺麗で、いつまでも見てられる。人間にとって暗闇は見えにくいが悪魔は違う。元々暗黒の世界で暮らしてきた生物だ。目は猫のように暗闇を見通すことが出来る。それ故、暗闇の中赤く染まる地面をはっきりと見る事が出来るのだ。見てるだけでは欲求は満たされないと感じて 、舐めてみたいと思いはじめた。やりたいと思ったら考えるより行動に移す。それが座右の銘であり、信念である。
しかし、それをするにはその側にいる少年が邪魔だ。始末してしまおう。幸いにも動く素振りすら見せず隙だらけだ。今のうちにやってしまおう。あわよくばあの少年の吹き出るものも見てみたい。邪魔者も消せて、吹き出すものも見える。まさに一石二鳥だ。では行動に移そうか。
■■■■■
俺は昔から他人を信じず、己の力だけで生きてきた。他人の言葉など裏があるに違いない、近寄ってくるものは全て悪で俺を捕まえにくる。昔テレビで見たヒーローが助けに来ると信じていた時期もあったが現実は都合よくヒーローなど現れるはずもなく、ただ単に恐怖に捕らわれる日々だった。親が残した借金のせいで毎日家に押し入ってくる借金取り。それを恐怖し布団の下に隠れながらブルブルと震える少年は毎日平和に暮らせる事だけを願った。
初めは返事をせず無視してると諦めて帰っていたが、日に日に借金取りは過剰になっていきドアを壊しそうな勢いでドアを叩き始め
――それからは頭に白いモヤがかかったようにぼんやりとしてて思い出せない。だだ一つだけハッキリと思い出した事がある。
――女性が俺をかばい力尽き倒れる姿。そこで後悔し、絶望し泣いていた自分。
何故今それを思い出したのかは分からない。他にも色々と気になる事がある。しかし、今は目の前で失いかけている命を助けるのが最優先だ。それには目の前にいる赤髪の女が邪魔だ。何か仕掛けてくるかもしれない。そう思い左拳に力を込め近付いてくる赤髪の美少女に対し警戒体制をとった。もちろん相手には悟られずに…
■■■■■
ベチャッベチャッと靴にへばりつく音、遂にカズキの目と鼻の先に来た赤髪の美少女。意気揚々とした態度で立ち止まり、詠唱を唱え始めた。
「では、お披露目といきましょう!!あなたの血を!!」
詠唱を唱え終わるとカズキに向けて、魔法を放出した。
「あれ、放出されない、なんで?詠唱は正しく唱えたはずなのに」
魔法が放出されず困惑していると目の前にいる男が左手を赤髪の美少女の手のひらに右手を相手の腹ににかざした。
「ウッ」
急な攻撃に防御するひまもなく腹に魔法弾が突き刺さりダメージを負った。
「くっ、何だ今のはどこから攻撃が…」
「はははは、残念だったな。俺を殺せなくて」
「ふふふ、バレてましたか。まぁいいです、動いてても動かなくてもあなたは私のために噴き出すのだから」
「噴き出す?何言ってんだ。攻撃くらって頭でもおかしくなったか」
挑発するような態度をとり、相手のでかたを確かめるカズキは左手をいつでも出せるように肩を回し戦闘態勢にはいった。
「あの奇妙な技の魔法名は分からないけど、あなたの噴き出すものを見るのには関係ない。だから殺っちゃうわ!!」
「殺れるもんなら殺ってみな。返り討ちにしてやるよ。そんでグラサンのおっさんを助ける」
人も虫も何も気配が感じられない真夜中、2人の死闘が今始まる!!
continue…
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