ダンジョンに牙狼がいるのは間違っているだろうか   作:ザルバ

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第10話

 リリと仮契約を結んでからと言うもの、ベルのダンジョンでの魔石の獲得率は飛躍的に上がった。

 ……が、それでもベルはリリに疑いの目を向けていた。本人は上手く隠しているつもりでも、ベルにはリリが会う度に体のどこかを怪我しているのが分かった。外見ではなく、仕草からである。

 人間は怪我をすると無意識にそこを庇う癖がある。それは日常生活を送っていてもだ。だがベルはそのことをリリに問おうとはしなかった。部外者であるベルが尋ねることでもないことでもあるが、絶対という確信がないためでもある。

 そんなことを思いながらベルはダンジョンで昼食をリリと共に取っていた。

「ベル様、明日一日お暇を頂けますか?」

「何かあるの?」

「ファミリアの集会があって、どうしても出席しなければならないのです。契約違反なのはわかっています。どんなペナルティーでも――」

「リリ。」

 そこから先を言おうとするリリをベルは止めた。

「俺は契約に、休暇を取ってはいけないとは一言も言ってないよ。それに仮契約だ。本契約なら書面していたけどこれは仮契約。つまり予定外のことが起きてもおかしくないと俺は思ってるよ。」

 ベルはそう言うとリリの頭を撫でた。

 

 翌日。人気のない城壁の上でベルは牙狼剣を手に精神を集中させていた。

 刀身からは黒い霧のようなものが出ており、一か所に集められていた。一か所に集められたそれは一つの球体となり、形となった。

「……ふぅ。」

 ベルはそれを終えると一息吐く。

「大分邪気が溜まっていたようだな。」

「あれだけ切ればね。」

 ベルが出していたのは倒してきたモンスターの邪気である。モンスターとは言えど感情はあり、そして死ねば怨みを持たれる。そんな邪気を纏っていれば病気や不運に見舞われることもある。そのためベルは浄化を行っていた。

「にしても、あれだけ切ってこの量とは、少ないな。」

 ザルバが口にするのも最もであった。

 ベルはダンジョンに潜って多くのモンスターを切ってきた。それも大量にだ。

 本来であればバレーボール程の邪気の塊ができてもおかしくないのに、出来たのは野球のボールサイズ。明らかに不釣り合いであった。

「何か起きないといいけどね。」

「だな。」

 ベルはそう言うと魔導火で邪気を燃やし、手を合わせ祈りを捧げた。

 

 ベルは帰り道豊饒の女主人の前を通っているとシルに声を掛けられた。

「ベルさーん。」

「ん?シルさん。」

 ベルはシルに呼ばれ豊饒の女主人の方へと歩く。

「先日は助けていただきありがとうございました。」

「いえいえ、冒険者として当然のことをしたまでですから。」

 ベルは軽くシルと会話をしていると店の奥からミアが出てきた。

「おや。アンタこの前のお客さんだね。」

「どうも、お久しぶりです。」

 ベルは律儀に頭を下げる。

「シルから聞いたよ。この間はうちの子を助けてくれてありがとう。」

「気にしないでください。こっちが勝手にやったことなので。」

 ベルがそう言ううとミアは少し笑った。何故笑ったのか分からずベルは首を傾げると汁が答えた。

「実は私もリューもベルさんガイアお母さんに言われたらそう答えるって思ってたんです。」

「そうですか。ん?」

 ベルは店に飾られていた本に目が留まった。

「すみません、それは?」

「これですか?興味あります?お客さんお忘れ物みたいなんですけど、取りに来る様子もないんです。」

 シルはそう言うとベルに渡そうとする。するとザルバが止めた。

「おいおい嬢ちゃん。そいつは魔導書だ。安易に人に渡していい物じゃないぜ。」

 ザルバがそう言った途端、二人は固まった。

「あの、ベルさん。今指輪が喋りませんでしたか?」

「あ、ああ……アタシにもそう見えたよ。」

 驚く二人にベルはザルバを紹介しする。

「すみません。こいつは相棒のザルバです。前もってお話ししておこうと思ったんですけど、タイミングが無くて。」

「ザルバだ。よろしくな。」

 二人は軽くザルバに頭を下げる。

「それよりザルバ、それって本当なのか?」

「ああ、間違いない。こいつからは魔力が感じられる。忘れたのは偶然か必然か、俺にもわからん。だが価格は一級品装備並みの値段だ。弁償とかは数か月掛かるな。」

 ザルバがそう口にするとミアが言った。

「取りに来ない奴が悪いんだからアンタが貰いな。」

「へ?」

 ベルは間抜けな声を出す。

「うちの娘たちを助けてくれたお礼も兼ねてだ。持ってきな。」

「こうまで言われると受けないわけにもいかないな。他人様のだが貰っておけ、ベル。」

「はぁ……」

 ザルバにも言われベルは魔導書を受け取った。

 

 ベルは協会に戻ると魔導書を詠み始めた。

(魔法には種族によって素質に備わる先天系と神の恩恵による後天系の二つがある。後天系の魔法は自己実現である。何興味を持ち、認め、憎み、憧れ、嘆き、崇め、誓い、渇望するか?引き金は常に自分の中にある?)

 ベルが心で読むと魔導書に描かれていた文章は消え始める。

『じゃあ始めよう。俺にとって魔法って?』

――守る力。弱者を強者から守る力。

『僕にとって魔法はどんなもの?』

――光。優しく包み込む、温かい光。

『魔法に何を求める?』

――癒し。怪我した身体を癒す。

『それだけ?』

――ああ、それだけだ。そして俺はその力と、今持っている力で本当に黄金騎士になりたいと思っている。

『子供だな。』

――ああ、それでもいい。でも、それが俺だ。

 

 その日の夜、ベルはステータスを更新した。

 

ベル・クラネル

Lv:5

力:S 955(+15)

耐久:S 978(+2)

器用:S 968(+3)

敏捷:S 955(+12)

魔力:S 900(+45)

《魔法》 【ディア】

     ・治療魔法

     ・軽傷の傷を癒す。

《スキル》 【守りし者】

     ・仲間や守るもののためにステータスが上昇する。

     ・常時発動

 

 魔法が発言したことにヘスティアは驚いた。ベルは魔導書を得たことを言うとヘスティアは気絶した。

 

 翌日、ベルは噴水に腰掛けリリを待っていた。

「今日が最後だな。ベル、答えは決まっているのか?」

「ああ。それよりも…お客さんみたいだね。」

 ベルがそう言うと前日街中で剣を振り回した男がベルに声を掛けてきた。

「おい!」

「アンタはあの時の……なんか用ですか?」

「ちっ!礼儀知らずのガキが。…まあいい。お前、あのガキとつるんでるのか?となると、何も知らねぇってわけじゃあるまいな。」

「何のことか知りませんけど、目障りなんで消えてくれますか?」

「んだっ!」

 男がベルに言おうとした途端、ベルは溝に魔導筆、喉に投擲ナイフを突き立てた。

「一応最終警告しておくよ。もし、リリに危害を加えたりこっちの邪魔なんかしたら、殺すから。」

「っ!?」

 明らかに殺気を込めて冷たくそう言ったベルに男は恐怖した。

「……ふ、ふん!どうせ口だけだろ、この糞ガキが!」

 男はそう言うと尻尾を巻いて去って行った。

「ベル、わかってはいると思うが……」

「ああ、証拠は残さないよ。」

 ベルは誰にも聞こえないように静かにそう言った。

 

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