ダンジョンに牙狼がいるのは間違っているだろうか   作:ザルバ

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第15話

 ベテランであるロキ・ファミリアですら戦慄していた。遠くからでも伝わってくる怨や念の邪気。気づかぬ内に冷や汗を掻いていた。

「お前が…ザジか…」

「そうだ。黄金騎士・牙狼の血を受け継ぐ者よ……今ここで貴様のその血と命を絶ってくれる!」

「くっ!?」

 ベルはザジを押し離すと牙狼剣を構え直す。

「はぁ!」

 ザジはベルに向かい走ると頭に向かい剣を振り払う。ベルは左へ牙狼剣を振り上げザジの剣を反らすと牙狼剣を振り下ろした。ザジは左の爪で受け止める。

「ちぃ!」

 ベルは左手を牙狼剣から放すと掌底をザジに叩き込む。ザジは地面を滑りながら離される。

「はぁあ!」

 ベルは地面を蹴りザジに近づくと突く。ザジは剣の地肌で受け止める。

「くぅ・・・」

「ふぅ・・・」

 互いの力のぶつかり合いによって互いの手から剣が離れ、地面に刺さる。

「ふっ!」

「はっ!」

 互いに右拳を突き出す。ぶつかった衝撃によって少し後ろに上半身が反ると互いに左腕を押し当て、鍔迫り合いになる。

「はぁ!」

 互いに押すと右、左、右と二弾蹴りを繰り出す。

「ふっ!」

 ベルはザジに右足蹴りを頭部に蹴り込む。ザジは左腕で受け止める。

「らぁあ!」

 ベルは右足を軸に回転しザジの頭に蹴りを叩き込んだ。ザジは弾き飛ばされる。

「やるな…だがここまでだ。」

 ザジはそう言うと剣の方へと走り出した。ベルも魔導筆を使い牙狼剣の元まで移動する。

「鎧を召喚しろ。此処は貴様の墓場だ!」

「違う!ここは貴様の邪気が消え去るところだ!」

「黄金の鎧を着ろ!牙狼の存在を永遠に消してやる!」

 ザジはそう言い身を抱きしめると一気に開いた。体からは無数のトゲが生えたかと思えば右腕、左腕が巨大化し、そして胴体までもが大きくなった。体から生えたとげは収縮し、羽へと変わった。

 ベルはザルバに刀身を当て引くと剣先を天に向け、円を描く。描かれた円から光が放たれ、牙狼の鎧が召喚される。

「消えるのは貴様だ!」

 牙狼はザジに向かい跳び、牙狼剣を振り下ろす。ザジは牙狼剣を右腕で受け止めると舌へ流し、裏拳を喰らわせる。牙狼は弾き飛ばされ柱へとぶつけられた。

「がぁっ!?」

 片膝を付く牙狼にザジは羽を羽ばたかせ接近し右腕を十字に振り攻撃する。牙狼は左手を刀身に当て攻撃を防ぐが、ザジの左アッパーフルスイングが牙狼を打ち上げる。

「ぐあっ!?」

 牙狼は宙を舞う。ザジは羽を羽ばたかせ牙狼の真上に位置するとそのまま拳を振り下ろし牙狼を地面へと叩きつける。

「くっ!?」

 牙狼は態勢を立て直し着地する。

「ファアアアアアアアアアアアア!」

 ザジは雄叫びを上げると牙狼へ接近し両腕を大きく振り、牙狼を追い詰める。牙狼は反撃しようと牙狼剣を振るうがザジにかわされる。

「ファア!」

 ザジの右腕が牙狼を押し飛ばした。

「ぐぁあああああああああ!」

 牙狼は柱を一本、また一本と破壊しながら吹っ飛ばされる。

 牙狼は吹っ飛ばされた威力が弱まったところで柱に打ち付けられ、背中を強打する。そこへザジが飛んでくる。牙狼は防ごうと剣を構えようとするがザジは牙狼の右腕を左腕で打ち、牙狼剣を柱に突き刺した。牙狼は急いで抜こうとするがすぐには抜けず、ザジの右腕が牙狼を貫こうとしていた。

「うぉおおおおおおおおおおお!」

 牙狼が雄叫びを上げ剣を抜こうとした瞬間、ザジの腕を別の牙狼剣が受け止めた。

 

 ザジの腕は消え、周りは白い空間。ベルは牙狼の鎧を纏っておらず、別のマントを羽織った牙狼がそこにいた。

「我が血を受け継ぎ、牙狼の称号を受け継ぐ者よ。」

「牙狼?」

 ベルは目の前の牙狼の姿に戸惑いを隠せなかった。しかし目の前の牙狼はそんなことに気にも留めず話し続ける。

「お前は大いなる力を召喚する資格を得た。」

「大いなる力?」

 その言葉に一瞬分からなかったベルだが、すぐにその答えはわかった。

「轟天?しかし俺は、内なる影との試練を受けていない!」

 ベルの言葉に牙狼は言った。

「牙狼は光りならば、ザジは闇。今この戦いが、お前の内なる影との戦いと言えよう。」

 その言葉にベルはなぜか納得してしまった。

「お前は俺を超えるのだろう?ならばこの試練を乗り越えて見せよ。」

「っ!貴方はもしや―――」

 ベルの底から先の言葉を牙狼は手を前に出し止めた。

「皆まで言うな。」

「……はい。」

 ベルは牙狼と向き合ってそう言った。そして牙狼は言った。

「ベル、強くなれ。」

「っ!……はい!」

 そして現実へと戻されるベル。

 

「はっ!」

 ザジの腕が引き抜かれた牙狼剣とぶつかり、ザジは弾き飛ばされる。

 ザジは光りの少ないダンジョンからでも輝く光に気付いた。そこには樋爪を火花を散らしながら鳴らし、雄叫びを上げる黄金の魔導馬・轟天に乗馬している牙狼の姿があった。

 牙狼は剣を構える。

「うう……うぁあああああああ!」

 ザジは雄叫びを上げながら牙狼へと向かう。牙狼は轟天の腹を蹴る。轟天は地面を蹴り、ザジへと跳ぶ。空中で牙狼とザジは跳ぶが牙狼が押し勝ち、ザジを弾き飛ばした。ザジは地面を転がる。そこへ轟天に乗った牙狼が接近し轟天を反転、後ろ脚の蹴りを食らわせた。

「ぐぁああああ!」

 ザジは柱を一つ、二つ、三つと破壊しながら吹っ飛ばされ、柱に埋め込まれる。

 轟天は雄叫びを上げながら反転し、前足を地面へ叩きつける。金色の波動が発生し、牙狼剣を牙狼斬馬剣へと変える。轟天はザジに向かい走り始める。

「ふっ!はっ!はぁっ!」

 牙狼は障害となる柱を破壊しながら確実にザジへと接近する。

「はぁああああああああああああああああ!」

 牙狼斬馬剣がザジを捕らえると牙狼は牙狼斬馬剣を押し、貫く。轟天は地面を蹴り上へと跳ぶ。牙狼斬馬剣はさらに深く突き刺さる。

「はぁっ!!」

 そして牙狼はザジを斬り、二つにする。轟天は地面へ着地すると火花を散らしながらザジの方へと反転する。牙狼は牙狼斬馬剣を振り、元の牙狼剣へと戻す。

「我らは何度でもお前らに挑むだろう。その度にお前らは思い知るはずだ。その称号を呪う者の存在を。」

 断末魔の言葉を投げかけるザジにベル、いや牙狼は言った。

「確かにそうだ!しかし俺も、注いてこの先もこの称号を受け継ぐ者たちの言うことは変わらない!」

「っ!?な、なにっ!?」

 驚愕するザジにベルは言った。

「我が名は牙狼!黄金騎士だ!」

「っ!うぉおおおおおおおおおおおおお!」

 ザジが消滅すると轟天はザジに背を向ける。ベルは轟天から降りながら轟天と鎧を召喚した。ベルは牙狼剣の先を鞘に納めると楯にして牙狼剣を鞘に納めた。

 すると一気に緊張が抜け、ベルは膝を付いた。

「ベル様!」

「ベル!」

「ベル君!」

 ベルにリリ、アイズ、ティオネが駆け寄った。アイスが駆け寄ったことにベートが持案句を言いそうになったがそこはティオナの三画固めで事無きを得た。

「ベル様、大丈夫ですか?」

 リリは瞳に涙を浮かべながら心配しる。

「ありがとう、リリ。大丈夫だよ。」

 疲労の色を見せながらもベルはリリの頭を撫でる。

「ベル、やっと黄金騎士って名乗ったね。」

 アイズがベルにそう言いうとベルはこう言い返した。

「やっと慣れたけど、まだ始まったばかりだよ。」

 そんな中ティオナは自身の身体が熱いことに気付いた。

(あれ?なんで熱いの?それにアイズや子の小さいこと一緒にいる光景を見ると胸がチクってするような……どうしよう……完全に惚れちゃった//////)

 ダンジョンで思いもよらぬことはあったが、ベルたちは今日も生き残った。

 

「あれが伝説に聞く闇を照らす希望か……長いこと生きていたがこんな光景を目にできるとはな。」

 少し離れたところでリヴェリアは微笑んでいた。

「僕もちょっと気になってたんだ。アイズやティオネが気になっているベルって子がね。彼、おもしろいね。」

 フィンはベルを見て微笑んだ。

 

 ベルとリリはその日ホームに戻るなり今日のことをを報告した。方擦るなりヘスティアはベルをきつく叱った。

 そしてステータスの更新を行った。

 ベル・クラネル

Lv:5

力:SS 1105(+150)

耐久:SS 1001(+23)

器用:S 999(+31)

敏捷:SS 1000(+45)

魔力:S 989(+89)

《魔法》 【ディア】

     ・治療魔法

     ・軽傷から中傷までのケガを治す。

《スキル》 【守りし者】

     ・仲間や守るもののためにステータスが上昇する。

     ・常時発動

「…………………」

「ヘスティア様?」

「どうかなさったのですか?」

 神聖文字が読めない二人に対しヘスティアは喜びながらこう告げた。

「おめでとう、ベル君!Lv.6にランクアップだ!」

「え?」

「ほぅ…」

「なっ!?」

 ベルは突然のことに間抜けな声を出し、ザルバは感心、そしてリリは驚いていた。

 そしてギルドではこう報じられた。

『二つ名の無いLv.5のベル・クラネル!過去最短のタイムレコード更新!』と。

 

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