ダンジョンに牙狼がいるのは間違っているだろうか   作:ザルバ

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第21話

「さて、ルールはさっき聞いた通り一つだけ。どっちかが気を失うかギブアップするまで……普段二人にやってる訓練と変わらないか。」

 ベルはそう言いながらコートの中から色々取り出す。

 が、周りはその光景に唖然としていた。どこをどうやればそんなに入るのかと思うくらいの量である。

「ベル様、リリの必要性ありますか?」

「ん?あるよ。リリがいてくれると保険医用意する者とか魔石の回収とか結構助かるから。」

 そんなたわいもない話をしていると奥から声が聞こえてくる。

「ん?なんだろう?知ってる気配だけど……」

「気配で探知できるのはおめぇだけだよ。」

 ヴェルフがベルにツッコミを入れる。

「皆はここに。ちょっと見に行ってくるから。」

 ベルはそう言うと声のする方へと跳んだ。

「速っ!」

「今一瞬ブレて見えました!」

 ベルの俊敏さにヴェルフとリリは驚く。少し遅れてアイズとティオナが後を追いかけた。

 

 ロキ・ファミリアから少し離れた場所で木々が照らす中、なぜかヘスティアがそこにはいた。

「ヘスティア様?」

 ベルは間抜けな声で彼女の名を口にする。

「ベルくーん!」

ヘスティアはベルに抱き着く。ベルはヘスティアを受け止める。

「ベルくーん!ベル君!ベル君!」

 ヘスティアはベルに泣き付きながら何度も名を呼ぶ。そんなヘスティアを見てベルは頭を撫でる。

「全く……心配したんだよ。僕を心配させて。」

 ヘスティアが少し離れると目には涙を溜めていた。ベルはヘスティアの涙を拭き取り言う。

「心配かけてすみません、ヘスティア様。それと……」

 ベルは後ろにいる人たちに目を向ける。そこにはフードを深く被っているリューの姿があった。

「貴女も一緒だったんですね。ヘスティア様を守ってくれてありがとうございます。」

 ベルはあえてリューの名を言わずに礼を言う。

 後から来たアイズとティオネが合流する。

「っ!ヴァレン何某君にティオナ何某君!なんで君たちがいるのさ!」

「少しワケがありまして。後から説明しますね。」

 ベルとヘスティアが話していると新たに二人、ベルに話しかけてきた。

「はじめまして、ベル・クラネル君。俺の名はヘルメス。どうぞお見知りおきを。」

「ヘルメス様の眷属のアスフィ・アン・アンドロメダです。アスフィで結構ですので。」

 代表してヘルメスが手を差し出すとベルはその手を握った。

「どうも。」

「なーに、神友のヘスティアのためさ。それに、感謝だったら俺以外の子たちにしてやってくれ。」

 ヘルメスはそう言うと後ろにいたタケミカヅチ・ファミリアの方へと手を向ける。

「あ………」

 ベルにはその姿に身覚えがあった。怪物進呈をした冒険者一行先頭を走っていた人物である。

 

「申し訳ありませんでした!」

 土下座をしたのはタケミカヅチ・ファミリアのヒタチ・千草であった。ベルは見下ろすのが性に合わないため同じ目線で正座をしていた。

「頭を上げてください。それに……責任は貴女じゃないです。」

 ベルはそう言うとカシマ・桜花の方を見る。彼の顔には悔いの表情すらなかった。

「少しあなた方の団長と話をさせていただきたいのですが、よろしいですか?」

「え、ええ……」

「わ、わかりました。」

 千草とヤマト・命はそう言うとテントを出た。

「さて……桜花さん、座っていただけますか?」

「……ああ。」

 桜花はベルの言葉に従い、ベルの前に座った。

「なぜあなたから謝ろうとしなかったのですか?」

「俺はあのことを後悔していないからだ。あの時、ああしなければ……」

「生き残れなかったと?」

 ベルの言葉に桜花は頷いた。するとベルは溜息を吐いた。

「確かに……俺もあなたと同じ立場ならそうしたでしょう。でも、だからと言ってあの時あなたが謝らない理由にはならない。」

「っ!?」

 桜花はその言葉に目を見開いた。

「俺は自分がやった判断を誰かに謝らせようとはこれっぽっちも思わない。自分が下した決断、行動は自分で責任を持つ。団長、いや上に立つものってのはそう言う覚悟がないといけない。違いますか?」

「………ああ、お前の言うとおりだ。だが俺は……」

「それでも間違っていないと?」

 ベルの言葉に桜花は沈黙した。

「……まぁ、責任を少しでも感じているのであればいいでしょう。俺はこれ以上貴方を咎めようとは思いません。そもそも、咎める気はないですからね。でも、今度謝る時は貴女から誤ってください。でないとほかの団員に示しがつかないでしょ。」

 ベルの言葉に桜花は「ああ。」と答えた。

 

 そしてキャンプから少し離れた場所でロキ・ファミリアの団員が円を作り簡易的な闘技場を作っていた。

「驚いたね。まさかロキ・ファミリアの【大切断】と【希望の騎士】が一騎打ちなんて。」

 二人の戦いを顎に手を当てながらヘルメスはヘラヘラと笑う。

「よかったね、アスフィ。これで君の気にしていた疑問が解決するよ。」

「ええ……ですがギルドに提出した内容が嘘でしたら彼は瞬殺です。」

「う~ん、それはどうかな?」

 ヘルメスはそう言うとベルを見る。

「ベル君……」

 ベルの実力を知っているヘスティアも不安であった。

「それじゃあこれよりロキ・ファミリアのティオナ・ヒュリテとヘスティア・ファミリアのベル・クラネルの一対一の試合を始める。武器は一つ、どちらかが気絶するか降参するまでだ!」

 フィンが審判を務める。

「ベル君、団長から聞いたけどLv.6になったんだって?倒し甲斐があるってもんだよ!」

「はは、お手柔らかに。」

 ティオナは自分の獲物の大双刃を手に取り振り回し、ベルは牙狼剣を抜刀し構える。

「それじゃあ……はじめ!」

 フィンの掛け声と共にティオナはベルに駆け出し、大双刃を振り下ろした。

 振り下ろした勢いのあまり突風が発生する。観戦していた者たちのほとんどは声を上げる。

「っ!やっぱりそう簡単言倒れないよね、ベル君!」

 ティオナの目の前には牙狼剣を片手で持ち、ティオナの大双刃を受け止めているベルの姿があった。

「ふっ!」

 ベルはティオナを押し返すと牙狼剣を肩まで持って行き、振り払った。ティオナは大双刃で受け止めながら後ろへと跳ぶ。ティオナは後ろに弾き飛ばされ、ベルから放される。

「くっ!…………流石だね、ベル君。」

「ティオナも腕を上げたようだね。」

 ベルは微笑みながら牙狼剣を構え直す。

「やぁあああああああああ!」

 ティオナはベルに接近し、大双刃を振り回す。

「ふっ!やっ!はっ!せいっ!やっ!はっ!」

 ティオナは大双刃を振り回すがベルはその攻撃を牙狼剣の地肌で受け流していた。

「ふっ!」

 ベルはティオナの大相場を右下へ押さえつけるとそのまま右反転回し蹴りを喰らわせる。

「ぐっ!?」

 ティオナは大双刃を手を離さないまま吹っ飛ばされる。

「まだ……まだっ!」

 ティオナは大双刃を杖代わりに立ち上がる。

「今度はこっちから行かせてもらうよ。」

 ベルはティオナに向け走り出すと牙狼剣を突く。ティオナは横に転がり避けると足払いをする。

「はっ!」

 ベルはきりもみ回転して避けるとその回転を活かし剣を振るう。

「やばっ!」

 ティオナは大双刃を盾に受け止める。ベルは攻撃を利用してティオナから離れる。

「やっぱすごいね、ベル君。」

「そっちもね。だから……」

 ベルはティオナに真正面から接近する。

「やぁっ!」

 ティオナは大双刃を横一線に振るうがベルはきりもみ回転をし、弧を描きながら回避。その際に空間を裂き円を描く。

「俺の本気で相手してあげるよ。」

 ベルはティオナの後ろに立つ。ティオナが後ろを振り向くと同時に牙狼の鎧が召喚された。

(嬉しいけど……悔しいな。最初からそれを使ってもらえないなんて。)

 ティオナは嬉しい反面悔しかった。ベルが牙狼の鎧を召喚したのは敬意を表してであった。ベルがその気であれば最初から鎧を召喚していた。

(もし……今度本気で勝負するときは最初から鎧を召喚するくらい強くなってるから。)

 ティオナはそう思い牙狼へ向かい走り出す。

「やぁあああああああ!」

「はぁあああああああ!」

 牙狼もティオナに向かい走り出す。牙狼は牙狼剣を少し下に傾け、すれ違いざまに振り抜いた。

「ぐ………」

「……言い一撃だったよ、ティオナ。」

 牙狼は剣を鞘に収める。それと同時にティオナは倒れた。ベルは鎧を召還するとティオナの元まで歩み寄る。

「お疲れ様、ティオナ。」

 ベルはそう言うとティオナをお姫様抱っこした。そしてテントへと運んで行った。

 

(………正直、アイツの力はあの戦いで一部しか見てなかった。だが……今の戦いで確信した。アイツの力は本物だ。認めざるを得ねぇ。)

 ベートはベルの強さを認めた。そして静かにその場から離れた。

 

「……やっぱりベルは強い。」

 戦いを見ていたアイズはそう口にした。

 市壁で訓練を行った最後の日、あの時アイズはLv.6であった。だがベルは一つレベルが違うにも関わらず自分を打ち負かした。そして何より自分よりも遥かに速い成長をした。

「私は、貴方よりも強くなる。」

 アイズは誰にも聞こえない声でそう呟いた。

 

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