ダンジョンに牙狼がいるのは間違っているだろうか   作:ザルバ

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第9話

 エイナとの買い物を終えたベルはファミリアへの道を歩いていた。

「ヴェルフ・グロッゾ……いつか直接会ってみたいな。」

「ああ、そうだな。」

 ザルバと話しながら話していると走っている小さな女の子とぶつかった。女の子は路地に倒れる。

「ごめん、大丈夫?」

 ベルが声を掛けると別の声が聞こえてきた。

「もう逃がさねぇぞ!この糞小人族が!」

 走ってきた男は女の子に剣を振り下ろそうとする。ベルは鞘に収めた牙狼剣を取り出し剣を受け止める。

「なんだテメェ、そいつの仲間か?」

「違うよ。」

「じゃあなんで庇う?」

「強いて言うなら……武器も持っていない女の子にしか手を出せない奴が許せないから。」

「んだとゴラ!」

 男は再度剣を振り下ろそうとする。

「はっ!」

 ベルは牙狼剣を抜刀し男の剣の刀身を半分の所で折った。折れた刀身は宙を舞い、そして地面へと落ちた。

「テメ…っ!」

 ベルは男の喉元に剣を突き立てる。

「今から逃げれば見逃してあげる。でもそうでない場合は…ギルドに突き出す!」

 ベルは殺気を込めた目で男に言い放った。

「ふ…ふざけるな!」

 男はベルに殴りかかろうとするがベルは袖から特殊な筆を取り出すと小さな陣を描き魔力を放つ。純粋な魔力であれど大砲並みの衝撃は与えられる。男は結構遠くまで吹っ飛ばされた。

「大丈夫……て、あれ?」

 ベルは後ろにいるであろう女の子に声を掛けるがそこにはもういなかった。

「いないか……ま、救えたからいっか。」

 ベルはそう言うと牙狼剣を鞘に納める。

「……今のはなんですか?」

「ん?貴女は…リューさん。」

 道にある階段の上の方からリューがベルに声を掛ける。

「お久しぶりです。」

「どうも。先日はシルを助けていただきありがとうございました。」

「いえいえ、当然のことをしたまでですから。」

 ベルはリューに軽い挨拶をする。

「それで今のは何なのですか?」

「今のは純粋な魔力の塊を放っただけです。ちょっとムカついたので。」

「成程。気持ちはわかります。でも、自分を大事にしてくださいね。」

「心配してくれてありがとうございます。」

「勘違いしないでください。貴女が傷つくとシルが悲しむので。では。」

 リューは一礼するとその場を後にした。

 

 翌日、ベルは自分で作ったソファーで目を覚ます。

「なんか身体が…ん?」

 ベルがベッドを見るとそこにはヘスティアがベルの上で寝ていた。

「寝ぼけたのかな?」

「うにゅぅ………」

 ヘスティアはベルの胸に顔を埋めるように眠る。

「全く、神って言いながらもこうしてみたらただの女の子じゃないですか。ヘスティア様。」

 ベルはそう言うと頭を撫でる。するとヘスティアは寝ぼけているのかベルに自分の胸を押し付ける。

「子供なんですから。」

 ベルはヘスティアを起こさないようにベッドから出るとシーツを掛け、服を着てコートを羽織りスタンドのザルバを嵌める。

「行ってきます、ヘスティア様。」

 ベルはそう言うとヘスティアのおでこにキスをした。

「ベル君…うみゅぅ/////////」

 ヘスティアは赤くなった顔をシーツで隠した。

 

 まだ霧が掛かっているダンジョン。早朝にも関わらず多くの冒険者やサポーターがダンジョンへと入っていた。

「サポーター……か。」

 ベルはサポーターがいる冒険者を見て考えた。

 冒険者と違いサポーターは魔石やドロップアイテムを回収する役割を担っている。反面、こき使われることもありひどい扱いを受けることが多々ある。

「俺もサポーターがいたらいいけど、まだ未熟だしな……」

 ベルがそう呟いていると後ろから声を掛けられた。

「おにいさーん、お兄さん!白い髪に白いコートのお兄さん!」

「ん?」

 ベルは後ろを振り返るとそこには背が低いわりに大きなカバンを背負っているフードを被った女の子がいた。

「初めましてお兄さん。突然ですがサポーターを探していませんか?」

「え?…ああ、うん。(この子、昨日の…)」

 ベルはそう思ったがあえて口には出さないようにした。

 

 場所が変わり噴水広場。霧は晴れ、一般の人や出店などが回転を始めていた。

「リリルカ・アーデと申します。」

「ベル・クラネルです。」

「えっ!あの―――!」

 リリは大声で口にしようとするがベルは口に指を立てた。

「ここじゃ目立つからダメだよ。」

「はい…すいません…」

 フードを脱いだリリの犬人としての耳が垂れ下がる。そんなリリを見てベルは頭を撫でる。

「そんなに落ち込まないで。」

「ありがとうございます!」

 リリの耳が上に伸び、喜ぶ。

「それでサポーターなんだよね?どこのファミリア?」

「ソーマ・ファミリアです。」

「ふーん。俺はこっちに来たばかりだから聞いたことないけど、ちゃんとファミリアに所属しているなら安心かな。」

 ベルはそう言うと立ち上がる。

「でもこっちはそっちのことをよく知らない。だからお試し期間てのを設けて貰っていいかな?」

「と、言いますと?」

「二週間。その期間俺は君と仮契約を結ぶ。魔石で得たヴァリスは二人で半分こ。仮に俺が契約を途中で切ったとしてもリリにはダンジョンで潜った期間、金が入る。俺はサポーターがそう言う物なのかよく知れる。お互いにとって損じゃないでしょ?」

「はい!じゃあベル様とその仮契約をリリと結ばせてください!」

「じゃあ、成立だ。」

 ベルが手を差しだすとリリはその手を握り、はいと返事をした。

 

「うじゃうじゃと…、全く懲りないね。」

 ベルは魔導筆で魔力弾を放つと投擲ナイフを手に取りキラーアントの急所に投擲する。

 キラーアントは表皮が固い。だが関節部は違う。関節部だけは柔らかいようになっていた。

 キラーアントは苦しむと糸が切れた様に動かなくなった。ベルは牙狼剣を取り出すと胴体を斬り、魔石を回収する。魔石を抜かれたキラーアントは消滅した。

「はい、リリ。」

「すごいですね、ベル様!」

 リリはベルを褒める。

「ベル様、その剣リリがお持ちしましょうか?」

「いや、これは女性には持てないんだ。」

「どういうことですか?」

 普通なら「リリには持てない」と言うところを「女性には持てない」と言った。リリならまだしもアマゾネスなら持てる筈である。

「ちょっとこれ持ってみて。」

 ベルは地面に牙狼剣を置く。ベルは一応「刃は切れるから触れないで」と忠告する。

 リリは牙狼剣を持とうとする。が、細い刀身には釣り合わない程あり得ない重さであった。

「なんですかこれベル様……これすっごく重いんですけど!」

 リリは顔を赤くしてベルにそう言った。

「これはちょっと特殊な金属でね。ソウルメタルって言うんだ。」

 ベルはそう言いながら牙狼剣を持ち上げる。

「これは男にしか扱えない上に、心で扱うんだ。」

「心、ですか?」

「そう。使いようによっては羽のように軽くなるんだ。」

 ベルはそう言うと牙狼剣を鞘に納める。

「さて…リリ、少し下がっててくれないかな?ちょっと数が多くなったみたいだから。」

「へ?」

 リリが間抜けな声を出すと壁に変化が起こった。壁が膨れ上がり、そしてキラーアントがいくつも生まれ始める。

「今日の獲得金は期待していいよ、リリ。」

 ベルはそう言うとキラーアントの群に向かって走り出し、牙狼剣を抜刀した。

 

 ベルはギルドで魔石を換金するときっちり半分リリに渡し、別れた。ベルはソーマ・ファミリアについて気になりエイナに尋ねる。

「う~ん、ソーマファミリアのサポーターかー。」

「やっぱり何かあるんですか?」

「うん。彼らは探索が中心のファミリアで少しだけお酒を売っているの。そこまでは普通なんだけど……」

 エイナは俯き、言った。

「皆どこか必死なんだよね。」

「おそらく何かを求めているんだろうな。金か、酒か。あるいは両方なのかもな。」

 エイナの言葉に対しザルバがそう言った。

「ベル君はどう思ってるの?」

「少し泳がせようかと。それに彼女……どこか悲しい目をしてたんで。」

 ベルはエイナに礼を言うとその場を後にした。

(ベル君は……きっと優しすぎる人なのかも。)

 エイナは去って行くベルの背中を見てそう思った。

 

「どうする、ベル?あの嬢ちゃん、手段は選ばないかもしれんぞ。」

「そうだね……でも少し気になるんだよねー。ソーマ・ファミリアの酒。」

「酒がか?確かに古来から金と酒と娯楽は人を狂わせるものだが……まさか!」

「かも……ね。」

 人気のない道でベルはそう答えた。

 

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