インフィニット・ストラトス 夜明けを告げるもの   作:びーびー

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 短いです。


代表決定戦①

 

 

 

「……」

 

 セシリアはアリーナ中央でただ開始の合図を待っていた。対戦者の片割れはいまだ現れておらず、それゆえかアリーナの観客席は期待と緊張に満ちたざわめきが覆っていた。

 約束の時間まであとわずかとなった時セシリアの機体、ブルーティアーズは1つの反応を捉える。

 

「逃げずに来ましたのね」

「当たり前だろ」

 

 彼女の前には白を基調にした機体を身に纏った一夏の姿があった。

 対戦相手が現れたことによってアリーナのボルテージは否が応でも上がっていく。

 二人が多少の距離を取って向かい合ったところで、二人のISはそれぞれの搭乗者に試合開始の10秒前を告げる。

 二人の間に会話はなく、ただその目は相手の動きを見逃すまいと研ぎ澄まされていた。

 10秒という時間は瞬く間に過ぎ去り、会場に鳴り響くブザーが試合開始を告げた瞬間に二人は同時に動き出す。

 

「無様に、踊りなさい!」

「……っく」

 

 試合開始とともにセシリアの手に召喚されたレーザーライフル、スターライトmkⅢは構え、照準を一瞬の間に済ませ銃口から一夏に向けて攻撃の口火を切る。

 その代表候補生の腕を遺憾なく発揮した一撃はしかし一夏を捉えることはなくアリーナの防御シールドを焼いて消える。

 

「よく避けましたわね」

「特訓の成果だよ」

 

 そう言って不敵に笑う一夏の額を一筋の冷汗が流れる。余裕そうに見せている一夏だが当然それははったりだった。

 銃口の向きとトリガーさえ注意していれば拳銃は避けれる。そう言いはなった彼の幼馴染の顔を思い出し一夏は心の中で感謝の言葉をささげる。

 堂々と無茶を言い放った彼の幼馴染は特訓と称して一足一刀の間合いから恐ろしい速度の突きを放ち、一夏はそれを躱すということをこの一週間続けた。

 日本一にも輝いたことのある箒の突きはそれを受ける一夏の目からすれば躱せないという点でセシリアの一撃より恐ろしいものだった。

 

「でも躱しているだけでは勝てませんわ」

「百も承知だ!」

 

 裂帛の気合とともに速度を増す一夏をしとめるべくセシリアもまた自機を加速させ間合いを取る。

 そこに観客が予想した一方的な展開はなく、高まっていく緊迫感に誰もがその手を固く握っていた。

 

 

 

 

 

「いやー、一次移行もしてない機体でよくやるね一夏は」

 

 そんなことをぼやきながら遥は暁に表示させたウインドウに映る一夏の健闘から意識を手元に移す。

 彼は今アリーナではなくそこに隣接された研究棟にて自身のISである暁の調整を行っていた。

 一夏とセシリアの試合にあまり興味を持てなかった遥はクラスメイトの誘いを断り、一人いまだに調整が終わっていない自身のISのため誰もいない研究棟にこもっていた。

 

「これじゃあ、ちょっと強いか?もう少しパラメータを減らして……」

 

 熱心にISに表示されたデータと手元のパソコンを見比べてISのパラメーターを調整する遥であったが、そんな彼の背後から声がかけられる。

 

「すいません」

「ん?」

 

 彼が振り返ると研究室の入り口に一人の少女が立っていた。少女は見事な銀色の頭髪を揺らしながら失礼しますと断って研究室の中に入ってくる。

 

「倉田遥さんですね?」

 

 そう言って軽く首をかしげる少女に遥もまた首をかしげたくなる。世界初の男性搭乗者が模擬戦をするということでその注目度はすさまじく、学園の生徒がほとんどアリーナに詰めかける中でIS学園の制服を着ていない少女が訪れる場所として遥のいる研究棟は不自然であった。

 不法侵入者という言葉が遥の脳裏をかすめたとき、彼の持っていた端末がメッセージの着信を告げる。

 少女に断りメッセージを確認すると、それは研究所の研究員である新堂咲からのメッセージだった。

 内容としては彼女の親戚がIS学園に見学に行ったのでその相手をしてほしいというものであった。

 

「連絡は届きましたか?」

「あー、そうですね。わかりました」

 

 同僚の突然の無茶ぶりに苦笑しながら遥はISを解除し、少女に向き直る。遥の様子に少女はクスリと笑みをこぼし小さく頭を下げる。

 慣れない同年代の少女とのひと時を想像して嘆息しながら顔に笑みを張り付け、遥は少女に歩み寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 遥が少女の案内始めたこと、一夏対セシリアの試合は膠着状態に陥っていた。

 開始当初こそ拙い機動のため何発か直撃をもらっていた一夏であったが、試合が経過していくとその機動は劇的に洗練されライフルの直撃をもらうことはなくなっていた。

 しかし、セシリアはその余裕を崩すことをなく、近づこうとする一夏を巧みな射撃で足止めし戦闘を優位に進めていた。

 また一夏に遠距離装備がなくブレード一本というのも戦況に影響していた。

 

「なかなかやりますわね」

「そいつはどうも。そっちもさすがだな、近づく隙が無い」

「それはそうですわ。淑女は身持ちが硬くてよ」

 

 そんなやり取りをしながら一夏は一つの決意を固め、次の瞬間今できる全速でセシリア向かって飛び出す。

 

「馬鹿の一つ覚えではっ!」

「ぐっ!」

 

 一夏の進路を遮るように斉射されたセシリアの一撃を右手で振り払うように受け、一夏はそのままセシリアに向けて突き進む。

 

「右手を捨てて!?」

「肉を切らせて、」

 

 自身の想定外の事態に一瞬動きが止まったセシリアに向けて、一夏は左手に握った雪片の名を冠したブレードをセシリアに突き立てるように突き出す。

 

「骨を絶つ!」

「行きなさい!」

 

 それでも代表候補生であるセシリアはほぼ無意識にISのスカート部に設置されているミサイルを起動させつつ、自身はなりふり構わず後ろに後退する。

 刹那、爆音がアリーナに響き、観客は息をのむ。全員が砂煙の中に目を凝らしている中、モニター室内にいた千冬は不機嫌そうに唇を歪ませながら呟くように不満をこぼす。

 

「機体に救われたな馬鹿者が」

 

 

 

 

 

 

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