インフィニット・ストラトス 夜明けを告げるもの   作:びーびー

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


鳳 鈴音

 

「鳳鈴音よ、よろしく」

「鈴は箒が転校してから転校してきたんだ。だから箒とも初対面だよな」

「うむ。篠ノ之箒だ、よろしく頼む」

 

 鈴が一組にやってきてから時間は経過し、今は食堂に5人が集まっていた。正確には一夏たち4人をラーメンを抱えた鈴が待っていた形だが。

 鈴は一夏たちを見つけると太陽のような笑顔で手を振り彼らを自分の席まで呼び寄せた。

 最初は互いの自己紹介をしていたが、人懐っこい鈴の性格ゆえか遥と箒、セシリアもすぐに昔からの友達と言えるほどに親し気に言葉を交わし、互いに名前で呼び合うまでになっていた。

 そして話題は主に一夏の過去の話になっていた。

 箒は自分のいなくなった後の一夏の話を、鈴は自分と出会う前の一夏の話をして盛り上がり、当事者以外の遥とセシリアも過去の一夏が起こしたトラブルを聞き昼食は大いに盛り上がった。

 

「一夏、お前って……」

「なんだよ遥、何か俺が間違ってたか?」

 

 怪訝そうな表情で遥を見る一夏に、遥は溜息で答える。鈴や箒から聞いた話だと彼の隣にいる少年はやはり大層もてるらしいのだが、恋愛面での鈍さはそれこそラブコメの主人公もかくやというものらしかった。

 一夏の前でその時のことを話している今でも首をかしげている姿にセシリアもまた頭痛があるかのように頭に手を当てていた。

 

「それがわからないからあんたはダメなのよ。肝心なことを忘れたりするし」

「一夏、否定できんぞ」

「いやいや箒まで何言ってんだよ」

 

 四面楚歌の状況に一夏は頭を抱えるが、何かを思いついたように顔を上げる。

 

「酢豚だ!」

「「「?」」」

「……」

 

 突然の一夏の声に鈴を除く三人が首をかしげる。そんな何人に対して鈴はその表情から笑顔を消し、休む暇がなかった口はつぐまれる。

 

「酢豚だよ、酢豚。確かそうだろ鈴?」

「一夏大丈夫か?突然酢豚なんて連呼し始めて。……どこかうったか?」

 

 痛ましそうな顔で一夏の肩に手を置く遥の手を一夏は振り払う。

 

「違うよ遥!確か、鈴と約束したことがあったんだよ」

「約束?」

「あぁ、確か料理ができるようになったら酢豚を毎日作ってくれるって約束だったよな鈴?」

 

 一夏の言葉に遥は古式ゆかしい日本式のプロポーズの変則的なものだとすぐに気づき、 そしてそれを間違えて覚えている一夏のおつむに溜息をつく。

 箒もまたそれがプロポーズだと気づき頬を赤らめながら一夏を睨みつける。

 セシリアは幸か不幸か日本の味噌汁と絡めたプロポーズを知らなかったため突然溜息をついた遥と頬を赤らめる箒を不思議そうに見ていたが、一夏の言葉に何の反応も示さない鈴に顔を向ける。

 

「……」

「鈴さん?」

 

 セシリアの声に一夏たちも沈黙を守る鈴に視線を向ける。

 先ほどまで活発に場を盛り上げていた鈴の姿はそこになく、何かに耐えるように唇をかみしめる悲し気な少女の姿があった。

 箒やセシリアが突然の変化に戸惑い言葉を探す中、一夏はいち早く彼女に声をかけようとする。

 

「鈴?」

「ごめん、一夏。あの約束は、忘れて」

 

 一夏の声を遮るように鈴の口からこぼれた言葉はまるで、絞り出されたように苦しく全員に響く。

 鈴の態度を不審に思った一夏が何か言葉を発する前に、鈴は自身の食器をもって逃げるように席を離れる。

 

「鈴!」

「一夏、食器は俺に任せてお前は彼女を追え!」

「え……?」

「鈴をこのまま放っておく気か、馬鹿者め!」

 

 一夏の背中をたたく箒に押され一夏は鈴を追い、走り出す。

 

「悪い、皆、頼んだ!」

「どうにかするまで帰ってくんなよ!授業の方は任せとけ!」

 

 走り去る背中を見送り、そして一夏の背中が見えなくなった瞬間箒は机に崩れ落ちる。

 

「わ、私は、敵に塩を送るような真似を……!」

「まぁまぁ、箒さん。私は先ほどの箒さんを人間としてとても尊敬いたしますわ」

 

 そう言いながら箒の背中に手を当てるセシリアたちをしり目に遥は彼女たち全員の食器を片付けていく。

 

「本当に一夏の近くは飽きないな」

 

 

 

 

 

 

「鈴!鈴、待てよ!」

「うっさいわよ、一夏。何でもないからちょっと放っておいて」

 

 やたらとすばしっこい鈴に追いつき一夏が彼女の腕を掴むと、彼女は一夏が知っている鈴からすると驚くほど弱い力で彼の手を振り払おうとする。

 鈴は腕を掴まれながらも顔は俯かせ決して一夏の方を向けず、しかし逃げるのをあきらめたように体を一夏の方へ向ける。

 彼女の言葉には本来の力がなく、どこか疲れているような印象を受ける。

 

「どうしたんだ、鈴。なんていうかお前らしくないぞ」

 

 一夏の言葉に一瞬体を震わせながら鈴は大丈夫とつぶやく。

 

「大丈夫じゃないだろ。何かあったのか?」

「なんでもないわ。ちょっとだけパニクッただけだから大丈夫。少しすればいつものあたしに戻るから」

 

 だから放っておいて、とつぶやく彼女の声は至近距離にいた一夏の耳にかろうじて届くレベルのものだった。

 

「そんな状態の友達を放っておけるわけないだろ!」

 

 こんなに弱っていても彼女らしい強情さを発揮する鈴に一夏の声も自然と大きくなる。

 一夏からすれば当然の思いではあるが、彼の発した友達という言葉に鈴の体は揺れる。

 

「友……達……」

「俺が約束を間違えて覚えてたのか?もしそうなら……」

 

 俺が悪かったと続けようとした一夏の言葉を遮るように鈴が顔を上げる。彼女の顔には本来の力強さはなく、消えてしまいそうな儚さで覆われていた。

 

「違うよ、一夏。約束は間違ってない。あんたは悪くないの」

 

 これは私が臆病だから、と懺悔をするように鈴は告げる。

 

「臆、病?」

 

 普段の鈴とは似ても似つかない言葉に一夏はその表情に困惑を浮かべる。

 そんな一夏の様子を見て鈴は儚く笑みを浮かべ、そして一夏の前に握られていない方の手の人差し指を立てる。

 

「じゃあ、勝負をしましょう」

 

 そう言って言葉を始めた鈴の提案に一夏は迷うことなく頷く。

 

 

 

 

 勝負の日はクラス代表戦。

 

 敗者は勝者の質問に必ず答え無ければならない。

 

 そして時は少し経ち、クラス代表戦は多くの思惑をはらみながらその火ぶたを切って落とそうとしていた。

 

 

 

 

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