HERO'sフルブラスト   作:オービット

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第4話「運命の始まり・後編」

 

 

 

 

 

「それじゃあ、またね。綺音。」

 

「うん、じゃあね。キラ。」

 

キラと綺音はアイスを食べに入った後、それぞれの帰路に向かった。

結局、キラは綺音の分まで奢らされる事になった。

 

しかもサイズは1番大きいサイズを頼まれたため、高校生のキラにとっては痛い出費である。

何気に今月はこれで乗り切れるかどうかキラは不安になった。

 

まあ、前もって何も連絡せずにいつもの約束を破ってしまった自分も自分で悪いだろうとそう受け止めたが、先行きが不安であるため肩を落とさざるを得なかった。

 

今日も1日が終わった。

 

いつものように苦しい事もあったし、楽しい事も色々あった。

キラにとって舞に会えなかった事が今でも心残りだ。

今日は会っていろんな事を喋りたかったのにそれが出来なかった。

でも、いつものように昼休みで友達とふざけ合ったり、いつも仕事で来れなかったダイゴやヒイロに会えたり、放課後、綺音と一緒に遊んだりする事など嬉しい事もいっぱいあった。

 

今日もこうして自分の日常が終わっていく。

そしてまた次の日から新しい1日が始まる。

このようなサイクルがずっと続いていくんだろう…。

 

ーーーこんな平和な毎日がきっと自分にとっての変わらぬ日常なんだ。

 

キラは納得するようにそう自分に言い聞かせた。

 

ーーーでも本当にそうなんだろうか…?

 

だがキラは自分にそう言い聞かせても全部納得出来るわけじゃなかった。

 

確かに自分は平和な日常を送っている。

それは紛れもなく自分の愛しい、変わらぬ日常である。

でもそんな日常を身に染みても自分はあの夢から抜け出せない。

あの感覚だって…。

 

それにキラは先ほどのあの不思議な感覚を忘れずにいた。

あの少年と触れた時、自分は確かに宇宙が見えた。

 

実際自分は宇宙に行った事なんてない。

でもその目に映った星々から生命の鼓動のようなものを幾つも感じた。

あれはただの幻だったとは言えない。

 

それに自分はあの少年から夢と同じ感覚を感じた。

夢で現れる幾多の怪獣、怪人、ロボット達と戦うあの戦士と同じだ。

それは初めてなはずのに懐かしさにも似た温かさを感じる…。

そうこの地球、いや宇宙を包み込むような光だった…。

 

 

ーーー ドクン ーーー

 

 

ーーまただ…。

 

またあの感覚だ…。

あの少年に触れた時から、所々身体中の血液が疼くのを感じる…。

さっきまで綺音と遊んでた時にも少しずつ感じていた。

今では若干速くなっている…。

まるで血が体から出たがってるような気分だ。

 

 

あれが一体なんなのか全く分からない。

 

だがそこから夢で感じた『自分が本当にいる場所』という感覚と同じであるのは確かだ。

それは紛れも無い真実である。

 

どんなに頭から離れようとしてもあの夢の感覚から逃れられない。

どんなに日常を満喫しても、忘れようとしてもすぐに追いかけてくる…。

 

何故自分はこの夢を見るんだろう…?

何故自分はこの夢に魘されるんだろう…?

そして何時までこの夢に翻弄されるんだろう…?

 

キラは問いかければ問いかける程、疑問が増すばかりであった。

それは出口のない迷路で複数ある道から出口に繋がると思った道を辿ったら、また複数の道に遭遇するように…。

何時になったらこの答えが見つかるのだろうか…?

 

「それじゃあ、行ってきまーす!あら、キラお帰り!」

 

「姉さん?」

 

自分の問い掛けに悩む中、姉であるワカナ・ヤマトが玄関先から出て来た。

先ほど朝帰りの姿とは打って変わり、今はスーツを綺麗に着こなし、髪も絹織物と見違ってしまうほどの美しく艶のある長い黒髪に整えられていた。

目元も今は隈がなくパッチリとしており、整った顔立ちが際立っている。

スーツの着こなしが様になって、『仕事の出来る女』っていうイメージがしっくり来る。

 

「な〜に〜?また舞ちゃんか綺音ちゃんと寄り道したの?それとも両方〜?」

 

「う…ち、違うよ…!綺音だよ!舞姉ちゃんは今日風邪引いて休んでたよ…。」

 

キラはその事を思い出すとまた落ち込んでしまう。

 

「あらあら、残念ねぇ…。」

 

「なっ…!ほっといてよ!」

 

姉の余裕らしさを持った上品な笑みが今は憎たらしいほど腹が立った。

 

「もう仕事に行くの?」

 

「そ。また上司の命令でね、お姉ちゃんまた会社で寝泊まりする事になっちゃったの…。あ〜あ、これじゃあストレスで過労死しそうよ…。」

 

「た、大変だね…。」

 

社会人になるとこんな事が起きるのか。

高校生のキラは目の前の現実を見て、夢の時とは別の不安を感じた。

 

「でも社会人になるとこういう事がしょっちゅうあるし、これも仕事の内だからしょうがないわよ。

今は学生生活を思う存分謳歌しなさい。キラ達も大人になればそんな暇ないんだから、ね?」

 

そう言うとワカナは得意げな表情でウィンクした。

それに連ねてキラは微笑み返した。

 

そうだ。

自分の姉だって、仕事が立て込んでいて愚痴を言いつつも、いつも家族のために頑張っている。

辛い事を抱えながらも、今を真っ直ぐ生きている。

 

あまり因縁めいた考えを止めよう。

 

変な夢に苛まされてもそんなの一時の気の病にしか過ぎない。

現にこうして何時も通り日常を過ごしているじゃないか。

変な夢に悩まされようと悩まされまいと、今を必死に生きればそれに越した事はない。

今ある日常を大切にすればそれだけでいい。

 

「それじゃあ、行ってきます!」

 

「いってらっしゃい。仕事頑張ってね。」

 

「うん、ありがとう♪キラも青春を満喫しなさいよ!」

 

「うん、ありがとう…。」

 

キラは心の中でそう片付け、ワカナを見送った。

少なくとも、あの夢を見るまではキラは心の中でそう片付けられた……。

所詮夢は夢で、あの感覚もなんかの偶然でしかないんだと少なくともこの時まではそう思えた。

 

 

 

またあの夢を見るまでは……。

 

 

 

 

 

 

時刻は18:30となり、殆どの家庭が食事を摂る時間である。

UPC本部にいる社員もこの時間帯で休憩を取り、夕飯を済ますのがほとんどだ。

UPCのダイゴとヒイロは同じ社員寮で住んでおり、曜日ごとに炊事や部屋の掃除、洗濯をそれぞれを決めてやっている。

今日はダイゴが夕飯を作る当番であるはずだが、今日は何やら違うようだ。

 

 

「ダイゴ君、改めて今日は本当にすみません!道案内のお世話などをして頂いた身でありながら本当にすみませんでした!」

 

ヒビノ・ミライはダイゴとヒイロと自分で囲んでいる食卓の前で立ち上がり頭を深く下げた。

ダイゴは若干苦笑いをし、ヒイロは無言でお茶を飲んでいる。

 

「いやいや、いいよ!君の親切心でやったから。」

 

「本当にすみませんでした…。」

 

ミライはそう言い、また深く頭を下げる。

ダイゴは謝り続けるミライに対して自分が気まずく思い、ただただ苦笑いするしかなかった。

 

でもまあ、今日の彼を見た感じ、彼は近くで困ってる人がいたため放っておけず、無茶をしでかすほど必死になって人助けしようとし、だがそれで迷惑を掛けた事に対して罪悪感を感じているからこうまでして謝っているのだろう。

 

ダイゴはミライの実直さを厚意に受け取り、純粋な人だなと微笑ましく彼を見つめた。

 

「本当に気にしなくていいって。それよりカレー作ったんでしょ。僕ら早く食べたいな。」

 

「はい!腕によりをかけて作りました!僕の自身作でもあるカレーライスです!」

 

ミライは先ほどの暗い表情から一転し、食卓に3つ置いてあるカレーライスを自慢気に紹介した。

 

見た感じだと日本の家庭で出される類のオーソドックスなカレーだ。

これといった特別な盛り付けはないが、少し嗅いだだけで美味いと分かるほど香ばしい匂いが鼻腔を擽る。

それだけでも食欲を更に駆り立てるほどだ。

ダイゴはその匂いに釣られて思わず涎が出そうになるがなんとか押さえこみ、ヒイロは顔こそ無表情だがその匂いで益々食欲を掻き立てられた。

 

「うわあ〜美味しいそう!いただきます!」

 

「……いただく。」

 

ヒイロはダイゴはすぐさまスプーンを手にした。

カレーのルーとライスをスプーンに乗せて実食をし始める。

それを口にした時は同時だ。

すると2人は一瞬絶句すると、2人とも揃って思わず呟いた。

 

 

「「美味い…」」

 

そう美味いのだ。

味は日本のカレーを準拠してるが、美味いの一言に限るのだ。

甘過ぎず辛過ぎず、だが色んなスパイスが絡みあってカレーの旨味を引き出している。

ライスは圧力鍋で炊いたのであろう程よくもちもちしており、カレーのルーと絶妙に合っている。

 

ダイゴはスプーンが進んで自然と食べるスペースが速くなり、クールさが性格の第一印象を占めているあのヒイロでさえもやや目を見開いてスプーンを動かす速度を速くし、無言でカレーライスを食べ続ける。

 

二人ともミライのカレーライスの虜となった。

ミライは食事に集中する2人を見て嬉しそうな笑顔になる。

ミライは自分の奮った料理が2人に気に入ってもらえてなによりも嬉しいのだ。

 

ダイゴとヒイロは変わらず、無我夢中になってカレーを食べ続ける。

 

具も中々だ。肉は牛肉を使っており、肉を噛めば噛むほど肉の旨味が口の中に拡がっていく。

野菜も煮詰め具合が抜群によく、人参や玉ねぎの甘みがカレーのルーと溶け合って更に旨味を引き出している。

それによってスプーンを動かす速度が速くなっていく。

 

2人は知らぬ間に完食してしまった。

食い終わるとハッと我に返り、ずっとカレーに夢中になって食べ続けていた事に2人とも気恥ずかしく思った。

 

「あ、しまった…!思わずカレーに夢中になっちゃった…。」

 

「俺もだ…。」

 

「いえいえ、気に入って頂けてなによりです!」

 

「にしても凄く美味いよこのカレー!今までこんなに美味いカレー食べた事ないよ!」

 

「五代のカレーにも劣るとも勝るとも言えない素晴らしい出来だ。」

 

「ありがとうございます!この料理は僕の兄のような人から教えて頂いた料理なんです。皆様がお気に召してくれて嬉しいです。」

 

「へえ、そうなんだ。お兄さんのような人か…。」

 

「実の兄とはわけが違うのか?」

 

「はい!カナダ支部でお世話になり、僕の恩師でもあるお方です。

その人は昔、この地球を守ってきた偉大なる勇敢な戦士です。

今は戦線から身を引いて僕のような訓練生の教官をやっています。

兄さんは凄くカッコいいです…!威厳があって、いつも何事にも果敢に立ち向かい、勇ましくて…!」

 

ミライは目を輝かせながら熱く語り、顔を惚気させた。

2人はミライのその語りざまに若干呆れたが、彼の表情を見てその人の事が本当に好きなんだと心の中で思った。

それと同時に感情豊かで裏表のない人間だなとなんとなく感じた。

 

数分経つと、ミライは我に返り熱く語る自分が気恥ずかしくなった。

 

「ハッ…!すみません!つい夢中になっちゃって…!」

 

「いや、大丈夫だよ。」

 

「俺も別に気にしていない。好きなものを熱く語るのは感情の裏表がない正直な人間だという証だ。俺は別に嫌いじゃない。」

 

「皆さん…。あ、そういえばお代わりもあるんで遠慮なくどんどん食べて下さい!」

 

「それじゃあ、遠慮なく頂く…。」

 

とヒイロはそう言いながら、食卓の近くに置かれているライスを大量に盛り、食卓の上に置いてある鍋の中のカレーを自分の皿に多く盛った。

 

「あ、コラ!ヒイロ!取り過ぎだぞ!」

 

「大丈夫だ。お前とミライの分まで残している。」

 

「だとしても取り過ぎだよ!」

 

「感情に従って行動するのは人間として正しい生き方だ。問題ない。」

 

「いや問題大アリだよ!少しは遠慮しなよ!というか、それただ単にカレー食べたいだけの言い訳だよね!?」

 

「………1つだけ忠告がある…。このカレーは死ぬ程美味いぞ……。」

 

「いや、それただの言い訳じゃん!というか、カレー食べたい魂胆がバレバレだし!」

 

とダイゴはヒイロに小突いた。

ミライはそれに釣られて笑ったため、ダイゴも笑い始め、ヒイロもフッと口元で小さく笑い、賑やかな食事の時間となった。

 

 

ミライは2人の笑顔を見てホッと胸を撫で下ろした。

日本に来るまでミライは期待と緊張感で胸がいっぱいだった。

 

日本にいたとしても1年ぐらいしかおらず、殆どの時をカナダに費やしたと言っても過言ではない。

そのため日本は異国の地というイメージが根強かった。

 

ミライは1年いたとはいえ、殆ど初めてと言っていい国で上手くやって行けるのか、初めて会う人とちゃんとやっていけるのか少なからずも心配であったのだ。

 

だけど目の前にいる2人を見てなんとか安心出来た。

初日に道案内の途中、彼自身にある生来のお人好しなところでダイゴに迷惑をかけ、大きな失態をやらかしたが、今はこうして一緒に笑い合いながらご飯を食べている。

 

カナダにいた頃も先程紹介した恩師以外にも仲間がいたが、皆に仕事な真面目で堅実な性格なものがほとんどだったため、こういう風に食事を囲んで楽しく談笑するなんて事はあんまりなかった。

ミライは今それが出来て心嬉しく感じ、胸が温まる思いであった。

 

だけど同時に不安もあった。

自分は他の人間とは違う存在である事だ。

ガンダムやライダーの装着者も普通の人間にはない力を秘めているが、それでも元は人間であり、その反面自分の場合は根本的に色々と違うのだ。

自分の秘密が暴露た時に彼らに気持ち悪がれたらどうしよう、嫌がられたらどうしようと思いが常に彼の心に存在する。

昔自分はそれにより色眼鏡で見られた事があるのだ。

 

でもこの2人を見る限り、そんな事はしないだろう。むしろ心が広くて優しい人達だ。

そうだ。あんまり斜に構えるような考えは止めよう。

ここに住む人達は皆親切だ。きっとここにいる人達以外でも親切な人はいっぱいいるんだ。

街の商店街の人達もみんな優しかった。お互い手を取り合って生きていき、温かさに溢れていた。

ここにいる人達やその街と平和を守りたい。

ミライは前向きな思考で考え、早くも1つの目標を作り上げた。

 

(それにしても、さっき商店街でぶつかった彼は一体なんだったんだろう…。)

 

あれは夕方、カレーの材料の買い出しに行った時だ。

自分と雰囲気がなんとなく似てる少年と自分の不注意によってぶつかった。

 

手を握った時、自分の目には宇宙が映った。

それは幻ではない、まるで本物の宇宙だ。

幾つもの星が瞬いており、まるで生命そのものを感じる感覚に陥ったのだ。

ミライはこれがなんなのか知っていた。

 

 

あの少年からは自分と同じ力を秘めている。

あれは同じ力を持った者同士であるからこそ出来る現象だ。

つまり彼は自分と同じ存在である。

 

(もう一度会ってみたいな…。)

 

それを知るとミライは自分と同じ存在であるかもしれない彼に親近感が湧き、彼との再会を心の隅で期待していた。

 

それが意外にも早く叶う事まではこの時知らなかったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーはっ…はぁ…はぁ…!ーーー

 

 

真夜中の3時、1人の少女が街の中を疾走していた。

昨日から何も食べてないため横っ腹が痛く感じ、喉はもうカラカラであった。

それに先程からずっと走っているため眩暈も襲ってくる。

 

なんのためにこんな事をするのか?

それは追われている彼女自身にも分からなかった。

自分は何故だか森の中で目覚め、森の中で彷徨っていると訳のわからない男達が「お前の中にある力を寄越せ」言ってきて怖かったので彼等から逃げようとした。

 

ーーー何故自分はこんな目に遭うの?私が何か悪い事したの?自分は一体何者なの?ーーー

 

少女には自分が森の中で目覚めるまでの記憶が無かった。

気付いたら自分はいつの間にかこんなところにいたという事しか分からなかった。

 

何故自分が追われ続ければならない?

そもそも自分は何者なのか?

疑問を重ねれば重ねるほどますます分からい。

でも分かる事がある。

 

1つはとある少年と出会う事。

自分はその少年に何かを与えなければならないと何故か知っている。

 

もう1つは純粋なものだ。

それは渇望にも似たものであった。

 

 

ーーー誰か…助けて…!ーーー

 

 

 

 

その時の時刻と同時にキラはベッドの上で苦しく踠いていた。

顔から汗が滝のように流れ、苦悶の表情を浮かべながら胸を押さえていた。

 

ーーー体が……体が……!ーーー

 

熱い。熱湯の中に裸のまんまで放り出されたかのように熱い。

全身の血が沸騰し、今でも血管を突き破りそうだ。

全身の肌はまるでマグマのように熱い。

キラはその死ぬ程熱い感覚に苦しみ続け、呼吸の速度が異常な速さで繰り返される。

 

キラはその時夢を見ていた。

だけど今日はいつも見る夢とは何かが違う。

いつものように地球の近くで戦うあの夢じゃない。

今の彼の視界には色んなヴィジョンが覆っていった。

 

あの3つ異なる形をした戦士達がそれぞれ違う場面で戦っているのだ。

 

『ショワァ!!』

 

『ジュワッ!!』

 

『シェアア!!』

 

『ジェア!!』

 

『ウルトラ…ギロチン!!』

 

『ストリウム…光線!!』

 

『イヤアアアアア!!』

 

『ショワッ!!』

 

『シェア!』

 

『ジョワッチ!』

 

『行くぞ!本郷!』

 

『ああ!一文字!』

 

『『ライダーダブルキィィィィィック!!』』

 

『V3ィィ、回転フルキィィィィィック!!』

 

『ドリルアァァァァム!』

 

『真空っ、地獄車ぁぁっ!!』

 

『シチュウウウン!大…切断!』

 

『チャージ…アップ!ストロンガー!電…キィィィィィック!』

 

『セイリング、ジャンプ!!』

 

『スーパーライダァァァァ月面宙返りキィィィィィック!!』

 

『ZXキィィィィィック!!』

 

『ブラックキィィィィィック!』

 

『リボルケイン!!ハッ!!』

 

『僕にも敵が見える!そこぉ!!』

 

『それでも僕は連邦の士官なんだぁぁぁぁ!!』

 

『倍返しだぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

『遊びでやってるんじゃないんだよぉ!!』

 

『許せないんだよ!お前らぁ!』

 

『俺は貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!』

 

『なんとおおおおおおおお!!』

 

『この瞬間を待っていたんだああああ!!』

 

『ガンダムよ!天に昇れぇぇぇぇぇ!!』

 

幾つもの場面では、いつも夢に出てくる胸にダイヤモンドを付けた戦士や仮面の戦士、ロボットのような戦士が勇猛果敢に戦っていた。

 

目の前の光景が目紛しく変わっていく。

それと同時に体の中の血液が更に熱くなっていく。

 

ーーー苦しい…!溶けてしまいそうだ…!ーーー

 

キラは先程とは比べものにならない程の苦しみを感じた。

体のどこを押さえようが所詮はのれんにうでしかなく、痛みが彼の体を更に襲っていく。

 

 

「うわああああああああああああああ!!!!!」

 

 

そして、キラの視界に映る光景は目にも留まらぬ速さで過ぎ去っていった。

それは光の速さのように一瞬のようなものだ。

そこでキラの夢は終わった。

 

「うわあ!」

 

キラは夢から醒め、勢いよくベッドから身を起こした。

息を荒げながらもキラは身の回りを見渡した。

体は土砂降りの雨に打たれたかのように汗で濡れている。

だがさっきから感じた苦しみが今はもう感じない。

他にこれといった異変はない。

汗が体にべたついたため、キラは1階のバスルームに向かった。

 

 

 

 

キラは寝汗を流し、タオルで自分の体を拭いてる途中、先程の事を思い出していた。

 

 

ーーーあの夢は一体なんだったんだろう……?ーーー

 

 

明らかに今でも見た夢とは違っていた。

そしてこの体の事もだ。

帰って来る時からちょくちょく痛みを感じたが、寝ている時は死んでしまいそうなぐらい苦しかったのだ。

でも今じゃなんともなく、元気そのものである。

 

「本当になんなんだろう…。」

 

とその時だ。

 

ーーー助けて…!ーーー

 

何処からかそんな声が脳の中で響き、ドクンとキラの心臓を大きく脈打った。

 

「え…?今のは一体…?」

 

ーーー助けて…!誰か助けて…!ーーー

 

また聞こえる。女の子の声だ。

キラはすぐさま服を着替えてから家中を静かに見回った。

しかし家の何処にもいない。人影らしきものも見えない。

 

ーーー誰か助けて…!ーーー

 

でも声は聞こえる。

一体何処からなのだろう?

キラはその声に導かれるかのように外を出ていった。

 

キラは夜の街を駆け抜けていった。

今は真夜中で外は真っ暗だ。

でも何処に行けばいいのか何故だか分かる。

先程から聞こえる「助けて」という声が行き先を矢印のように示してくれているのだ。

 

気が付くと森林公園の前まで来た。

ここからだ。ここからその声が段々響いてくる。

キラは声が段々響いてくる方へ向かった。

 

「確かここだよな…。」

 

着いた先は深い森のど真ん中であった。

周りは真っ暗で殆ど何も見えず、まるで灯りのない洞窟に迷い込んだみたいだ。

 

だがこんなところにいるんだろうか?

確かにここまで声が響いていたが、人影らしきものが見当たらない。

やっぱりあれは気のせいであったのだろうか…。

 

その時だ。

 

「あぁっ…!」

 

「っ!」

 

自分の後ろにある草の茂みから少女が倒れた。

 

「ぐぅ…!」

 

「お、おい!君大丈夫かい!」

 

キラはすぐさま少女に駆け寄った。

雪のように白い肌に白く透き通った艶かしいまでに美しい顔立ちをしている。

髪は短く淡い桃色し、触れてしまえば壊れしまいそうなほど華奢な体躯であった。

キラはその少女に見惚れてしまった。

だがすぐ我に返り、彼女に揺す振りをかける。

 

「大丈夫!?しっかりして!ねえ!」

 

先程から何者かから逃げていたのであろうか、服はボロボロであり、息遣いも荒い。

少女はそんな状態でからでも声を振り絞って喋った。

 

「うぅ…あ、あなたは…?」

 

「君だね?!僕に助けてって呼びかけたのは!」

 

「ああ…そっか…。お願い助けて…奴らに…追われてる…」

 

「追われてる!?というか奴らってなに?!」

 

「速く…一緒に…逃げて…じゃないと…」

 

「って、うわああああああ!!」

 

少女が喋り続けるその時、何処のほうから爆発した。

キラと少女は吹っ飛ばされた。

 

 

「うぅ…今度は一体なんなんだ…?…っ!おい君!しっかりしろ!おい!」

 

キラは倒れている少女にすぐさま駆け寄り揺す振りをかけたが、まったく応じない。

だが脈を触るとまだ生きており、気を失っただけである。

キラは爆発した方に目を向けた。

煙が立っており、大地は複数の傷痕が出来るかのように抉られている。

 

 

何処からなのか…?

キラは辺りを見回した。

するといきなり森で大爆発が起こり、キラと少女はまたもや吹っ飛ばされた。

 

「うわああああああああああああああ!!!!」

 

キラは少女に怪我をさせないよう咄嗟に身を挺した。

木々が吹っ飛ばされ、キラ達のいる森の中は大きな穴が開いたように荒野になり、夜空がはっきりと見える。

そこからロボットのような格好をした何かが上空で滞空していた。

 

赤とカーキ色で纏められており、頭にはその姿の特徴的なものを示すV字のアンテナがあった。

木の影から何やら複数の人影が現れ、顔は全く違うがそれらも上空にいるロボットのような奴と何処か似た格好をしていた。

全員が銃を構えており、先程の爆発はこいつらが原因だとキラはなんとなく分かった。

 

「おい、小僧!その娘をこちらに寄越せ!」

 

上空にいるロボット、いやMF(モビルファイター)であるネロスガンダムはキラに向かって叫んだ。

 

「何なんですか!?あなた達は一体!」

 

「俺はとある奴からその小娘の捕獲依頼が出されている。そいつをさっさと寄越せ!」

 

「この娘を追い回しいたのはあなた達なのか!」

 

「そうだぜ〜、そいつには俺らにとって重大な情報を持っている。そいつを他の奴に取られないようにしなきゃならねぇんだよ〜。

どうだ?ここはお互いの無事と利益ためにこの娘で交渉しようぜ。

じゃねえと怪我するぞ?」

 

ネロスガンダムは威圧的にそう言うとキラは思わず身構える。

キラは今の現状に理解が追いつかなかった。

 

変な夢は見るわ、遠くから女の子の声が聞こえてくるわ、ロボットのような奴に追われるわでキラは何故こんな事になってしまったのかワケが分からなくなってくる。

 

自分は昨日まで友達や家族と平和な日常を満喫していたはずなのになんでこんな事が起きる?

やっぱりあの夢は何かの警告だったのか?

何よりも何故自分はこんな信じられないような事ばかりに出くわされる…?

 

「早く渡してくれた方が楽だぜ〜?そうすりゃお前の事は見逃してやるからよぉ?」

 

ネロスガンダムは卑しい笑みを浮かべながら粘り着くような声でキラに諭した。

キラはそれを聞いて思い悩んだ。

つまり今この娘を渡せば、自分はこの場から逃げ去りまた明日からあの平和な日常を送れるということなのだ。

キラは思ってはいけないと分かっていても、つい思ってしまった。

 

だけど、それで本当にいいだろうか?

彼女は多分さっきからずっとこいつらから逃げていた。

何かに脅えるようにこんな小さな体を苦しめながらも走り続け、自分に助けを求めていた。

今渡せばこの娘は酷い目に遭うのだろう……。

 

ーーー………それだけはなんか嫌だ!ーーー

 

「断る!お前らなんかにこの子を渡さない!」

 

キラは拒否の意思を示した。

こんなか弱い女の子を集団でしかも武装しながら追い回す奴らだ。

もっと酷い事するに違いない。

キラはそれだけはなんとしてでも止めたいと思った。

 

それをネロスガンダムは卑しい笑顔から一転し、視線だけで人を射殺せるようなほどキラを睨みつける。

 

「ほう…どうやら命知らずみてえだなぁ…!

いいぜ…!お望み通り楽にしてやる!出ろ!地底怪獣グドン!」

 

とネロスガンダムが叫んだ時、突然地面が物凄い勢いで揺れ始めた。

すると近くの地面が割れ始め、割れた先から土飛沫吹き出してくる。

そこから何かが出て来た。

土煙が晴れるとキラはそこから出て来た何かに目を疑いたくなった。

 

「なっ…なんだあれは…!?」

 

それは言い表せる事は簡単だったが、余りにも非現実的なもの過ぎて言葉に出せなかった。

 

体長は7、8mぐらいあり、全身が刺々しく、両腕が長い鞭のようになっており、赤い眼を持っている。

今までに見た事もないような生き物であった。

 

これが地底怪獣グドンである。

最近巷で起きている地面割れの事件はこのグドンが犯人だ。

UPCのロシア支部にあるブルーZECTの基地を襲ったのもこのグドンが仕業である。

もう一体のグドンはネロスガンダムの仲間が飼い慣らしているが、今はここにはいない。

 

キラは目の前の光景に絶望的になった。

まさか怪獣が出るなんて事は想像もしてなかったのだ。

 

「俺らに歯向かった事を悔いてさっさと行っちまいな!ヒーロー気取りの騎士(ナイト)君!

お前らやれえ!」

 

ネロスガンダムがそう言うとキラは咄嗟に少女をお姫様抱っこで担いで全力でその場から逃げた。

それを逃しはしないかのようにグドンは鞭を振るい、銃を持ったロボットのような兵士、いやMSジンはアサルトライフル系統である武器「76mm重突撃機銃」を構えて発砲した。

それをなんとか辛うじて躱しながらキラは全力疾走した。

 

 

こうして彼の日常は儚くも壊れていき始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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