ちょっと頭に浮かんだネタを書いたもの   作:御免寝

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シグナム憑依(?)ものです。
最初の方に会話がないのは、ぽんぽんと進めようとしていた結果です。途中で作者の技量的な限界を感じてやめましたが……
原作前はポンポンと進んでいきたいと思います。
まぁ、その日のテンションで書き進めているので更新できるかはワカリマンが……


ゴメンナサイ(泣)




プログラム体になってしまった人のおはなし
プログラム体になってしまった人のおはなし


 あ……ありのまま今、起こったことを話すぜ! 俺はトラックに轢かれてモザイク画像になったと思ったら、いつの間にかピンク色の髪をしたイケメン女性になっていた。何を言ってるか分からな(ry

 

 マジイミフ。

 死んだと思ったら変な髪色してる女性に憑依とかマジ意味が分からん。しかも周りには、こっちを見ながら歓声を上げている研究者っぽい格好をしている多くの人。そして、小学生ぐらいの赤い髪をした少女に金髪の可愛い系の女性、犬耳をつけたマッチョの褐色系男性。犬耳の男性とか誰得? 少なくとも俺得ではない。

 

 これはあれだろうか、転生とか言う奴だろうか。しかし、赤ん坊からではなく成人女性に転生とは。元々あった人格はどうなったのか。消えたのか、眠っているのか、それともそれ以外の何かなのか。とても気になるし、消えたのだとしたら罪悪感で押しつぶされそうになる。

 

 でも、しかし、それでも、俺は生きていることがどうしようもなく嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 少しシリアスしてみたが全く無駄だったようである。どういうことかと言うと、どうやら俺はプログラム体で、ついさっき作られたということだ。つまりは元の人格などなかったとうことである。

 というかプログラム体とか……俺が転生した世界はとても文明進化してしまったようです。

 植えつけられた記憶を読み込んでいくと、俺と同じようにベッドに横たわっている三人は俺と同じプログラム体のようだ。『夜天の書』という貴重な魔法を後世に残すために造られたデバイスの主を守るために俺たちは作られたらしい。

 魔法が存在する世界か……とてもドキドキします! 超使いたい。

 

 どうやら俺たち、主を守る存在『ヴォルケンリッター』は実在した人物を元にして造られたらしい。どうりで戦いの記憶とかが存在してるわけだ。

 まぁ、主を守るための存在ということは戦うことになるだろうし、この記憶はこれから役立つだろうから別に困らないのだが……

 

 そんなこんなで調整実験調整実験を繰り返して三ヶ月、ようやく実戦実験が行えるようになった。ようやく魔法解禁である。まぁ、他にもやってみたいことは山ほどあるのだが……

 暇過ぎた三ヶ月。俺は前世の記憶を必死に発掘して、新しい戦闘技術を開発していたのだ。

 記憶通りなら俺の武器は剣になるはずである。剣といえば主人公のメイン武器、wktkが止まらない。

 最速の抜刀術とか次元屈折なんたらな燕返しとか零式な突きとか切ったと同時に爆発する剣とか合体剣とかやってみたい!

 すべてを覚えるのは苦難の道だろうが、俺はなんといっても歳を取らないプログラム体、時間なら腐る程あるのだ。少しずつ覚えていけば良い。

 

 

 

 全然ダメだった。

 先頭の記憶を参考にしてみたが、どうやら俺の元となった騎士は正統派な騎士だったらしく、俺がやってみたい剣術? については全く役に立たなかった。

 抜刀術ならできるかな、とか思ったがこれも出来なかった。剣を抜くタイミングとか、素早い抜き方とかが全く分からない。というかそれ以前に剣の形が抜刀術に向いていない。

 俺のデバイスは『レヴァンティン』というのだが(デバイスとは簡単に言うと俺たち魔導師の魔法行使を補助してくれる補助アイテム?)、形が全体的にゴツイ。カートリッジという魔力を閉じ込めておき、魔法を行使する時に炸裂させるアイテムを使うためなのだろうが、これでは俺がやりたいことが出来ない。

 ということで刀を作ってもらった。自分で頼んでおいてアレだが、ほんとに作ってもらえると思わなかった(刀という概念があったこともびっくりした)。これで俺がやりたいことの半分位ができるようになった。ちなみに名前は『天羽々斬』だ。

 勿論レヴァンティンも大切に使っています。あれもあれで出来ることがあります。

 

 準備も済んだことだし、とりあえず練習あるのみかな。燕返しも暇だったから剣振ってたら出来たとか言ってたし。

 

 

 

 

 

 

 俺はヴォルケンリッターのリーダーっぽい存在らしい。烈火の将とかなんという俺得。心が踊りすぎる。

 名前の通りに魔力を炎に変換できたときは、心が踊りすぎてワルツってた。炎を操るとか、炎殺剣とか紅蓮腕とかやってみたい。夢が広がる。とりあえず訓練といこうか。

 ちなみに小学生くらいの少女はヴィータといい、ハンマー型のデバイスを使っている。質量保存をまるっきり無視しすぎている『ギガントシュラーク?』だかを使っていた時はマジびっくりした。台所に存在する黒い悪魔みたいにプチっと潰されたときは3日間ぐらいトラウマになった。

 金髪の女性はシャマルといい指輪型のデバイスを使用している。戦闘タイプではなく、補助タイプ。無理な特訓で倒れ伏す俺を助けてもらうこと既に数知らず。ホントお世話かけてます。やめる気はないけどね。

 犬耳の男性はザフィーラというらしいです。デバイスは多分ない。彼は俺たちとは少し異なり、守護獣という存在らしい。得意な魔法も名前どうり守護タイプである。あと、犬ではなく狼らしいです。狼もイヌ科じゃ? て言ったら噛まれました。この駄犬め。

 あ、俺の名前はシグナムというらしいです。女性になってしまったのには、もう慣れた。といっても心まで女性になったという事ではない。心の中で薔薇の花を咲かすくらいなら、現実世界で百合の花を咲かしてやるわ。意味が分からない? よろしい、それは君が健常な証拠だ。そのまま成長して欲しいと強く思う。意味が分かってしまった人たちも開き直ってそのまま成長してもいいんじゃない? ぐらいには思うかもしれない。

 

 

 俺たち四人の仲は非常に良好である。一緒に酒を飲むこともあるし(ヴィータはジュースである)、訓練だってする。イタズラする時だって一緒にするし、お風呂も一緒に入る(ビバ女体!)。ヴィータとは素振り二千本とか一緒にやるし、ザフィーラの背中に乗って『ものの○姫』ゴッコとかするし、シャマルには常にお世話になっている。

 健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、ともに居り、ともに信頼しあっている。

 ごめん言いすぎた。流石にここまでではない。でもかなり仲は良い方である。

 

 

 俺たちの主は研究者の一人であり、メガネを掛けたかなり貧弱そうな男性である。肩パンしただけで腕が吹き飛びそうなぐらい貧弱そうである。

 しかし、研究者としての腕はかなり優秀であるようだ。常に周囲の人間に指示を出しており、会社で言うと部長ぐらいに偉そうである。

 あぁ、名前はホア・ヤシン・スルールである。

 ちょっと……というか、かなりダサい名前だと思ったのは俺だけの秘密である。

 

 

 

 我々ヴォルケンリッターが、というより『夜天の書』が作られて一年の時が経った。

 ようやく最終調整が終了したらしい。これで我らヴォルケンリッターも最終形態というわけである。各々、オリジナルの記憶以上に体を動かせるようになり、かなり強くなった。これなら主の護衛任務もちゃんと果たせるだろう。

 しかし、ここで残念なお知らせである。

 ヴォルケンリッターのフォワードである俺とヴィータ。実を言うとヴィータの方が強いのだ。ある程度は戦えるといってもヴォルケンリッターの将、面目丸つぶれである。

 当然、理由は分かっている。俺がオリジナルの動きではなく、前世の記憶の技術を再現しようとしているからである。

 細かい練習方法や技のコツなどが載っていない前世の記憶と、実際に戦闘した経験があるオリジナルの記憶。どちらが強いかは考えるまでもない。 

 後者だ。

 当然、俺もそれは分かっているし、実際にオリジナルの記憶通りに練習したこともある。

 しかし、それでも俺は前世の技を再現したいのだ。

 理由? それは実に簡単だ。

 憧れ。その一言に尽きる。

 子供が正義のヒーローに憧れるように、女の子が魔法少女に憧れるように、少年が野球選手に憧れるように、俺は格好良い戦い方に憧れているのだ。

 当然、憧れは憧れで終わることも多々ある。正義のヒーローになることはできないし、魔法少女にもなることは出来ない(今の世界ならなれる気がする)。しかし、憧れで終わらない場合もある。野球選手に憧れて寝る間も惜しんで練習すれば野球選手になれるかもしれないし、芸能人にだってなれるかもしれない。

 

 俺だって前世の漫画の技とかを再現できるかもしれないのだ。

 

 つまり、何が言いたいのかというと、周りになって言われようと絶対に諦めないということである。

 才能なしと言われようと(By 研究者A)、無駄な努力と言われようと(By 研究者B&C)、作り直せば?と言われようと(By 主の妻)、俺は絶対に諦めないのだ。

 作り直しが現実的になったときは流石に焦ったが……

 

 実際に形にはなってきているのだ。抜刀術も牙突も、その他もろもろな技も。燕返しは今のところ分裂の兆しも見せないが……(ただ振るっていたら分裂してたってどんだけよ?)。

 恐らくこのまま修練を積み重ねれば、完成することもできるだろう。

 ならば、後は基礎を極限まで磨いていくだけである。

 技をただ使うことと実践で使うことはまるっきり異なる。技はそれ自体では成り立たないのだ。デンプシー□ールが単体では止められてしまうように、ただ使用するだけではダメなのだ。リバーブローからのガゼル○ンチ、そして止めのデンプシー□ールへと繋げるように、格闘ゲームでゲージ技までコンボを繋いでいくように、俺も技に繋げることができるような基礎を身に付けなければならない。

 しかし、俺にはオリジナルの記憶があるため、基礎もある意味で出来上がっており、その通りに戦えば間違いなく一流の戦闘を行うことができるだろう。だが、それではダメなのだ。俺が必要としているのは基礎は基礎でも、前世の記憶を有効的に使用できる基礎なのだ。

 勿論、オリジナルの記憶が全く意味がないということはない。剣の握り加減、素早い踏み込みの仕方、相手の動きを先読みする観察眼など利用できることはとても多いのだ。

 俺はこれを元にして俺自身の基礎を組み立てる。そうすれば俺は最低でもヴィータに遅れを取らない存在になれるだろう。しかし、そうなるにはまだまだ時間が足りない。ただの練習では基礎は出来上がらない。長く多い実戦も必要なのだ。

 

 そう、言うなれば俺は大器晩成型なのだ。

 

 それでは再び修練を始めるとするかな。

 

 

 

 

 

 

 またまた一年の時が経った。

 本格的な蒐集作業が始まるようだ。

 初めに絶滅寸前の次元世界を回り、消えかかっている魔法を集めるらしい。俺もこの一年でヴィータには勝てないまでも、かなりの力をつけることが出来たので、きっと役に立つことができるだろう。というか、多分今回で役に立たなかったら、俺は消去されると思う。まぁ、守護できない守護騎士なんて、ジャンプできないマ○オ並みに役に立たないから、消されても文句は言えないのだが……

 

 無事次元世界を渡れたようだ。

 全滅寸前なだけあり、周囲は砂漠と化していた。暑い。俺は魔力を炎に変換することが出来るが、それと気温は全く関係しないようです。少しぐらい涼しくなればいいのに。

 

 ん? 地面が揺れている? 嫌な予感がビシバシするぜ。とりあえず飛行魔法で浮かび、主の護衛のために四方を囲む。

 それと同時に俺たちがいたところに蟻地獄のようなものが現れた。しかも蟻地獄の真ん中には大きな大きなお口。食べる気満々でしたね。飛んどいてホントによかった。初任務で主を亡くすとか洒落にならない。

 とりあえず、ぽかんと何かを食べたさそうに空いているお口に爆炎をプレゼントしてあげることにする。デバイス改造組に無理を言って改造させた、もはや原型を保っていないレヴァンティンを左手に構える。ちなみに左手に構えたのに特に理由はない。俺は両利きだから、右手でも左手でも扱えるし。

 レヴァンティンを参の型である弓に変形させ、ヴィータの誘導弾と共に口の中にぶち込んでいく。

 ふむ。カートリッジがもったいないから、後でカートリッジを使用しない遠距離攻撃を開発する必要があるようだ。魔力弾での攻撃は俺にもできるが、得意じゃない上に威力も低いし。

 爆発により巻き起こった煙が収まると、そこには顔の部分が吹き飛んだ巨大なミミズが存在していた。あまりの大きさに少しビビる。というか、なんで全身が土の中から出てるんだろ? 逃げようとしたとか? まぁ、どうでもいいか。

 

 無事撃退に成功した俺たちは主の指示に従い、人がいる場所を探すことにした。さっさと魔法を蒐集してこんな世界からは出ていきたいそうだ。さすがインドア派である。驚きな体力だ、別の意味で。

 しかし、いくら探しても人影一つ見つからない。既に三時間ぐらい時間が過ぎている。主が滝のような汗を流しており、顔色が青を通り越して土色になっている。体力も限界を迎えているようだ。開始三十分でザフィーラに乗り始めたくせに……これからは俺たちと一緒に少しぐらい鍛えるべきだろうか?

 

 ようやく集落を見つけた。探し始めて四時間。ちなみに主は一足先に元の次元世界に戻っている。あれ以上行動させるのは危険だったのだ。

 主に連絡すると、何でも今日は疲れたから明日行くとのことだったので、集落の座標を記憶しておき俺たちも元の次元世界に戻った。

 

 おっと、今日の鍛錬を開始しなければ。最近ようやく燕返しの出来る気がしてきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 訪れた集落、そこは次元世界と同じで、まさに終わりを迎えようとしていた。倒壊した建物に枯れ果てた井戸、老人を中心とした少人数の住人。全員が痩せこけ、肌には水分など全く感じられす、触れただけで崩れ落ちそうである。

 こんなところに魔法技術があるとは思えないのだが……

 とりあえず住民に話しかけてみるとする。しかし、それが行われることはなかった。何故なら、住人が襲いかかってきたからだ。魔力で強化でもしているのか、その今にも倒れそうな見た目に反して、動きは力強く素早い。前もって身構えていなかったら少し危なかったかもしれない。暑さのあまりにヒーヒー言ってる主を四人で守りながら、冷静に一人ずつバインドで捕縛していく。無駄に危害を加えないようにするためである。後々の交渉でツッコまれでもしたら困るし。

 住人はバインドを見たことがないのか、大した対処もできずにあっという間に捕まっていく。大漁である。人間、獲ったどーーー!

 とりあえず、目に見える全員を捕まえて、これからどうするか考えていると集落の真ん中に建っている建物から正に長老といった感じに人物が出てきた。地面に届きそうなぐらい長いヒゲに目が見えないほどに深い眉毛、ボロいローブに杖、ゲームに出てきそうな人物だ。

 バインドで捕らわれて地面に転がっている人たちが『長老』とか『なんで出てきたんですか』とか必死に叫んでいる。どうやら本当に長老だったようだ。というかマジ元気だなこの人たち。

 長老はどうやら俺たちと話し合いがしたいようだ。ヴィータが『襲いかかってきて今更』とかキレていたが、深く丁寧に謝罪を入れてくる長老を見てバツが悪そうに目を逸らしている。そして長老が誠意じゃと言って杖の先を地面に軽く叩きつけると周囲に風景に驚愕的な変化が訪れた。倒壊していた建物は頑丈そうに建て直っており、井戸も枯れ果て砂で埋もれていたのが嘘のように美しい水を生み出していた。小規模だが畑すら存在している。しかし、何よりも驚きだったのが住人だった。ミイラのようだった体は潤いを含み、叩いただけで粉砕しそうだった四肢も筋肉隆々である。

 これは一体?

 

 主と長老の話を聞いたところ、先ほどの光景は、結界を貼りその結界内にいる人物に幻覚を見せる魔法を解いたからだそうだ。集落の中心から、集落を目視できる位置当たりまで結界を張り集落を先ほどのボロボロ状態に見せていたそうだ。何故完全に無人状態に見せないのかというと、そうすると野生動物が襲ってこなくなるからだそうだ。この集落の主な食料は畑で作った野菜類と、昨日俺とヴィータでボコったあの巨大なミミズみたいな原生生物らしい。だから完全に集落を隠すわけにはいかないんだそうだ。ちなみに俺たちに襲いかかってきたのは、得体の知れない俺たちにこの集落の場所を知られたくなかったらしい。まあ、気にしてないからいいけどね。無傷だったし。

 

 そして早速本題。

 主が自分たちのやっていることを話し、この幻術結界(命名・主)の蒐集をさせて欲しいと頼みました。

 どうやら条件付きで許可されたようです。その条件は『巨大ミミズの巣の破壊』

 最近、巨大ミミズが増え続けているらしく、近くに巣でも作られたのではないかと話があったらしい。そして、その推測は嬉しくもないが見事にビンゴ。この集落から北西の方向、結界のぎりぎり外の位置に巨大ミミズの巣があったらしい。しかし、発見したはいいが、はっきり言って出来ることがほとんど無いらしい。ミミズ一匹仕留めるのに住人全員で戦う必要があるらしく、巣なんて作られたら集落を移動するしか方法はないのだ。実際に集落では集落ぐるみで引越しの準備を進めており、数日後には集落を移動する予定だったらしい。

 しかし、そんな時に現れたのが俺たち夜天組。出来るならば畑や井戸が存在するこの場所を離れたくないらしく、見たこともない技術で住人全員を容易く捕縛した俺たちの力を借りたいらしい。主は勿論快諾。

 何もしないくせに……と少しキレかけた俺は悪くないと思う。

 

 主を元の世界に転移し、住人の一人に案内してもらうことになった。場所さえ教えてもらえば自分達で行けると言ったのだが、場所が分かっていても巣の発見が困難らしい。そしてそれは本当だった。『そこだ』と住人が指差す場所を見てもただの砂漠の砂が積もった場所にしか見えない。

 『おいおい、本当にいるのかよ?』『幻覚結界を自分にかけちまったんじゃね?』的なアイコンタクトがヴォルケンリッターの中で交わされるが、誰も口には出さない。探知魔法で調べてもいいが、それはなんとなく負けた気分になる。

 そしてそんな俺たちに住人も気づいたのか、キレ気味に『そこだそこ!』と怒鳴ってくる。何度見てもただの砂の丘にしか見えないが、これ以上戸惑っても住人を怒らせるだけだろう。とりあえず最大出力でぶち込んでみることにした。俺のレヴァンティン・参之型とヴィータのでっかいハンマーである。

 すると出るわ出るわ。台所の黒い悪魔かと思うほどの数の巨大ミミズが地面から出現した。砂の中から押し出されるようにして出てきた数匹のミミズが、俺とヴィータの攻撃でやられた分だろう。とりあえず、住人の防御をザフィーラに任せ、シャマルの補助の元、俺とヴィータで尽くを殲滅していく。

 ミミズは見た目の割りに全く強くなく、どんどん死体を増やしていく……が、それ以上の速度で増えていくミミズ。住人曰く『コロニーのボス同士がくっついたのだろう』だそうだ。新婚さんです、爆発させてやんぜ、物理的に。

 途中で気付いたが、空は飛べないみたいなので(飛べないミミズは、ただのミミズさ)、ヴィータと一緒に、昨日考えたカートリッジを使わない遠距離攻撃『魔炎剣』で炎の斬撃を飛ばし空爆していく。

 そんな時間が十分ほど続いただろうか、ようやくミミズの増援も無くなり、残りの数も両の指で数えられるほどになった。

 そのチャンスを逃すものかと飛び込んでいった俺とヴィータは次の瞬間、さらに巨大なミミズ二匹に食われた……が、一秒後には体内から突き破っていた。大きさ的にボスだったのだろうが、その程度で俺を捕食しようとは笑止。死んでやり直すんだな。運が良ければ俺みたいに転生できるから。

 

 

 そして無事巣を壊滅し幻術結界を蒐集した俺たちだったが、ここで問題が発生していた。

 

 ミミズの体液、マジ臭ぇ。

 おい、逃げんなお前ら、泣くぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 さらに二十年の時間が経過した。

 飛び過ぎだって? 特に述べることがないのさ。鍛錬は毎回のことだし、蒐集活動も順調だし。強いて言うなら燕返しが少し成功したことかな。剣が二本に分裂しました。本家まであと一本である。まじ頑張る。他の漫画技もかなり完成に近づいている。抜刀術しかり、牙突しかり。最近は相手を斬りつけると同時にカートリッジを炸裂させて相手を吹き飛ばすレヴァンティン・四の型『ガンブレイド』と、新しいデバイス『合体剣』の練習に励んでいる。合体剣とは大小様々な剣を組み合わせて一つの剣を構成したものである。状況に応じて様々な使い方ができるのが強みである…………と言いたい所だが、組み合わせに使用されている剣が全部直剣なので、様々な使い方など出来るはずがない。出来ても二刀流が関の山だろう。しかも、この二刀流もガンブレイドとレヴァンティンがあるので、はっきり言って役立たずである。

 ならばなぜ作ったのか? 愚問である。

 

 カッコイイからだ。今までだってこの理由で頑張ってきたのだ。

 

 超級な武神な剣のバージョンアップな攻撃をしてみたい。今のところ全く出来ないが…………剣から剣への高速移動どころか、それ以前に相手の周囲に剣を配置することができない。

 まぁ、暇があれば練習しよう。

 

 とりあえず本題に入る。

 この二十年間、俺たち夜天組は百を超える魔法を収集してきた。おかげで我らが主はチート状態である。攻撃系、防御系、補助系、全てに関してずば抜けている。あ、ちなみに主は現在二代目である。名前はマリン・ヤシン・スルール。前主の娘であり、現在十五歳だ。前主とは違い、かなりの運動系、というか脳筋系で、その可愛らしい見た目に反してかなりの暴走少女である。

 そして、やはり問題が発生してしまった。頭が悪すぎて夜天の書を使用できないのだ。正確に言うと、蒐集した魔法が多すぎて頭に入りきらないのだ。現在、主が覚えている魔法は身体強化と少しの攻撃魔法だけである。まさに脳筋である。

 そして現在、この問題を解決すべく、ある計画が進んでいる。

 その計画とは、夜天の書に主をサポートする機能を付けることである。蒐集した魔法を整理し、主と思考をリンクすることによって主が必要としている魔法を瞬時に書から引き出すのだ。

 その名も【リンクシステム】。ネーミングがアレだが気にしないで欲しい。そして本日は、その機能の初起動日だ。

 

 実験は無事成功。魔法が使いやすくなった主がはしゃぎまくっている。研究所が吹き飛びそうだから止めてほしい。あ、母親に殴られた。

 調整に数日かかるようだが、これで主も満足が行く戦いが出来るようになるだろう。いや、俺たちの仕事が無くなるから、大人しくしといて欲しいんだけどね。

 

 ん? 何ですか主? 模擬戦? 分かりました。今回も負けませんよ。

 さぁ、どこからでもかかってこい!!

 

 

 あ、模擬戦といえば最近ようやくヴィータに勝てるようになりました。烈火の将、汚名返上中です。

 

 

 

 

 

 

 蒐集中なう。

 本日はとある次元世界で、剣帝と呼ばれる人物の魔法を蒐集しに来ました。何でも、魔力の硬質化らしいものができるらしい。

 というわけで訓練場で黙々と剣を振り続けている剣帝にシャマルが蒐集云々の話を行う。

 何故、主ではないのか?

 理由は実に単純かつ簡単。主が馬鹿だからだ。

 生まれた時から夜天の書の主となるべく、夜天の書に関してある意味で英才教育されてきているというのに、魔法を集めるということしか理解していないのだ。流石は脳筋である、脳味噌まで筋肉で出来ているに違いない。

 

 どうやら話は終わったようだ。蒐集は許可。剣帝も自分の力が自分限りで消えてしまうことを虚しく思っていたらしい。

 しかし、少し条件があるそうだ。俺と戦いたいらしい。何でも同じ剣士として一戦願いたいとか。ふむ、俺も剣帝と呼ばれる者がどのくらいの力を持ち、自分の力がどのくらい通用するのか試してみたい。

 いいだろう、戦いだ。

 あ、主、そんなに拗ねないでください……

 

 『あんな奴に負けんじゃねぇぞ』と言うヴィータに軽く手を振りながら訓練場に進み出る。誰かが伝えでもしたのか、訓練場は兵士でいっぱいである。むさいぞ貴様ら。

 剣帝の武器は片刃の剣だった。俺の刀を凝視している。この世界には刀は存在しないのだろう。

 剣帝の構えはまさに自然体。前世的に言うのなら無形の位だろうか? 構えもせずに剣を持った手さえもぶらんと脇に下ろしている。しかし、隙は皆無。どのように攻めても間違いなく防がれ、若しくは返されるだろう。

 対する俺は牙突の構え。どのように構えても返されるなら、反応できないほどの速度で最短距離を攻撃するのみ。抜刀術でもいいのだが、剣帝との距離が少し離れすぎている。

 

 訓練場には二人が放つ雰囲気によって緊迫した空気が漂っている。

 互いが構えてどれほどの時間が経っただろうか。試合が開始されても二人は一向に動かない。隙を探しているというのもあるが、それ以上にキッカケがないのだ。実力が伯仲している者同士の戦いはこういった戦いになることが多い。戦う前から自分の中では戦いが始まっているのだ。こうしたらこう返してくるだろう。だからこうしよう。といった感じでイメージし続けているのだ。

 故に戦況は硬直状態になりやすい。これを解除するには何らかのきっかけが必要なのだ。

 そしてそのきっかけは簡単に唐突に現れた。

 

「―――くしゅんっ」

 

 可愛らしいくしゃみだった。男がしたのかな、と考えると鳥肌が立つほど可愛らしいくしゃみだった。

 しかし、そのくしゃみは二人の戦いのきっかけとなった。

 くしゃみが響くや否や、シグナムは高速で近づき神速の突きを放つ。剣帝はその速度に内心驚愕するが、すぐに冷静になり突き出される刀の先に剣を当て、刀を弾こうとする。しかし、シグナムは当然、弾かれそうになった場合のことも考えていた。

 突きを強引に方向転換。直線から薙払いへ。

 さすがの剣帝もこれには対応することが出来ずに、薙ぎ払いを防御した剣と一緒に後方へと吹き飛んでいく。

 

(自ら後ろに飛んだか……)

 

 そう、剣帝は吹き飛んでいった。刀で弾かれたにしてはおかしいほどの速度で……

 あわよくばシグナムは剣帝の武器を折ろうと考えていた。最低でも防御した衝撃で手を痺れさせようとした。しかし、剣帝は自分から後ろへ飛び、衝撃を逃がしたのだ。その証拠に、剣帝は何事もなかったかのように着地し、再び無形を構えている。シグナムも仕切り直しとでも言うように、再び牙突を構える。再び沈黙が訓練場に漂うが、今度の対峙に開戦のキッカケは必要無かった。

 シグナムが再び突撃する。先刻と違わぬ驚異の速度。しかし、シグナムはミスを犯していた。シグナムが今現在相手にしている相手は、幾度と戦場へ赴き、その度に自国へと勝利をもたらした英雄なのだ。剣の道では過去現在未来において彼と同じ領域へ立ち入ることは出来る人物は現れないだろうとも言われている剣帝なのだ。

 そのような相手に短時間のうちに同じ戦法で攻撃するなど愚の骨頂である。突撃していくシグナムの視界に入ったのは、今までの構えを捨てて前傾姿勢を取る剣帝の姿だった。

 

 剣帝は冷静に考える。

 先ほどの高速の突き。防御も流しも出来ない、方向転換した薙ぎ払いによって弾かれるだけである。先程は上手く凌ぐことができたが毎回出来るとは限らない。故に早急に攻略しなければならない。

 

(防御も受け流しもできない…………ならば……)

 

 剣帝はこの試合で初めて構えを取った。今までの無形を捨てて前傾姿勢へ。周囲の兵が戸惑いの声を上げるが、それも当然だ。何故なら、現在剣帝が取っている構えなど、自国に存在していないのだから。習ったことはおろか見たことも聞いたこともない。全くの未知の構えだったのだ。

 しかし、それも当然。この構えは剣帝が戦場で作り上げたものなのだから。剣帝は普段こそ無形を用いているが、戦場ではそれこそ自由に構えを変える。そもそも戦場では、訓練していることがそのまま発揮できる場面など殆ど無い。それは場所の問題だったり、気候の問題だったりと様々な理由がある。故にその場その場に対応することが必要になるのだ。そして剣帝は今までに幾百もの戦場で戦っている。当然、上手くいかないことが多々あった。しかし、剣帝はその全てを乗り越えてきたのだ。情報を収集し状況を読み、時には長年鍛えてきた構えさえも変え、その変化していく戦場に自分を適応させてきたのだ。

 

 そして現在とっている前傾姿勢の構え。前方へ突進しますと全力でアピールしている構えだ。

 然り、剣帝は高速でこちらに向かってきているシグナムに対して、自分からも向かっていこうとしているのだ。しかも、ただ向かっていくのではなく、全力で全速で、である。

 シグナムはこちらの動きを見て、それから行動を開始している。こちらが防ごうとしている、避けようとしている方向を見て、それから薙ぎ払いに転換している。しかし、そういった戦法上、そうしてもワンテンポ薙ぎ払いへの転換が遅れてしまう。まぁ、それでも対応が間に合っているシグナムの反射神経には驚きなのだが。

 ならば、こちらからも向かって行ったらどうか?

 間違いなく薙ぎ払いへの変更は不可能だろう。払いに変更させる暇を与えずに切り伏せる、これが剣帝の考えた戦略だった。しかし、この戦法にはリスクが存在する。

 それは言わずもがな、あの速度で突き出される刀に向かって、自分から突っ込んでいく危険性だ。

 剣帝はあの突きをギリギリで避けなければならない。少しでも余裕を持って躱せば、シグナムに薙ぎ払いへ変更する猶予を与えることになってしまうからだ。

 

(―――今だっ!!)

 

 剣帝はあらん限りの力を足に込め、爆発的な加速力でシグナムに向け疾走した。

 

 

 

 

 

 

 交差は一瞬だった。互いの横を走り抜けた二人はすぐに後ろを振り向き互いの姿を確認する。。

 剣帝の頬には一筋の切り傷が走り、少量の血が流れている。対するシグナムは左脇腹から血を流している。どちらの傷が重症か、それはもはや考えるまでもない。シグナムだ。

 つまり、剣帝はやってのけたのだ。その目のも止まらぬ程の速度の突きからカウンターを取るという、もはや暴挙とも言える行動を。

 しかし、剣帝の顔は悔しげに歪んでいる。

 

「……浅かったか」

 

 確かに剣帝はシグナムの一撃を皮一枚で見切りカウンターに成功した。しかし、シグナムは健在だ。振り返る時の速度、現在の構えから判断すると、恐らく大したダメージも与えられていないだろう。しかし、剣帝はダメージを与えられなかったことを悔しがっているのではない。

 自分の命を刈り取るであろう一撃に、少なからず萎縮してしまった自分の不甲斐なさを悔やんでいるのだ。そのせいで剣を振るタイミングがズレてしまった。

 

「……未熟……」

 

 剣帝はこの世界では異常とも言えるほどの力を持っている。故に彼は苦戦といったものを経験したことが非常に少ない。戦い始めの頃は相手の出方や戦場の状況の変化などによって苦戦もしたが、経験を重ね、臨機応変に対応できるようになることでそれも無くなってしまった。つまり彼は生命の危機に陥ったこと、若しくは生命を担保とした行動を起こしたことが皆無とも言えるのだ。

 故にシグナムの一撃に萎縮した。硬直した。そんな自分が許せないのだ。

 

(……しかし)

 

 これで自分は命を賭した行動というものを経験した。自分は今現在も成長しているのだ。

 

「……だから」

 

 

 

 対するシグナムも自分の浅はかさに内心で舌打ちをしていた。

 先程の交差の際に放たれた剣帝の一撃。身を捻ることによって軽傷で済ますことが出来たが、剣帝の振るった剣のタイミングが完璧だったなら、間違いなく重症を負っていただろう。運が悪ければ死んでいたかもしれない。

 

(……調子乗った……)

 

 実を言うとシグナムが腕の良い剣士と一対一で戦ったのはこれが初めてなのだ。

 そして、剣帝ともで言われている相手に、漫画が元とは言え長い年月、研鑽を積み上げてきた自分の技が通用しているのだ。

 調子に乗らないはずがない。

 そして、その上がりまくったテンションは、その熟練の相手に同じ技を連続で出させるという愚行をシグナムに強要した。

 その結果がコレである。頬が裂けているだけの剣帝に、軽傷とはいえ、脇腹に大きな傷を負ったシグナム。情けないにも程がある。

 

(……だが)

 

 確かに今回は失敗した。しかし自分は生きている。ならば次に活かせば良い、何事も経験なのだ。

 

「……だから」

 

 

 

 

 

 

「「……だから」」

 

 二人の言葉が重なる。

 二人とも予想外だったようで、思わず相手を見やる。しかし、すぐに納得したかのように頷き口元に笑みを浮かべた。

 

 瞬間、二人の気配が一変した。

 

 否、気配だけではない。眼に見える範囲でも変化が起こっている。

 シグナムの全身から炎を吹き上げる。その炎は全てを燃やし尽くすかのように猛っている。まるで自分の熱い想いを表しているようだ、とシグナムは思う。

 剣帝の周囲に大量の白い剣が出現し、切っ先をシグナムに向けたまま空中で待機する。その剣は今までにない輝きを放っている。まるで、この戦いに心を輝かせている自分みたいだ、と剣帝は思う。

 

 やはり思っていることは同じだったか……

 

 二人は同時にそう思った。

 先刻の二度に渡る激突。どちらも魔力を毛ほども使用していない。そんなものは不要だと、二人は己の武器のみで戦っていた。

 ならば何故、今頃、魔力を使用しているのか? 簡単に言うなら我慢できなかったからである。

 確かに先程の激突は二人共全力だった。あらん限りの技術、経験を用いて戦った。しかし、全開ではなかったのだ。そして、そんな状態に我慢ができなくなった。自分の持ち得る力の全てを持って対峙する相手と戦いたくなったのだ。剣技だけではない、自分の全てで。

 

 場が少しずつ落ち着きを取り戻していく。荒れ狂っていた炎は力を貯めるかのように小さくなり、シグナムの納刀されている刀にまとわりついている。剣帝の剣は静かにシグナムに対して剣先を向けている。

 三度目の静寂。これを破ったのは今まで自分からは攻めたことがなかった剣帝だった。

 シグナムに向かって放たれる多量の剣。放たれる度に出現するそれは余さず全てシグナムに向けられている。シグナムは向かってくる剣を細かな体捌きで避けていく。一つずつ弾いていては、あっという間に物量で飲み込まれるだろう。そして、隙を見つけては炎を纏った斬撃を飛ばしていく。

 飛んでくる炎を纏った斬撃を避けながら剣帝は歓喜する。先程のシグナムに向けて放った剣軍による物量制圧。今まで、人はもちろん、軍であろうとも、この攻撃を耐えられた者はいなかったのだ。しかし、目の前の女性は耐えるどころか反撃すらも容易くやってみせる。剣帝は剣を飛ばしながら、魔力で全身を強化し目の前の炎の騎士に向かっていく。

 シグナムはすぐに剣帝を迎え撃つが、悪寒を感じて瞬時にその場を離脱する。その瞬間に見えたのは先程まで自分がいた場所に突き刺さる大量の剣軍だった。

 

(厄介だな)

 

 これではまともに打ち合うことすら出来ない。打ち合うために足を止めた瞬間、剣軍により串刺しにされるだろう。

 剣帝はこちらの気持ちなど知らんと、剣を飛ばし、突撃を繰り返している。単純だが、それ故に強力。反撃する暇がない。防戦一方である。

 

(……ん?)

 

 しかし、シグナムはあることに気付いた。

 

(……やはりそうか)

 

 剣が飛んでこない時間が存在している。。剣帝がこちらに向かってくる瞬間、その一瞬だけ剣軍が止まっている。

 同時操作ができないのだろうか? と思うが、ここで焦ってはいけない。罠である可能性もあるのだ。思い込みは恐ろしい、明らかに違うものでも、正解にしか見えなくなるのだから。先入観を捨て冷静に判断しなければならない。

 

「レヴァンティン!!」

『ja』

 

 刀を納刀しレヴァンティンを展開する。剣帝は武器を変更したシグナムを見て遠距離攻撃のみに切り替えたが、剣軍が簡単に避けられている今、このまま続けていてもただ無駄に魔力を消費するだけだろう。剣帝もそのことに気付いているのか、しばらく投剣を続けていたが、意を決して両手の剣で斬りかかってくる。

 

(投剣がやはり止まっている)

 

 それを見てシグナムは、剣帝が剣軍と行動の同時作業を行えないと判断した。

 

「レヴァンティン・四之型!」

『ja!』

 

 斬りかかってくる剣帝を見てシグナムはレヴァンティンをガンブレイドに変更させる。

 

 レヴァンティン・四之型『ガンブレイド』

 一回振る毎にカートリッジを消費する大食らいのロマン武器である。カートリッジに込められている魔力を用いて攻撃を行うというのがカートリッジの本来の使い方なのだが、ガンブレイドにおいて、それは異なる。ガンブレイドにとってカートリッジとは『ただの爆薬』である。

 自分の本来の魔力量では魔力が足りない、さらに威力を高めたいといった場面でカートリッジは消費される。つまり、いつも使っている魔法式に、そのままカートリッジによって増幅した魔力を送り込み威力を増しているのだ。この部分がガンブレイドとは異なる。

 ガンブレイドは、魔法式など関係なしに直接カートリッジを爆裂させる。そして、その魔力の破裂とでもいうべきもので相手を攻撃するのだ。ただの爆発と侮るべからず。本来の使い方だと、カートリッジロードには微妙に時間が掛かり、その上、カートリッジの使用が相手にかなり分かり易いといった弱点がある。しかしその点、炸裂させるだけのガンブレイドに、そんな溜めの時間は必要ないし、使用状況も相手に分かりにくい。というより、確実に相手には分からない。剣が当たった瞬間にカートリッジを炸裂させるのだ、分かるわけがない。その上、不用意にガンブレイドを自分の武器で受け止めると、相手の武器を破壊する効果までもついている。まぁ、これは当たり前なのだが……接触状態の武器が至近距離でカートリッジの暴発を喰らって無傷なはずがない。

 

 そして、シグナムの視界に映るのは、ズバリ予想通り、ガンブレイドと切り結んだ途端に粉々になった剣帝の剣。剣帝は信じられないものを見たかのように目を見開き動きを止めている。絶好の機会だ。

 

 ―――そして次の瞬間、シグナムは後方に飛びずさっていた。

 

 目の前には武器が砕け散り丸腰の剣帝、すぐさま返しで斬りつければ勝負は決まっていただろう。しかし、シグナムはそうはしなかった。

 情けをかけたわけではない。今までの戦闘経験が、シグナムの直勘が、本能が『避けろ』とシグナムに告げていたのだ。故にシグナムは一瞬の迷いもなく後退した。

 そして、その行動は正に正解だった。

 視線を戻すと目に映るのは、先程までシグナムがいた地面に突き刺さっている、先程ガンブレイドによって破壊された剣の破片。

 

「……真逆、この剣が折られるどころか破壊されるとは…………流石は将といったところか……」

「…………今まで貴様が使っていた剣は……」

「ああ、貴殿の思っている通り、先程まで私が使っていた剣は私の力によって生み出したものだ」

 

 剣帝が常に持ち歩き先程までシグナムと切り結んでいた剣、それは実剣ではなく剣帝の力により生み出されたものだった。

 だから砕け散った欠片を操作することができたのだ。

 

「長い年月をかけ、少しずつ力を凝縮し生み出した私の最高傑作だ」

「それは悪いことをしたな」

「否。貴殿が気にする必要は無い。私が未熟だったということだ」

 

 そう言いながら剣帝は背後に剣を出現させる。

 否、背後だけではない。今までとは比にならない量の剣が周囲に現れ宙に浮かんでいる。

 

「……故に、ここからは本気で行かせてもらう」

 

 剣はとどまるところを知らないかのように増え続ける。周りには既に数える気にもならない程の剣が存在している。本気という言葉に嘘はないようだ。

 しかし、それを見てもシグナムに動揺は見られない。逆に訝しんでいるかのように、眉を顰めながら剣帝を見つめる。

 

(剣を増やすだけじゃ、どうにもならないって気付かないのか?)

 

 そんな思いが顔に出てしまっていたのか、剣帝は苦笑を浮かべながら口を開く。

 

「そんな心配そうな目で見るな。言ったはずだ、『本気で行く』と……」

「……」

 

 それを聞き、シグナムは何があっても対処できるよう無言のまま構える。

 

「……散れ」

 

 流石にこれほどの剣軍を制御するのは苦しいのか、剣帝はその端正な表情を歪めながらも厳かに告げる。

 

「『桜花閃々』」

 

 ―――瞬間、全ての剣が砕け散った。

 

(……これは!?)

 

 シグナムの視界に映るものは、無数の剣が砕け散り、その欠片が桜吹雪のように宙に浮かぶ景色。もはや視界は白一色、目が痛くなりそうだ。

 

「……これを人に対して使うのは貴殿が初めてだ。そう簡単にやられてくれるなよ?」

 

 剣帝は調子に乗っているようだ。苦悶に満ちた表情をしながらも、ニヤリとこちらを見やる。よほどこの技に自信があるのだろう。

 

「では、いざ参る!」

 

 剣帝が、まるで指揮者のように右手を上げる。すると周囲の桜吹雪が、それと連動するかのように動き出す。

 これは流石にシグナムも焦る。

 

(どこのサウザンド桜だよ!?)

 

 つい内心でツッコミをしてしまうぐらい焦っている。

 それも当然だろう。前方は既に白一色、あの桜吹雪全てが全て一斉に襲いかかってきたらひとたまりもない。

 

「行け」

 

 そして、ついにその恐るべき自体になってしまった。

 剣帝の手を振り下ろすと同時に、シグナムを包囲するかのように襲いかかってくる桜吹雪。まるでそれは白い津波のようだ。むしろ逃げ道がない分、津波よりタチが悪いだろう。

 

「レヴァンティン・弐之型!」

 

 咄嗟にシグナムは最も密度が薄い上空へ飛ぶ。その際に連結刃を体に纏い、その上から炎の膜、プロテクションを重ねて防御するが、刃の隙から入り込んだ刃や焼却しきれなかった刃がシグナムの体を傷つけていく。それでもシグナムは歯を食いしばり白い津波を抜ける。

 津波を抜けたシグナムは、バリアジャケットは破け体中に傷が付いているが、それでもよくやったと言えるだろう。あの刃地獄から生きて抜け出したのだ。並みの者だったら、今頃、切り刻まれ血の海に沈んでいたこと間違いなしだ。

 

「―――チッ!?」

 

 しかし、死の包囲を抜けても、剣帝はシグナムに休む時間など与えない。直ぐ様、シグナムを切り刻もうと刃を操る。

 シグナムはレヴァンティン・弐之型と天羽々斬を二刀流で操りながら、刃を切り落とし避け続ける。しかし、このままではジリ貧である。避け続けているといっても少しずつ傷ついてるし、このまま炎を纏っていては早々に魔力が尽きてしまう。

 

(……ならば……狙うは本体……)

 

 シグナムは多少の怪我を覚悟して、剣帝への突貫を行うことにする。

 剣帝は、戦いが再開されてから一歩もその場を動いていない。恐らく今までと同じで、同時に操ることができないからだろう。そこに狙うべき隙がある。

 

「レヴァンティン・参之型!」

『jawohl』

 

天羽々斬を鞘に収め、レヴァンティンを弓の形に変形する。炎しか身を守るものがなくなったシグナムに桜吹雪が襲いかかるが、シグナムは一切構わず射抜くべき対象に向かって弓を引く。放たれた矢は、全てを燃やし尽くす程の炎を纏い、一直線に剣帝に向かっていく。

 

 ―――勝った

 

 シグナムは確信する。

 剣帝は刃の制御に集中しており、動くことすらできない。つまり、空気を裂くように凄まじい速さで向かっていく矢を避けることができないはずだ。

 

 しかし、その自信は次の瞬間に木っ端微塵に砕かれた。

 矢の行く手を遮るように密集していく剣の欠片。作られていくのは、幾重にも重ねられた白い盾。

 矢は最初のうちは、大した苦もなく主を守るように存在する盾を貫いていくが、やはりというか次第にその威力を落としていく。

 対する盾は、貫かれ完全に破壊されようとも、元々がバラバラな刃の破片。焼失した分を再び剣帝により補給され、何度でも盾として再製されていく。

 

「―――チッ!!」

 

 それを認識した途端、シグナムは高速で剣帝に向かい疾走していく。

 

(このままでは、間違いなく剣帝にたどり着く前に止められてしまう)

 

 ならば、剣帝が盾に気を取られているうちに、直接撃墜するしかない。

 幸い盾を作るために破片を集めたため、周囲には少数の欠片しか存在していない。シグナムは全身を最大量の魔力で強化し向かっていくが、それは余りにも遅すぎる行動だった。

 ついに止められてしまった弓矢。そして、その途端再びシグナムを襲い出す花びらの様に宙を舞う破片。

 

「…………賭けは俺の負けか……」

 

 負傷を覚悟して放った本体狙いの一撃。

 結果はシグナムの惨敗。

 全身を血で化粧するシグナムと無傷の剣帝。多大な怪我を負いながらも放ったその一撃は、結局相手に何の負傷を負わせることもなく止められてしまった。

 

(つーか、攻防一体とかチートすぎる……)

 

 ―――桜花閃々―――

 

 剣帝が放ったこの技は、剣を操る時に無防備になってしまう自分の身をなんとかしようとして生み出されたものである。刃が細かくなってしまいため、攻撃力が低下する、制御する負担が増加するといったデメリットが出来たしまうが、そこに目を瞑れば、まさに攻撃と防御を兼ね揃えた完璧な技である。

 そも、攻撃力が落ちたといっても、物量に物を言わせて全身を刻んでしまえば、または首筋や眼球といった急所に当ててしまえばこの問題は解決できる。

 

(……考えが甘かったか…………)

 

 剣帝は生まれ持った才能を決して驕らず自らを鍛え続けてきた。それは英雄とまで呼ばれる様になった今現在も変わらない。時には非常時のためと己の武器である剣を持たずに戦場に赴き、時には精神鍛錬のためと絶食すら行った。

 そんな相手が自らの弱点をそのままにしておくわけがない。しかもその弱点が、攻撃中自分の身が無防備になるという致命的なものなら、なおさらである。何かしらの対策をしていると考えるべきだったのだ。

 

(でも、まだだ。まだ動ける。まだ戦える。まだ勝機はある!)

 

 すでに体は血塗れの明らかに満身創痍。だがそれは諦める理由にはならない。

 模擬戦なんだから負けてもいい? そんなわけがない。負けるのは悔しい。当然だ、ヴィータに負け続けていたときは、あまりの自分の不甲斐なさに毎日のように枕を涙で濡らした。

 

 ―――負けたくない

 

 シグナムの胸中にはそれしか無かった。

 

 ―――そのためなら

 

「天羽々斬、レヴァンティン、やるぞ」

 

 シグナムは、とあるシステムを使用する覚悟を決める。まだ未完成だから使わないようにね? とか言われているが、そんなこと知ったこっちゃない。

 不完全? なら、今ここで完成させてやる。そもそも不完全で使用して欲しくなければ、登録してなければいいのだ。登録してあるってことは使っていいってことだろ?

 間違いなく、試合後に皆に怒られるだろうが、ここで何もできないまま負けるなんて無様を晒すよりは無限倍マシである。

 

『『…………』』 

 

 が、どうもデバイス達の反応がよろしくない。

 シグナムがこれから行おうとしていることは、間違いなくシグナム自身を傷つける。下手をすれば、シグナムというプログラム自体にも損傷が出るかもしれない。

 マスターを守るために存在するデバイスとして、そんなことを許可するわけにはいかない。

 シグナムもそんなデバイスの気持ちを読み取ったのか、苦笑を浮かべながら口を開く。

 

「大丈夫だ」

 

 そんな一言。

 

「信じろ」

 

 お前たちのマスターを信じろ、こんなことじゃ俺の胸に宿る烈火の炎は消えない挫けない砕けない。だから心配するな。

 そんな言葉に、横暴とまで言える言葉に【天羽々斬】【レヴァンティン】は決断する。

 

『『Jawohl,Mein Herr』』

 

 我らが敬愛する主を信じようと。

 

「ありがとう」

 

 今からやる無茶を許してくれてありがとう。いつも自分を支えてくれてありがとう。そして、これからもよろしく頼む。

 そんな想いを乗せてシグナムは礼を言った。

 そしてキーワードとなる言葉を呟く。

 

「天羽々斬、レヴァンティン、【オーバードライブ】!!」

『『ignition!!』』

 

 それはまるで爆発だった。

 シグナムの体から今までとは比にならない魔力が溢れ、訓練場を爆発的に駆け巡る。体中を覆う炎は、今までの全てを燃やし尽くすような赤い炎ではなく、深く、全てを飲み込むような青い炎。

 

 シグナムが戦場を駆け抜けていく、自分が切り捨てるべき相手に向かって。

 剣帝は刃を操り攻撃を加えるがシグナムに到達する前に、この青い炎によって消滅していく。

 それを見て剣帝は言葉を失う。何かを言おうとしても、言葉は出てこなく意味もなく口をパクパクさせるだけに終わる。

 絶対の自信を持っていた自分の技が、相手に触れることすらできないのだ。もはや笑いすらこみ上げてくる。

 

(……攻防一体……か……)

 

 自分とは異なる形の攻防一体。むしろ彼女の方が実戦的かもしれない。身を守るために制御しなければならない剣帝と、ただ炎を撒き散らしていればいいシグナム。どちらが使いやすいか考えるまでもない。

 

(といっても、やはりリスクはあるようだな)

 

 まるで猪のように一直線にこちらに向かってくるシグナムの顔には、その優位な立場にいるとは思えないほど余裕というものが見当たらない。それどころか苦痛を耐えるかのように歪んでいる。

 

 ―――もしかしたら、逃げているだけで自滅してくれるかもしれない。

 

 そんな考えが頭をよぎる。そして、その瞬間、剣帝は自分をぶん殴りたくなった。

 

(逃げる? 逃げるだと?)

 

 ふざけるな。こんな考えが一瞬でも浮かんだ自分に失望する。

 相手が自分の身も顧みず全力で挑んできている。ならば自分がすることは何だ?

 考えるまでもなく、決まっている。

 

「全力で迎え撃つ!!」

 

 そして返り討ちにしてやる。それが、今自分がするべきことである。

 剣帝は舞い散る桜吹雪の制御を全て放棄する。当然、魔力を送られなくなった欠片は消滅していく。

 そして剣帝は創造する。自らの剣を、先程のような刃の破片ではなく、自分が長年使用していた相棒を作り上げていく。

 一瞬のうちに両手に収まったのは一本の剣。その剣は全ての悪を祓う様な真っ白い光を放ち、一瞬で創り出したとは思えないほどの力が込められている。その力は、女性騎士の得体の知れない剣によって、粉々に破壊された前作の剣を明らかに上回っている。

 

(私も成長しているということか……)

 

 こんな状況であるにも関わらず、そんな暢気な考えが浮かぶ。

 この世界に自分と並ぶ力を持つ存在など居なかった。勿論、そんなことで驕るつもりもなく、毎日のように自分に対して厳しい特訓を課してきた。そして、いつの間にか剣帝やら英雄やらと呼ばれるようになっていた。無論そのことに不満はない。そう呼ばれるのは恥ずかしいものがあるが、それ以上の誇らしさがある。

 しかし、常にどこか物足りなさを感じていたのだ。この世界は脆すぎる。本気を出すまでもなく、人であろうと軍であろうと、ありとあらゆるものを壊すことができてしまう。そんな時に現れたのが希少な魔法を集めているという怪しげな五人組だった。当然、最初は彼女たちの話など半分程度にしか聞いていなかった。しかし、彼女たちの話を聞いて、ある希望が胸中に湧き上がってきたのだ。

 

 ―――彼女たちならば、私も本気を出せるのではないか?

 

 そして、目の前の騎士は見事その気持ちに応えてくれた。全力どころか、全力を超えた力を発揮しても勝てるかどうか分からない相手。

 

(こういうのをライバルというのだろうか?)

 

 自らの成長し続けている実力を目の当たりにして、そんなことを思ってしまう。

 が、いつまでもこんな気持ちを抱いているわけにもいかない。すぐに視線を手元の剣から、目の前まで迫りつつある騎士に視線を戻す。

 彼女は、半身に身を捻り腰に付けてある刀という名の武器に手を添えるという、今までに見たこともない構えを取っている。

 対する剣帝は正に正道。正眼の構えだ。基本中の基本、しかし、それ故に最も修練を積み重ねた構え。今となっては無形などと気取った構えを取っているが、昔はこの構えばかりを練習していた。否、今になっても正眼の修練を怠ったことはない。

 そして、数秒後には決着が着くであろうこの状況で剣帝が選んだのは、その最も修練を積み、最も信頼を置ける構えだった。

 剣帝も、もはや青い焔と化したシグナムに向けて剣を振り上げる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」

「ぜぇぇぇぇぇええええええええい!!!」

 

 ―――激突!!

 

 最後の一歩と共にカートリッジを炸裂させ刀を抜き打つシグナムと、上段から剣を振り下ろす魔力で最大限全身を強化した剣帝。

 二つの剣戟がぶつかり合い、吹き荒れる魔力が周囲に空間を軋ませる。

 

 お互いに己の全てを込めた超攻撃

 

 ―――勝ったのはシグナムだった。

 

 もはや廃墟と化した訓練場に残ったのは、半ばから断ち切られた相棒を握り締めながら地に倒れ伏す剣帝と、血に濡れながらも凛とした雰囲気を損なわない美しい女性騎士だった。

 

 

 

 

 

 

 シグナムです。

 めっちゃ怒られました。どのくらい怒られたかというと、目を覚ました俺が最初に聞いた言葉が体の心配ではなく、説教だったというぐらい怒られた。

 話は逸れるが、俺はこの日に初めて正座の怖さを知った。あれはヤバイ。たしかにあれなら拷問にも使用できるだろう。最初は余裕だった、というか最後以外は余裕だった。足が痺れが無くなってからがヤバかった。足の感覚が無くなっていくのだ。視覚上では下半身が存在しているのに、感覚上では何も感じられない。本当に足が存在しているのかメッチャ不安だった。意地でも表情には出さなかったが、内心ではめっちゃ泣き叫んでた。

 閑話休題

 そして、正座で苦しんでいる俺に対して始まる説教の嵐。主とヴォルケンリッターはもちろん、俺の武器を作ってくれている職人さんにも叱られた。

 聞かれた質問は大体同じ。なんであんな無茶をしたのか?

 そして答えた台詞も大体同じ。負けたくなかったから。

 そしてそう答える度にループされ延長される説教。俺は途中から『はい』『ごめんなさい』『もうしません』を繰り返す機械になった。いつまで経っても説教が終わらないので、俺は考えるのをやめたのである。

 

 まぁ、それだけ今回俺が行ったことは危険だということである。最もそれを承知で実行に移したのだが……

 

 ―――オーバードライブ―――

 

 今回行ったコレは、簡単に言うならば、リンカーコアが生み出せる魔力量を強制的に超えさせて魔力を生み出させるシステムである。デメリットは、当たり前とも言える術者にかかる多大な負担。

 おかげで、今俺は元の世界で療養中である。病状はシンカーコアの破損と、体中の怪我。最も大人しくしていれば完璧に治るそうなので心配はない。正直、完全に治ると聞いたときは泣き出しそうになった。魔法が使えなくなるとか、今となっては考えられない。恥ずかしいから絶対にほかの人には言わないが……

 でも、今回は仕方なかった。使わなければ勝てなかった。あの千○桜はチート過ぎた。カートリッジがなければ、正直相手にもならなかったと思う。まだまだ修行が足りない。訓練メニュー増加は既に決定事項である。

 

 ―――でも、楽しかった。

 

 今回の戦いの感想は、この一言に尽きる。

 同じ刀剣を使う物同士。交わされる剣戟。その度に飛び散る魔力。お互いの気持ちを己の武器に乗せ相手にぶつける感覚。

 思い出すだけで心地よい痺れが体中を駆け抜ける。ああいう奴をライバルというのだろうか。

 

「あ~~~~!!! 思い出しただけで体が疼いてきた!!」

 

 俺は絶対安静の言葉を忘却の彼方に押しやって、ベッドから起き上がる。そして手に持つはベッドに立て掛けられた長年の相棒。

 

「っしゃあ! 行くぜ相棒!!」

『『…………』』

「相棒?」

 

 返事をしない二つのデバイスに再び話しかけるが、相変わらず沈黙を貫いている。

 

「どこに行くの?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺はデバイスが沈黙を貫いていた理由を察した。

 恐る恐る振り返ると、そこには額に青筋を浮かべたお医者様。

 

「い、いや、ちょっと散歩でも行こうかなって……」

「それならデバイスを持っていく必要ないよね?」

「いや、ほ、ほら。一人じゃ寂しいじゃん? だから一緒に行って会話でも楽しもうかなって……」

「それなら私が一緒に行ってあげるよ」

「いや、それじゃ意味ないっていうか……」

「意味? 散歩にデバイスを持っていくことのほうが意味ないと思うよ?」

「あー、そ、その~」

「何?」

「…………なんでもないです……」

「そ。じゃあ、安静にしててね」

「……はい……」

 

 クソが!?

 いい気になりやがって! 今に見てやがれ、絶対に抜け出してやるからな!! 吠え面かかせてやる!!!

 

「あ、ちなみにデバイスが反応しないのは、私が頼んで機能停止してあるからだから」

「…………」

 

 

 チクショウがっ!?

 

 

 

 




約2万3千文字……

俺マジよく書いた。自分で自分を少し褒めてあげたい。
でも、本編じゃなくて、このような息抜きで書いたやつでここまで書けたことが少し複雑です……
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