かめさん執筆なのでこれからが不安ですが……
車椅子少女の庭、普段は芝生が生い茂りそこにいる者の心を癒してくれるかもしれない庭。
そんな庭の一角にはシュールな光景が広がっていた。ぽっかり空いた小さなクレーターと、そのクレーターの真ん中に広がっている毛布。これだけならそれほどシュールで見ないだろう。しかし、その毛布から手足が生えていたらどうだろう。もちろん物理的に手足が生え動き回っているわけではない、ただ毛布の下に誰かがいるというだけだ。そしてそれを微妙な視線で見つめている車椅子に乗っている少女。これはシュールと言って良いと思う。
車椅子少女―八神はやての家の庭に少女が文字通り落ちてきてから三日が過ぎている。そう、三日だ。このクレーターの真ん中で毛布に抱かれながら眠っている少女は八神家の庭に落ちてきてから三日間眠り続けている。身じろぎひとつする事もなかった。双子だと思われる二匹の猫がペチペチと猫パンチを繰り返しても全く起きる様子がなかった。はやてはどうすればいいんやろ、とこの三日間悩み続けているが、結局頼まれた通りに病院にもどこにも連れて行かずに放置している。しかし、流石にこれ以上は危険ではないかと思い、今日中に起きなかったら石田先生でも呼ぼうと考えている。
しかし、ついにこの日、毛布の少女に変化が現れた。少女の毛布からはみ出している手足がピクっと動いたと思ったら「……んぅ…んっ………?…んぅ?」と少女がうめき声を開けて目を開いたのだ。上体を起こし緩慢な動きでキョロキョロと周囲を見回し始める。そして何もなかったかのように「おやすみなさい」と再び毛布をかぶり横になってしまった。
「うん、お休み………………ってちゃうわ!! 起きんかい!! っておわぁっ!!」
そのあまりにも自然な就寝時の挨拶につい挨拶を返してしまったが、即座にツッコミ気味に起こす。が、勢いをつけすぎてクレーターに突っ込んでしまった。そして当然行き先はクレーターの真ん中、つまりは少女が眠っている場所だ。
「キャアアアアアアアア!!」
「―――おぶふぅ!?!?」
はやては車椅子から投げ出され、つい目を閉じてしまう。そして自分が地面に倒れる衝撃と一緒に、少女として上げてはいけない感じの苦悶の声が聞こえた。しかし、はやてを襲った衝撃はそれほど大きいものではなかった。むしろ毛布のように柔らかみがあった。はやては先程の声を思い出し、急いで両腕で体を起こし自分の下にあったモノを確認する。それははやての予想どうり碧い少女だった。少女は「……っ! …………っ!……」と口をパクパクさせながらその整った顔を歪め、お腹を抑えながら悶絶していた。
「ちょっ、大丈夫なん!? ごめ、ごめんなぁ!!」
はやては謝りながら少女の背中をさすり続ける。その甲斐もあってか、少女は数分後にはお腹から手を離し上体を起こしはやてを見つめ始める。その両目は涙目になっていたが……。
「あー……。確か…………八神たぬき……だっけ?」
「誰がたぬきや、誰が!? 私ははやて、八神はやてや!!」
はやての顔を見て少女は何かを考え込んでいたが、ポンっと手を叩きはやての名前を告げる。全く違っていたが……。
「そう言われればそうだった気がする。あと、何か俺の鳩尾らへんが妙に痛むんだが、なんか知らない?」
「いや、知らん」
一瞬、罪悪感が胸をよぎったが、ここは私の家やねん、と思いはやては嘘をつくことにした。
「そうなの? ま、いっか。で今どうなってんの?」
「覚えとらんの?」
「ちょっと待って……今思い出してみる」
右手を顔の横に置き、人差し指でこめかみをこんこんと叩き始める少女。変わった仕草だが、おそらくこれまでの経緯を思い出しているのだろう。
「あー。思い出した思い出した」
そしてあっという間に思い出した。そもそも忘れていたわけでなく寝惚けていただけなのだ、思い出せるに決まっている。
「でも話す前に家入ろっか」
「私の家なんやけど……」
「お邪魔しまーす」
「うん、聞いとらんね。別にいいんやけど……」
■
「ほ~……魔法ってホンマにあったんやねぇ……」
とりあえず魔法について話してしまいました。最初に魔法も奇跡もあるんだよ的な発言した時のはやての憐れみを含んだ視線が忘れられません。ホントなのに……。
軽く魔法弾出したら信じてくれました。
「ちなみにはやても使えるよ」
「ホンマに!?」
「確か今は使えないはず……」
「なんやその奇妙な言い方…」
「あぁ、それは―――」
~~少女説明中~~
「は~……この世界がアニメね~。そんでこの世界に転生したと」
めっちゃ暴露してます。まぁ、いいよね別に。
「じゃあ、これから何が起こるか知ってるん?」
「もち。今は確か第一期で、時期的に主人公が覚醒してるあたりかな」
「うち、主人公やないの?」
「まぁ、三大主人公って言われてた気がするから、主人公でいいんじゃない?」
自分を主人公だと思っているとは、はやて、恐ろしい子!!
「ふ~~ん。まぁ、どうでもええか」
どうやら本気にしていないようです。まぁ、当然だと思うけどね。
『あなたが生活しているのはアニメの世界です』とか言われてすぐに信じる人がいたらその人はさっさと病院に行くべきだと思う。もしかしたら病院さえもが匙を投げるかもしれない。
しかし、それでも話を打ち切らないでくれるのは先に魔法を見せたからだろうか?
「ふむ、信じていないようだな。ならばいいだろう。ここに原作占いをしてやろう」
占いも何もただの原作知識なんだけどね。
「貴女の次の誕生日、その日に家族が多分4人?増えるでしょう」
「なんで疑問形なんやねん」
「結構な時間、生きてるから記憶が曖昧になってきてて」
「三センチ?」
「三センチ」
どうやらこの世界にも、あっちのアニメとかが存在するようです。
「確かおっぱいとロリとうっかりとペットだった気がする」
「なにそれ怖い」
たしかに。これだけ聞くと意味が分からなすぎて、なんとなく怖い。
「ん? さっき第一期って言うた? じゃあ、うち出るの第何期なん?」
「んー? 確か二期。一期は『高町なのは』という主人公と『フェイト・テスタロッサ』っていう敵役のジュエルシード争奪戦だったかな」
いつの間にかそういう感じになっていた気がする。
「はやてはその事件が片付いたあとだった気がする。ちなみに内容は忘れた」
「家族になる四人の名前も分からんのやから当然やね」
ごもっともです。
「ちなみに最後にお願いが」
「なんや?」
「ここに住ませて。一年間ぐらい」
「別にええよ」
即答。あまりの男っぷりに惚れそうです。でもそのうち騙されないか心配です。
「結婚してください」
「うち、そういう趣味ないから」
「でも確か未来じゃ二人の女友達と一緒に下着Yシャツで同じベッドで寝てたような……」
「なん……やと………!」
あまりの未来に思わず机にべた~と崩れるはやて。
「しかも3P」
「……」
もはやはやては何か言う気力さえないようだ。机にへばりつきながら完全に沈黙している。
「―――未来は変わる、変えられる。だからきっとそんな未来も変えられる」
突然はやてがそんなことを言い出した。よほどショックだったのだろう。
「あー。あと俺の知識も曖昧だから本当にそうだか分かんないし」
「そうやな!」
可哀想だったので続いてフォローを入れると完全に立ち直ったようで、上体を起こし始める。
「で、いいの? 泊まって」
「私の世話とかしてもらうけどそれでもええんなら」
「バチコイだ。げへへ、幼女幼女」
「きゃーー」
「なんという棒読み」
両手をわしわししながら近づくと車椅子でとろとろと逃げ始めるはやて。
「そのうち、そのなのはちゃんとフェイトちゃんに会ってみたいわ~」
「んじゃ、そのうち会いに行こうか?」
「そうやな!」
めっちゃ嬉しそうに頷かれた。
「あ、それと気になったんやけど、男の子みたいな話し方してるんやね」
「前世は男だからな」
このことは原作と一緒に告げてあります。
「いい年したおっさんが魔法少女もののアニメ見てるとかあんま想像したくないんやけど……」
「それは言わないお約束です。あとおっさん言うな」
そんな目で俺を見ないでください、心が折れそうです。
いいじゃないか。人それぞれ趣味嗜好があるんだ。
「それでもその容姿でその言葉遣いは許さん。矯正してやる」
「へ? 調教してやる?」
「して欲しいん?」
「お断りします」
ちょっとからかおうとしたらブーメランしてきた。というか調教という言葉を知っているとは……最近の小学生ヤバイ気がする。
「そうやな、まずは一人称から変えてみようか。ボクか私な」
「ボクっ娘だと……!? はやては俺のこれからの人生を痛い子で終わらせる気か?」
「お前は今、全国のボクっ娘と大きなお友達に喧嘩を売った」
「ごめんなさい」
なんか怖いので謝ることにする。
「決めたわ。一人称ボクな、ちなみに家主命令で。断るなら庭のクレーター埋めて出てけ」
「ボクの一人称はボクです」
平伏しながら告げる。
「あ、そう言えばお…ボク達自己紹介してない」
「そうやったな」
「お…ボクの名前は泉 渚。よろしく」
「八神はやてや。こっちこそよろしくな」
そんなこんなで八神家生活が始まった。
まだだ!!