ちょっと頭に浮かんだネタを書いたもの   作:御免寝

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ジュエルシードな人3

 渚は困っていた。

 八神家でテラうまな昼食をいただき、いざジュエルシード探索へ! と意気揚々に飛び出したもののジュエルシードの位置が全くわからないのだ。いつもならリンクっぽいのが繋がってて分かるのだが、今は何故か分からない。リンクが切れているわけではないのだが……。地球の魔力が渚にあっていないのかもしれない。こうなったら原作知識を活かして回収してやんぜ! とか思い、一生懸命に脳をフル回転させても一向に原作知識は出てこない。そのくせ『翠屋』とか魔王降臨などといった、どうでもいいことは覚えているのだ。全く役に立たない記憶力に絶望する。翠屋で出待ちしようかな、などと思ったが名前だけで住所が全く分からないことに気づいた。道行く人に訪ねようとしたが、そうすると住所を聞く前に自分について聞かれることについても気づいた。

 

「あー……。どうしよ……」

 

 こうなったらジュエルシードが発動するのを待って、それから回収するかなとか思う。でも、発動ならいいけど暴走されると管制人格である渚でもジュエルシードを止めることは出来ない。そんなことを考えながら、とりあえず地理を覚えようと歩き回ることにする。

 

「こんなことならはやても連れてくればよかった。こう、車椅子に乗って坂道をイヤッホォォォオォオオオウみたいな…………っと、いきなりか?」

 

 ジュエルシードの波動を感じた。どうやら暴走ではなく発動らしい。

 

「ここはさっき通ったプールらへんだな」

 

 発動場所を感じ取ると、そこは先程通り過ぎた大きなプールがある場所らへんだった。移動を開始する前に魔力で身体能力を強化し、自分に認識阻害をかけ、ついでに変身魔法もかけておく。モデルは前世の自分で髪と瞳の色を金色に変えておく。これである程度目立つ行動をとっても、周囲の人は気にもしなくなるだろうし、原作組に顔がバレても問題はなくなる。渚は無事魔法がかかったことを確認し、文字通り一直線にジュエルシードの発動箇所に向かう。障害物も建物もひとっ飛びである。

 発動場所にたどり着くと、そこは思った通りプールだった。通った時に気づけよ俺……、とか内心毒吐いたが、すぐに気持ちを切り替えプール内に入っていく。すでに結界が張られているところを見ると、主人公たちが頑張っているようだ。

 

(プールでの出来事なんてあったっけ?)

 

 一期では幼女たちのプールなどという渚得なイベントはなかった気がする。あったら確実に覚えている自信がある。しかし起きているものは仕方ない、ポロリでも期待するかな、などと思考を読むことができる道具が開発されたら一発で捕まるようなことを考えながらプール内に突入するとそこには桃源郷が広がっていた。

 

「キャーーー!! 何よこれーーー!!?」

「ぬ、脱がされちゃう!!」

 

 自由に動き回る水に襲われている幼女が二人。しかも水は水着を脱がそうとしているようだ。もしかしたらこのジュエルシードとはお友達になれるかもしれない。いけないことだと思いながらも、ジュエルシードを応援したくなってしまう。というか応援する、いいぞもっとやれ。

 

「なにこれ、水のお化け!?」

「なのはーーー!!」

 

 声が聞こえたので、断腸の思いで目を向けるとプールサイドに主人公たる現魔法少女、未来魔王少女・高町なのはとユーノ・スクライアがいた。二人とも目の前の巨大な水獣?に呆気にとられている。しかし、水獣に弄ばれていたアリサ・バニングスと月村すずかの声が聞こえると、はっと気を持ち直し助けに向かう。しかし、二人が水獣に捕らわれているため迂闊に手を出せないようだ。そしてついに水獣が二人の水着を脱がしてしまった。そしてそれと同時になんということか二人をプールにポイしてしまった。

 

―――その瞬間、渚はキレた。

 

 渚の手にジュエルシードがあったら間違いなく暴走を起こしていただろう。それほどの怒りが渚の中に渦巻いていた。

 

(幼女をポイッだと!? ふざけているのか奴は!! そこは優しく下ろしてやるべきだろう。アフターケアまでキッチリカッチリやってこその紳士だろうに。水面に叩きつけられて怪我でもしたらどうするのだ!? 幼女は世界の宝なのだぞ!! それにポイッしたということは奴は水着にしか興味がないということか? ド変態め!)

 

 この心の声を聞いたら間違いなくお前も変態だよと十人中十二人が言うだろう。

 

(そしてなにより許せないのは、幼女を身ぐるみ剥ぎ取ってそのまま放置したことだ。男がいたらどうするというのだ。まった……く…? ん? 男?)

 

 ちらっと視線を横に向けると、そこにはなにかブツブツ言っているユーノ、種族・フェレット、性別・雄。性別・雄!! 大事なことなので二回言いました。目を逸らしてるから許してあげるか、などと思っていると、なんとユーノが二人のもとへ移動を開始するではないか。そしてユーノがたどり着き、何かを喋ると同時に崩れ落ちるアリサとすずか。

 

「ユーノ……スクライアァぁァアぁアアアアアああアア!!!」

 

 それを見た瞬間、渚は疾走した。一瞬で全身を魔力で強化し、二人をかっ攫うように抱える。その際、二人に服を着てるように見せかける幻術を掛けるのを忘れない。先程まで脱がされるのを黙視していたくせに変なところで紳士である。

 ユーノを睨みつける渚と困惑しているユーノ。そこに封印が終了したらしいなのはが走ってくる。そしてアリサとすずかを脇に抱えている渚を見て、最初は戸惑ったようだが口を開いた。

 

「誰ですか? アリサちゃんとすずかちゃんをどうするつもりですか?」

 

 どことなく怪しい人を見るような目で見られて少し傷つく渚だった。

 

「別に何もしないよ。そのフェレットが何か怪しいことをしてたから保護しただけ」

「怪しいことなんてしてない! 魔法の秘密保持のために眠らせただけだ!!」

 

 それそこの、とユーノを指差すと、ユーノが勢いよく反論してきた。

 

「そうです! ユーノ君はそんなことしません!!」

「グハっ!!?」

「なのは……」

 

 私、信じてます! と迷いのない純真な目で見られて、薄汚い心を浄化されてしまい苦しむ渚であった。それを見てなのはは、今現在進行形で怪しい人間である渚を心配し始める。そして、それにより渚はさらに自分の汚れている心を見せつけられて苦しんでしまった。ユーノはなのはを見て、目をうるうるさせている。

 

「あれ?」

 

 それに気づいたのはユーノだった。

 

「どうしたの?」

 

 周囲を見回しているユーノになのはが話しかける。

 

「ん? あぁ、これまだジュエルシード封印できてなくね?」

 

 次に気づいたのは渚だった。渚は一番最初に気づかなくてはならないと思う、管制人格的に。

 そう、ジュエルシードの封印が終わっていない。魔力が未だにあたり一面に存在しているのだ。ジュエルシードの反応も未だに消えていない。

 

「そういえば、さっきジュエルシード出てこなかった」

 

 それは最初に言わなければならないことだと思う。ふざけていた渚に言えることではないが……。

 

「大変だ!! すぐに封印しなくちゃ!!」

「うん! 行こう、ユーノ君!!」

 

 反応がする方へ走っていくなのはとユーノを渚は慌てて呼び止める。

 

「大丈夫大丈夫。こんだけ近くにいて暴走してないならなんとかなるから」

 

 その言葉になのはとユーノがどういうことと疑問を口にするが、渚は見てんしゃいと言って脇に抱えていたアリサとすずかを静かに降ろし目を瞑ってしまう。

 そして渚はジュエルシードの探索を、ほとんど役に立たないリンクを通して開始する。ジュエルシードは発動しており、その上これほどまで近くにいる。この条件ならジュエルシードへの干渉も可能だと渚は判断する。逆にここまで条件が揃って、干渉すらできないなら今すぐ管制人格を辞めるべきだ。周囲の魔力が少し邪魔だが、冷静にリンクに自分の魔力を通し、少しずつリンクを補強しながらジュエルシードを探す。

 

(見つけた)

 

 そしてついに発見する。自分の魔力をジュエルシードに流し命令を送る。

 

「ジュエルシードよ。汝の管制人格として命じる。直ちに発動を停止せよ。それは叶えて良い願いではない。繰り返す、直ちに発動を停止せよ」

 

 その瞬間、ジュエルシードが活動を停止した。今までの活動が嘘だったかのようにあっけなく停止した。先程まで辺りを漂っていた濃密な魔力も感じられないし、ジュエルシードの反応も消えてしまった。もう全てが終わっているのだ、魔法で消耗させる必要もなく封印魔法もいらない、たった一言で全てが終わってしまった。ユーノは信じられないものを見たかのように目を見開いている(フェレット状態なのでよく分からないが……)。なのははなにが起こったのかよく分かっていないようだ、ジュエルシードの活動が止まったのを感じて首を傾げている。

 

「……発動しているジュエルシードをこんな簡単に封印するなんて……。いやさっきのは封印なんてしてなかった。…………君は、一体……」

 

 ユーノは渚が引き起こしたことを考えていたが、すぐに顔を上げ渚に問いかける。

 

「我か? ふっ、気になるなら教えてやろう。願いを叶える宝石ジュエルシード、我はそれを統べる王―ロード・クラウンだ」

 

 何故かかなり偉そうなキャラを演じている渚。ユーノとなのははジュエルシードを統べる王と聞いて驚愕していているようだ。おそらくそのような存在がいること自体知らなかったのだろう。前回の暴走時にようやく姿を表せるようになって、今回初めて出歩いたのだから当然と言っては当然なのだが……。

 

「……王なんて聞いたこともないし、文献にもそんなことは書いていなかった……。そんなものが存在するのか!?」

「貴様は自分の眼すら信じられないのか? 今現在ここにいるだろうが。先ほど行った行為が、その証明になると思うが?」

 

 渚が行った封印術式を用いないどころか、直接ジュエルシードを操作したとしか思えない封印方法。あれを見ては確かにジュエルシードを制御しているとしか思えない。ユーノは言葉もないのか、思考に没頭しているのかうつむいてなのも言わなくなった。

 

「ふん。ここでやることは終わった、ではな」

「あのっ! ちょっと待ってください!!」

「なのはっ!?」

 

 ちょっと格好つけてその場を去ろうとした渚だったが、なのはに呼び止められる。あまりの態度に起こってしまったのだろうか、と不安になったが、なのはの言ったことは至って普通のことだった。

 

「い、一緒にジュエルシードを集めませんか!?」

 

 その言葉に渚は考え込む。確かになのはたちと一緒に行動すればジュエルシードの回収を安全に行うことが出来るようになるだろう。しかし、一緒に行動すればするほど自分のことがバレる可能性が上がる。それに管理局が来てしまうと、おそらく変身魔法のこともバレてしまうだろう。会うだけならバレないかもしれないが、アースラ内に入った場合、確実にバレる。そして全てのジュエルシードが集められたら、おそらく渚は封印されてしまうだろう。渚の意思ではないとしても、今までいくつもの世界を滅ぼしてきたロストロギア『ジュエルシード』。ヴォルケンリッターたちは封印されなかったが、あれは暴走の危険性がないからだ。暴走の危険性があるジュエルシードは間違いなく封印される。つまり渚は管理局と関わらずにジュエルシードを集め、集め終わったら管理局に捕まらないうちに逃げなくてはならないということだ。つまり―――

 

 

「断る」

 

 

 こういうことだ。

 

「なんでですか?」

「確かに貴様らと一緒に行動すれば安全に集めることができるだろう。我もこの世界に漂着した影響で、ジュエルシードとのリンクがほとんど機能しなくなっており、力もかなり落ちている」

「なら!」

「だが、我は貴様らを信用していない。貴様らがジュエルシードを悪用するつもりだとしたら? そして我の力を利用しているのだとしたら?」

「そんなこと―――!」

「しないだろうな。会ったばかりだが、貴様らからはそういった思惑は全く感じない。だが、万が一ということがある、その可能性がある限り我は誰も信用することはできぬのだ」

「……」

 

 その言葉を聞き沈黙するなのは。それを見て話は終わりだ、と渚は二人に背を向け、ジュエルシードの力を制御しながら開放する。

 ジュエルシードとは願いを叶えるということに気が向きがちだが、そのほかにも次元干渉型のエネルギー結晶体という性質も持っている。つまりは読んで文字のごとく、次元に干渉することが出来るのだ。次元とは空間の広がりをあらわす一つの指標である、つまりは空間だ。よってジュエルシードは空間に干渉することが出来るということになる。つまりこのようなことが可能になるのだ。

 

―――ギギギィィィィィ……!

 

「こ、これは!?」

 

ユーノが驚きを顕にする。それも当然だろう、鉄を強引に折り曲げるような不愉快な音と共に、目の前の空間に裂け目が現れたのだから。裂け目の向こう側は青い空間が広がっているだけであり、何もあるようには見えない。しかし、その空間になんの戸惑いもなく踏み込んでいく渚。そいて「ではな」、そう言い残して渚が空間の裂け目に消えていく、そして完全に体が裂け目に消えると同時に空間の裂け目は消えていった。

 その光景になのはとユーノにできたことは、ただ見ていることだけだった。しかし、最後に確かに聞こえたのだ。

 

 

「ちょ、ちょっと誰やねんアンタ!? え? なに、なんやねん、シーって!? 静かにしろってことなん!? あ、もしかしてアンタ―――」

 

 

 こんな雰囲気ぶち壊しな会話が……。

 

 

「……」

「……」

 

 思わずユーノの方を見てしまうなのは。ユーノも同じ心境なのかなのはの方を見ている。そして二人で沈黙する。

 

 

 何とも言えない雰囲気がその場を漂っていた。

 

 

 

 

 

 

「で? そのままカッコつけて帰ってきてしまったと。協力も断って」

「はい……」

「アホやな」

 

 場所は移り変わって八神家。ジュエルシードの力を使いマジカル帰宅を果たしたところをはやてに見つかり事情の説明を要求されたので、説明したところそんな辛辣な言葉をいただいた(変態認定されたくはないので幼女スッポンポンとかは言っていない)。まぁ、妥当な台詞なのだが……。先ほどのプールでの出来事、ある一時から渚のテンションは限界など存在しないと言わんばかりに振り切っていた。具体的には水獣が幼女二人を襲っていた所らへんから。そしてそのテンションに引きずられるまま会話を進めてしまい、せっかくの協力要請を断ってしまったのだ。

 

「コイツが悪いんだよ、コイツが! このエセ紳士ジュエルシードが!!」

 

 渚はそう言いながらジュエルシードをバンバンと机に叩きつける。管制人格の力で厳重に封印してあると知っていても、普通の人が見たら渚を殴り飛ばしてでもジュエルシードを取り上げるだろう。しかし、ここに居るのはそんなこと露も知らない一般人八神はやて、「綺麗な宝石やな~」などとのほほんと言っている。

 

「あ、いいこと思いついた」

「どんな……?」

 

 一通りジュエルシードに八つ当たりをして机の上に上体を倒してぐてーとダレていた渚が顔だけを起こしてそんなことを言う。はやてのまたくだらないこと言いそうという視線が突き刺さるが全く気にならない。そのくらい渚は今回の自分の意見に自信があるのだ。

 

「主人公様に集めてもらって、最後にそれを横取りすればいいんじゃね?」

 

 俺が関わらなければ原作通りに進むだろうし、原作覚えてないけど……、などと身も蓋もないことを言い出した。

 はやてとしては何も言えない。確かにくだらないことではなかったが、果たしてそれで本当に良いのだろうか? なんとなく発想が悪役っぽいというか、最後に痛い目に遭いそうというか、そんな感じがする。

 

「まぁ、ええんちゃう? 私としてはみんなに危険がないのなら関わって欲しいんやけどね、話を聞いとるだけでもおもろいし」

「ふむ、家主の意見だ。善処しよう」

 

 結局は基本的には傍観、危険や面白いことがあれば突入ということになった。

 

 

 

「それじゃ今日も言葉使いの矯正を始めよか? さっきからずっと男言葉になっとるようだし」

「……oh……」

 

 

 

 

 

 

~~本日のなのはさん~~

 

 

「ロード・クラウンさん……だっけ? か、かんせいじんかく?だって言ってたけど……ユーノ君、知ってる?」

 

 なのはは今日プールで出会った大学生ぐらいの金色の男性を思い出し、ユーノに聞いてみる。

 

「いや、聞いたこともないよ。文献にもそんなこと書いてなかったし……」

 

 ユーノは必死で思い出してみるが、ジュエルシードの管制人格など聞いたことすらない。

 

「また会うことになるのかな?」

「彼が本当に管制人格かどうかは置いといても、ジュエルシードを集めていることは確かだからたぶんね……」

「……そっか」

 

 なのははベッドの中で丸くなりながら金色の男性のことを考える。

 協力の話は断られてしまった。確かに彼の言い分は正しい、出会ったばかりの人間を信用することなんてできない、本当に管制人格ならば断るのが当然の選択だろう。しかし、なのはは納得できなかった。頭では理解していても心で納得できないのだ。人間関係で最初に必要なことは信じ合うことが大切だとなのは思う。疑うのではなく、ほんの少しでもいいから相手を信用し、ふれあいを重ね、少しずつ相手を理解していくことが必要だと思うのだ。そしてまずはその一歩のために―――

 

「お話してみたいな」

 

 そう思う。

 

「……そっか……。そう決めたならなのはの好きにするといいよ。僕は手伝ってもらっている立場だし、それを出来るだけサポートするよ」

「ありがとう、ユーノ君。迷惑かけてごめんね」

 

 眠気がどんどん押し寄せてくる。今日はプールに加えジュエルシード封印をしたのだ、それ以前になのはは未だ九歳なのだ(普段の行動からはそうは見えないが……)。体中の披露はパないことになっているだろう。そして案の定、なのははすぐに眠りの世界に落ちていった。

 

 

 

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