星守レイ○!担任と化した淫夢厨 作:投稿者:変態糞先生
これは夢なのか、現実なのか…。
暑い真夏の夜過熱した欲望は、
遂に危険な領域に突入するーーー。
こんな回です。
「これで決めるよ!
2人とも、合わせて!」
「おっけー!やってやろう!」
「いつでも行けるわ!」
全身を傷つけられ、あちこちから瘴気を噴き出す目の前の大型イロウスーーーウォルフを前に、3人は大技でもってトドメを刺すべく等間隔に敵を囲む。
ウォルフは散らばる3人に目をやり、誰が何を仕掛けてくるかを警戒するのが関の山。
『せーーーー……のっ!』
掛け声と同時に3色のオーラを纏い、3人は跳躍する。
みきは紅蓮の炎を。
昴は鮮黄の雷を。
遥香は青碧の水を。
星衣に秘められた息吹を乗せ、少女達は宙で1つ回転すると一気に加速して下方へ蹴り出す。奇しくも構えは信頼と安定のライダーキ⚪︎クと同じものだ。
流星の如く、ただ一点へ収束する様に彼女達は降り注ぐーーー。
「《炎舞鳳凰翔》!」
「《雷舞聖獣翔》!」
「《蒼舞海皇翔》!」
3色は渦と成って敵に殺到する。
『ガアアアァァァァ…』
焼き尽くす炎と叩きつける雷と押し流す水。
それらを一身に受けたウォルフは元のダメージもあって満身創痍。耐える事は叶わず、虹色の光を伴い爆発する。
此処に、瘴気の源は駆逐された。
「や、やったぁ!勝ったよ私達!」
「うん!
先生のお陰だね、随分やり易かったよ!」
「これで瘴気も晴れ…
…て、ない!?」
空を見上げると、その色は紫。
つまり、まだこの一帯の瘴気は残り続けているという事。
当然3人はそれがどういう事かも分かっている訳で…
「って事は、まだ大型がいるって事か…」
そう、大型を斃して尚瘴気が残っている場合、それは単純に瘴気の発生源である別の大型が周辺に存在している事を示している。
「まあさっきから小型はロウガとゲルしか見てないし、いたとしてもその大型だろうからなんとかなるでしょ。 ね、遥香。
…遥香?」
昴が遥香に声をかけるも、遥香本人は忙しなく目を方々にやり、まるで聞こえていない風だ。
「あの…先生は何処へ?」
「え?
ってホントにいないし!」
遥香が周囲を見ていた理由、それは先程まで自身等の背後にいた田所がいなくなっていたからだった。
3人の喜色満面の顔が蒼くなっていく。
「嘘でしょ…
まさか私達の戦闘中に背後から…!?」
「いいえ、それだったら血痕や襲撃の跡がある筈。
何より…何故かは分からないけど、イロウスの気配を感じ取れる先生なら、その時点で助けを呼ぶに違いないわ」
「なら…何処かへ移動したって事?自分1人で!?」
「ッ、そうとしか思えないわ…」
「あーもうっ、何をやってるんだあの人は!
訳わからないよ!」
「兎に角探しに行かないと…!
大型がまだいる以上、此処は危険だよ!」
「そうね、急ぎまーーー
瞬間。
カッーーーーー
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
ーーーな、何!?」
「2人とも、あれ!」
みきが指を差した先には信じ難い光景が広がっていた。
現在いる渋谷区域とは比べ物にならない程濃く、密な瘴気が柱と成って流れ出し、空を染めていく。
心なしかーーーいや、確実に陽光も遮っているのだろう。辺りが闇く暗く成って段違いの不気味さを生む。
見ているだけで毒される様な、
「そ、んな…何、あれ…」
「ーーーハッ!交信は!?
八雲先生!此方成海、緊急事態発生です。応答願います!」
【どうしましたか!?】
遥香が咄嗟に連絡を取る。
幸い、
「先程、いや違う、現在渋谷にて尋常ならざる量の瘴気発生を確認しました!
原因は分かりますか!?」
【何……って!?
直…に解…に取………りま…!】
だがそれも時間の問題だった。
コロニーのオペレーターとの交信並びに転送は、瘴気が薄くないと不可能。
故にこの様な、と言えば語弊があるだろうか。
こんな
【……う…!
…な…は……………く……り…つ!………!】
【……………………………………………】
彼女達は最早、放逐されたのと何ら変わりなかった。
「八雲先生、八雲先生!
ダメ、交信も途絶えた…!」
「嘘…奪還授業は、瘴気が薄いタイミングでやるんじゃなかったの!?」
「落ち着いて…辛うじて“離脱”とは聞き取れたわ。
直ぐにでも脱出しろって…」
「でもそしたら先生は…!」
「分かってるわ、分かってる…
でも!」
「ちょっと、本格的にマズイよ…
神樹のお守りがある筈なのに気持ち悪い…ううっ」
「そんな、瘴気の毒が…
どうすれば…どうすればいいの……!?」
苦虫を噛み潰した様な表情となり、言葉尻が次第に強くなる3人。
そんな彼女達の耳にーーー
「ンアッーーーーーーーーーー!!?」
ーーー瘴気よりもクッソ汚いヴォイスが流れ着く。
「今度は何…って、あれは…人?」
「と言うか声的に考えてあれは…!」
声の主は、最後に1つ大きく噴き上がった瘴気により飛ばされて中空を舞っていたが、空中で回転し体勢を整えると、
「フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フンッ!フンッ!フンッ!ンッ!ンッ!
オォン!アォン!」
これまたクッソ汚い
1つ蹴っては次の壁、また次の壁、と空を駆ける様に動き、一方向に進む。
そしてその変態は最後に華麗な宙返りを魅せると、少女達の前に腹立たしいほど綺麗に降り立った。
「 お ま た せ 」
田所浩仁。
少女達が行方を見失った男が今、此処に帰還した。
「先生!無事だったんですね!
いや思いっきり吹っ飛ばされてましたけど!」
「全くもう…何処行ってたのさ!心配したんだよ…!」
「無事で良かった…本当に…
しかし、あれは一体どういう事ですか?」
みき達は駆け寄り、田所に詰め寄る。
「ちょ、ちょちょちょちょっと待って下さい!(関東クレーマー)
何から説明したもんかな…
あー…兎に角それは後だ。要点だけ伝える。聞いとけよ聞いとけよ?」
田所は逸る3人を抑え、少し目を泳がせると、重々しく口を開く。
「多量の大型イロウスを中心とした大規模な群れが生成された。 然も真っ直ぐ向かって来るオマケ付きだ。
今の姉貴達の力じゃあまず撃退不可能。下手すれば文字通り死ぬ。
よって現時刻を持ってこの区域を破棄。作戦行動を奪還から離脱に切り替える。
分かったか?返事ィ!」
伝えられたのは、作戦中断の言葉。
「そんな…」
「っ、それしか…無いんですか?」
「ああ」
「本当の、本当に…?」
「決定に変更は、ないです。
逃げられるうちにとっとと行きますよ〜行く行く」
田所はあくまで冷静に。
少女達は沈痛な面持ちでそれを受ける。
「でもこれは…これは先生が《先生》になる為のテストなんですよ!?
なのに諦めたら私達の所為で、先生は…」
みきが涙目になりながら食いさがる。
昴や遥香も言葉にはしないが、拳を強く握ったり視線が下がったりするあたり、3人の意思は同じものなのだろう。
それは最早、意地の領域だ。
出逢ってまだ数刻もしない他人に対し、しかもその他人を想う故の意地が張れる事は、人間性として揺るがぬ根底を持っている証拠だろう。
だがその意地を田所は、真正面から突き返す。
「あのさぁ…
俺が担任になる以前にさぁ、
誰かの為の自己犠牲?此処で
今ムリでもまだ次はあるんだよ!だから今は、生きてぇなぁ…って、それだけでいいだろお前今日はまだ
姉貴と言う呼び方すら無くし、ウォルフ戦のアドバイス以上に真剣な、熱い口調で田所が口にしたのは間違い無く《
「…じゃけんとっとと撤退しましょうね…
いいか?こっから先は撤退戦だ。星衣の出力を上げに上げて、生き残る事だけ考えろ。足を止めるな。辛くなっても前見て走れ。
そんでもって…」
田所は3人の体を、1人ずつ180度回転させて後方を向かせ、それぞれの頭に手を当ててサッと撫でる。
大きく、ゴツゴツしていて。
でも何と言うか…あったかい(ボキャ貧)
そんな手だった。
「皆、死ぬなよ…?
…返事ィ!」
『はい!!』
この場において田所がこんなにも頼もしく見えた理由を、誰も考えないまま。
ただ生きる為。たった1つを考えて、たったそれだけを願って。
星守達はオーラを纏って、田所はその足で走り出したーーー。
走り出してどれぐらいか。
前からも後ろからも、右からも左からも来る小型イロウスを蹴散らしながら一行は進んでいた。
攻撃を躱し、掠られ、喰らいながらもただ
髪はボサボサ、全身土だらけ擦り傷だらけの酷い有様。そうまでしても、生きる為の意志は途絶えない。
最中、大型とは遭遇しなかったのは正に幸いだった。
もしそんなものに会敵していたなら、確実に足止めを喰らい
それでも星守達は限界を超えており、輝いていたオーラは最早その輝きを失わんとする手前だ。
「はぁっ…はぁっ…
何で、どこまでっ、行っても…」
「薄くなったポイントが、無い、なんて…」
そこに待っていたのは、心を打ち砕く絶望だけだった。
瘴気は、何処までいっても濃いまま。
それは大量の
状況は既にジリ貧を超えて、詰みに入っていた。
「もうっ、だめ…げ、んか、い…」
まず崩れたのは進撃時と同じく後続を、即ち
リヴァイアサンの装飾は光になって消え失せ、星衣が解除されて制服姿に戻る。
残っていた速さに身体を預けるようにして倒れ込んでしまった。
「遥香っ!!」
消え入るような声に気づいたのは昴。
一気に急ブレーキをかけ、彼女はノっていた速度を総て破棄し、倒れた親友の元へ向かう。
「遥香!しっかりして、遥香!」
「す…ばる…」
遥香の顔は既に土気色に染まっている。
それだけ振り絞ったのだ。総てを殿と言う大役で。
そんなぐったりとした遥香の腕を自身の肩にかけ、昴は前を見据える。
「ほら、掴まって…
行くよーーーーーグッ!?」
走り出そうとした瞬間、膝をつく。
彼女も…3人の中で最も運動神経に優れ、体力すら星守でもトップクラスの彼女もまた、尽きていた。
星衣ユニコーンの象徴、カチューシャに付いた一角などはとうに塵光になり、いつの間にか星衣が解除されていたのがそれを如実に表していた。
「は、はは…ははは…う、ぐすっ…
なんで、なんで…」
「すば、る…貴女…」
「動いてよ…動いてよ…
頼むから動いてよ。なんで…
動けよ!私!どうしてだよ…!お願いだから…動いて…お願い…」
壊れた様に吐くのは慟哭。痛ましい程に響き渡り、みきと田所も2人の脱落者に気付く。
「昴ちゃん!遥香ちゃん!」
「ファッ!?」
みきは昴の時と同じく迷わず停止する。つんのめりながらも、持ち直す。
そのまま覚束ない足取りで2人へ歩み寄っていった。
2人の眼からは既に光は消え、
「2人とも…!」
「ごめん、みき…
私、ダメみたい…」
「そんな…そんな事!」
「お願い、みき…
貴女は生き、て…先生と此処から逃げて…」
既に諦観のものへと変わっていた。
見た事の無い2人の表情を見たみきは、大粒の涙を止められなかった。
ーーー不死鳥の翼も、例外無く消えていた。
「嫌だ!嫌だよ!
先生だって言ってたじゃない!皆で帰るんだって!皆生きるんだって!
なのに、どうして…」
「…私さ、楽しかったし、後悔もしてないよ…今日の事…
ちょっと張り切ったりして、自信持って闘えて…だから、もう…」
「バカ!バカバカバカ!
そんな事言わないでよ!どうして諦めちゃうの!?
昴ちゃんの見せてくれた漫画にだって…諦めたら終わりだって書いてあったじゃない!」
「みき…お願い…だから…」
「やだよ…私は、2人とも死なせたくないよ…!
…そうだ。死なせない…だから…だから!」
涙を払い、立ち上がる。
「はあああああっ!!」
みきの
星守の力の原点は《祈り》だ。誰かを護りたい、救いたい…人の良心に依った鎮守の祈念こそが、星守の活力なのだ。
故、今此処に星衣フェニックスが再起動する。
「みき、何を…」
「私は…私はやっぱり、2人を見殺しになんか出来ないよ。
だから私が囮になる。逃げて、先生と一緒に…」
『なぁっ…!』
本当はみきも分かっている筈だ。
昴も遥香も、もう動けない事などは。
囮になった所で、無駄死にだという事は。
それでも、それが自己満足でも、彼女にはそれしか出来なかった。
親友を犠牲に生きるなら、自分を犠牲に親友を生かす。
そう言う思考なのだ、彼女の頭は。
「ごめんね、2人とも…
ぐすっ…星月みき!突撃しまーーー
「ヌ゛ッ!」
ーーーひゃうっ!?」
みきがフェニックスの翼を展開し飛ぼうとしたが、田所の脳天チョップによりそれは叶わず両膝をつく様に落ち、星衣も解除される。
「いてて…せ、先生?何を…」
みきが女の子座りで頭を押さえ視線で訴えるが、田所は素知らぬ風だ。
然し何処か納得したかの様な爽やかな表情を浮かべると、みきの頭をガシガシと撫でる。
「分かった分かった。分かったよもう…」
「え?」
「お前らが…みきも昴も遥香もみ〜んな仲が良い、って事だよ。
んで全員が全員に死んで欲しく無いって、そう言う当たり前の事を見失って無い事もな」
みきを見る田所の表情は柔らかく、初めて会った際の野獣の眼光を見せた人物と同一とは思えない程だ。
「加えて全員揃いも揃って、闘えない俺を見捨てる事無く、寧ろ全力で助けようとした。
力持つ人間の鑑がこの野郎…」
「先生…」
「だから…俺も決めた」
撫でるのを止めてポンポンと軽く叩き、田所が立ち上がる。
「俺は…闘う」
それは田所の戦闘宣言だった。
「なっ、ちょ、先生!何を言っているんですか!?
相手はイロウス、普通の人間が勝てる相手じゃないんですよ!それもあんな沢山…ってわぷっ!?」
「ちょっと羽織ってろお前」
みきは必死に抗議する。
生身の人間があの恐ろしい存在に勝てる訳無いと、その常識を説く。
それへの返答は田所が投げて寄越したスーツだった。
田所はワイシャツとズボン姿で仁王立ち。
その様だけ見れば、正に王者の風格と言うべき存在感を放っている偉丈夫。
そしてその男はただ前を、次々と迫り来るイロウスだけを見ていた。
「先生!」
「あっ、そうだ(唐突)
みき、これ夜中腹減んないスか?
この辺にぃ、美味いラーメン屋の屋台。やってるみたいなんスよ」
背を向けたまま田所は軽々しく語りかける。
そして顔だけ振り向きーーー。
「じゃけん夜、親睦会兼ねて行きましょうね」
今日1番の笑顔で笑いかけた。
憂いや怒り、裏に潜むものなど無い、真実の笑顔だった。
「せんっ…」
「ちょっと《覇》当たんよ〜ヌッ!」
刹那、腹に響く音を伴って大気が震える。
そして田所は妙な構えを取る。
それは拳法の様に見えなくは無い。なくなくない。
「実戦で使うのはいつぶりか…これもうわかんねぇな…
イキますよ〜イくイく」
「ーーー御霊に映されし
再び大気が震え、風が唸りをあげる。
「ーーー其は夢なるか、現なるか。」
イロウスが迫る。
「ーーー熱き真夏の夜過熱した渇望は、」
昴が見つめる。
「ーーー遂に至高の領域へと突入する。」
遥香が見つめる。
「己が真に迫りて、空手に掴め。」
誰かが、見ている。
「我が
イロウスの内、一体の大型ロウガ種ーーーウォルフが接敵する。
「ーーー迫真空手ーーー」
みきが、目を離せないでいる。
ウォルフの無慈悲な爪が振り下ろされる。
「ーーー《邪拳・夜》」
振り下ろされたウォルフの脚と、黒く染まった田所の拳がぶつかりーーー
ーーーそして、弾けた。