電子生命体に馴染むまで   作:アヤカシ

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第10話 乱闘?

 バンク内での戦闘行為……それは本来スパーリングに近いものになる。

 この空間ではデジモンが命を失うことはなく、奪うこともできない……ここは閉ざされた空間故に意図的に外部から干渉しない限りデータの流出が起きないからだ。

 仮にこの空間でデジモンが死んだとしても、外の様にデータの海に消えることなくデータ修復作業を行えば元通りになるという命の定石から外れた場がこの端末内の常識。

 だから正直に言えば眼前で行われるルール無用の残虐ファイトを放置したとしても大きな問題はないのだが、このままでは施設の調整も出来ないし、何より知ってる顔同士がやり合っているのをただ見てるというのも良い気分じゃないので、一先ず事情を知るべく少し離れた位置で樹に寄りかかって座っていたベルゼブモンに話を聞くことに。

 

「あぁ……戻ってきてたのか」

 

「これは一体どういう状況なんだ?」

 

「次からの護衛役を決めるために闘ってる。

 希望者の中から強い順に上位五体がローテーションを組むと決まったからな」

 

「ベルゼブモンは参加しなかったのか?」

 

「俺は守るのに向いてないから初めから参加する気がなかった、勝って辞退するのも……な」

 

 そう言って苦笑する彼を見て冷めた視線を送るマスティモンとレイヴモン。

 自分が参加すれば勝つことが分かりきっているという様な言葉を聞けば、そんな目をしても仕方ないと思う。

 確かにベルゼブモンも魔王デジモンの一体だけあって高い能力を持っているが、際立って強いとは言えない必殺技に、時間経過で攻撃力上昇と引き換えに生命力が減少していくというピーキーな能力……正直に言えば上位五体に入れるかどうかは微妙なのだ。

 単純な攻撃力では最近復活した鬼と巨人の合いの子の様なタイタモンに及ばないし、防御力もグランドロコモンには届かない。

 広範囲に防ぐことのできないダメージを与える必殺技を持つベルフェモンSMも強敵だし、確率で即死させるリヴァイアモンやリリスモンの火力も侮れない……絶対に勝てる相手といえば見た目が好きで進化退化を繰り返して才能を上げてから進化させずにLvMaxまで上げた究極体以外のデジモン達位だろう。

 

 戦いの原因も分かったので会話をある程度で打ち切り、辺りを見回してみるとベルゼブモンの様に戦いに参加していないデジモン達がチラホラと見えた。

 負けてリタイアした者や端から参加するつもりがなかったであろう者、隅っこで巻き込まれない様に小さくなっている者等それぞれだが、よく見ると戦っているデジモンも今となってはそれほど数も多くないようだ。

 今も闘っているのはタイタモンとリヴァイアモン、ベルフェモンにリリスモン、そしてタイタモンと同じく最近起きた蜂を連想させる女性の機械型デジモンタイガーヴェスパモンの五体。

 残る数が五という事で既にこの戦いの第一目的である護衛役を決めるという目的は達成されているのだが、未だ戦いは激化を続けている。

 

 縦横無尽に飛び回りながら体の大きな三体にヒットアンドウェイを繰り返すヴェスパモン。

 タイタモンの振りかぶる大剣を躱し、持ち手を斬りつけるが深手を負わせるほどの力を持っていない彼女は両手に持つ剣で一撃ずつ撫で斬りにし、タイタモンを噛み砕こうとするリヴァイアモンへ向かう。

 一方もう一体の女性型であるリリスモンはベルフェモンとの一騎打ちを行っている最中である。

 まぁ一騎打ちと言ってもベルフェモンの必殺技は広範囲攻撃なので他の三体も隙あらば巻き込もうとしているようだが……。

 怠惰を司る魔王デジモンであるベルフェモンSMは全ての攻撃が敵を眠りに誘い、色欲を司るリリスモンの攻撃は毒を付与する。

 互いに状態異常が掛かれば自分が負けると分かっているのだろう……派手にぶつかり合っている三体とは正反対の牽制を繰り返す静かな戦いを繰り広げていた。

 

 俺はそんな戦いを固唾を飲んで見守る……訳はなく普通に止めに入る。

 レイヴモンとマスティモンを連れて戦場に近づく俺の存在に戦いを見守っていたデジモン達が気付き、ザワザワし始めるが特に気にすることなく歩を進めた。

 一歩、また一歩と近づく内に戦いの余波が感じられる所まで来て、そこまで来ると流石に五体も此方に気付いて戦いの手を止める。

 一番最初に再起動したのはリヴァイアモンだった。

 それをきっかけに残る四体も動き始め、こちらに向かって走り出す。

 その勢いたるやマスティモンとレイヴモンが俺を守ろうとする程のものだった。

 然程距離が離れている訳でもなかったために五体はすぐに足を止め、俺の前に立つ二体を睨み付ける。

 

「何でマスティモンがヒトナリと一緒にいるのよ!」

 

「長引いているようだったから呼びに行ったまでの事、お前達こそ当事者を無視して何を決めていた?」

 

「強い者が大事な者を守る事は理に適っているのでは?」

 

「ヴェスパ……リリスの甘言に流されたな?」

 

「私が悪いみたいな言い方しないでくれるかしら?

 ヒトナリが誤解するじゃない」

 

「毒婦は黙っておれ、お主には前科があり過ぎる」

 

「黙りなさいレイヴモン、今回の一件でアンタ周り敵だらけだってわかってんの?」

 

「弱者、護衛、不可」

 

「拙者は……ッ!」

 

「落ち着けレイヴモン。

それにしてもタイタモンまでリリス側か……他の参加者達も同じ気持ちか?」

 

 マスティモンが周囲に問いかけると殆どの返答が肯定だった。

 彼女としても否定しにくい内容なのか少しばかり悩んだ後、俺の方へと向き直り尋ねる。

 

「ヒトナリはどうだ?

 この五体の持ち回りで護衛する事に言いたい事は無いか?」

 

「俺としては守ろうとしてくれるだけでも嬉しいし、そもそも危ない目にあうことなんてまずないだろうから誰が護衛役に選ばれても文句はないんだけど……」

 

 最善を尽くそうとしてくれている彼らに文句なんてつけられるはずもなく、それでなくても好意から出た行動なのだから喜びこそすれ否定的な感情は全くと言っていい程なかった。

 俺の言葉からそれが分かったのかマスティモンも小さく頷くと、今回の護衛役決定戦が有効であると宣言する。

 本来一位から順に次からの護衛役に決まるはずであったが、俺がこれ以上闘わないでほしいと頼んだために話し合いで順番が決まることになり、今回の一件はこれにて一件落着となった……レイヴモン及び敗退した者達の心情を除いて。

 

 彼らは俺と接する機会を逃し大なり小なり落ち込んだが、護衛だけが俺に関わる機会ではないとすぐに思い直し、自分たちが持つもので適材適所俺に関わってくることになるのだがそれはまた別の話。

 

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