電子生命体に馴染むまで   作:アヤカシ

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第12話 蹂躙?

 俺のデジモン達が最初に行ったのは場を整える作業。

 此処に居るデジモンの中で最も素早さが高いレイヴモンが自身の羽根を四方に飛ばして、範囲内に居る味方デジモンの素早さが上昇する‘スピードチャージフィールド’を発動。

 次にタイタモンが巨大な剣を地面に刺し、相手の耐久力を下げる‘ガードブレイクフィールド’を発動させた。

 残るグランドロコモンは敵をこの場から逃がさないことに注力しているために、退路を確保しようとした敵デジモン数体をその巨体で弾き飛ばしている。

 

 敵のデジモン達は此方のデジモンの力量をある程度察しているのか、若干青ざめながら三兄弟の指示に従っていた。

 ちなみに三兄弟のデジモンの内訳は、緑の身体を持つ鬼の様なデジモンであるオーガモンと真っ黒な身体で悪魔っぽい見た目のデビモンが成熟期で、歯車のような見た目のデジモンやデフォルメしたコウモリの様なデジモン等が成長期のデジモン達である。

 比較的にウィルス種が多いために、本来であれば相性が悪いデータ種のデジモンであるグランドロコモンの仕事に支障が出るところだが、レベル差が掛け離れているために其程大きな問題は無いらしい。

 オーガモンの必殺技である‘覇王拳’……某格闘ゲームの主人公が使う技に似通った技を受けても、成長期デジモン達の波状攻撃を受けても大きなダメージを食らうこと無く、逆に反撃で数体が瀕死になる位である。

 その光景を見て漸く三兄弟もいざという時の退路の確保は出来ないと察したらしく、グランドロコモンを相手にしていたデジモン達をタイタモンとレイブモンの相手に回し、現在戦える全デジモンで二体を相手にする事を決めた様だ。

 

「後ろの奴は後回しにして、全員で前に居る奴を叩け!」

 

「拙者達の方が弱いと判断したのか……愚かな」

 

「残念、戦力、不足」

 

 固定ダメージを与えるデビモンの必殺技‘デスクロウ’は今までで一番大きなダメージだったが、それでもタイタモンの巨体を仰け反らせる事すら出来なかった。

 そして此方の攻撃……タイタモンの振りかぶる巨剣はデビモンの片腕を斬り飛ばし、近くに居た三体の成長期デジモンをも巻き込んだ致命の一撃となり戦況をより決定的なモノへと変える。

 だめ押しとばかりにレイヴモンがデビモンへと斬りかかり、一刀の下で仕留めてオーガモンへと矛先を向けた。

 気付けば残る敵は二体、遂に数の優位も失った三兄弟の顔色は蒼く染まっている。

 

「そ、そんな馬鹿な……桁が違いすぎる!

 何でこのレベルの奴が二階層に居やがるんだ!?」

 

「「ど、どうしようアニキィ?!」」

 

「お主等は既に詰んでおる、観念して縄につけ!

 善なる民草を食い物にしてきたツケを払えぃ!」

 

「逃走、不可、観念」

 

「クソが……なにやってんだオーガモン!

 とっととこいつ等片付けろ!」

 

 オーガモンは主人の激を受けて再び‘覇王拳’を放つが、相性が良いはずの種族であるグランドロコモンに通らなかった攻撃が二体に通じるはずもなく、事もなく受け止めたタイタモンの横からレイヴモンが飛び出して横一閃。

 上半身と下半身とを分かたれたオーガモンはデータの海へと還り、残る所は成長期が一体だけ。

 コウモリ型のデジモンであるピコデビモン……その身体は見ていて可哀想な程震えており、既に勝敗は明らかだった。

 

「役立たず共がっ……せめて時間稼ぎ位しろってんだ!」

 

「時間を稼ぐも何も、退路が塞がれているんだから時間稼ぎなんて無意味だと思うのだが……なんにせよコレで詰みだ。

 始めに言った通り処置を行わせて貰います」

 

「悪事がどうのこうの言ってたが……俺達に何をしようってんだ?!」

 

「簡単な事です、今後貴方達のアバターには常時監視の目が働く様になります。

 コレは一度アカウントをデリートしようが消えません。

 詐欺や脅迫などを感じさせる行動をとれば自動的に行動のログが警察に送られるシステムなので慈悲はありません。

 以後はネット上での行動及び発言に気を付けて生活してください」

 

「ふざけんな、そんなの認められっかよ!

 お前等手を貸せ、コイツのアバター直接ボコってウィルス仕込むぞ!」

 

「「わ、分かったぜアニキ!」」

 

 言うやいなや真っ直ぐ此方に走ってくる三人と一匹。

 目算距離にして凡そ15m程の距離なので上手くいけば一人位は俺まで届くと思ったのだろう……しかしそれは甘い考えに他ならない。

 彼らが動くと決めた時には既に此方も動き始めているのだから……。

 

「生身の人間が拙者達の横を抜けて長井殿の元へ行けると本当に思っていたのかお主等は?」

 

「愚鈍、残念、未到」

 

 レイヴモンが刀と金属製の翼を手下二人の首筋に当て、タイタモンは剣を放り投げてから巨体に見合わない速さで一人と一匹を拘束する。

 大きな手で両腕ごと拘束しているので碌に暴れる事も出来ず、陸に上げられた魚の様な動きを繰り返すリーダー格と、既に諦めの境地に達して身動ぎ一つとらないピコデビモン。

 

「ありがとう二人とも、これで漸く仕事を終えられるよ。

 今から措置するから、もう少しの間拘束しといてね」

 

「承知……そなた等も動くでないぞ?

 電子体とはいえ首を落とされたくはなかろう?」

 

「「ひぃぃいい!」」

 

「貴様、逃走、不可。

 不動、賢明、不殺」

 

「糞がっ! これから大稼ぎって所だってのに!」

 

「人を騙して稼ぐなんて止めて、普通に働いて稼ぐんだな」

 

 そう言って一人ずつ自動通報処置を施していく。

 処理の際に負担が掛かるために対象者はスリープ状態に陥るので、三人に処置を施した後は彼らのピコデビモンに護衛を任せて、俺達はその場を後にする。

 

「これにて一件落着……しかし我らは外に来る事も滅多にない身。

 急ぎ帰る必要もなければ、少しばかりゆっくりと歩くのはどうかと拙僧は具申するのだが……いかがか?」

 

「別に構わないけれど、タイタモンとグランドロコモンはそれで良いか?」

 

「肯定、無論、賛成」

 

 残る一体も異存はないらしく、心なしか走る速度を緩める。

 その結果心配したマスティモンが迎えに来て、提案者であるレイヴモンはこってり絞られることになるのだが、それでも彼の表情は何処か満足げなものだった。

 ただし帰り着いた先に殺気立ったバンクの皆が雁首揃えて待ち構えていたのを見た時は、大分引き攣った表情をしていたが……まぁ何はともあれ無事帰って来れて良かったと言うことで。

 

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