ハッカー三人組の一件以降、偶に御神楽さんからの頼み事を受ける様になった俺だったが、基本的にやることは今までと変わらずデジモン達の世話がメインである。
ただ最近は電脳探偵の持つデジモンも増えて来ており、尚かつ俺のデジモン達も漸く全員目覚めたので大分忙しくなってきた。
特に前者のデジモン達は未だ成長期や成熟期が多く、精神的に幼いものも多いので中々に大変である。
恐らくまだ軍師USB持ちプラチナヌメモンによる経験値稼ぎ(最大獲得経験値40倍以上)が出来る程進んでおらず、ハグルモンクエ稼ぎ(比較的序盤で経験値効率が良いクエスト)もしていないのだろう。
まぁあれは作業感が凄くて合わないプレイヤーも多いだろうから分からなくもない。
だがプラヌメ稼ぎは図鑑埋めをする際にあった方が確実に効率が良い……もしも究極体がバンクに来る様になったら御神楽さんにそれとなく伝えて貰える様に頼んでおくことにしよう。
それはさておき今の話をしよう。
作業量も増えてデジモン達の手も借りて掃除等を行う様になった俺だが、マスターに似て大人しい御神楽さんのバンクと友好度カンストしている俺のバンクは全く問題なく作業を終えることが出来る……しかし探偵君のバンクは別だ。
友好度が低いのか警戒や威嚇、無関心ならまだしも……外敵排除とばかりに攻撃してくるデジモンが数体いるのは正直困っている。
護衛のデジモンが居るから現状身の危険はないのだが、俺の身が危険になる前に護衛がそのデジモン達を滅しかねないのが問題なのだ。
というか攻撃される原因がそれ何じゃないかと最近は睨んでいる。
何せ俺に向けて攻撃する時は明らかに手を抜いているのが分かるのだが、誰かが守りに来た瞬間に矛先を変えた上に火力が上がるのだから分かり易い。
強い相手と戦う事で経験を得たいのか、それとも単に警戒行動の一貫なのかは彼らの口から語られない限り定かではないが、とりあえず仕事の妨げになるから勘弁して欲しいところだ。
「と思うんだけど、どうしたもんかな?」
「私に聞かれても困るわ……普通に聞いてみたら良いと思うのだけど?」
「いつもより一層ピリピリしてるみたいだし、流石に聞きにくいよ………ところでリリスモン、俺を守る為なのは分かるんだけど、何も此処まで密着しなくても良いんじゃないか?」
「何を言ってるの!? 寄れば寄る程入り込む隙間が小さくなって守りやすくなるんだから此処は譲れないわ!」
意地でも離さないとばかりに腕を抱きしめるリリスモンに、呆れを隠さないタイガーヴェスパモンの冷め切った視線が突き刺さっているが、全くと言っても良い程気にしていないらしい。
痛みは感じないが、離れようとしてもビクともしない絶妙な力加減に感心すると共に、普段仲間とする小競り合いの際にもこれ位の手加減が出来ていれば助かるのだが……言っても詮無きことなんだろう。
色々と割り切って警戒心の高い成熟期達の視線を感じつつも、作業を終わらせると怖ず怖ずと一体の成熟期のデジモンが此方に近づいてくる。
「終わったのヒトナリ?」
「ん、そうだね……グレイモンは何か用かな?」
「あー……うん、一つ言いたい事が有ってさ。
ヒトナリも感じてると思うけど、みんなも別に悪気があってピリピリしてる訳じゃ無いんだ。
いつも色々やってくれてる事にはみんなも感謝してるんだよ」
彼の言葉に一部のデジモン達が気まずそうに小さく頷いていることから別に気を遣った嘘という訳ではないのだろう。
その事に少しだけホッとしたが、すると今度は張り詰めていた空気が気になってくる。
元から凄く友好的という訳ではなかったけれど、ここ最近の彼らの様子は何処かおかしい。
そんな俺の疑問に気付いたであろうグレイモンが話を続ける。
「最近彼が外で色々と危ない目にあってるらしくて、留守番組のオレ達は此処に居る限り彼の力になることが出来ないからさ……力を持て余し気味なんだ」
「つまりストレス解消兼訓練に付き合って欲しいという事ですか……殊勝な心掛けですが、貴方達の気持ちを優先してヒトナリさんに心労を掛けていたことには怒りを禁じ得ません」
「ヴェスパの言う通りね!アンタ達のストレス事情なんてどうでも良いけど、そんな事でヒトナリに迷惑掛けてた事は万死に値するわ……ミレイの関係者じゃなければ此処でデータの塵にしてた所よ」
彼女達もずっと警戒されっぱなしで苛々していたのか大分攻撃的になっていた様だ……いや元からかもしれないけど。
何にせよ二人は俺が止めなければ、下手すると此処に居るデジモン達全員がデータの虚空に消えかねない。
「落ち着いてくれ二人とも、彼らとしても此方に害意あっての事じゃないのだしね。
ここは一つ大人になって……な!」
「「ヒトナリ(さん)がそう言うのなら……」」
「そう言ってくれて助かるよ……ちなみに君たちの頼みに関してはちょっと了承しかねる」
「やっぱりかぁ、そりゃ失礼に失礼重ねた様なものだし当たり前と言えば当たり前か」
「いやそう言う事じゃなくて、単純に成熟期と究極体じゃ戦力に幅がありすぎて訓練にならないから」
これは純然とした事実であり、進化と退化を繰り返して技を厳選した上にレベルと才能を最大まで上げている究極体二体を相手に、レベル上限を上げた訳でもない成熟期以下のデジモン達が戦えば、タイプ相性が悪くてもゴリ押せる位の戦力差が出てしまう。
これを出来るだけ分かり易く、尚かつ傷つけない様にオブラートに包んで伝えると、グレイモン達は残念そうに引き下がった。
でも彼らの気持ちも分からなくはないので、一つ手を貸して上げることにする。
「俺の所にいるデジモン達の中には最高まで強化した成長期と成熟期もいるから、今度彼らを連れてきてあげるよ。
ただし彼らがOKしてくれたらの話だけどね」
「ホント?!ありがとうヒトナリ!」
「礼を言うにはまだ早いし、一つだけ気を付けて欲しい事がある。
彼らは見た目成長期と成熟期だけど何度も究極体になった経験があるし、さっきも言ったとおり最高まで強化してるから甘く見ると怪我だけじゃ済まなくなるから気を付けてくれ」
「才能と技の為だっけ……え、でもそれなら究極体に進化させておいた方が良いんじゃ?」
「強さ的にはそうなんだけど見た目が好きで、つい……ね」
昔アニメで見た時からレナモンとテイルモンが凄い好きだったんだよ俺。
彼らも俺を捜すために来ていたらしく、先日無事復活した訳だが見た目とは裏腹に他の究極体と遜色ない貫禄のようなものがあって普通に驚いたが、俺の姿が目に入るや否や見た目に準ずる態度を演じ始めたので周囲の子達に笑われていた(その後大乱闘が発生した)。
話を戻そう、俺が彼らを育てた理由を話すと背後から圧力を感じたので振り向くと、そこには貼り付けたような笑顔で此方を見る二体のデジモンが……。
「初耳ね……何、ヒトナリはああいうのが好みなの?」
「確かに愛らしい見た目ではありますが、やはり強さを伴わなければ優れたデジモンとは言えないと私は思うのです」
「え、好みっていうか可愛いとは思うよ?そうでもなければ態々退化させたままにはしないしね」
「………思わぬ伏兵がいたものね、これは少し対策を考えないとダメかしら」
「美醜は戦力に関係しない……しかしそもそも選ばれなければ力を振るう機会も無い。
どうしたものだろうか?」
「あの、二人とも?なんか勘違いしてない?ねぇ聞いてる?」
この後帰ってから二体が今回の事を他のデジモンに話した事で一部のデジモン達が詰め寄ってきたり、件の二体がテンション上がって抱きついてきた事で一触即発の空気を醸し出したりして色々と大変だったが、肝心の訓練に関しては問題無くOKしてくれたので良かった。
ただそれからだろうか、偶に俺の寝室に人型デジモンやあの二体のデジモンが入り込むようになったのは……いや嫌われるよりは全然良いんだけどね、好意がより大きくなってきている気がして若干不安を覚えなくもないけれど嫌われるよりは全然良いんだけどね!