電子生命体に馴染むまで   作:アヤカシ

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第14話 外出?

 それを目にしたのは偶然だった。

 白と黒で彩られたシマウマを想像させる柄であり、無数の触手が絡み合っているようなその形。

 データを無差別に喰らうこの世界のバグのような存在……イーター。

 サイバースルゥースにおいて中ボス的な役割を成すこれに出会ったのは悪質ハッカーを懲らしめる仕事の帰り道での事である。

 人間の負の感情が生み出したデータ生命体の天敵とかなんとかだったと俺の記憶が告げていたが、正直そこら辺の事はゲーム内で語られていた以上のことは知らないし、何ならそこら辺はデジタルワールドで語られている伝承の関係でデジモン達の方が詳しく知っているので、さっくりと遠距離攻撃で駆除した訳だが……これが出てきたということは物語が終わりに近づいてきている証左。

 急ぎラボへと戻り、一緒に居たデジモン達を先に戻してからミレイ女史へと報告を済ませると彼女もその事に関して気を揉んでいたらしい。

 

「少し前から目撃情報が増え始めていて、つい二日前にも目撃情報があったばかりなのだけど……貴方の言っていた道筋から大きく外れてはいないようね」

 

「余程探偵君達がヘマをしない限り大まかな流れは流石に変わらないと思うよ。

 それが主人公ってものだしね」

 

 俺の言葉を聞いた彼女は少しだけ眉を顰めたが、特にそれ以上何も言わずに自身の研究へと再び意識を向けた。

 以前俺が言った通り電脳探偵が訪ねてきたと伝えられた時に俺はサイバースルゥースのメインストーリーを知る限り全て彼女へと教えていたのだが、その時も彼女は眉を顰めていた気がする。

 実際に会ったこともない電脳探偵である彼を全面的に信用している俺への不満か、確定された未来に向かいつつあるこの現状に対する無力感か、それとも他の何かなのかは分からないけれど、表情筋を殆ど動かさない彼女が俺にも分かるレベルで感情を漏らすと言う事はそれなりに強い思いを抱いているのだと思う。

 

 それから凡そ1週間の時が経ち、今日もまた既に日常と化したデジモン達の世話をしようと端末に触れようとしたところでミレイから声が掛かる。

 話を聞くにどうやら現実世界とデータ世界の境界が曖昧になり、今なら外に出ることも可能との事。

 それはデジタルワールドからイーターの所為で人間嫌いになったロイヤルナイツ達が現実世界に現れたという証拠であり、もうすぐ世界の命運を決める戦いが始まるという証明でもある……が、俺のする事は変わらない。

 俺のデジモン達もこの世界の騒動に積極的に介入するつもりは無いらしく、静観の構えを崩さない。

 一応理由を尋ねるとその答えは、既に目的である俺を見つけた時点でこの世界に用はなく、何なら元いた世界線へと戻っても構わないのだが、戻ると俺の育てたデジモン達の数が今よりも更に増えるために別の生き甲斐を見つけた奴らに俺の時間を割かれるのは嫌だからという私情以外の何ものでもない理由だった。

 他にも俺のデータ消失が怖いとか、単純に面倒臭いとか幾つか理由はあったようだから、それを包み隠さず現家主兼雇用主に伝えたところ、「ここに住んでる以上最低限働いて貰うけれどそれ以上は望まない」とのお言葉。

 結果THE高みの見物と相成りまして候。

 

「と言う訳で折角外に出られるのならと、この世界の現実世界へとお出かけすることになりました。

 定員は三名で、身体の大きすぎる子達は現実世界だと色々不便だから後日時間を作るから今回は我慢してくれると助かるかな?」

 

 この発言を聞いた瞬間リヴァイアモンの様な見るからに巨大な体躯を持つもの達が残念そうに距離を取り、タイタモンやボルトモンのような人ではあり得ないサイズだけど大きすぎるとは言いきれないメンバーが不安げな表情を浮かべた。

 そんな中堂々と一歩を踏み出し、優雅に俺の横に立った女性型デジモンが一体。

 

「外出には興味無いけれどヒトナリと一緒というのなら話は別……まぁ私は確定として他の二体を選ぶのが大変ね!」

 

「まぁ今回は妥当か……人と同じ様なサイズで最も火力が出せるのはリリスだからな」

 

「分かってるじゃないのマスティモン!」

 

「素行に不安もあるがロイヤルナイツと遭遇する可能性が零でない以上戦闘力は大事なファクターの一つ……やむを得ない判断だ」

 

「失礼極まりないのだけど、今は機嫌が良いので聞かなかった事にするわ……それで残りは誰が来るのかしら?」

 

 貴重な一枠が埋まったことで(にわか)に騒がしくなる場をマスティモンが抑える。

 どうやら彼女は今回襲撃に備えて索敵に回るらしく、今回の外出枠争奪戦には参加しないようだ。

 場の主導権を握った彼女がまず行ったのは選別である。

 サイズ的に有りか無しか微妙なラインを明確にして弾き(その際揉めるかとも思ったが、逆らえば異次元送りと言うのが分かりきっていたのであっけなく完了)、普段の生活態度から問題を起こしそうなメンツを除外していく(これまた揉めるかと思ったが、ピノッキモンが食って掛かった瞬間に異次元送りされたことで終息)。

 そして最後に見るからに銃刀法違反なレイヴモンとベルゼブモンを除外して、他にも俺との同行回数などを加味した結果として選ばれたのはレナモンとロップモンだった。

 

「まぁアタシとしても外の世界に興味が無い訳じゃ無いから良いけど、後で逆恨みとかされるのは勘弁して欲しいんだけど?」

 

「ボ、ボクもレナモンと同意見です!」

 

「別に問題無かろう、決めたのは私で君達は選ばれただけだ。

 それに騒ぎそうな直情的に生きてる奴は大体が大型……ヒトナリが後日埋め合わせをするという約束を違えない限り暴れないさ。

 唯一騒ぎそうなピノッキモンも今は異次元なのだから何の問題もなかろう」

 

「「……マスティモンがそう言うなら」」

 

「あぁ気にせず楽しんでくると良い」

 

「……どうやら決まったみたいだね、それじゃあ行くのは明日の昼過ぎ。

時間が時間だから寝坊はないだろうけど、一応気を付けるように」

 

 俺がそう締めると、各々思い思いの場所へと散り、俺も彼らの所を適当にブラブラしてから自室へと戻った。

 ベットに寝転がりながら、明日の外出へと思いを馳せる。

 現実世界とは言っても俺の居た世界ではないし、特に予定らしい予定もない……あの三体が何処も行きたいところが無いというのなら本当にブラブラするだけになりそうだが、まぁその時はその時で世界の相違を探すのも楽しそうだなと考えながら、俺は襲い来る眠気に身を任せた。

 

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