電子生命体に馴染むまで   作:アヤカシ

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第7話 厨二?

 リリスモンが戻ってきて一番最初にしたことは、マスティモンを殴りに行く事だった。

 知力型(魔法特化型)故に魔法で攻撃するのが当たり前の彼女が生身での攻撃を選んだところから彼女の怒りが感じられる。

 まぁ見事に受け流された上にもう一日異次元送りになった訳だが……俺のやることに変化はない。

 デジモン達の食事を用意してトレーニング器具の整備、そして部屋の掃除。

 仕事が終わった後は体力の続く限りデジモン達と触れ合って、部屋に戻って休むというのが此処に来てからのサイクル。

 御神楽さんのデジモン達は物分かりが良い子ばかりで手間が掛からないのだが、俺が育てたデジモン達は癖が強くて中々に大変だ。

 そしてまた一体眠っていた仲間が目を覚ます……起こす際に万が一にもデータ欠損などをしないようにマスティモンと魔王デジモン立ち会いの下で行われる目覚めの儀式。

 バンクと呼ばれる広い部屋の中に浮かぶ二十を越えるデータで出来たキューブ、それらの中から一つを選んでデータを解凍するのが儀式内容である。

 解凍されるデジモンを決めるのは基本的にランダムであり、グランドロコモンは例外……後回しにすると問題を起こすであろう事が分かっていたからこそ例外として最初に起こしたという理由があったためだ。

 故に今回起こすデジモンも誰を起こすかは決めておらず、決定権こそ俺にあるが解凍前はどれが誰か分からないので解凍するその瞬間までドキドキする。

 無作為に選んだ一つをマスティモン達の下へと運び、中央に置くと早速彼らは儀式に取りかかった。

 

「今回選んだのはヴェノムヴァンデモンか……確かデーモンが担当していたな」

 

「確かに俺の担当だな、まぁさほど問題のある奴でもないから大丈夫だろうが、念のため少し離れておけよヒトナリ」

 

「さほどって事はちょっと問題あるって事だよね……うん分かった離れとくよ」

 

 俺の記憶の中にあったヴェノムヴァンデモンの姿は毛深く大きな二本の脚に紅く長い二本の腕、そして黒い翼膜を持つというデーモン程ではないが見るからに悪魔と言っても過言ではない姿をしているウィルス種の究極体。

 その大きさもデーモンの二倍以上と中々に巨大で、顔も愛嬌があるタイプではなく別段好きなデジモンではなかった。

 巨大な身体は確かに浪漫だし、悪魔的な造型は厨二心を擽られるけれど、大きさであればグランドロコモンの方が大きいし、厨二っぽさなら黒いライダースーツを着て三つ瞳を持つ二丁拳銃で攻撃するデジモンであるベルゼブモンの方が上だ……要は特出したものを感じられないのだ。

 故に特にテンションが上がることも下がることもなく少し離れたところで見守っていると、普通に作業は終わり無事彼は復活した。

 記憶通りのその姿をボーッと眺めていると、ふと彼と目が合った。

 彼は近くに居たデーモンに何かを告げると、二体揃って此方へ向かって歩いて来るではないか……周りが止めないので悪意等がある訳ではなさそうだが、如何せん見た目とサイズから来る圧が凄い。

 だが実質初対面で表立って負の感情を露わにすると、後の接し方に悪影響を及ぼす可能性が大きくなるので此処で退く訳にはいかないのだ。

 その場でゆっくりと大きく深呼吸をして彼らを待つ……といっても十秒足らずで到着したので一度しかできなかったのだが。

 

「貴様が……奴を裏で操っていた者か」

 

「操るっていうと多分語弊があると思うけど、そういう見方もできるかな?」

 

「二つの世界が混ざりし混沌なる世を正常なる流れへと修復した奴も上位存在の手で踊る一人形に過ぎなかったという訳だ。

 かの出来事も貴様にとっては一時のグラン・ギニョールに過ぎず、人の生き死にすら赤子の夢よりも儚い一幕なのだろう。

 あぁ全くこの世は未知で溢れている……堪らんなぁ」

 

「え、うん……ん?」

 

 何を言ってるんだ彼は……言い回しが独特すぎて意図が掴めない。

 何故か両腕で自分の身体を抱きしめている彼を尻目に、デーモンが若干混乱している俺へと耳打ちする。

 

「奴は悪い奴じゃないんだが、あの話し方だけは俺も困っている。

 恰好をつけたいという訳でもないらしいんだが、本当のところは分からん」

 

「そ、そうなのか……デジモンも厨二病ってなるのかな?」

 

「ちゅうにびょう? どんな病気なんだそれは」

 

「あ~……うん、拗らせても身体に悪影響は微塵も無いけど、周囲の人が接しにくくなる面倒な病気かな」

 

「よく分からんが、大した問題はなさそうだな」

 

「貴様等一体何をコソコソと話しているのだ? まさか全てが失われし可能性世界にて開闢の一矢を打ち込まんとする算段をしている訳ではあるまいな?」

 

 なんか悪化している厨二病患者が態々聞こえない様に話していた会話に割り込んできた。

 彼との会話は大変そうなので救助を求めるために辺りを軽く見回すが、既に皆距離を取っており我関せずを貫くつもりなのが見てとれる。

 彼らに頼ることが不可能だと判明した今、俺は覚悟を決めて若干引き攣った笑みを浮かべつつ対応する。

 

「別に大したことを話してないさ……そんなことより何処か身体で違和感のあるところはない?」

 

「問題無いが……まさか復活の儀にて我が力を削ぐ術式を?!」

 

「そんなことをして何になるというのだ馬鹿者、そもそも貴様よりも力を持つ者が此処には相当数居るわ」

 

「くっ……ならば先程の耳打ちは一体何だというのだ!?」

 

「本当に大したこと話してなかったんだよ、君の話し方が独特だなって思って話してただけなんだ」

 

「我が言の葉の紡ぎ方に問題があるとでも?」

 

「別に問題という訳じゃ無いんだけど、(そこまで酷いのは)珍しいなぁって……」

 

「そんなことで一々絡んでくるな! 七面倒臭い奴だな貴様は……ともかくこれからまた貴様は此処で暮らすことになるのだから、あまり周りの連中と問題を起こすなよ?」

 

「問題など起こすはずも無かろう? 我らは皆同士、数多の危機を共に乗り越えた同胞(ハラカラ)なのだから」

 

 両腕を広げてそういった彼はものの見事なドヤ顔を披露し、高笑いをあげながら先程散開したデジモン達の下へと歩いて行った。

 遠くから「ちょ、こっち来てるんだけど!?」「儂苦手なんじゃよなぁ彼奴」「アイツ……何言って……るのか分か……らない」等の声が聞こえてきていたが、悪意や敵意は感じ取れなかったので俺は大人しく仕事に戻ることに……決して先程助けに入ってくれなかった事を恨んでいる訳ではないよ?

 

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