遊戯王GX 魔法使いの少女   作:時任 嵐

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苛立ちと逃亡

 今までは、心地よい温かさを感じていた

 

 その温もりをくれるあいつは、いつも隣にいてくれて

 

 辛いときも、どんな時でも

 

 俺に力をくれたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あいつが翔を追いかけていったとき、何故だか言いようのない苛立ちを感じた。

 本来は兄貴分である俺があいつを元気付けに行かなきゃなんないのに、どうしてか足が動かず、その場で止まってしまった。

 しょうがないから明日香に、翔のお兄さんのことなんかを聞いて、翔じゃなくてそのお兄さんであるカイザーって奴に聞きに行くことにした。

 何でだろうな? ほんとは俺もすぐに翔を追いかけて、翔から聞けばいいことなのに。

 

 舞花が翔を追いかけていったから

 

 

 どうしてこんなに寂しくて、不安で、苛々させられてるんだよ

 

 

 

 思えば万丈目のことがあった時、少しの間舞花が部屋に閉じこもったときも同じようなものを感じていた。ただ、あの時と違うのは苛々していることくらい。

 

 あぁもう! ほんっとに訳わかんねえ!!

 

 それで俺は結局カイザーを探しに行って。ようやく見つけたと思ったらそこには舞花と翔がいた。

 俺は気にせずデュエルを申し込もうとした。そうしたら、舞花のその日結んでいなかった髪がふわっと広がった。

 

 ―――十代くんとデュエルしてください

 

 俺が言おうとしていたことを先に言われて少しびびった。俺の考えていることが分かったんじゃないかって。

 そう考えたら何故か少し嬉しくなって、何だか照れていた。悪くない、心地いい感情を感じていた。

 

 でも、違った

 

 舞花の顔を見てみたら、俺に何かを伝えようとしていた。多分、あいつにはあいつの考えがあったんだ。翔のために、何かを、考えて、いたんだ。

 それが分かったら、今度は胸が苦しくなって呼吸が少し乱れた。苛々が再発して、自分でも訳も分からず一瞬だけ翔を睨んだ。

 でも何故か、舞花の願いを叶えてやりたいと思って俺はデュエルしたんだ。

 

 

 

 デュエル中に聞く、舞花の声援は、いつも心に届いて

 

 嬉しくて、デュエルがもっと楽しくなって、それでいつも力が入って

 

 

 

 他の誰かの応援じゃ、こうはならないんだ。だから、迷宮兄弟とのデュエルが終わったあと、俺は舞花にお礼を言ったんだ。

 いつかの暖かい手の温もりを、もう1度だけ感じたくて、手を出した。でも、そうしたら、なぜかあいつはその手を弾いた

 

 

 今までされたことの無い拒絶を受けて、硬直して、そして、心が痛くて

 

 

 

 それでもまだ、あいつと一緒にいたいって思えて、

 

 差し出した手を、そのまま宙にぶらさげたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつでもあの人の隣にいたいと思っていた

 

 でもその場所は、幸せであると同時に苦しくて

 

 苦しいと同時に胸が痛くて

 

 ほんの少しだけ、後ろを歩こうと思ったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思えば、廃寮から帰ってきた後から、少しずつ私は距離をとり始めていた。

 

 いつもなら、校長先生の下に行かずに十代くんの下へ向かうのに

 

 どこかで自分の行動に違和感を感じていて、でも自分の行動に納得もしていた。

 

 

 1番に、なれるなんて、思えなかったから

 

 

 私は顔も可愛くなくて、背も低くて、スタイルも良くなくて、明日香ちゃんよりもデュエルが弱いから

 

 

 そして明日香ちゃんはきっと、十代くんを気にし始めていて、

 

 

 私を、全てにおいて、上回っていて、ミス・デュエルアカデミア、でもある、明日香ちゃんが、いて

もうきっと、私は、十代くんの、1番に、なれる、なんて、思えなかった、から

 

 

 怖かったんだ。これ以上好きになることが

 

 

 

 胸が締め付けられるように痛くて、心が張り裂けそうなくらいに苦しくて

 

 日が経つ毎に、好きが増す毎に、痛みも苦しみも大きくなっていって

 

 

 

 辛くて、今にも全部壊れてしまいそうで、

 

 私は、差し出された手を、弾いていた

 

 

 

 そのことは後で謝って、十代くんは許してくれた。

 そして、私はある決意をした。

 

 

 もう、この胸の内を、ずっと中に秘め続けて

 

 隣じゃなくて、少しずれた場所の、彼の笑顔が見れる場所に行って

 

 

 私は、逃げ出すことを決めたんだ

 

 

 

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