十代&舞花
LP8000
モンスターカード なし
魔法・罠カード なし
万丈目&江戸川
LP8000
モンスターカード デビルゾア アームド・ドラゴンLV7
魔法・罠カード 禁止令 融合禁止エリア 伏せカード2枚
「何もかもかなぐり捨ててでも、お前たちに勝つ!!」
万丈目くんの開いたリバースカード、融合禁止エリア。そのカードの効力によって、十代くんの融合は発動することさえ出来なくなってしまった。
「くっ……。E・HERO バブルマンを攻撃表示で召喚」
融合の出来なかった十代くんは、融合素材にしようとしたバブルマンを召喚する。そして、今、私たちのフィールドのカードは0枚。
「バブルマンの効果発動! このカードが召喚に成功したとき、フィールドに他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローできる!」
タッグデュエルでは生かし辛いと思っていたバブルマンの効果を発動して、デッキからカードを2枚引く。
とにかく、今私たちがするべきことは万丈目くんの2枚のカード、『融合禁止エリア』と『禁止令』を突破することだ。
「万丈目! E・HEROの強さは融合だけじゃない! E・HEROと魔法・罠カードの連携にある! 速攻魔法発動、バブル・シャッフル!!」
バブルマンとアームド・ドラゴンの2体が泡に包まれる。ちょっとずつ、攻撃体勢から守備体勢へと動かそうとしている。
「バブル・シャッフルは、バブルマンと相手のモンスター1体を守備表示にし、その後バブルマンを生贄にして手札のE・HERO1体を特殊召喚することが出来る!」
アームド・ドラゴンLV7の守備力は1000。そして、十代くんの手札にはさっき呼び出そうとしていたテンペスターの融合素材であるスパークマンがいる。
これで、アームド・ドラゴンを戦闘で破壊することが出来る!
十代くんは、切り札である融合モンスターを封じられているのに、相手モンスターに対して決定打を与えようとしている。
しかし……
「あまい! リバースカードオープン!」
そのカードを開いたのは……江戸川さんだ。
バブルマンとアームド・ドラゴンから泡が消えていく……
「な、なにっ!?」
「マジック・ジャマー!」
マジック・ジャマー
カウンター罠を代表するカードだ。
手札1枚をコストに、魔法カード1枚を無効にするシンプルな効果。
しかし、その効果は今は絶大だ。
十代くんのバブルマン、万丈目くんのアームド・ドラゴンは攻撃表のままフィールド上に残ってしまった。
「くっそぉ……。カードを1枚伏せてターンエンドだ」
十代くんは残念そうにターンを終えた。でも、考えていることはなんとなく分かる。
こんなに簡単に終わるなんて思ってない。
また、次の手を考えてあのモンスターを倒すんだ。
「俺のターンだ! ドロー! 強欲な壷を発動し、デッキからカードを2枚ドローする!」
次のターンは江戸川さん。彼のフィールドにいるデビルゾアは、万丈目くんのLV7によって霞んでしまっているようにも見えるが、しかしその強大な攻撃力ははっきり言って脅威だ。
「バトルだ! デビルゾアでダイレクトアタック! デビル・エクス・シザース!!」
デビルゾアが向かってくるのは、今フィールドの開いている私の下。最上級の力をもつ悪魔が手を十字に重ねてクロスに切りかかってくる。
「きゃぁ!!」
十代&舞花
LP8000→5400
十代くんのバブルマンを無視して、私へのダイレクトアタック。モンスターの破壊は万丈目くんのアームド・ドラゴンに託したということだろうか?
やっぱり強い
あの二人も、自分たちのデッキの特性を把握している。
しっかり二人の息を合わせて戦ってきている。
「舞花……」
「うん」
十代くんと目を合わせる。ピンチを感じている、この状況で
私たちは笑ってこのフィールドを見ていた。
「カードを1枚伏せて、ターンエンド」
「私のターン、ドロー!」
攻撃を受けた私のターン。
確認しよう
相手フィールドにはアームド・ドラゴンとデビルゾアの2体の最上級モンスター。
対する私たちのフィールドにいるモンスターはバブルマンのみ。
さらに、私たちは今、それぞれの切り札を出すことを封じられている状態だ。
「けど……」
禁止令の効果を頭の中で確認しなおす。
そうだ。私にはあの2枚を突破できる方法がちゃんとある!
「私は手札から魔法カード、古のルールを発動! このカードは、手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚することが出来る!」
とたん、観客からのざわめきが大きくなる。私が何をしようとしているのか分かったのだろう。
禁止令の効果は、プレイの不可
だけど、他のカードの効果による召喚は封じられていない
だから、このカードを使えば場に出すことだけは出来る
さあ、行こう
手札のカードをやさしく引き抜く。
一瞬だけ暖かさを感じた後、デュエルディスクにセットした。
「最後まで……私と共にっ! 来て、ブラック・マジシャン!!」
フィールドに降り立つアメジストににた紫色。
両手を組んでその知性に威厳をつけている魔術師。
私の大好きなカード。
ブラック・マジシャンがフィールド上に降り立った。
ブラック・マジシャン
ATK2500
「だが、分かっているんだろう? 禁止令が出ている状態で指定したモンスターが出てきた場合、その一切の行動を禁止する!」
ブラック・マジシャンの体に重圧がかかる。その行動一切を封じ込めるように。
ブラック・マジシャンはその場に膝をつけた。
そう、禁止令はプレイを制限するだけじゃ終わらない
禁止令が場にある限り、ブラック・マジシャンは攻撃することも表示形式を変更することも、(しないだろうけど)生贄に捧げることも出来ない。
「分かってるよ……だけど、この状態でも専用サポートカードは使える!」
手札から引き抜いたのは、前のタッグデュエルでも使ったカード。
禁止に制定されてしまった強力カードと同じ効力をもつ強力なカード。
ブラック・マジシャンの攻撃の名前の付いた魔法カードだ。
「行くよ! 魔法カード発動! 『
膝をついていたブラック・マジシャンの体から重圧が消え、高く飛び上がる。
角度的に相手モンスターの頭上を超え、相手の魔法・罠カードを狙える位置まで飛び上がった。
これで、あのカードを破壊して行動できるようになるっ!
ブラック・マジシャンが杖の先から漆黒の魔力を放つ。その魔法が相手二人の魔法・罠を破壊しに向かっていく……
刹那
「リバースカードオープン!!」
ブラック・マジックが反転してブラック・マジシャンに向かって襲ってくる。
一瞬の出来事
ブラック・マジシャンが自らの放った魔法によって、悲鳴をあげて破壊されてしまった。
十代&舞花
LP5400→2900
「な……なに……?」
一瞬、何が起きたのかが分からなかった。
だけど、起きた状況……
魔法・罠カードを破壊しようとし、それを無効化され、私のモンスターが破壊され、そしてダメージを受けた。
そんな効力をもつカウンター罠を、私は知っていた。
「アヌビスの……裁き……?」
江戸川さんのフィールドで開かれているカードは、今まさに私が言った『アヌビスの裁き』だ。
江戸川さんはコストの手札を墓地に送っていた。
「サンダーのカードを破壊させる気は無い!」
しまった
今のは完全に私の失策だ
十代くんがバブル・シャッフルの時に使わせた『マジック・ジャマー』
アームド・ドラゴンが倒せなかった代わりに、私は十代くんがカウンターを使わせたと前向きに考えていた。
2枚カウンター罠を伏せているという可能性を頭から消していた
もし、考えていたら
私は今の『
残った手札の1枚に目線をやる。
そのカードは『上級魔術師の呪文詠唱』
手札の魔法カードを発動するこの魔法カードを使えば、カウンター罠を潜り抜けることが出来たのに。
これは完全に私の読み間違いだった……
墓地に行ってしまったブラック・マジシャンのカードに目を向ける。
ごめんね。私の実力不足で……
「黒魔導師クランを守備表示で召喚。カードを1枚伏せて魔法カード、悪夢の蜃気楼を発動! ターンエンドだよ」
ピケルのお姉ちゃん、クランを守備表示で召喚する。姉妹らしくその守備力は0だが、今の私の手札には他に召喚できるモンスターがいない。
黒い耳の付いた帽子を深く被って、守備体勢をとっている。
黒魔導師クラン
DEF0
「俺のターンだ」
そして、ついに来てしまった万丈目くんのターンだ。
勢い良くカードをドローした万丈目くんのスタンバイフェイズに、私の魔法カードの効果が発動する。
「この瞬間、悪夢の蜃気楼の効果発動! 相手ターンのスタンバイフェイズに、手札が4枚になるようにカードをドローするよ」
悪夢の蜃気楼のカード効果によって、私は手札が4枚になるようにカードをドローした。
伏せているカードは『上級魔術師の呪文詠唱』だ。今引いた中に、なにか良い魔法カードがあれば発動しようと思っていた。
けど、その想いとは裏腹に、手札に入ったカードには上級魔術師の呪文詠唱で発動できるようなカードは無かった。
残念そうな表情をしていることから、スタンバイフェイズでの私の行動が終わったのを確認する。万丈目くんはメインフェイズに入った。
「アームド・ドラゴンLV7の効果発動! 手札からモンスターカードを捨てることによって、そのモンスターの攻撃力以下の相手モンスターを全て破壊する!」
「そんなっ!?」
「全てだって!?」
LV5からLV7になったことにより、効果も格段にレベルアップしている。
私たちの場にいるモンスターの攻撃力は800と1200。手札から下級モンスターを捨てるだけで簡単に全部破壊されてしまう。
「俺は手札のドラゴンフライを墓地に送り、攻撃力1400以下のモンスターを全て破壊する!」
アームド・ドラゴンの腹部についている3枚のカッター。そのうちの2枚がぎゅぅんと音の立つほどに高速回転して発射される。
私のクランと十代くんのバブルマンが切り裂かれ、破壊されてしまった。
「そして、アームド・ドラゴンLV7の攻撃! くらえアームド・バニッシャー!!」
「うああああ!!」
巨大なアームド・ドラゴンの鋭い爪が十代くんを引き裂く。
ダメージに応じたソリッドビジョンの衝撃が襲ってきた。
十代&舞花
LP2900→100
「もう無駄だ。切り札を封じられ、少しだけ芽生えた希望もすぐさま摘み取ってきた。もう貴様らにアームド・ドラゴンを倒す術は無い」
私たちのライフポイントは、もう残り100。ここまでくるのに、私たちはアームド・ドラゴンを破壊するための行動を阻害され、かつ私たちは切り札を出すことを封印されてしまっている。
「今なら、無様に負ける前にTVの前でサレンダーすることを認めてやろう」
サレンダー
デュエルをあきらめ、敗北を認めるということ。
それを聞いた私たちは、
静かに笑った
「冗談だろ? サレンダーなんかするわけ無いじゃん」
「こんなに楽しいデュエルをしてるのに、途中で止めちゃうわけ無いよ~」
胸がドキドキしている。
TVに映る緊張でも、十代くんといる緊張でもなんでもない。
いつもどおりの、デュエルをしているときの興奮、高揚、高ぶり
楽しいんだ
このデュエルが。
あんなに強いモンスターが目の前にいて
私たちは行動をほとんど封じられてしまって
でも、それを破る方法を考えるのが、
この先にあるかもしれない、勝利への道を探すのが
面白くて、楽しくてしょうがないんだ!
「無駄だと言っているだろう? はっきり言ってやる。お前たちがアームド・ドラゴンを倒せる可能性は0だ!」
「可能性が0になるとしたら、それはあきらめた時だよ」
「その通りだぜ。デュエリストがあきらめない限り、奇跡は起こせるんだ!」
万丈目くんが唇をかみ締める。私たちがあきらめないことに苛立ち、嫌悪し、そして、残念がっている。
どこかで、万丈目くんは恐れているのだろうか?
ここからの敗北に、
ありえないところから出てくる、奇跡と言う可能性に。
私はまだ、万丈目くんが何を思っているのか、何を背負っているのかが分からない。
分からないけれど、私はデュエルをこうして楽しむことに決めたんだ。
万丈目くんに、何かを告げようとも、諭そうともせず、私はただ、デュエルを楽しむ。
それがきっと、あなたがデュエルを楽しむことが出来る唯一の可能性だと信じているから。
唯一分かることは、万丈目くんはこっちを見ないで、別の何かと戦っているように感じる。
ただ、今の私には何も出来ないのだろう。
「ちっ、まあいいだろう。カードを1枚伏せてターンエンドだ」
「おっと、その前に速攻魔法、非常食を発動するぜ。舞花の悪夢の蜃気楼を墓地に送って、俺たちのライフポイントを1000ポイント回復させる」
舞花&十代
LP100→1100
これで背水状態だったライフポイントに、一応の余裕が出来る。
さらに、私の悪夢の蜃気楼のデメリット効果であった、自分のスタンバイフェイズ時に、このカードの効果でドローした分だけ手札を捨てることを回避できた。
「ありがとう、十代くん」
ニカッと一度笑って、自分のターンに入るためデッキに手を触れた。
「行くぜ! 俺のターン、ドロー! E・HERO スパークマンを召喚!」
E・HERO スパークマン
ATK1600
十代くんが出したのは、テンペスターの融合素材にしそこねたスパークマン。その攻撃力では相手フィールド上のモンスターには太刀打ちできない。
けど
私には分かった。十代くんが何をしようとしているのか
「さらに装備魔法、スパークガンを装備。このカードは、3回だけ、モンスターの表示形式を変更することが出来る!」
やっぱり、私の予想通りのスパークガン。このカードの効果でアームド・ドラゴンを守備表示に出来れば戦闘破壊できる。
けど、そう簡単ではない。さっきからずっと私たちの行動を妨害してきた江戸川さんの場には、まだ伏せカードが1枚残っている。
「カウンター罠発動、八式対魔法結界を発動! このカードは、モンスター1体を対象とする魔法カードの効果を無効にする!」
装備魔法は、原則的にモンスター1体を対象とする魔法カードだ。八式対魔法結界にはどうしても引っかかってしまう。
スパークマンはスパークガンを装備できずにフィールドで項垂れた。
「くっそぉ、またカウンターされちまったか。カードを1枚伏せて、魔法カード、戦士の生還を発動! 墓地のバーストレディを手札に戻してターンエンドだ」
また攻略できなかった。けど、まだ私たちは負けていない。
負けない限り、戦うことは出来る。こんなに楽しい挑戦が、まだ出来るんだ。
「万丈目、やっぱりデュエルって楽しいよな?」
「なんだ、藪から棒に」
不機嫌そうな万丈目くんに、十代くんはこれ以上ないくらいの楽しさを乗せて、笑う。
「だってさ、倒せないモンスターが目の前にいるんだぜ? これを倒す奇跡を次のターンに起こせるかもしれないって、倒せない間はずっと考えていられるんだ。それって最高にワクワクするだろ?」
倒せないこと、防がれること。それらは決して絶望ではない。
次にできる何かがあるかもしれない。
それらを起こすまでの間、まだまだワクワクしていられるんだ。
「何をバカなことを言ってやがる。第一、お前のターンはもう回ってこない。このターンに江戸川が、もし倒せなくても次の俺のターンまでが限界だ。もうお前のターンは無い」
「俺のターンはそうかもな。でも、まだ舞花のターンが残るかもしれない。そこで、俺たちは奇跡を起こしてやるさ」
十代くんは、私を信じて目を向けている。
そんな十代くんに
私はにっこりと、笑みを返した。
「ふざけたことを……。江戸川! さっさと決めろ!」
「了解です、サンダー。俺のターンだ!」
でも、このターンは凌がないといけない。江戸川さんにはデビルゾアがずっと残ってしまっている。
「デビルゾアでプレイヤーにダイレクトアタック! デビル・エクス・シザース!!」
「罠発動! ヒーローバリア! E・HEROが場にいる時、相手モンスター1体の攻撃を1度だけ無効にする!」
ダイレクトアタックのために私に迫ってきていたデビルゾアを、スパークマンが発生させたバリアが阻む。
なんとかこのターンは耐えることが出来た。
「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」
やっぱり、江戸川さんは最後まで伏せカードを切らさなかった。
そのスタイルはいわゆるドローゴーと言う物。
ドローして、セットして、相手にターンを渡すそのスタイルは、相手ターンでの行動量が多い。
けど、その代わり、江戸川さんはずっとデビルゾア1枚で戦っている。
万丈目くんも、アームド・ドラゴンで戦うことに特化したデッキ。
つまり、目の前にいるあの2体を倒せれば、私たちは勝てるんだ。
「行くよ、私のターン」
万丈目くんの言ったとおり、きっとこれが私のラストドロー。
そして、十代くんの言ったとおり
このドローで、全てを決める!
「ドロー!」
私の引いたカードは、今日初めてデッキに入れたカード。
今日の新しい、お友達かな。
「久遠の魔術師ミラを召喚!」
現れた魔術師は、一言で言うなら白。
肩まですぅと伸びている真っ白い髪の毛。着ている服も白を基調としていて、手には身の丈ほどの杖を持っている。
久遠の魔術師ミラ
ATK1800
「ミラのモンスター効果発動! このカードが召喚に成功したとき、相手フィールド上にある魔法・罠カード1枚を選択して、確認することが出来る! 私は万丈目くんの伏せカードを確認するよ。リバース・スキャン!」
ミラが杖を一振りすると、杖先から発せられた光が万丈目くんの伏せカードを包む。その発光が終わったかと思うと、万丈目くんの伏せカードが開かれた。
「リビングデッドの呼び声、だね」
万丈目くんが前にも使ったことのある蘇生カード。
リビングデッドの呼び声があるのなら、たとえLV7を破壊したとしても、LV5を復活させられてしまうだろう。そうしたら、また進化させるタイミングを与えてしまうかもしれない。
私は手札のカードを見やる。
瞬間、閃いた。
今確認したカードはリビングデッドの呼び声。
ひょっとしたら、これが勝利への奇跡を引き起こすかもしれない!
「手札から装備魔法、バウンド・ワンドをミラに装備するよ! このカードの効果によって、ミラは自分のレベル×100ポイント攻撃力をアップ!」
久遠の魔術師ミラ
ATK1800→2200
これでもまだ攻撃力が足りない。だけど、まだ私はあきらめたりなんかしないよ!
「そして、手札を全て伏せて、ターンエンド!!」
「全てだとっ!?」
観客のみんなもざわついている。……また変なことでもはじめるのかとか聞こえた気がしたけど気のせいにしよう。そうしよう~
でも、これが私に出来る全部。
そして、これがアームド・ドラゴンを破るための必殺の一撃になり得るもの。
「何を考えているか知らんが……俺のターンだ、ドロー!」
私の作戦が成功しようとも失敗しようとも、おそらく最後になるであろう万丈目くんのターン。
「見られたが……発動してしまえば関係ない! リバースカードオープン、リビングデッドの呼び声!」
万丈目くんは、さっき私が確認したリビングデッドの呼び声を開く。
そして、
それが、私たちが勝つための道の入り口
「させないよっ! 罠発動、金属探知機!!」
突如現れた機械が、万丈目くんのリビングデッドの呼び声に反応して音を出す。その音がリビングデッドの呼び声の効力を無効にしている。
「な……なんだこいつはっ!?」
「金属探知機の効果によって、このターン、全ての永続罠カードの効果を無効にするよ!」
リビングデッドの呼び声は、発動時に墓地のモンスターを蘇生するカード。この効果を発動時に無効にしてしまえば、この先、リビングデッドの呼び声は何の効果も無いカードとして残るだけになる。
「くっ……だが全滅させれば関係ない! 魔法カード、死者転生を発動! 手札を1枚墓地に送り墓地のアームド・ドラゴンLV5を手札に戻す。そしてLV7の効果を発動し、このカードを再び墓地へ!!」
アームド・ドラゴンLV5の攻撃力は2400。その攻撃力を超えるモンスターは私たちのフィールドには
「チェーンするよ! 速攻魔法、上級魔術師の呪文詠唱! 手札の魔法カード1枚を発動するよ!!」
「バカなっ!? お前の手札は0。発動できる魔法カードは無いはずだ!」
そう、私の手札は0。発動する魔法カードは手札にはない。だけど、
「私の手札に無いだけだよっ! 罠カード発動、精霊の鏡!!」
突如現れた精霊の操る鏡。その鏡に私の発動した上級魔術師の呪文詠唱の魔力が吸収される。
「精霊の鏡は、魔法カードの対象を別のプレイヤーに移し変える。上級魔術師の呪文詠唱の対象を十代くんに移し変えるよ!」
「同じことだ!! この状況を潜り抜ける魔法カードなど……」
言いかけた段階で、万丈目くんは気が付いた。
十代くんが最初の方で発動しかけた魔法カードの存在。
そして、現在の状況を……
「金属探知機か……?」
「そうだよ。金属探知機はこのターン中、全ての永続罠の効果を無効にするんだ。もちろん『融合禁止エリア』も」
金属探知機は、永続罠発動時にしか発動することができないカード。
だから、万丈目くんがリビングデッドの呼び声を伏せていたことが分かったからこそ、私はこの戦略をとりに行くことが出来た。
こうして、十代くんが切り札を召喚することをサポートする戦略を
「これで、十代くんは融合を発動できる!」
「サンキュー舞花! 行くぜ、魔法カード『二重融合―ダブル・フュージョン―』発動!! 500ポイントライフを支払い、2回融合の効果を使用する!!」
十代&舞花
LP1100→600
十代くんが発動したのはただの融合じゃなくて、ダブル・フュージョンのカード。その効果は2回の融合を行うことができる。
私は十代くんが発動しようとしていたときにそのカードを確認していたから、さらに十代くんの手札にいるモンスターを覚えていたから
私は、十代くんが何を出すのか分かる。
「行くぜ! まず手札のフェザーマンとバーストレディを融合! 来いっ! E・HERO フレイム・ウイングマン!!」
おなじみの、十代くんのフェイバリットヒーロー。フレイム・ウイングマンがフィールドに降り立つ。
E・HERO フレイム・ウイングマン
ATK2100
「さらに、フレイム・ウイングマンとスパークマンを融合!」
この2体の融合は、私との初めてのデュエルで見せた十代くんの切り札。
融合の渦に吸い込まれていった2体のモンスターが混ざり合い、刹那
輝きがフィールドを支配する。
一瞬、光に視界を奪われた後に、光り輝くヒーローがフィールド上に降り立っていた。
「現れろっ!! E・HERO シャイニング・フレア・ウイングマン!!」
E・HERO シャイニング・フレア・ウイングマン
ATK2500
「シャイニング・フレア・ウイングマンは、自分の墓地にいるE・HERO1体につき攻撃力を300ポイントアップする!」
シャイニング・フレア・ウイングマンが墓地にいるヒーローから光をもらう。その光を体中に吸収すると、力がみるみる上がっていく。
E・HERO シャイニング・フレア・ウイングマン
ATK2500→4000
強大すぎるその攻撃力。チェーンの処理が終わったので、アームド・ドラゴンの効果がここで発動する。
しかし、シャイニング・フレア・ウイングマンを破壊することはかなわず、大きな刃がミラを襲う。
「ミラっ!」
効果によってミラは破壊されてしまった。しかし、ミラに装備されていたバウンド・ワンドがフィールド上で光る。
「バウンド・ワンドの効果発動! このカードの装備モンスターが破壊されたとき、装備モンスターを復活させるよ!」
バウンド・ワンドの光がミラの姿を形どる。そこに色が付いていき、ミラがフィールド上に戻ってきた。
久遠の魔術師ミラ
DEF1000
アームド・ドラゴンは前のターンまで確実に私たちのモンスターを全滅させてきた。
だけど、このターンでは私たちのモンスターは1体たりとも倒れていない。
万丈目くんは一度舌打ちする。
「バトル! LV7で、久遠の魔術師ミラに攻撃! アームド・バニッシャー!!」
声量はさっきまでと変わっていなかった。だけどその声に含まれる戦う気持ちは、幾分か消えてしまっている。
分かってしまっているんだ。私たちが、次のターンに、デュエルを終わらせるってことを。
だけど……それでも、万丈目くんは攻める姿勢を崩そうとしない。前を向いて、デュエルで戦っている。
それはきっと、万丈目くんもデュエルが大好きだから
私は、そう信じている。
ミラが破壊されたが、復活の際に守備表示にしていたため、ライフポイントに傷は付いていない。
「ターンエンド」
すがりつくような声。最後の最後、まだ逆転されきっていないこの状況で、引いてほしくないカードを引かぬように切に願って絞り出ている声。
「俺のターン」
だけど分かってるんだ。十代くんは、きっと引く。
「ドロー!」
ああ、きっとみんなも見えただろう。
十代くんがカードを引くときの、輝いたようにさえ見えるその手を。
「万丈目! これが、俺たちの決着にふさわしいフィールドだ! フィールド魔法発動、スカイスクレイパー!!」
デュエル場に、突如現れたたくさんのビル。摩天楼がこの場所に築かれる。
「バトル! シャイニング・フレア・ウイングマンで、アームド・ドラゴンLV7に攻撃! シャイニング・シュートぉ!!」
シャイニング・フレア・ウイングマンの拳に集まっていく光。その大きさが自分の体をも凌駕するほどになると同時に、アームド・ドラゴンに向かって突撃する。しかし、
「させてたまるかぁ!! リバースカードオープン、シフトチェンジ!」
アームド・ドラゴンへ、シャイニング・フレア・ウイングマンの攻撃が当たると思ったその瞬間、その場所にいたのはデビルゾア。身代わりとなってデビルゾアが攻撃を受けて破壊される。
万丈目&江戸川
LP8000→6600
「シャイニング・フレア・ウイングマンの効果発動! 戦闘で破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを、相手に与える!!」
江戸川さんに、巨大な光が直撃する。デビルゾアの攻撃力2600のダメージの衝撃が与えられた。
「ぐわぁ!!」
万丈目&江戸川
LP6600→4000
のけぞり、今にも倒れるかと思っていた江戸川さん。だけど、倒れる寸前でその大きな体を無理やり支える。
「まだだ……。まだ負けんっ! サンダーのアームド・ドラゴンが倒されない限り、俺たちはまだ負けん!!」
その身で全てのダメージを受けきった江戸川さんの咆哮。一瞬こちらが後ずさりそうになったけれど、踏みとどまる。
「ごめんね」
彼の目の前には、まだソリッドビジョンによって起こされた煙がある。だから、まだ気づけないだろう。
私が発動した速攻魔法に。
煙が晴れ、みんなの視界が一気にクリアになる。すると、十代くんのフィールドにはいるはずのシャイニング・フレア・ウイングマンがいない。
代わりにいる、スパークマン。そして、
ビルのてっぺんに立っている、フレイム・ウイングマン。
「な……なぜ……?」
「私が融合解除を発動したんだよ」
融合解除によって解除されたシャイニング・フレア・ウイングマンの融合。それによってフィールドに戻ってきたフレイム・ウイングマンとスパークマンの2体。
「スパークマンでダイレクトアタック! スパーク・フラッシュ!」
もう何も残っていない江戸川さんのフィールドを光が通過する。放心しかけている江戸川さんの体に電流が走った。
万丈目&江戸川
LP4000→2400
「うそだ……」
大きな体から発せられた、弱弱しい呟き。その言葉は、どこかに届いただろうか?
「これで最後だ! フレイム・ウイングマンで、アームド・ドラゴンを攻撃!」
ビルのてっぺんにいたフレイム・ウイングマンが、アームド・ドラゴンに向かって急降下。その体が炎に包まれる。
E・HERO フレイム・ウイングマン
ATK2100→3100
そして、貫いた
スカイスクレイパーによって3100まで引き上げられた攻撃力が、アームド・ドラゴンを倒す。
万丈目&江戸川
LP2400→2100
「そして、フレイム・ウイングマンの効果が発動する」
フレイム・ウイングマンが万丈目くんの目に降り立ち、炎を発する左手を万丈目くんへと向ける。その口から、火の光が微かに見え始めた。
「ま、まずいぞ! カメラ全部切れぇ!!」
「止めるなぁ!!」
TV局の人が慌てて周りに指示する。スポンサーの弟の負けを全国放送するわけには行かないという判断だろう。
だけどそれを万丈目くんが一喝した。それに反応して、全部のカメラが万丈目くんへと向く。
その瞬間
フレイム・ウイングマンの炎が、万丈目くんを包んだ。
万丈目&江戸川
LP2100→0
「「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」」
デュエルの勝敗が決した瞬間、湧き上がる歓声。若干耳鳴りがしそうだけど、今は勝ったことが純粋にうれしくって気にならなかった。
「ガッチャ、楽しいデュエルだったぜ」
「本当に、すっごく楽しかったよ~」
伏せてしまっている二人に対して、私たちは各々の感想を相手に告げている。
本当に楽しかった。
負ける寸前まで追い込まれてしまったこのデュエルは、ハラハラもして、本当に楽しかった。
「準!」
「貴様、何をやっている!!」
そんな中、万丈目くんに寄ってきたのは2人のお兄さん。伏せていた万丈目くんの胸倉を掴んで、無理やりその顔を上げさせた。
「お前は自分が何をやったのかわかっているのか!?」
「万丈目一族に泥を塗りやがって!!」
罵声が万丈目くんに向かって投げられる。万丈目くんの体にそれらが何回も何回もぶつかっていく。
「すまない……兄さん」
万丈目くんは、その目線をお兄さんたちに合わせられなかった。
「やめろよあんたたち!」
その言葉を発したのは、十代くん。
「なんだお前は!」
「我ら兄弟のことに口出しするな!!」
「兄弟ならなおさらそんな態度はないだろっ!!」
私には兄弟はいないけれども、だけどこんな言葉はあんまりだ。がんばって戦った万丈目くんに対してあんまりにも残酷すぎる。
「俺たちは持てる力の全てを出し切って戦ったんだ。文句なんか言わせない!」
「途中経過などどうでもいい。我々は結果を問題にしているんだ」
「そのとおりだ。結果こそが、勝利こそが万丈目一族にとって絶対のもの! それをこいつは……」
十代くんの怒声も、万丈目くんのお兄さんたちは聞き入れずに言葉を投げ返す。
万丈目くんは目を伏せたまま黙っている。
「勝利ってなんですか?」
私は、十代くんたちの間に割って入る。万丈目くんのお兄さんたちの顔をまっすぐに見上げた。
「たとえ1万ポイントの差をつけて勝ったとしても、勝ったとき心の底からうれしいって思えなきゃ、そんなの勝利なんかじゃない」
どうして勝ってもまだ苦しまなきゃいけないの? どうして勝った時心の底からうれしいって思えないの?
「あなたたちは、万丈目くんからずっと『勝利』を奪ってきたんじゃないですかっ!!」
ずっと勝利することの出来ないデュエルなんて、それはどうしてもつらすぎるよ。万丈目くんはそんなことを強いられてきたんだ。
「そうだ。万丈目はあんたたちから与えられたプレッシャーで、ずっとデュエルで戦うことを奪われて。万丈目はずっとあんたたちと戦う羽目になってたんだ!」
「黙れ貴様ら」
押し黙っていた万丈目くんが、ようやく言葉を発する。万丈目くんのお兄さんは、胸倉を掴んでいた手をそっと引いた。
「これ以上、俺を……みじめにさせないでくれ」
目を、あわせようとしない。その声に生気は無かった。
「すまない。もう帰ってくれ兄さんたち」
万丈目くんがその言葉を発したとき
「そうだ!! 帰れ!!」
「万丈目サンダー! お前はよく戦ったぞぉ!!」
「「「「サンダー!! サンダー!! サンダー!! サンダー!!」」」」
観客席からみんなの声が上がる。ノース校だけじゃない。ずっと、万丈目くんを嫌っていたりもしていたはずの本校のみんなも、一丸となってサンダーコールを続けている。
みんな、万丈目くんのことを分かったんだ。
いままでどんな気持ちでデュエルしてきたのか
いままでどんな気持ちですごしてきたのかを。
万丈目くんの顔は良く見えない。
けど、万丈目くんの口元は、微かに緩んでいるように見えた。
「くそっ! 行くぞ」
万丈目くんのお兄さんたちは、その場にいるのが耐え切れなくなって去っていった。
「これでお別れだな、万丈目」
万丈目くんのお兄さんたち、TVの撮影の人たち、たくさんの人たちがばたばたと先に帰ってしまった後、残ったノース校の生徒たちの見送りのために、みんなで港まで来ていた。
「元気でね」
「またデュエルしような」
ひょっとしたらこれで最後になってしまうかもしれないけど、またデュエルできる日が来ることを信じて万丈目くんと分かれよう。
そう思っていたのだけれど、
「いや、俺はここに残る。やり残した事があるからな」
……へ?
「校長、アームド・ドラゴンは返す。それから江戸川、キングの座はお前に返すからな」
「いや返すって言われても……サンダー!?」
別れを覚悟して挨拶をしていたはずの私たちの発言を見事に打ち破った後に着々とノース校の事後処理を進めていく万丈目くん。
えっと、つまり
万丈目くんはこっちに残るって言うことなんだね。
「やったぁ!!」
「よっしゃぁ!!」
私と十代くんが同時に叫ぶ。万丈目くんは目を丸くして私たちを見た。
「これでいつでもデュエルできるな!」
「私、今から楽しみだよ~」
私たち以外にも、今日のデュエルを見て万丈目くんとデュエルしたいと思った人たちが万丈目くんに詰め寄る。
「ちょ、お前らはなれろ!」
みんなでデュエルしようデュエルしようと詰め寄っていくうちに、いつの間にやら出航の時間になっていた。
「「「「サンダー!! お元気でー!!」」」」
離れていく潜水艦の船上で、たくさんの人たちが泣いている。万丈目くんは、そんなみんなに返事を送る。
「お前たちも、元気でな」
呟くようにしたその言葉は、音として届いてはいないかもしれないけど、きっと気持ちはみんなに届いているよねっ。
「そういえばここに残ったら、万丈目サンダーは出席日数の関係で、オベリスクブルーでは進級できないのにゃ」
「え?」
潜水艦が遠くに見えなくなってしまったころに、大徳寺先生が思い出したようにしゃべった。
「万丈目サンダーは、進級するには出席日数の関係ないオシリスレッドに入るしかないのにゃ」
「なんだとぉ!?」
そういえば3ヶ月も休んでたんだもんね。そろそろ出席日数が足りなくなってもおかしくは無かったんだ。
「じゃあ、文字通り同僚になるんすね」
「勝手に決めるな!!」
「大丈夫だよ~。レッド寮のごはんはみんなで食べるから楽しいよ~」
「そういうことを言ってるんじゃないっ!!」
「じゃあ、万丈目の入寮を祝して」
「だから勝手に決めるなぁ!!」
万丈目くんはいろいろ言ってるけど、もうこの流れは止まらないだろう。みんなは右手の人差し指を空に向かって伸ばした。
「一・十・百・千!!」
「「「「万丈目サンダー!!」」」」
万丈目くんの、一瞬したうれしそうな表情を、見れたのは私だけかもしれない。
OCGルール的には、上級魔術師の呪文詠唱は発動できないと注釈。
だって対象となるカードが手札に無いですからね。空打ちとなってしまうため発動そのものができません。
まあアニメルールだと魔法の教科書を手札0だからノーコストねとか言ってるんできっと大丈夫だと私は信じてます!