遊戯王GX 魔法使いの少女   作:時任 嵐

3 / 21
注意
この話からオリジナルカードが1枚登場します。壊れ効果とかにしないように気をつけてあるつもりですが、いやな方は回れ右して退場することをお勧めします。



3-turn 対決!英雄vs魔法使い

「デュエルモンスターズのカードは、通常モンスター、融合モンスター、効果モンスター、儀式モンスター、それと、罠カードと魔法カードに色分けされています。さらに罠カードには通常、カウンター、永続の3種類、魔法カードは、通常、永続、速攻、儀式、装備、フィールドの6種類に分けることが出来ます」

 

 クロノス先生の授業で、いきなりデュエルモンスターズのカードについて説明しなさいって言われました。

 皆が目を逸らしている中で、私だけがクロノス先生のほうを見ていたので私が当てられた。席を立って説明を開始しようとすると、みんなの目線が私に集まってきていてすごく恥ずかしいよ~。

 緊張しているのを頑張って隠しながらカードの説明をなるべく早口に言い切って、席に座り両手で顔を隠す。

 

「シニョーラ橘、正解ですカーラそんなに恥ずかしがらなくったっていいノーネ」

 

 クロノス先生がおろおろとしながら私に言ってきてるけど

 

 無理です、私は人前に出るのが苦手なんです~。

 

 とりあえず深呼吸して少し落ち着こうとする。隣の明日香ちゃんがぽんぽんと頭を撫でてくれて何とか落ち着けた。

 

「それデーハ、シニョール丸藤。フィールド魔法についての説明をお願いするノーネ」

 

 私が落ち着いた後にクロノス先生は翔くんに次の質問をした。

 あ、この間十代くんの部屋に遊びに行った時に翔くんも名前で呼んで欲しいといってきたのでそう呼ぶことにしました。それと同室の前田隼人くんともお友達になりました。

 

 当てられた翔くんはさっきの私よりも緊張してしまっているようで、立ち上がった後あたふたするだけで上手く言葉が出ないようだった。

 

「そんな問題小学生でも分かるぜー」

 

 オベリスクブルーの男子の一人が、なかなか答えられない翔くんを馬鹿にした発言をした。

 その言葉にブルーの皆は大笑いして、翔くんに馬鹿にした目線を向ける。三沢くんはそんな皆をいやな目で見ていたけれど。

 

「翔くん、落ち着いて~。深呼吸してみよう。吸って~」

 

 見ていられなくなった私は翔くんに声をかける。落ち着くためにさっき私がやった深呼吸をさせてみることにした。

 翔くんは私の声とともに息を大きく吸い込み始めた。

 

「吸って~」

 

 翔くんはもっともっとたくさんの空気を肺に詰め込み、そろそろ限界まで達しようとしている。

 

「吸って~」

 

「はかせてよっ!!」

 

「あ、ごめんね~、忘れてたよ~」

 

 深呼吸って吸うだけじゃないんだったよ。

 翔くんはあきれた様子で私を見ていた。

 

「でも翔。お前、落ち着いたんじゃないか?」

 

 十代くんがそう指摘すると、翔くんははっとして自分を見た。

 さっきまで震えていた体と声がいつの間にか収まっている。

 

「デーハ、シニョール丸藤。フィールド魔法の説明をお願いしますーノ」

 

 そんな様子を見て、クロノス先生は翔くんにもう一度回答する機会を与える。翔くんは今度は落ち着いた様子でその質問に答えた。

 

「フィールド魔法はフィールドに出ている間は、フィールド全体に特殊効果を与える魔法カードです。森や海などの攻撃力、守備力を上げるものが一般的ですが、フュージョンゲートなど別の効果を与えるものもあります」

 

「よろしい、見事な答えですーノ」

 

 翔くんは嬉々とした様子で席に着く。さっきまで笑っていた生徒たちはみんなが呆気にとられた表情で翔くんを見ていた。最初に囃し立てた男の子はバツの悪そうな顔をしている。ちなみに三沢くんはさっきとは逆に嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきはありがとう、舞花ちゃん」

 

 目の前で大徳寺先生が授業をしている中、翔くんは小声で私に話しかけてきた。ちなみに私の席は翔くんの隣の十代くんの真後ろ。

 

「あはは、ごめんね~。深呼吸でずっと吸わせちゃって~」

 

 翔くんがお礼を言ってきてくれたので、私はさっき自分がしてしまったミスを謝る。

 

「それが逆によかったんだけどね」

 

「おい、二人とも。油断してるとまた指されるぞ」

 

 十代くんの指摘で前を向くと、大徳寺先生がこっちを睨んでいた。まずいと思って教科書を見ようとすると、先生に指される。

 

「橘さん」

 

「は、はい」

 

 ニコニコした顔で、先生は私の名前を呼んだ。

 まずいよ、どんな質問されるんだろう?

 私の不安をよそに、先生の発した言葉は私の予想とはまったく違うものだった。

 

「ファラオを捕まえてもらえるかにゃ?」

 

「へ?」

 

 ファラオを捕まえるとは何のことだろう?古代エジプトのファラオを捕まえに行けということだろうか?でもそれじゃあタイムスリップしなきゃダメだよね。

 よく分からないですという顔を先生に向けると、座っている自分のふとももにふさふさとした感触。

 

「ひゃぁ」

 

 思わず声を上げてしまった。その感触の原因を見てみると、そこにいたのはちょっと太ったかわいいねこさん。

 

「その猫が、ファラオですにゃ」

 

 ファラオと呼ばれてるねこは、私の膝枕が気に入ったらしくその場所で寝入ってしまった。

 体を丸めて寝ているファラオはとってもかわいらしい。

 

 でもくすぐったいよ~。

 

 結局、大徳寺先生が私のところまで来てファラオを引き取っていった。

 

 

 

 

 

 

 今日も一日の授業が終わった。

 あの後あった体育のバレーボールは、私の活躍によって見事に敗退した。

 

「それにしても、私バレーボールを顔面でしか受け取らない人をはじめてみたわ」

 

「うぅ、それを言わないでよ~、明日香ちゃん」

 

「いえ、あれはもはや芸術的でしたわ」

 

「あそこまで見事に顔面で取りに行くんだもんね」

 

「ジュンコちゃんにももえちゃんまで~」

 

 お風呂の脱衣所で、今日の授業の話が弾む。といっても私の連続顔面レシーブの話題が主だったけど。

 

 だって、ボールが手のところに来てくれないんだもん。

 

 ちなみに手で受けれた回数は0でした。

 

「ポニーテールでも活動的じゃないってことね」

 

「ジュンコちゃん、それはポニーテールの人に対する偏見だよ~」

 

 件のポニーテールのリボンをはずして、ジュンコちゃんの発言を返す。そのジュンコちゃんは着替えるのが早くてもう下着をはずしていた。

 

「舞花さん、遅いですわ」

 

 見ると、ももえちゃんも明日香ちゃんもすでに体にバスタオルを巻いていた。

 

 ひょっとして私が遅いだけ?

 

 慌てて制服の上下を脱いで籠にしまう。たたんでいる暇もないまま下着をはずし、タオルをつかんだ。

 みんなはすでに浴場に入っていた。

 

「待ってよ~」

 

 先に歩いていった3人にどうにか追いついて浴場の洗い場までいく。

 ゆっくりと体をスポンジでこすり、洗い流した後は髪の毛の手入れをする。

 あわ立てたシャンプーを髪の毛全体につけた後お湯で洗い流し、その後にリンスをつけて流す。

 

 髪の毛が多いと大変なんだよね~。

 

「それにしても明日香さんってば、スタイル抜群でうらやましいです」

 

 洗い終わって浴槽に入ろうとしているときに、ジュンコちゃんが明日香ちゃんの体を見てそういう。

 

 確かに明日香ちゃんってスタイルいいよね。

 

 会って最初のときにも思ったことを改めて思い知る。

 明日香ちゃんを見た後に、自分の体を見てみた。

 

 ……A。

 

「舞花、何でそんなに落ち込んでるの?」

 

「明日香ちゃん。どうしてそんなに大きいの~」

 

 比べてみてみると、同じ年だとは思えないような差がそこにはあった。

 私だって成長したのに、Aが一つ減ったのに。

 

「ま、舞花だって成長するわよ」

 

 落ち込んでる私を励まそうと明日香ちゃんは私の目線まで顔をさげて来る。

 大きく強調された話題のものが目に飛び込んできた。

 

「……明日香ちゃんのバカ~」

 

 なんだかとっても悲しくなってきた私は一足先に浴槽につかる。やれやれと残りの3人も遅れて入ってきた。

 明日香ちゃんの方を向けなくなった私は窓の外の景色を見る。きれいなお星様が見えた。

 

 流れ星、こないかな~。

 

 願うことは沢山あって、きっと流れたとしても言い切れないだろうことは分かっていたけれども、夜空に輝く星を見ていると自然とそんなことを考えてしまった。

 たとえ願いが叶わなくても、流れ星を見れればハッピーだから。

 

――ガサガサ

 

 外から物音がした。風ではなく何かが動いた物音。

 

 なんだろう?動物さんかな。

 

 でも女子寮付近に動物が現れたことはほとんどなかったはずだ。じゃあの物音はなんだろうかと身を乗り出して外を見た。

 

「覗きよー!!」

 

 外から誰かの叫び声が聞こえる。それと同時に湖のほうから何かが飛び込む水の音が聞こえた。

 

 って、覗き?

 

 覗きとは、この場所を考えるとお風呂を覗きにきたということ。そして今入ってるのは私。

 恐る恐る声のしたほうを見てみると、見慣れた水色の髪の少年と目が合った。

 

 ところで、今の私の状態はバスタオル一枚です。

 

 うん、バスタオルがあってよかったよね。今裸じゃないもん。

 そんな現実逃避を一瞬した後、現状を頭が一気に理解する。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 見られた。見られたよ~。

 バスタオル一枚の状態を目が合った翔くんは確実に見た。それはとっても恥ずかしいことで、いつも十代君と接しているときよりも今日の授業で当てられたときよりも顔の熱が上がる。

 そんな私の状況を確認した後、ジュンコちゃんとももえちゃんはバスタオル一枚の状態で外に出る。

 

 二人とも恥ずかしくないの~。

 

 外の状況は、二人の介入もあってかすぐに捕まえて治まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、もうお嫁もらえないよ~」

 

「舞花、混乱してるのは分かったから落ち着いて。あなたはお嫁はもらえないわ」

 

 隅のほうでいじけてる私を明日香ちゃんが必死に慰めてくれる。明日香ちゃんがぽんぽんと私の頭を撫でてくれるとなんだか少し落ち着いた。

 

「舞花、ちょっときてー!」

 

 翔くんの尋問をしているジュンコちゃんが大きな声で私を呼ぶ。何とか落ち着けた私はそっちのほうに向かった。

 

「だから、舞花ちゃんからのラブレターであそこに呼び出されたんだって」

 

 私からのラブレター?

 全然見に覚えのない私は首を思いっきり傾げる。その私をみて翔くんは不安げな顔になった。

 

「そもそも、舞花があなたにラブレターを出すとは思えないわ。十代ならともかく」

 

「あ、明日香ちゃん!!」

 

 軽く口を滑らせた明日香ちゃんの口を必死に閉ざそうとするけれども遅かった。けれども翔くんは手を縛られた状況でもらったラブレターをポケットから出すのに必死で聞いていなかったようだ。

 やっとの思いで翔くんがポケットから出したラブレターを受け取り、中身を見る。

 内容は確かにラブレターで最後に橘舞花と私の名前が入っていた。

 

「……私、こんな字書かないよ~」

 

 お世辞にもきれいとは言えない字を見て私はそう洩らす。私はこんな角ばった字は書かない、というよりも書けない。私の筆跡はどうやっても丸くなってしまう癖があるのだ。

 

「それにこれ、宛名が遊城十代になってるわ」

 

「一気に舞花さんの可能性が高くなりましたわ」

 

「ももえちゃんもっ!!」

 

 今度こそ翔くんに聞かれたかもしれないと翔くんの方を見てみたら、翔くんはラブレターの宛名に気づかなかったことで放心状態になっていた。

 

 うん、助かったよ。

 

 その翔くんをほって置いて、この後どうするかを考える。とにかく翔くんは誰かに騙されたわけで故意に覗いたというわけではないのだから。

 

「被害にあったのは舞花なんだし、舞花が決めたら?」

 

 明日香ちゃんの提案をジュンコちゃんとももえちゃんも呑む。その話を聞いてこっちの世界に戻ってきた翔くんが私を一心に見ていた。

 私としても翔くんを停学、下手したら退学になんて追い込みたくはない。

 

「翔くん」

 

 名前を呼ぶとまさに助けてくれと言いたげな目で私を見てくる。切羽詰ってる翔くんに私はニッコリと笑いかけた。

 

「何も見なかったことにしましょう」

 

 ピンと右手の人差し指を立てて提案する。

 その言葉に翔くんは呆気に取られているようだったけど気にしない。というよりも気にしたら私のほうがさっきの恥ずかしさで死んでしまいそう。だからさっきのことはお互いに忘れて無かったことにしたい。

 

「私も何も見られなかったことにしよう」

 

 これで万事解決だね、と皆を見ると、皆があきれた目で私を見ていた。

 

「まぁ、舞花がいいならいいわ」

 

 複雑な表情をしながらも、明日香ちゃんは何とか納得してくれたようだ。翔くんは目を輝かせて私にありがとうと言ってくる。

 だから忘れて欲しいんだけどね。

 

 その後、十代くんに簡単に事情を話して迎えにきてもらうことにした。

 夜遅くにこっちまできてもらうのもどうかと思ったけど、皆が呼ぼう呼ぼうと聞かなかったので。

 その時に明日香ちゃんが何か企んだような笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗いくらい、女子寮の裏の湖。ちゃぷん、ちゃぷんという水の音が流れていた。

 それはボートをこぐオールの音。それが聞こえてきたと思ったら、暗闇の中に赤い人影を見つける。

 十代くんが翔くんを迎えに来たようだ。

 ボートが岸に着き、十代くんが到着する。

 翔くんの縄はすでにはずしてあって、十代くんの方に引き渡そうとする。

 その私の行動を明日香ちゃんが手で制した。

 

「翔くんの引渡しなんだけど、ここはデュエルで決着をつけない?」

 

 私を止めた手を動かさずに、明日香ちゃんはそう提案する。

 

「どうしたの明日香ちゃん、急に」

 

「別に。ただこれだけの騒ぎを起こしておいて、何もなしに無罪放免というわけにはいかないんじゃないかしら」

 

「えぇ~、でもさっきはいいって」

 

 ここまで普通に会話した後、明日香ちゃんはそっと私の耳元で囁いた。

 

「別に勝敗がどうなろうと翔くんは解放するわ。ただ、あなたはまだ十代とデュエルしたことなかったでしょう。あのデュエル馬鹿ともっと仲良くなるにはデュエルするほうがいいんじゃないかしら」

 

 愛しの遊城十代とね、と最後に付け加えて明日香ちゃんは私から離れる。

 

 なんだかややこしいことになってきたような?

 

 けれども十代くんはデュエルならばとやる気を出していた。そんな彼を見ていたら私もやる気を出さざるを得ない。

 そもそも十代くんとデュエルというのはとても楽しそうだ。

 

「うん、じゃあデュエルしようよ~」

 

 そうと決まると行動は速くて、明日香ちゃんは私をボートに乗せて湖の中央付近まで連れて行く。道中、私は乗り物に乗ったことで半分ダウンしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫か?」

 

「何とか……」

 

 結局、私の船酔いが抜けるまで少しの間待ってもらう。波のない湖は、動いてさえいなければ揺れることはない。とりあえず立てるようになるまで回復したら、十代くんと向き合った。

 デュエルするのを見たことは何回もあるけれども、こうして向かい合ったのは初めてだ。十代くんのデュエルする顔つきを真正面から見るとなると、少し胸がドキドキする。

 

 お互いにシャッフルが終わり、デュエルディスクにデッキをセットする。デュエルディスクを構えると、デュエルディスクは私の先行を知らせていた。

 

「「デュエル!!」」

 

 デッキからカードを5枚引き、手札とする。初手チェックをすると、クロノス先生と戦ったときのようにいい手札だ。正面の十代くんも笑っていて、どうやらいい手札のよう。

 

 お互いいい引きなら、楽しいデュエルになりそうだよ~。

 

 先行の私がターンを開始する。

 

「私のターン、ドロー!見習い魔術師を守備表示で召喚。カードを1枚伏せて、ターン終了するよ」

 

 

見習い魔術師

DEF800

 

 

 クロノス先生のときと似た布陣でターンを終える。見習い魔術師には頑張ってもらいそうです。

 

「俺のターン、ドロー!手札から融合を発動!手札のフェザーマンとバーストレディを融合して、マイフェイバリットヒーロー、フレイム・ウイングマンを召喚!!」

 

 十代くんは初手から飛ばしてきて融合を仕掛けてくる。

 もはや見慣れてきた2枚を融合して、十代くんのお気に入りのフレイム・ウイングマンが召喚された。いつも横目で見ていたそのモンスターは正面から見据えると、正直言って少し怖い。

 

 

E・HEROフレイム・ウイングマン

ATK2100

 

 

「バトル!フレイムウイングマンで見習い魔術師を攻撃!フレイムシュート!!」

 

 全身を炎にまとったフレイム・ウイングマンが、私の場の見習い魔術師を貫く。守備体制をとっていた見習い魔術師はいとも簡単に弾けとんだ。

 

「フレイム・ウイングマンの効果で、戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与えるぜ!」

 

「きゃぁ!」

 

 私の目の前に降り立ったフレイム・ウイングマンの右の赤い手から炎が放出される。その炎は私を包み、ライフポイントにダメージを与えた。

 

 

舞花

LP4000→3600

 

 

「見習い魔術師の効果発動、デッキからレベル2以下の魔法使い族モンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚するよ。私は水晶の占い師をセット」

 

 前と同じように、デュエルモンスターズのカードの裏面がそのままソリットビジョンとして私の場に現れる。

 

「ターンエンドだ」

 

 伏せカードも伏せずに十代くんはエンド宣言を済ませる。けれどもこれはあまり良いことではない。十代くんは完全に攻めで手札を使う気だと思ったからだ。手札消費の激しい融合をあと何回使ってくるかと 考えると、安心なんて全く出来ない。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 私の手札にはフレイム・ウイングマンを倒せるモンスターはいない。いや、いないわけでは無いが序盤にこのカードを使うわけにはいかない。1枚のカードを抜き出そうとする手を抑えて、考える。

 

「水晶の占い師を反転召喚。モンスター効果を発動するよ。デッキの上2枚を見て、1枚を手札に加えてもう1枚をデッキの1番下に移すよ」

 

 効果によってめくれた2枚は黒魔導師クランとブリザード・プリンセスの2枚。私は迷わずプリンセスを手札に加えた。

 

「水晶の占い師を生贄に、ブリザード・プリンセスを召喚!!」

 

 水晶の占い師が光の粒子になって消えると、その場所にかわいらしいお姫様の姿が現れる。

 

 

ブリザード・プリンセス

ATK2800

 

 

「プリンセスでフレイムウイングマンを攻撃!」

 

 プリンセスが飛び上がり、手に持った鎖のついたハンマーをフレイム・ウイングマンに向かって勢いよく振り下ろす。氷のハンマーに押しつぶされたフレイム・ウイングマンが破壊された。

 

「フレイムウイングマンっ!!」

 

 

十代

LP4000→3300

 

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだよ」

 

「俺のターン、ドロー!フレンドックを守備表示で召喚。ターンエンド」

 

 仕掛けてこない。いや準備期間だ。

 十代くんの場に現れたのは機械でできた犬のモンスター。でもE・HEROじゃないカード。私はE・HEROを詳しく知ってるわけじゃないから出てくるモンスターすべてを警戒しなくてはいけない。あのモンスターはHEROのサポートの可能性だってあるんだ。

 でも、十代くんはこのターン止まった。この攻撃の機会を見失うわけにはいかない。

 

「私のターン、ドロー!私は白魔導師ピケルを召喚!」

 

 私の場に白のローブをまとったかわいい少女が姿を現す。

 

 デュエル中だけれど癒されるよ~。

 

 ほんの一瞬ピケルで和んだ後、再びデュエルを再開する。

 

 

白魔導師ピケル

ATK1200

 

 

「バトルフェイズに入るよ。プリンセスでフレンドックを攻撃!!」

 

 機械仕掛けの犬に、プリンセスのハンマーが振り下ろされる。ひとたまりもなくフレンドックは破壊された。

 

「フレンドックの効果発動!このカードが戦闘で破壊された時、墓地から融合とE・HEROと名のつくモンスター1体を手札に移すことができる。俺は融合とフェザーマンを手札に移すぜ!」

 

 また融合のカードが十代くんの手札に!

 次のターンに反撃が来ることが明白となる。ならせめてこのターンに少しでもライフを削らなきゃ。

 

「ピケルで十代くんにダイレクトアタック!」

 

 ピケルの杖の先から発した光が一直線に十代くんのおなかを貫いていく。

 

「くっ」

 

 

十代

LP3300→2100

 

 

「ターン終了だよ」

 

 ピケルの攻撃をくらった十代くんはそのまま俯いていた。どうしたのだろうかと一瞬気になったけれど、それは本当に一瞬で終わる。

 

「ははっ」

 

 十代くんは笑っていた。

 十代くんは内から湧き上がってくる笑いに抗いきれずに笑っていた。

 

「サイッコーに楽しいぜ、舞花!」

 

 いつもどおり、デュエルを一心に楽しんでいるその表情。

 偽りのないその心は、デッキに力を与えていく。

 

 そして、私も楽しい。

 

 やっぱりデュエルは楽しいよ。

 

 十代くんはデッキの上に手を置くと、一瞬止まった。

 まるでデッキと心を通わせているかのように、語りかけているかのように。

 

 ああ、ダメだな~私。

 

 十代くんはきっとこの状況を打開してくる。この状況をひっくり返してくるはずだ。

 

 それなのに私は、ワクワクしている。

 

 十代くんがこの状況をどうやって打破するのか。十代くんが何を引くのか。十代くんがどんなカードを出してくるのか。

 私は知りたいよ。

 

「ドロー!」

 

 十代くんはデッキからカードを引き抜く。そのカードを一瞬確認すると、ニカッと笑い、すぐさまそのカードを表にした。

 

「E・HEROバブルマンを召喚!バブルマンの召喚に成功したとき、自分の場に他のカードがないとき、デッキからカードを2枚ドローする」

 

 このタイミングでさらに手札補強。

 さぁ早く、この状況を打破して見せて。

 

「行くぜ!舞花!俺は手札から融合を発動!手札のスパークマンとクレイマンを融合して、E・HEROサンダージャイアントを召喚だ!!」

 

 場に出される雷の巨人。

 体にまとう雷が辺りに放電している。

 

 

E・HEROサンダー・ジャイアント

ATK2400

 

 

「サンダージャイアントの効果発動!このカードよりも元々の攻撃力が低いモンスター1体を破壊する。ピケルを破壊だ!ヴェイパースパーク!!」

 

 放電された雷がピケルを襲う。数秒間電撃がピケルの体を巡った後、破壊された。

 

 でもこのままじゃプリンセスを倒せないはず。そう思考したときに私は悟った。

 まだ何か来るっ!

 その考えとほぼ同時に、十代くんは手札のカードを表にする。

 

融合回収(フュージョンリカバリー)を発動!俺は墓地の融合と、融合に使用したモンスター1体を手札に戻す!俺は融合とスパークマンを手札に加え、再び融合を発動!場のバブルマンと手札のフェザーマン、スパークマンを融合してE・HEROテンペスターを召喚!!」

 

 3体融合!?

 驚いていたのもつかの間、3体のモンスターが融合し、フェザーマンと同じような翼を生やしたヒーロー、テンペスターが姿を現した。

 

 

E・HEROテンペスター

ATK2800

 

 

 それにしても、十代くんは融合を1枚しか使っていないのにこの連続融合。やっぱりすごいよ十代くん!!

 

 自分の中の高揚感が、私をますます笑顔にさせる。

 楽しくてしょうがなくて、私は笑顔を崩せない。

 

「カードを1枚伏せて、バトル!テンペスターで、ブリザード・プリンセスを攻撃!カオス・テンペスト!!」

 

 攻撃力が同じモンスターで攻撃って、相打ちを狙ってきたの!?

 

「迎え撃って、プリンセス!!」

 

 プリンセスの放ったハンマーとテンペスターの放つ風。両者は交わることなく相手のほうに向かっていく。プリンセスに風が直撃するのと、ハンマーがテンペスターに直撃するのはほぼ同時だった。プリンセスは悲鳴を上げて破壊される。しかし、テンペスターはプリンセスの放ったハンマーを弾き飛ばした。

 

「攻撃力は同じはずだよ?」

 

「テンペスターのモンスター効果さ。自分フィールド上にあるカードを1枚墓地に送って、このターン戦闘では破壊されなくなるぜ!!」

 

 十代くんの場からはさっき伏せたリバースカードが消え去っていた。このバトルで破壊されたのは私のプリンセスだけ。

 そして、私のフィールドはがら空きとなった。

 

「どうだ、舞花!お前のエースは倒したぜ」

 

 十代くんは右手を上げてガッツポーズ。さっきまでと同じ、楽しんでる声。でも、十代くんは一つ勘違いをしている。

 

「私のエースはプリンセスじゃないよ~」

 

 それを告げると、十代くんは呆気にとられたような表情で私を見た。クロノス先生との入試デュエルのときの印象が強かったせいで、私のデッキのエースを勘違いしてしまったんだろう。

 

「へぇ、じゃあ見せてくれよ。お前のエースを」

 

 十代くんはきっとワクワクしている。私の次の一手。エースを召喚してくることを。

 

「ねぇ、十代くん」

 

 そんな十代くんを見ていたら、思わず私は口を開いてしまった。

 

「十代くんはどんなときが一番デュエルを楽しいって思う~?」

 

 質問を聞いて、十代くんはう~んと頭を捻る。思い当たる事柄が多いんだろうな。

 

「自分の攻撃が決まったとき?相手がすっごく強かったとき?キーカードを引き当てたとき?」

 

 十代くんはこのどれもが当てはまるといった風で、私を見ていた。そしてこれは私にも当てはまる。でも、1番じゃない。

 

「私はね……」

 

 すぅっと一瞬深呼吸。高鳴っていた胸を少し落ち着かせる。そして、手札のカードを1枚見る。

 私はニッコリと笑った。これからが、1番楽しいデュエル。

 

「自分の1番好きなカードを使って戦う時!そのときが1番楽しいよ!!」

 

 プリンセスが破壊され、がら空きになってしまった私のフィールドに残っている2枚のリバースカード。そのうちの1枚を今開く。

 

「リバースカードオープン、速攻魔法、上級魔術師の呪文詠唱!私は手札の魔法カード1枚を発動する!!」

 

 手札のカード1枚を引き抜く。デュエルの最初から握っていたそのカードは、私の最も大切なカードを呼ぶ魔法。

 

「手札の黒魔術のカーテンを発動!ライフポイント半分をコストにして、デッキから黒魔術師を特殊召喚するよ!!」

 

 

舞花

LP3600→1800

 

 

 デッキから抜き出したそのカードは、良く言えばとても使い込まれていて、悪く言えばとてもぼろぼろのカード。

 表面は傷だらけで、スリーブに入っているそのカードの4隅は少しずつ剥がれていた。

 このカードは私のデュエルの原点。私がデュエルを始めたときからずっと一緒の大切なカード。

 

「最後まで……私と共にっ!来て、ブラック・マジシャン!!」

 

 紫色の衣をまとった黒の魔術師。私にとっては鏡で見る自分の顔と同じくらい見たカードイラスト。

 私のデッキのエース、ブラック・マジシャンが私のフィールドに舞い降りる。

 

 

ブラック・マジシャン

ATK2500

 

 

「スゲェ、あの武藤遊戯さんと同じ、ブラック・マジシャン……」

 

 私の場に召喚されたブラック・マジシャンを見て、十代くんは感嘆の息を洩らす。ほんの数秒見とれた後、サンダージャイアントの攻撃をせずに、バトルフェイズを終了してエンド宣言をした。

 

 私はブラック・マジシャンを召喚できたとは言え、まだ不利な状況に変わりは無い。特に私のブラック・マジシャンじゃテンペスターを倒せない。手札にはこの状況を打開するカードは無い。

 私はデッキの上に手をかける。さっきの十代くんの真似じゃないけれども、目を閉じた。

 

―――

 

 何かが聞こえる。それは外からではなく、デッキの中からの声。デッキの上にかけた手からは、得体の知れない何かを感じていた。

 今までに感じたことのない何か。けれども私はワクワクする。デッキから、一体何が来るのだろかと。

 

「ドロー!」

 

 引いたカードはほとんど見覚えの無いカード。

 

 こんなカード入れたかな~?

 

 カードを凝視すると、一瞬イラストがウインクした。ありえないとは思ったけれども私は確かに見た。

 それと同時にこのカードが何かを思い出した。

 

 あの日、デュエルアカデミアの入試の日。

 十代くんと一緒に走っていたあの時。

 

――ラッキーカードだ

 

 あの時もらったカードだ。

 

 その場の流れでデッキに入れていたそのカードのテキストを改めて見てみる。

 そして、私はまたニコッと笑う。

 

 これならいけるよ

 

 場、手札、ドロー、それらがかみ合っている。

 

「リバースカードオープン!強制脱出装置を発動!」

 

 伏せていたもう1枚のカード。強制脱出装置はその効果により、モンスターカード1枚を手札に戻す。

 

「融合モンスターは手札には戻らない……」

 

 強制脱出装置を見て、十代くんはつぶやく。でも、そんな心配をする必要は無いよ。

 

「私はブラック・マジシャンを手札に戻すよ」

 

 私が戻したカードに十代くんは驚く。無理も無い、自分の強力な融合モンスターを除去されると思っていたのだから。

 でも、これは準備。私のブラック・マジシャンが十代くんを倒すためのね。

 さっき引いたカードを掴む。自分を使ってくれと、このカードは言っている気がした。

 

「ジュニア・ブラック・マジシャンを召喚!」

 

 私の場に召喚されたモンスターは、簡単に言えばデフォルメされたブラック・マジシャン。あのかっこいい姿を小さくしてかわいらしくなったそのモンスターは、飛び上がってブラック・マジシャンと同じポージングをとっていた。

 

 

ジュニア・ブラック・マジシャン

ATK1000

 

 

「さらに私は魔法カード、二重召喚(デュアルサモン)を発動!私はこのターン、もう一度通常召喚をすることができる!ジュニアを生贄に捧げるよ」

 

 登場したばかりの小さな魔術師は、光となってフィールドから姿を消す。そして、その光が少しずつ集まり、私の持っている1枚のカードに吸収される。

 

 休憩が短くてごめんね。でも、もうちょっと頑張ろうね!

 

「ブラック・マジシャンを、もう1度召喚するよ!」

 

 ジュニアのいた場所に、さっきと同じようにブラック・マジシャンが現れる。

 

「ブラック・マジシャンはレベル7、生贄は2体のはずじゃあ・・・」

 

 最もな疑問を十代くんが投げかける。でも、今起きていることに対して、十代くんは疑問よりも楽しさのほうが勝っている様子でブラックマジシャンを見ていた。

 

「ジュニアの効果だよ。ジュニア・ブラック・マジシャンは、ブラックマジシャンの召喚のための生贄になるとき、1体で2体分の生贄として扱うことができる。そして、ジュニアを生贄にして召喚したブラックマジシャンは、攻撃力が1000ポイントアップするよ!」

 

 さっき吸収された光が、ブラックマジシャンの魔法力を高めているようだ。

 

 

ブラック・マジシャン

ATK3500

 

 

「攻撃力3500!?」

 

 十代くんの驚いている表情を見る間もなく、私は残り2枚の手札のうちの1枚のカードを表にする。

 これが私の切り札!

 

「さらに魔法カード、拡散する波動を発動!1000ポイントライフを支払い、私の場のレベル7以上の魔法使い族モンスター1体はこのターン、すべての相手モンスターを攻撃できる!!ブラック・マジシャンで、サンダージャイアントとテンペスターを攻撃!」

 

 

舞花

LP1800→800

 

 

 上空へとブラック・マジシャンが飛び上がる。ブラック・マジシャンは自分の攻撃範囲にすべての敵モンスターが入る位置まで上昇すると、下に向かって杖を構える。

 

「ブラック・マジック!!」

 

 ブラック・マジシャンの杖から放たれた黒い魔術が、十代くんの場の2体のモンスターに直撃する。

 

――ドォオン

 

 爆発が起き、水面が空に柱を造る。爆発の煙が晴れたとき、十代くんの場にモンスターは居なくなっていた。

 

 

十代

LP2100→1000→300

 

 

「ははっ」

 

 十代くんはまた笑っていた。自分の圧倒的優位だったさっきの状況から再び一転して私が有利な状況。今度は手札は1枚、次の布石すらも打っていない状況。なのに、十代くんはやはり笑っていた。

 

「スッゲェ……スッゲェぜ!舞花!」

 

 この状況になってもなお、デュエルを楽しむ十代くんの目。次のドローでも融合に必要な手札3枚に足りることはないのに、それでも尚、自分の可能性を信じている目。

 

 やっぱり、十代くんはかっこいいよ!!

 

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 私の伏せたカードは、闇の幻影。このカードなら十代くんがブラックマジシャンを破壊しに来ても守ることができる。

 

 十代くんにターンが移る。

 十代くんの手札は1枚。けれども目は、あの時と同じ。

 クロノス先生を、万丈目くんを倒したあの時と同じ目。

 

「俺のターン…」

 

 瞬間、私の胸が高鳴った。

 十代くんが今まさにドローをしようとしている時、十代くんの動きがスローに見える。

 

 今を、どうせなら永遠に続けていたい。

 

 楽しい、楽しすぎるこのデュエル。状況的に、十代くんの最後のドロー。終わりの見えてきたこの戦いを私はもっともっと続けていたかった。

 

 ずっとずっと、十代くんとデュエルしていたい。

 

「ドロー!!」

 

 私には、十代くんの手が光って見えた。いや、そのカードを引きぬく様すべてが、輝いて見えた。

 引いたカードを、十代くんは目の前に持ってくる。そのカードを確認する十代くんの表情を確認したとき、私は悟った。

 

 私、負けちゃったんだね……。

 

 自嘲ではなく、笑みが洩れる。ただ、私には楽しいこのデュエルが終わってしまう悲しさがあったのかもしれない。

 でも、最後まで楽しもう。

 場のブラック・マジシャンは、そんな私のほうをチラッと見ていた気がした。

 

「きたきたきたきた!!俺は手札から魔法カード、ミラクルフュージョンを発動!!墓地のフレイム・ウイングマンとスパークマンをゲームから除外して…来いっ!!E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン!」

 

 フィールドに、一筋の光が舞い込む。

 その光の筋は、だんだんと太く広がっていき、大きな光の柱を作り出した。その柱の最上部、目視できない天空から、光り輝く英雄がその姿を現した。

 

 

E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン

ATK2500

 

 

「シャイニングフレアウイングマンの攻撃力は、墓地にあるE・HERO1体につき、300ポイントアップする!俺の墓地のE・HEROは6体、よって攻撃力が1800ポイントアップ!」

 

 墓地のHERO達からの絆の力が十代くんの場のシャイニングフレアウイングマンに力を与えていく。その力の大きさは、私のブラックマジシャンの力を上回っていた。

 

 

E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン

ATK4300

 

 

「シャイニング・フレア・ウイングマンで、ブラック・マジシャンを攻撃!!」

 

 シャイニング・フレア・ウイングマンの体が、自らが発した光に包まれていく。輝きをまとったシャイニング・フレア・ウイングマンが拳を構え、一直線にブラック・マジシャンの方に飛んでくる。

 

「シャーイニング、シュートォ!!」

 

 ブラックマジシャンとシャイニングフレアウイングマンの攻撃力の差は、私のライフポイントと同じ800。これでおしまいか~。

 

 楽しかったよ、十代くん

 

 シャイニング・フレア・ウイングマンの拳がブラック・マジシャンのお腹を直撃する。しかし、本来なら破壊されるはずのブラック・マジシャンはその場に立ったままだった。

 

 

舞花

LP800→0

 

 

「ブラックマジシャンが……破壊できなかった?」

 

 デュエルが終了して、ソリッドビジョンが消えていく。その中で最後まで残っていたブラック・マジシャンを十代くんは驚いた目で見ていた。

 

「墓地のジュニア・ブラック・マジシャンの効果だよ。ジュニアををゲームから除外して、場のブラック・マジシャンの攻撃力を1000ポイント下げることで、そのブラック・マジシャンは破壊を1度だけ免れることができる」

 

 最後の最後まで、私はブラックマジシャンを守れた。デュエルには勝てなかったけど、でも、本当に……本当に……

 

「十代くん」

 

 最後にブラックマジシャンを破壊できず、少し悔しそうな目をしている十代くんは、私が呼ぶとすぐにこっちを向いてくれた。

 

「すっごく、すっごく楽しかったよ~」

 

 私は自分の顔を見ることができない。けれど、きっと今の私は今までで1番いい笑顔ができていると思った。

 だって、1番楽しかったデュエルの後なんだから。

 

 私の顔を見た瞬間、十代くんは一瞬たじろいだ。その頬はほんの少しだけ朱に染まっている。一瞬下を向いて、首を左右にぶんぶん振った後で私のほうを向きなおす。いつものようにニカッと笑って、右手を突き出した。

 

「ガッチャ、俺も楽しかったぜ!舞花」

 

――ドキン

 

 私の心臓が大きく鳴った。今まで見たどれよりもいい、今の十代くんの笑顔。私と同じことを考えていてくれていれば、とっても嬉しいとそう思った。

 大きく動く心臓は、休まずに私の中で鼓動し続け、少し苦しい。けれども、なんだかとっても心地いい

 

 

 

 

 恋の音

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私とのデュエルに勝った十代くんは、約束どおり翔くんを連れて帰っていった。

 

 なんだか少し慌ててた気がするけど、どうしたんだろ~?

 

 今私の頭の中で流れている映像は、それも含めた今までの十代くん。

 今日、私は確認した。

 

 

 十代くんが大好きだって。

 

 

 今まで少し曖昧だった気持ちがはっきりとした気がした。分からなかった感情がはっきりと理解できた気がした。

 これが恋って言う感情なんだなって。

 

 だったら私は、これから少しでも十代くんに好かれたい。

 

 そして、いつか十代くんに好きになってもらえたら、その時は………

 

 

 上がっていった顔の熱は、朝日が見える時間になっても下がることは無かった。




オリジナルカード紹介

ジュニア・ブラック・マジシャン
星3 闇属性 魔法使い族 ATK1000 DEF1000
ブラック・マジシャンを生贄召喚する場合、このモンスターは1体で2体分の生贄とすることができる。さらに、このカードを生贄にして召喚したブラック・マジシャンは攻撃力が1000ポイントアップする。
墓地のこのカードをゲームから除外し、ブラック・マジシャンの攻撃力を1000ポイント下げることで、1度だけそのブラック・マジシャンの破壊を無効にする。

漫画オリジナルカード

上級魔術師の呪文詠唱
速攻魔法
手札にある魔法カード1枚を発動する。(発動条件やコストを無視することはできない)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。