魔法の世界で……   作:アルペリア

10 / 13
 前の話から時間が結構飛んでいます。この話から大戦時代に入ります。
よろしくお願いいたします。


2・大戦編
連合での依頼


 

<大分裂戦争>

―南の古き民『ヘラス帝国』、北の新しき民『メセンブリーナ連合』。昔から確執のあった両者の間で起こった大規模な戦争。以前から起こっていた、小規模の衝突とは違い、全面的な戦争となった。

 

 

 

 

 

 

・大戦初期・メセンブリーナ連合メガロメセンブリア

 

 

 北の連合の首都である、このメガロメセンブリアの高級飲食店が並ぶ場所の一角。元老院の関係者や各界の重鎮などが、公にすることが好ましくない話し合いをするときに利用する高級バー。

 そこの一番奥まり、人目のつかないボックス席に、かつてピエロによってこの世界に来た渡良瀬アキラの従者である男装の麗人・セイバーがいた。

 周りにはマスターである渡良瀬アキラの姿はなく、彼女は一人でこの場所に来ているようだ。チラリと腕に付けた時計を確認する。その後ほとんどボックス席の脇にある観賞魚が入った水槽や、席の後ろに植えられている、落ち着いた雰囲気を出すため、実際はボックス席の中を見えにくくするための観葉植物で見えにくくはなっているが、入り口を見る。

 どうやら、誰かを待っているようだ。だが、待ち人がくる気配はなく、ため息を一つつくと、考え事をするかのように目を瞑った。

 それから、十分程経った後、人が近づく気配を感じたセイバーが目を開けると、彼女が座っている席に店のウエイトレスに連れられて、一人の男性がやってきた。ウエイトレスが一礼して、戻っていく間に男性は席に着く。

男性はしっかりとした質の良さそうなスーツに身を纏っており、どこか秘書のような雰囲気を纏っていた。

 

 

「随分とお早いお着きですね。お待たせしてしまいましたかな?」

「いえ、こちらが指定の時間より早く来てしまっただけです。貴方は時間通り、問題はありません。」

 

 

 男性が時間について言うが、セイバーは返答しつつ首を振る。会話が途切れた時を見計らってウエイターが注文を取りに来る。男性は何度かこの店を利用しているのだろう。「何時ものを。」と言い、セイバーは「私は結構。」と言う。

 ウエイターが去っていくのを尻目に見ながら、男性が口を開く。

 

 

「貴女は何も飲まないのですか?」

「ええ、この後少し用事もあるので。」

「それは、忙しい所に申し訳ないですね。」

「いえ、お構いなく。大した用事ではありませんので。」

 

 

 男性は謝罪の言葉を口にするが、顔はあまり「すまない」とは思っていないようだった。セイバーも特に気にした様子もなく、男性が注文した物が来るまで、お互い無言だった。

 少しあと、男性が注文した物が来た。薄く白濁した飲み物で、どうやら何かのカクテルの様だった。男性は一口、口にするとセイバーに向かって話し始めた。

 

 

「さて、今日来てもらった本題に入りましょうか。」

「………その前に一つよろしいでしょうか?」

「む、何ですかな?」

 

 

 男性の話にセイバーが口をはさむ。話を遮られた男性は少し顔を顰めながら、尋ねる。

 

 

「話に入る前に貴方が依頼をしてきた人物であるがどうかを確認させていただきたい。」

「確認も何も、私の顔を見れば確認が出来るでしょう。事前に写真も送っているはずです。」

「顔など変装や魔法でいくらでも変えることが可能です。このような時期だからこそ、確認は重要だと思いますが。」

 

 

 セイバーの言葉に男性は「なるほど」と言いながら、役員証を見せる。登録した人物の魔力を流すことで意味を持ち、身分証明として機能する物で、他人が持っていてもただの何も書いていないカードにしかならない。

 セイバーは確認し、「結構です。」と答える。男性は役員証をしまう。

 

 

「貴女のも拝見させていただいてもよろしいかな?」

 

 

 男性に言われ、セイバーはスーツの内ポケットに入っているものを見せる。それを見て男性の目が驚きに変わる。

 

 

「それは契約カード。よろしいのですか、そんな重要なものを見せて……。」

 

 

 セイバーの手には長方形のカードが握られていた。カードの中央には騎士装束で青いマントを羽織っているセイバーの姿があった。

 それ以外の書かれているものは男性には読み取ることが出来なかった。

 

 

「ええ、構いません。特に支障が出るというわけでもありませんので。」

「そ、そうですか。(おそらくアーティファクトは羽織っているマント。後で調べさせるか。)」

 

 

 契約カードをしまい、セイバーは男性に話を続ける。

 

 

「さて、お互いに確認もできたことですし、本題に入りましょうか。」

 

 

 セイバーに促されて、男性は一つ頷くと、口を開く。

 

 

「分かりました。我々の主である方から、貴女、正確には貴方のマスターである渡良瀬アキラ殿に依頼をお願いしたい。」

「ええ、それは事前の手紙で確認しました。今日はその内容を聞きに来たのですが。」

「そうですね。依頼の前に貴方は『黄昏の姫御子』についてはご存知ですか?」

 

 

 男性の問いにセイバーは頷き、自分の知っている『黄昏の姫御子』ついて話す。

 

 

「ウェスペルタティア王国の代々生まれる『完全魔法無効化能力』を持つ方の事でしたね。確か、現在の姫御子はアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアと言う方でしたか。」

「お詳しいですね。その通り、今の『黄昏の姫御子』はアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア様です。」

「まぁ、調べようとすれば可能な事です。それで、その姫御子が今回の依頼とどう関わりが?」

「ええ、先日の帝国によるオスティア回復作戦については?」

「まぁ、人並みには知っています。それも依頼に関係が?」

「はい、我々がある筋から手に入れた情報によると、数日後にまた侵攻作戦が展開されるようなのです。」

「またですか………連合の方は大丈夫なのですか?」

「まぁ、そちらは何とか対処ができますので、ご心配なく。貴方に依頼したい事とは、さっき話に出てきた『黄昏の姫御子』についてなのです。」

 

 

 話しを区切り、男性は少し身を乗り出して話を続ける。

 

 

「その『黄昏の姫御子』を次の戦闘の時に抹消、最悪でも機能停止にしてほしい。それが貴女方への依頼です。」

「なにっ!?正気か貴方は!姫御子がいなかったら、どうなると思っているのだ!!」

 

 

 男性の依頼を聞いて目を見開くセイバー。彼女の受けた依頼とは、姫御子の暗殺という事に変わりはないのだから。

 今度は逆にセイバーが身を乗り出して男性に問い詰める。男性は「落ち着いてください。」と言いながら、話を続ける。

 

 

「話を続けます。何も理由なくこのような依頼はしません。私の主はあの姫御子こそ、戦争の一因とお考えなのです。」

「……なら、その理由と言うのをお聞かせ願えないか?」

「いいでしょう。姫御子が持つ『完全魔法無効化能力』、これがこのオスティアでの戦闘の要因なのです。あの能力は確かに魔法使いにとっては天敵。アレを巡って戦闘が起きるのなら、その要因をなくしてしまえばよいのです。」

「姫御子のおかげで、帝国からの攻撃に耐えることが出来たというのに、あまりに勝手な言い分ですね。」

 

 

 セイバーが怒りを込めた視線で男性を見るが、男性は特に気にした様子は見せずに話を続ける。

 

 

「姫御子がいなくなれば、あの王国に大した価値はありません。帝国に渡しても特に痛手ではありません。何より、あの戦線に出していた兵力をほかの場所にまわすことが出来ます。ほかにも言う事はありますが、あの御子は味方にあれば有利になれば、敵になれば此方が不利になるのは必須。アレは諸刃の剣なんですよ。お分かり頂けましたかな?」

 

 

 男性の話の途中からセイバーは目を閉じて、考えながら来ているようだった。男性の話が終わっても、目を開け、口を開くこともなかった。その様子を男性も返答を急がせる事もなく、待っているだけだった。

 

 

「……一つお聞きしたいことがあります。」

 

 

 しばらく経った後、セイバーが口を開くが、目は閉じたままだった。

 

 

「何でしょう?あぁ、報酬の事ですかな?その点についてはご心配なく。申し分のない量をご用意いた「違う。そういう事ではない。」……。」

 

 

 男性の言葉にセイバーが割り込む。男性は割り込まれ、顔を一瞬顰めたが、すぐに表情を戻し「なら、何なのですかな?」と尋ねた。

 今まで閉じていた目を開け、男性を真正面から見ながら、セイバーは話す。

 

 

「貴方は姫御子の姿を見たことはありますか?」

「ええ、一度だけ。遠くからですが。」「なら、彼女がまだ幼い少女だという事を知っているはず。それなのに始末しろと言っているのですか?」

「…………あぁ、何だそんな事ですか。」

 

 

 男性の言葉に、セイバーが眉を顰める。セイバーの表情を気にすることなく男性は続ける。

 

 

「御存じですか?姫御子はもう何年もあの姿らしいですよ。少女と言うにはとてもとても。それになにより……。」

「……なんですか?」

「あんな物は人ではなく、化け物と言った方がいいんですよ。それを始末しろと言っても特に気にする必要は無いでしょう?」

「――っ!!」

 

 

 男性の言葉にセイバーの目が怒りで開かれる。膝の上に乗せている手は音が出るほど握られている。男性はセイバーの怒りを不思議そうに見つめる。

 

 

「おや、どうかしましたか?こんな事より早く依頼を承諾してほしいのですが…「断る!下郎が!!」……。」

 

 

 男性の催促の言葉を遮り、セイバーは怒鳴りながら立ち上がる。

 あまりの大声に周りの客や、ウエイトレスやウエイターたちが何事かと見ていた。立ち上がったセイバーは男性を一睨みすると、足早に出口で向かう。

 その背中に男性が声をかける。

 

 

「よろしいのですか?従者である貴方の一存で判断してしまって?」

 

 

 男性の言葉にセイバーは立ち止まる。しかし振り返る事は無く言い放つ。

 

 

「貴様に言う義理は無い。」

 

 

 そう言い残し、そのまま店を出て行った。

 

 

 

 

……。

 

 

 

…………。

 

 

 

 

「やれやれ、困った方だ。」

 

 

 セイバーが出て行った後、席に一人残った男性はそう呟きながら、通信用の魔法を展開する。

 

 

「あぁ、私だ。あの方に伝えてくれ。対象らは依頼を拒否。…………あぁ概ねあの方の予想通りだ。…………そうだな、そうしてくれ。それとあと一つ。対象のセイバーのアーティファクトを見ることが出来た。マント状の物だ。過去の文献を調べ、おおよその予測を立ててくれ。…………あぁ、そうだ。後は頼んだぞ。」

 

 

 魔法を切った男性はグラスに残った酒を飲み干すと、席に来たウエイターに代金を渡した後、彼も店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 この話でアスナに対してひどい表現を出してしまいましたが、これはこの男性の考えです。書いている私はアスナがネギまで一番好きです。
 読んでいただきありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。