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「問おう。あなたが私のマスターか?」
俺の目の前にはセイバーがいた。「Fate」に出てくるメインヒロイン。聖杯戦争におけるクラスの中で最良と言われている。剣の英霊・セイバー、正体は誰もが知っているブリテンの王アーサー・ペンドラゴン。本名をアルトリア。アーサー王は男装したこの少女だった。
確かこんな感じが俺の知っているセイバーの知識だ。あまりゲームをやらない俺でも友人から聞いていたし、よく読む二次創作の中でもおなじみの彼女がまさか俺の目の前にいるというのは、中々に違和感があって、俺は暫く彼女を見たまま動けないでいた。俺が何も反応していない間はセイバーは時々周りを見渡している。
「………………さて、そろそろ先ほどの質問の答えを聞かせてはくれませんか?」
「え?先ほどのって……………」
「……………私があなたに対して聞いたマスターであるかどうかの質問です。」
「あぁ、その質問ね。多分その答えはイエスだと思う。」
「はっきりとしない答えですね。」
「ゴメン。でも俺はこの世界にきて、まだ時間がたっていないんだ。だから君の質問に対してはっきりと答えられない。」
「……………そうですか。まぁ確かにここにきてまだ時間もたっていませんし、手紙とやらも読んでいませんからね。返答は手紙を読んでからでも遅くはないでしょう。」
そう言うとセイバーは一度辺りを見回してから俺に対して手を差し伸べてきた。その手を借りて立ち、俺も辺りを見て見るが、いきなりこの世界にやってきたのだからここがどこなのか分かるかけがない。というか、これからどうすればいいのかも分からない状態である。
最初からいきなり詰んでるなと一人思っていると、俺の隣にいるセイバーが「こっちです。ついてきてください。」と言って歩き始めた。
そのいきなりの行動にびっくりしたが、彼女に遅れないようについていく。セイバーの歩く後ろ姿はまるで、自分たちがどこにいて、これからどこに向かうかをしっかりと理解しているようであった。
「…………何をボーっと突っ立っているのですか。日が暮れる前にこの森を抜けますよ。」
この訳の分からない場所に放り出されてはいるが、セイバーがいることで、何とかなる気がした。
……………早いもので、それから感覚的に一時間半くらいで俺とセイバーは森のはずれまで来ていた。
途中野生のモンスターとかが襲ってくるかなと思っていたが、そんなことはなく、歩きづらい道をひたすらに歩いただけであった。俺一人じゃこの一時間半の間にどっかで野垂れ死んでいたのだろうなと思っていると、前を歩くセイバーに呼び止められた。
「あそこに何があるか見えますか?」
セイバーが指差す方向に目を凝らしてみるが、なにも見えない。
「悪い。何も見えない。」
「見えませんか、あそこに町の様なものがあるのですが。」
「そんなにはっきりと見えるもの?」
「私の眼にははっきりと見えているのですが、今日あそこまで行きますから、頑張ってください。」
そんなやり取りをしながらやっとこの事で町にたどり着き、手ごろな宿に入ることが出来た。
「ここまでくれば、人心地つけるでしょう。」
壁に寄り掛かったセイバーが言うが、ここまで来るのにセイバーがいなかったらどうなっていたことか。セイバーはここに来るのが初めてではないようなしっかりとした歩きで俺を導いてくれた。
「セイバーはここに来たことがあるのか?」
「何故そのように思うのですか?」
「だってここまで来るのに一度も迷うそぶりを見せなかったじゃないか。」
俺の質問にセイバーは少し考えた後、話し出す。
「私たちサーヴァントは召喚される地の事をあらかじめある程度理解しています。今回私は正規のサーヴァントではありませんが、同じような効果が働いたのだと思っています。」
「なるほど、それは便利だな。」
「便利というか、そうでなくては聖杯戦争では勝ち抜けない状態が想定されてますから。」
なるほど、本で読んだくらいだが、聖杯戦争はかなり過酷なものなんだな。この状況がそれでなくてよかった。
「ところで、そろそろもらった手紙を読んで見ませんか?今後どうやって生きてかの方針を決めなくてはいけませんし、あなたが貰ったという能力についても知らなくては。」
「そうだな。えっと、たしかここに………………あった。」
手紙を開いてセイバーと読んでみる。
拝啓 転生者様
この手紙を読んでいるという事は無事転生が終了し、一段落ついている事でしょう。この手紙であなた方が最初に引いた能力について各自説明をしていきます。
☆渡良瀬アキラ様の能力
・英雄級の魔力と気
これは字の通りです。この世界において英雄と呼ばれていた人物たちと同じレベルの魔力、気を保有しています。この魔力と気は先天的な要素が強いため、今後伸ばすことが難しい分野でもあり、後々便利でしょう。
・先天性魔力放出障害
これはこの世界でもたまに持っている方がいるものであり、能力と言ってもマイナスな能力となります。この能力は「自身の体、又は体に接触している物体から魔法、魔力を放出することが出来ない。」というものになります。この世界では「魔法を撃つことが出来ない」という解釈になっています。魔法が使用できないというわけではなく、身体強化などの魔法は使用することが出来ます。
・従者一人
字の通り一人使役できる者を与えます。この従者の選定は私が渡良瀬様の能力を考え適当だと思われる者を選択させていただきました。なお、この選定された者は変更が出来ませんのでその点についてはご了承ください。
また、不定期ではありまずがこちらから手紙を送らせていただくことがあります。容についてはその都度異なりますが、いくつか依頼、指令を行っていただくことがありますので、その際はご協力をお願いいたします。
最後になりますが、あなた方のこの世界での人生が有意義になりますよう心から祈っております。
敬具
手紙を読み終わり、一息つく。どうやら俺の能力は結構傾いているようだ。せめてもの救いはセイバーという従者を手に入れられた事くらいだろう。彼女が居なかったら本当に詰んでいた。
「さて、マスター。これからどうするつもりですか?」
隣で一緒に手紙を読んでいたセイバーから聞かれた。確かに自分の能力が分かったのはいいが、これからどうしていこうか。
「どうするつもりも、俺は今ここがどこで、いつの時代なのかも分からない。」
「成る程、確かそれが分からなければ行動を決めることも出来ないですね。それが分かれば予定を決定することは可能ですか?」
「そりゃ、それが分かれば出来るだろうね。」
「分かりました。なら今がいつの時代で、どこにいるのかは、私の方から伝えることが出来ます。」
「セイバーはそれが分かるのか?」
俺と一緒にこの世界に来たはずなのに、なぜ彼女だけそんなことが分かるのだろう。そういやさっきサーヴァントの能力とかそんなことを言ってたな。それが適用されたのだろうか
「ええ、分かりますよ。私はサーヴァントですから。」
「サーヴァントだから?」
「ええ、先ほども言ったように私たちサーヴァントには世界の情報がある程度分かるようになっていますから、今がいつでどこにいるか位は分かります。」
やっぱりそうなのか。本当にセイバーが一緒にいてくれて助かった。
「それで今俺たちがいるのはどこなんだ?」
「ここは『魔法世界』のヘラス帝国の北東の位置する小さな町です。時代は大戦の始まる約五年前と言ったところでしょうか。」
「五年前か……。」
「はい、このままだと確実に私たちは大戦に巻き込まれますね。」
「まあ、時代を聞いてなんとなく予想はしていたが、実際に巻き込まれるとなると、嫌なものだな。」
「どうしますか。大戦がはじまるまでまだ五年あります。その間に『魔法世界』から出ていくという事も可能では?」
『魔法世界』から出ていく事も可能性としてはアリなのかもしれない。ただ、それをしてあの青年から何か言われたり、指令を城と言われるのは嫌だ。なるべく穏便に生活していきたいものだ。
「確かにそれもいいのかもな。でも、あのゲートだっけ?あれを使用するのにいくら必要だったっけ?」
「さあ、そこまでは私も分かりません。その知識は必要なくてもこの世界では生きていけますからね。」
「そうなんだよな。でもなんか高そうな気はするんだよな。」
「世界をつないでいるゲートですからね。高いのは当然でしょう。」
「だよなぁ。」
「それで、これからどうしますか?マスター。」
セイバーがこっちを見てくる。いつまでも考えている時間はない。やることはいろいろとあるはずだ。
「取りあえず………」
「取りあえず?」
いろいろとあるが最初にはこれをやっておくべきだろう。
「生活費を稼ごう。」
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…………………。
読んでいただきありがとうございました。
サーヴァントの能力についてはおぼろげに覚えているもので、間違いがありましたら申し訳ありません。