魔法の世界で……   作:アルペリア

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依頼

「セイバーそっちに行ったぞ!!」

「分かりました!こちらで仕留めます!!」

 

 

 セイバーの方に標的の魔物を向かわせるとともに、彼女に対して魔力供給を強くする。

 

 

「はああぁあぁぁぁあ!!」

 

 

 目の前に迫ってきたクマの形をした魔物を自身の不可視の剣で切り裂く。切り裂かれた魔物は自分が見えない物に切り裂かれたという訳の分からない状態で生を終えた。

 セイバーの剣、エクスカリバ―は不可視の鞘『風王結界(インジブル。エア)』をまとっており、相手は剣の間合いをうまくとることが出来ない。そのため予想していない間合いからの攻撃に対応できず切られてしまう。今回もそのおかげで何なく相手を倒すことが出来た。

 とどめを刺したセイバーに対して俺は特に攻撃の手段を持っていない。今回も囮と誘導の役割をしていた。自身が手に入れた『先天性魔力放出障害』が思った以上に厄介なものだった。

 何せ基本的な攻撃魔法『魔法の射手』ですら放つことが出来ないのだから。幸いなのは『戦いの歌』などの身体強化の魔法が使えることが出来ることだ。これが出来なかったら本当に何もできないことになっていた。

 クマ型魔物の討伐部位を切り取ったセイバーがこちらにやってきた。この部位をギルドに提出すれば今回の依頼は達成だ。

 

 

「お疲れ様ですマスター。これで今回は終わりですね。」

「ああ、そうだな。今回も助かったよセイバー。」

「いえ、マスターの剣となるのが私の役目ですから。」

「そうだな。俺はセイバーがいなくちゃ戦闘は出来ないからなぁ。」

「そういう私もマスターからの魔力供給がないと満足に戦えませんから。」

 

 

 申し訳ないと思っている俺にセイバーが「適材適所ですよ。」と言ってくれる。セイバーが従者でよかった。

 この世界に初めて来たあの日から早くも六か月。俺とセイバーは相変わらずヘラス帝国にいた。ここで依頼をこなし生活費等を稼いでいる日々だ。

 

 

「討伐お疲れ様でした。こちらが報酬になります。」

「どうもありがとう。」

 

 

 受付で依頼の報告と、討伐部位を渡す。今回の依頼もこれで完了。この依頼の報酬金でしばらくは生活が出来る。

 今度はどこに行ってみようか。俺たちは依頼で資金を稼ぎながら帝国の中を移動していた。

 それにゲートを利用するまでのお金はまだたまっていない。

 というかまだ俺たちはゲートを利用するのに一体いくら必要なのか分かっていなかった。まあ、ヘラス帝国の人たちはゲートなんて使用しないからこっちに情報が来ないのは仕方ないのだけれども、ある程度の資金がたまったら『北の連合』の方に行くのもいいのかもしれない。

 今よりは情報が入ってきそうだから。ギルドから出ようとする俺たちに受付の女性が声を掛けた。

 

 

「あの、渡良瀬さんにお手紙を渡すように承っています。」

「手紙?いったい誰から。」

「こちらに名前は仰りませんでしたが、渡良瀬さんに渡せばわかると。」

「俺に渡せば、分かるか………。」

「ええ、こちらがその手紙になります。」

「ああ、ありがとう。」

 

 

 手紙を受け取り、ギルドを出る。受付の女性には差出人についてはあまり触れなかったが、この世界で俺に手紙を出してくる奴なんて一人しかいない。

 

 

「あの白い世界にいたピエロのような方ですかね。」

「おそらくそうだろうなぁ。」

 

 

 セイバーの問いに答える。恐らくというかほぼ間違いなくあのタキシードのピエロだろうな。

………………ん?

 

 

「ちょっと待ってくれセイバー、何で君があのピエロの事を知っているんだ?」

「え?あれ話していませんでしたっけ?」

 

 

 首をかしげるセイバー。可愛いな……………じゃなくって、聞いたことがないことが飛び出してきた。

 

 

「ああ、聞いたことないよ。セイバーがピエロの事を知っていたなんて。」

「すみません。話すのを忘れていたようですね。」

 

 

 そういってセイバーは話し始めた。

 

 

「聖杯戦争が終わって私はカムランの丘に失意とともに戻ってきました。あの戦いで私が描いていた理想が否定され、どうしようもなく私は一人丘に居ました。」

「セイバーの理想。」

「その話は後日にしてください。一人丘にいた私はいつの間にか白い空間にいて、目の前に変なテンションのピエロがいました。」

「ああ、あのおかしなテンションか」

「ええ、直前まで私は丘で泣いていましたが、いきなりあのテンションが目の前に来たので思わず涙が止まりました。」

「まあ、いきなりアレは驚くどころじゃないな。」

 

 

 ドン引きのレベルだ。

 

 

「驚いていた私に対してあのピエロは新しく召喚される場所があるからそこに行きなさいと言いました。本来私は世界と契約をした存在ですから、違う世界に行けるかどうかなんて分かりません。ですので、あのピエロがどうこう出来ることではないのですが、アレはそんなことは関係ないと言って行く場所、つまりマスターの居た森の事なんですがそこに行くことになりました。」

「聖杯戦争に参加するのが本来の役割なのになんでそれを無視することが出来たんだろうな。」

「それは分かりませんし、あまり知ろうとも思いません。」

 

 

 きっぱりと言い切るセイバー。なんかあのピエロの事を思い出したくもないって感じだ。

 

 

「そういうわけで私はあのピエロの事は知っています。」

「そっか。それにしてもピエロからくる手紙ってことはやっぱり……。」

「ええ、間違いなく依頼についてでしょうね。」

「最初の手紙を貰ってから初めて来たやつだしな。このまま忘れてくれていたら楽だったのに。」

「そう言うわけにもいかないでしょう。依頼をこなさなかった場合何が起こるかわかりませんし。」

「そうだよなぁ。」

「取りあえず宿に戻って手紙を読んでみることにしましょう。」

 

 

 宿に戻って泊まっている部屋の机で手紙を開く。面倒なことが書かれていなければいいのだが。

 

 

 

拝啓

 異世界に移動して早六か月、皆様におかれましてはお変わりないでしょうか。ここでそちらの生活にも落ち着いているだろうと思いまして、以前のお手紙でも述べておきました「依頼」を開始させていただきます。この依頼は一人一人内容が異なっておりますので、基本的にはほかの人と被ることはありません。

○渡良瀬アキラ様への依頼

 ・幼竜イングヴァルトの討伐

   『魔法世界』で生活をして六か月。そろそろ大きな獲物を倒してもいい頃だと判断しました。この幼竜はまだ小さく大きな被害は出ませんが、成体になると非常に危険な竜となるので、今のうちに討伐をしてくださいし、この依頼を達成してください。幼竜と言っても成体のワイバーンよりは圧倒的に格上の存在ですが、成体の竜よりは安全に倒す事が出来るでしょう。この竜はあなた方がいる町から西にある『クノエの森』にいるはずですので、討伐をお願いします。

                                      敬具

 

 

 

 手紙を読み終わりセイバーと顔を見合わせる。いろいろとあのピエロに聞きたいことがある。

 

 

「何なんだろうなこれ。」

「あのピエロが何を考えているかは知りませんが、一つだけ賛成できる部分があります。」

「賛成できる。どの部分だ?」

「マスターがこの世界にきて六か月。確かにそろそろ一度大きな相手を相手にしてもいい時期なのではと思っていました。そんな時にこの依頼ですから、丁度いいと思ったんです。」

「大きな相手を言っても、俺はほとんどというかほぼ何もできないが………。」

「それはそうですが、一度でも自分より大きな相手というものと対峙しておくと次が違いますから。これはいい機会です。」

 

 

 セイバーはこの依頼について結構積極的なようだ。戦う手段がない俺はあまりやりたくはないのだが。

 

 

「私一人で行くというのもありますが。」

「それはさすがに無いな。そんなことをしたら俺がどうにかなってしまう(気分的に)。」

「?そうですか。」

 

 

 首をかしげるセイバー。やっぱこのポーズ可愛いな。ではなくて

 

 

「一応俺は男だし、女性のセイバーを一人行かして、安全な場所にいるのはダメだと思うからね。」

「そうですか。」

 

 

 セイバーを一人で行かせるのはありえないとしても、俺は行ってしまえばただの魔力タンクなんだが、自衛手段が壊滅的な状態。どうするか。

 

 

「大丈夫ですよマスター。」

「ん?」

「私はサーヴァントです。マスターを守るのが本来の役目ですから。何があってもお守りします。」

 

 

 俺を真っ直ぐ見て言うセイバー。やだこれ。ものすごくカッコいいな。

 

 

「いざとなったらというか、相手は大きな存在ですから、私の宝具を使用すれば対処できると思いますが。」

「宝具って使用していいのか。アレは自身の真名がバレるものだろう?」

「この世界で私のように召喚されたサーヴァントがほかにいるとは思えませんから、宝具を使用してのデメリットはそんなにあるとは思えませんので大丈夫かと。」

「なら、セイバーの宝具で倒すのが一番確実か。」

「おそらくそうでしょう。相手がどれほどの大きさかは分かりませんが、普通の剣での攻撃が効くとは思えませんし、一撃で仕留めるつもりで行った方がいいのでは。」

「そうだよな。被害が出るって言うほどだから相当な物なんだろうな。」

「名前がついているという事はある程度知名度がある竜でしょうね。明日にでもギルドに行って一通り情報を集めてみてみるのも必要なのでは?」

「そっか。事前にある程度情報があった方が戦いやすくなるだろうしな。じゃあ明日の一番でギルドに行ってみよう。」

 

 

 話をまとめて下の階の食堂へ行く。まずは腹を満たさないとな。セイバーも食事が楽しみなようだし。でもその前にこれだけは言っておこう。

 

 

「セイバー。」

「はい?なんでしょう?」

「明日はよろしくな。足手まといになると思うけど、頑張ろう。」

 

 

 言われたセイバーは一瞬顔に疑問を浮かべたが、すぐにフッと微笑んで

 

 

「そんなことはありませんよ。マスターがいての私ですから。」

 

 

 と言ってくれた。ホントセイバーには助けてもらってばかりだ。

 

 

「それに………。」

「それに?」

 

 

 セイバーが何か言いたそうにしている。なんかちょっと鼻息が荒いがどうしたのだろう?

 

 

「聖剣をブッパするという事がいかに戦場において優位に立てるかをお見せしましょう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………え、セイバーさん?

 

 

 

 

 




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