結構適当なこと言いまくった _(:3」∠)_
あと、人物の名前を誤変換しまくっていたのを指摘された。
はっはっは、そんなまさかご冗談を……あっ、本当だ。
うわー! うわー! ゴロゴロゴロゴロ!
本日、投稿前に見つけて修正した誤字。
正:彼女が、生に興味を
誤:彼女が、性に興味を
私は、間違っている方が好きです。
翌朝。
士郎は、朝の鍛錬に望んでいた。
「ふっ!」
息を吐くと同時に、左手に握った曲刀を水平に薙ぎ払う。
そして一歩踏み込み、次は右手の一撃。
流れるように、止まらないように両の手を振るう。
体の調子は上々だ。
怪我の後遺症はない。
「シロウ、それ楽しい?」
離れたところで見学していたリアが問いかけてくる。
体をそわそわさせている所を見るに、自分もやってみたいのだろう。
士郎は、少し考えてから返答した。
「楽しいか、って言われるとわからないな。ただ、体を動かさないとスッキリしないんだ」
「体を動かすと、スッキリする?」
「ああ、するぞ」
「なら、私もやる」
予想通りの流れではある。
目覚めたばかりの頃は自分から行動するタイプに見えなかったが、それは外の世界を知らなかったからだろう。
彼女は外界に興味を示し、急激に成長していた。
きっかけは、犬だろうか。それとも食事だろうか。
なんにせよ、好ましい事だ。
こうして目の前で何かを見ると、手を出さずにはいられない。
普通の子供と何ら変わりなく、彼女は生きていける。
そう思った士郎は、少し笑みを漏らした。
「……危ないから、少しだけだぞ」
こういうのは、拒否すると面倒な事になる。
子供は、どうせ我慢なんて出来やしないのだ。
自分の目の届くところでチャレンジしてもらった方が、安心というものである。
「
投影魔術。この世に贋作を生み出す、士郎の魔術。
物騒な物を出すつもりはない。
用意するのは、中が空洞になっている木剣だ。
それを外套の下でこっそり生成し、リアへと手渡した。
そして、自身も木剣を正眼に構える。
基本に忠実な型。見本のつもりで見せた剣。
だがしかし、見様見真似で剣を構えたリアを見た士郎は、息を呑んだ。
重心のブレがない。呼吸が落ち着いている。
凛とした佇まいは、近づくものを寄せ付けない。
剣の結界。彼女は、剣に愛されている。
そして何より。
彼女の立ち姿は、
気にしすぎだとは思う。
だが、彼女に近い剣気を放つ姿から、目が離せない。
エクスカリバーに似た光を放った彼女の姿が、頭から離れない。
士郎が呆けている間に、リアは両手を振り上げ、剣を振ろうと力を籠める。
「!? 待──」
士郎は手にした木剣を放り投げ、慌てて彼女の元に走った。
リアが剣を振るう。
その手からは魔力が勢いよく噴き出し、リアの小さな体は
士郎がその体を抱き留める事が出来たのは、リアが地面に激突する直前。
「……あれ、失敗?」
「失敗、だな」
ほっと一息ついた士郎は、リアをゆっくりと地面におろした。
並み魔術師では考えられないほどの魔力量。
戦闘型のホムンクルスをも凌駕する力。
単純な力やスピードなら、現時点で士郎をも上回っているだろう。
やはり、リアは特別製らしい。
「もう少し弱い力から始めていこうか」
「うん、わかった」
◇◇◇
日が落ち、世界を満天の星が覆い尽くした。
この時刻になると町は静寂に包まれるのが常だったが、今日はいつもと違い
町の広場にこれでもかと並べられたのは、大型の照明器具。
光は周辺の大通りにまで及び、町を空から見れば雪の結晶のように見えたに違いない。
光の中心部では、住民たちに食事が振る舞われている。
政府主導のプロパガンダではあるが、住民にとってみれば何であれ変わらない。
多くの住人が集まり、町はさながらお祭りのような騒ぎとなっていた。
「……焼きそばの屋台、だよな。これ」
士郎は、どこか懐かしい風景を見て思わず呟いた。
ソースの焦げる臭いが、空腹感をあおる。
視線を落とすと、その匂いに目を輝かせている少女の姿。
苦笑しつつ二人分の焼きそばを受け取り、かわりにチップ程度の硬貨を手渡した。
妙に屋台の似合う、笑顔の怖いガチムチマッチョ──政府軍の兵士。士郎の顔見知りである。
そもそも、焼きそばの作り方を教えたのが士郎だ。
不味い軍用食に辟易した兵士達に乞われ、士郎はよく調理(あんな大ざっぱなものは料理とはいわない)を行っていた。
それを見た補給部隊の連中が、調理方法を聞きに来るというのも、よくある光景だった。
むろん、この地方が不味い飯で溢れているというわけではない。
だが、ヨーロッパから供給される食材を持て余していたのは確かだ。
基本的に、調味料の性質が違いすぎる。
見慣れぬ食事に興奮するリアを連れ、空いたスペースに座る。
地面の感触がやや冷たい。おそらく、事前に水を撒いていたのだろう。
そうでもしないと砂埃が料理に入ってしまうため、とても屋台などできない。
リアが落ち着くまで、士郎は町の様子をゆっくりと眺めた。
道行く人の表情は明るい。政府側としては、食料の大盤振る舞いをした甲斐があったというもの。
町の住人は、子供や老人が過半数を占めている。
以前は半々といった所だったが、今では年老いた者の方が多い。
その理由に思いを馳せると、胸がチクリと痛んだ。
「シロウ、この飲み物は何? シュワシュワする」
脇にいるリアに話しかけられ、士郎は気を取り直した。リアが手にしているのは、世界一有名な飲み物だ。士郎からその名を聞いたリアは、目を輝かせた。
「ほお、これが。コーラの実が入ってないと噂されるにもかかわらずコーラと呼ばれている、謎飲料……! この強烈なのど越し。3.8kg/cm^2程度のガス圧力がかかっていると推測するが、どうか」
「いや、圧力については知らないな」
「残念」
リアの素は、結構変な子かもしれない。
食事を終えたリアは、周囲をきょろきょろと見回しはじめた。
次は何に興味を示すのだろうか。
士郎もつられて、辺りを見回す。
出されている食事を見ると、士郎のよく知る料理を出している場所がほとんどだ。
店と料理だけ切り出してみると、日本の風景と勘違いするかもしれない。
どこから屋台を調達したのか。
なぜ、わざわざ屋台スタイルを模しているのか。
士郎は、調理方法を教えただけなのだが。
と、空に花が咲いた。
「──え、何あれ」
上空を見上げたリアが、茫然と呟く。
夜空を彩った輝きを受け、リアの瞳がさらに鮮やかに彩られる。
一拍遅れて、体を揺さぶるような音が襲った。
「花火だよ。ここまでくると、本当にお祭りみたいだ」
考えてみると、東の方では矢の月の祭りが開かれたばかりだ。
長きに渡るペルシャとトゥーランの戦。その終結と、雨の恵みを祝う大きな祭り。
そこで使う物資のおこぼれなのかもしれない。
「なんで、花火があるとお祭りになるの?」
「ん? なんでって言われると」
空に咲いた花が重力に引かれ、やがて落ちていく。
消えゆく光を見ながら、士郎は記憶の底をあさった。
花火の起源は、確か──
「俺の知ってる話だと、死者を祭る──供養するために花火を打ち上げるんだったかな。死者を迎え、送り返すための目印」
「迷子にならないようにするため?」
「そうだな。あれだけ派手だと、まず見落とさないだろう?」
死者を祭り、神を
神を崇め、死者を供養するための祈り。
火で厄を清め、払うための儀式。
宝石のように煌めく星空に、再び大輪が咲いた。
火の明かりが、星より強い光の軌跡を空に残す。
そうして一瞬のうちに散り、周囲を再び夜の闇が覆った。
リアは、その様をじっと。
息をのんで、見つめていた。
呆けた顔で空を見上げるリアの横顔を見ながら、士郎は一息ついた。
少し心配だったのだ。ホムンクルスが、他者に。世界に、興味を持てるかどうかが。
どんな生き物も、自身が生を望まねば生きてはいけない。
士郎は、以前。
アインツベルンと戦った時に、自らの命を捨てて戦い続けるホムンクルス達を見ている。
彼女らは皆、生きる事に興味を持っていなかった。
そうして皆、自身の限界を超えてなお力を振り絞り続け、死んだ。
だが、リアは大丈夫だ。
彼女は、きっと。生きていける。
花火が終わって。
一瞬の静寂の後、町にざわめきが戻ってくる。
リアは、まだ空を見上げていた。
「……綺麗だったね」
「そうだな。星よりキラキラ輝いていた」
「花火、すごいなぁ。あ、私は星も好きだけど」
リアは星を指さしながら、その名前を読み上げ始めた。
中には、士郎の知らない星もある。
ずいぶんと偏りがあるが、リアの知識量は相当なものだ。
おそらくは、占星術のために詰め込まれた知識だとは思うが。
しばらくリアの声を聞いていた士郎は、ふと思い出した。
祭りに、星といえば──
「そういや、今日は七夕か?」
「七夕?」
リアの知識には無いらしい。
有名ではあるが、東アジアの祭りだ。
アインツベルンには不要な知識なのかもしれない。
士郎はリアのすぐ横に腰を落とす。
そうして視線の高さを揃え、空を指さした。
七夕は、織姫と彦星が年に一度だけ会う事を許された日。
冷静に考えてみると、存外ひどい話のように感じたため、士郎は詳細をぼかしてリアに伝えた。
「まぁつまり、星に願いごとをする日だな」
「……願いごと、かぁ」
「なんでもいいぞ。誰かが叶えてくれるかもしれない」
「ずいぶんと、後ろ向きな発言な気もするけど」
「そうか?」
口にしなければ意味を持たず、形にもならない。
願いとは、そういう物だ。
リアはこの短時間で、ずいぶん流暢に話せるようになった。
会話を続けて刺激を与えてやれば、彼女はどんどん成長する。
年相応、とまではまだ行かないが。
「思いつかない。私の願い事」
「──そっか」
それは、とても悲しい事のような気がした。
だが、生まれたばかりなのだとしたら、こんなものかもしれない。
願いがないわけではない。
何か新しい物を見つけるたびに、興味深そうに様子を伺う様はまるで猫のよう。
だから、まだ何も知らないだけなのだ。この少女は。
まず、リアは願い事を見つけるところから始める必要がある。
明確な望みを持たねば、自らの足で歩いていくことすらできない。
無気力な心では、道に迷う事すらできない。
少なくとも、士郎はそうだった。
「あ、思いついた。美味しい物食べたい」
「その願い事なら、俺が頑張ればいいのか?」
「シロウの料理食べたい。さっき食べたのより、シロウの作ったものの方がおいしかった」
このままだと、随分と食いしん坊に育ってしまいそうだ。
まるで餌付けだ。
そういえば、かつて出会った少女──
「……俺って、成長してないのか?」
やっている事が同じだ。
だが、自分にできる事はこれしかない。独創性など不要。先人の知恵を集結し、食材の特性を見抜き、最適解を得る──衛宮士郎にできるのは、ただそれのみ。衛宮士郎の戦場は、いつだって自分との戦いだ。今までの自分を超えて、最高の食事を。ただ願う。
「食料も沢山融通してもらったし、明日は久々に全力で料理するか。食べたいもの、何かあるか?」
「わからないけど、甘いものが好き」
「デザートだな。しかし、卵・バターに冷蔵庫もオーブンも無しだと……いや、できない事もないか。よしわかった、やってみよう」
「やったー!」
リアが嬉しそうに笑顔をこぼした。
短期間で成長したのは、お喋りだけではないらしい。
表情がコロコロと変わる。これも年相応というよりは、やや幼いかもしれない。
士郎も、思わず笑みを漏らした。
昔を思い出す。士郎もこうやって、切嗣についていったものだ。
切嗣がいて。
士郎がいて。
そして、イリヤがいたならば。
きっと、幸せだっただろう。
──ああ、駄目だと。士郎は感情を少し沈めた。
違うとわかっていても。
どうしたって。リアを見ていると、彼女を思い出す。
血染めの雪に、士郎の心は捕らわれた。
風向きが変わった。
リアが急に立ち上がる。
士郎の頬を撫でた風は、リアから漏れ出た魔力が引き起こしたもの。
「シロウ、何か変」
「──魔力反応、か? いやそんなレベルじゃない。これは」
士郎も遅れて立ち上がり、周囲を見渡す。
雑多な喧噪。だがそれに、フィルタが掛けられたかのような感覚。
大規模な儀式魔術。こんなに人の多い所で?
魔術の効果はわからない。だが、ろくな内容でない事は確かだ。
チリチリと首筋に走る感覚が、生命の危機を士郎に知らせている。
発動させるわけにはいかない。
これは、誘いだ。
士郎達をおびき寄せるための示威行為。
士郎は冷や汗をかいた。
これだけの規模の魔術を組み上げられる者など、一握り。
範囲を指定しての魔術ではない。
それなら士郎も、魔術構成を組み上げている最中に気づくはず。
ならば、一見無差別に見える魔術ではあるが、効果対象を指定している。
つまり、それだけ精密な制御を行えるという事。
もし、戦闘になれば。
儀式魔術を抜きにしても、ひどい戦いになる。
「リア、ここから離れよう」
その言葉にリアは緊張した面持ちで頷き、士郎の袖をぎゅっと握りしめた。
リアを危険な場所に連れて行きたくはない。
が、この状況。敵が狙うとしたら、士郎かリアか?
答えは明白。リアを連れ出して早々狙われたのだから、リアが狙いであると判断するのが妥当だろう。
であるならば、リアから離れるわけにはいかない。
二人は周囲を警戒しながら、町の外れへと移動していく。
元々、ゴーストタウンに近かった町だ。
おまけに、ほとんどの人は町の中心部に集まっている。少し歩くだけで、もう誰もいない。
先ほどまでの華やかさが嘘のような静寂。
朽ち果てた建物が並ぶ、闇に沈んだ街並み。
いつしか月に雲が掛かり、夜の気配が増した。
士郎は、ヒタヒタと迫る気配に意識を集中する。
近い。悪意の泥が凝り固まったかのような気配。
この気配は、知っている。
その悪意を、覚えている。
十年前の──
「久しいの、小僧」
ゾワリと、背筋が凍る。
いつまでも記憶の底にこびりつき、こちらを覗き込んでくる悪夢。
人を呪い、生あるものを呪い、生に執着する悪魔のような男。
子供達に植え付けられた蟲を見た時に、もしやとは思った。
だが彼は、自らのサーヴァントに裏切られて死んだはずだ。
かつて、冬木市で起きた第五次聖杯戦争。
その中で、三騎のサーヴァントを使役し士郎の前に立ち塞がった男。
御三家の一角。五百年の時を生きる、大魔術師。
「──
夜よりもなお暗い闇が、士郎の前に立ち塞がった。