リーンボックス。
そこは、まさに中世と呼ぶに相応しい、緑の大地。
そこを守護するのは、女神グリーンハートと守護者フォレスト。
つまり、ベールとクリスなのだ。
しかし、本日は少し違う。いや、盛大に違う。
何故なら・・・・
「おー!」
「流石、リーンボックスの歌姫、5pbちゃんね」
「です~」
このリーンボックスで、この世界で知らぬ者はいないと言われる歌手、『5pb』のコンサートライブがあるからだ。
「しっかし、すごい人だな・・・」
その会場の人の多さに大きく驚くユイト。
「それもそうですよ。なんてったって、5pbちゃんなんですから!」
ネプギアが、少しはしゃぎながらそう答える。
空中では、複数の装甲にベールの姿をプリントアウトした飛行機が飛び交い、ジェット噴射で放出された煙で様々な形のマークを描いていく。
ここにいるのは、ユイト、ネプテューヌ、ムサシ、ネプギア、コンパ、アイエフだけでなく、ノワール、ヒカル、ブラン、カリヤ、ユニ、ライト、ロム、ラム、クロヤ、ユウマもいるのだ。
その理由は、ベールが、このライブに招待してくれたのだ。
のだが・・・・
「その肝心のベールとクリスがいないのはどういう了見なんだ?」
ヒカルがそういう。
「ほんとにそうね」
それに同意するノワール。
「何か事情があるんじゃないのかしら?きっと」
ブランがそういう。
「・・・・ネプテューヌ」
「ッ!」ビクッ!
ユイトがネプテューヌの名を呼ぶ。
その声の低さに少し飛び上がるネプテューヌ。
「それと、ロム、ラム、ユウマ」
「「「・・・」」」ガキンッ!
更に固まるロム、ラム、ユウマの三人。
「・・・・何やってんだ?」
見ると、色々な部屋のドアノブを開けようとしていたのだ。正確には、どれか鍵の開いている部屋がないのかを探しているだが。
「い、いや~、ベールがどの部屋にいるのか探していて・・・・」
「ベールの部屋はそこだぞ」
『え!?』
ユイトが躊躇いなく一つの扉に指を指す。
「な、なんで知ってんのよ!?」
ノワールが思わず叫ぶ。
「あー、そういえば・・・・」
アイエフが思い出したかのように頭を掻く。
「ネプ子がぐーたらしている間に、ユイトなんどもリーンボックスに行ってたわね」
「ねぷ!?なんで!?」
ネプテューヌが問いかける。
「ここのお茶は美味いからな。それと、なんどかクエストを手伝う事があるんだ。その時は、必ず正体を隠すがな」
「い、いつの間に・・・・」
唸るネプテューヌ。
「まあ、来なかった理由は大体検討はついている」
そして、ユイトは先ほど指差した扉を開ける。
そこには、大量のDVDやCD、またはゲーム機やカセットケースが散乱してあった。
「荒らされた後みたいね・・・・」
「というより、散らかってるっていった方が良いねこれは・・・」
ブランの言葉に、カリヤが補足する。
「いつもこんなだよ。クリス、いるか?」
ユイトが、そう呟くと・・・
「おや?もう来たのですか?」
「まあな」
物陰から、クリスが出てきた。
「おお!これは十八歳にならないと買えないゲーム!」
「ちょ!?やめなさいよ、小さい子もいるんだし」
「お前・・・・」
ネプテューヌのいつもの調子に呆れるユイト。だが、クリスに立ち直り、尋ねる。
「それで、ベールはいつものか?」
「ええ、まあ・・・・」
クリスが視線だけを一つの扉に向ける。
「もう、そこじゃありませんわ!後方の部隊は何をして・・・・」
その扉からベールの・・・・何やら切羽詰まった声だしていた。
ネプギアが気になり開けてみると・・・・・
「私が援護致しますわ、貴方たちは先に行って下さいまし」
そこには、ベールが何やらコントローラを持って、パソコンに向かって集中していた。
「・・・・何してるのよ」
ノワールがそういう。
「あっ・・・」
そこで、何かに気付いたのか、ベールが声を上げる。
やっと気づいたか、と思ったが、ベールは今度は身をくねらせ始めた。
「ちょっと、そこは・・・・」
「まさにネトゲね・・・・」
ブランがそういう。
「クリス、説明を頼む・・・・」
ヒカルがそういう。
「実は、出掛ける前に一時間ほどゲームをしていくと、言っていたんですが、どうやら攻城戦というものが始まった様で、抜け出せなくなったみたいで・・・・」
「四女神オンラインか・・・・」
ユイトが額に右手を押し当て、呆れるように溜息をつく。
「おーい、そこの廃人さーん」
ネプテューヌがベールの頬をつつく。
「あら?」
それでやっと、彼らの存在に気付いたらしいベール。
「皆さん、いらっしゃいませ。今少し手を離せなくって・・・・」
「理由はクリスから聞いたわ」
「何約束すっぽかしてゲームなんてやってんのよ!」
ノワールがそういう。
「クリスも、お前なら止める事できたんじゃないのか?」
ヒカルがそういう。
「私がそんな事をするとでも?」
(あ、そうだった・・・)
クリスが顔には出さないが、何か誇らしそうにそういう。
「ライブの後はここでホームパーティをするって聞いたんだけど?」
カリヤが頬を掻きながら、呟く。
「・・・・あ」
そういわれて思い出したかのように口をぽかんと開ける。
そして、気まずそうに言い訳をする。
「も、もう少しで城を落とせますので・・・・」
どうやら、どうしてもゲームをやりたいらしい。
「こう人だったのね・・・・」
ブランが喪失する。
「ま、まあ趣味は人それぞれだからね!」
ノワールが慌ててそうフォローする。
「駄目女神だね~。もしかして私よりダメかも~」
『それは無い』
「ねぷぅ!?こんな時にまでみんな息があってる!?」
全員に否定され、ショックを受けるネプテューヌ。
「はあ、どうします?終わりそうにありませんけど・・・」
アイエフがノワールたちに聞く。
「ん~、そうね・・・・」
ノワールが考え込み、出した結論は・・・・
「よし、やるわよ!」
準備である。
「えー、なんで私たちが準備しなくちゃならないの?」
ネプテューヌがいやそうに言う。
「というか、ノワール。その恰好、様になっていないか?」
ユイトが思ったことをぶつけてみた。
確かに、ノワールの服装は、メイド服に似たものだ。それが妙にノワールに似合っているのだ。
「まさかコス・・・」
「してないわ!断じてそんな事してないわ!」
全力で否定してくるノワール。
「とにかく!ネプギア、ムサシ、コンパ、アイエフの四人は買い出しをお願い」
「「「「は、はい!」」」」
ノワールに言われ、ピシッと気を付けをする四人。
「他のメンバーは部屋の掃除よ」
「で、でたぁ。こういう時に妙に張り切って仕切る奴」
「何か変なスイッチが入ったわね」
「僕は別に気にしないけど」
ネプテューヌとブランが皮肉を言う。
「うるさい!」
ノワールが右手に持った箒の端を床に叩き着ける。
「ちゃっちゃと働くッ!」
次にやった叩き着けで、全員が動いた。
ユニとライトの場合。
「あ・・・・」
ユニが組み立てられた人形を落とす。
その所為で人形がパーツごとにバラバラになってしまう。
「なにやってんだよユニ・・・」
「し、仕方ないでしょ!えーっと・・・」
急いで組み立てるも、足と手が逆になってしまった。
「全く、ほら、貸してみろ」
「あ・・・・」
ライトがユニから人形を取り上げ、正しく付け直す。
「ほら」
「あ、ありがと・・・・」
ライトから人形を受け取り、少し顔を赤くするユニ。
だが、受け取った時に、何故かライトの手も握ってしまう。
「あ、あの・・・・ユニ?」
「え・・・・あ・・・・」
赤面するライトを見て、今自分がしている行為に気付いたユニは、慌てて人形を受けとり、棚の上に戻す。
「・・・・・」
「・・・・・わ、私、ちょっとあっち見てくるね」
沈黙が気まずく、ユニが別の所に行ってしまう。
その様子を遠くで見ていたヒカル。
「・・・互いの想いに気付けよ・・・」
と、呟いた。
一方、こちらはロムとラム、ユウマとクロヤに加え、ブランとカリヤの場合。
「な、何してんだよ二人とも!?」
クロヤは、相変わらずの如き、本に落書きをしているラムとユウマに注意する。
「何って落書きだけど?」
「それは分かってるよ!なんでそんな事をしているのかって聞いているんだ!」
「なんでって、それが私たちじゃーん!」
ラムは能天気にそういう。
「お、お前らぁ・・・・」
拳をわなわなと震わせ、額に青筋を浮き上がらせるクロヤ。
だがそこで・・・・
「あ・・・・」
「え!?」
本に足を躓いたロムがクロヤを巻き込んで倒れてしまう。
「いたた・・・・ロム、大丈・・・・・夫?」
「う、うん・・・・あ・・・・」
仰向けに倒れたクロヤは、眼を開け、ロムが怪我をしていないかの確認を、ロムは、逆にクロヤに何かないかと確認しようとした所・・・・・・互いの唇があと一センチの所まで顔が肉薄していた。
「「・・・・・・」」
そして硬直する二人。
「二人とも、何かあったのか・・・・」
そこへ倒れた音を聞きつけたカリヤがタイミングの悪い事にその現場を目撃してしまった。
そして・・・・
「おー、熱いね~」
「これはしっかりと見ておかなきゃ!」
ユウマとラムの言葉で、我に返るクロヤとロム。
鈍感なロムでも、今回ばかりは流石に混乱せずにいられない。
(ギャァァァァアアアア!!ナニコレドウナッテンノナニガドウシテコウナッタァァァァアア!?)
(ドドドドドウシヨウ!?イ、イソイデドカナイト・・・・デモ、モウスコシダケッテナニイッテルノワタシ!?)
「「~~~~~~~~~~ッッッッッッ!!!!????」」
心の中であまりのテンパリさにまさに言語が統一されなくなりカタカナになっている二人。
更に、動くことさえも忘れている。
その様子をニヤニヤと見物するラムとユウマ。
そして、物凄い光景に引いているカリヤ。
しかし、何故か同じ部屋にいる筈のブランは、とある本に見入っていて気付かなかった・・・・
ユイトとネプテューヌの場合。
ネプテューヌは真面目に掃除をしていた。
それもそうだろう?なんせユイトもいるのだから。
「ネプテューヌ、このゲーム、どの箱だっけ?」
「えっと、それだよ」
ユイトに聞かれたので、素直に答えるネプテューヌ。
ここで気を付けて欲しいのが、ネプテューヌの心情だ。
実は・・・・・嬉しいのだ。
(えへへ、ユイトと一緒に初めて掃除したのは、ユイトが私の守護者になってからなか~)
どうやら、ユイトとこういう事をするのは、ネプテューヌにとってまるで新婚夫婦にでもなったかの様な気分なのだ。
「えへへ」
「何ニヤついているんだよ・・・・」
「あ・・・・ううん、なんでもないよ」
顔に出ていたのか、少し顔を赤くするネプテューヌ。
「まあ、追及はしないけどさ」
と、また掃除に戻るユイト。
ユイトにとって、これは人助けであって、そういう気は無いのだ。
ユイトにとって、ネプテューヌはただ守りたい女神であって、そういう気は無い。
かなり前に襲われたと言ったが、あれは、読者の諸君が思っている程度のものでは無い。
ただ、ネプテューヌが感じる、あくまで局部などを避けて、ネプテューヌを感じさせているだけに過ぎない。
その為、まだキスさえもしていないのだ。
だけど、ネプテューヌにとって、ユイトは特別な相手であり、彼が消えるなんてことは考えたくもない事なのだ。
それは、数百年前、ユイトと初めてであった、あの
どんな時でも、強い彼だけど、時々、ネプテューヌに甘えてくる様も、何かギャップを感じて、そして、頼ってくれていると分かるだけでも、嬉しいのだ。
(だから、今はこのままで良い)
箒を掃いて、ゴミを片付けるネプテューヌ。
「ユイト、終わったよ」
「そうか。じゃ、俺はこれを捨てに行ってくるから、Nギアで遊んでいろ」
「ほんと!」
「頑張ったご褒美だ」
ネプテューヌの頭を撫で、ネプテューヌから受け取ったゴミ袋を持って、部屋を出ていくユイト。
そして、ソファに座るネプテューヌ。
「えへへ、ユイトに頭撫でられちゃった~」
と、自分の世界に入り込むネプテューヌ。
「何やってんのよ」
「ねぷぅ!?」
その為、背後から近付いてくるノワールに気付かなった。
「の、ノワール!?びっくりしたぁ。もう、脅かさないでよ」
「別に脅かしてなんていないわよ。それに、珍しく真面目に働いている事に感心しているのよ。なに?そんなにユイトに褒められるのが嬉しいの?」
にやにやとからかうようにそういうネプテューヌ。
「え!な!?べ、別にゆ・・・ユイトに頭
声がだんだんと小さくなり、顔がだんだんと赤くなっていくネプテューヌ。
「へえ・・・」
一方ノワールは、これでネプテューヌをいじくる口実が出来たというかのように顔をニヤつかせている。
「そ、そういうノワールこそ!ヒカルとはどうなのさ!」
「な!?」
ネプテューヌから思わぬ反撃に顔を赤くするノワール。
「そ、そんな事は別にどうでも・・・」
「どうでもよくないよ!一人だけ他人の想い聞いてさ!」
「う・・・わ、私は・・・ヒカルとは・・・・~~~///」
あまりの恥ずかしさに両手で顔を隠すノワール。
「どうなのさ~」
ネプテューヌが更に砲火。
「あ、貴方がユイトの事をどう思ってるのか教えてくれるまで教えないわ!」
「ねぷ!?それは卑怯だよノワール!」
「別に卑怯じゃないわ!先に聞かなかった貴方が悪いんだから!」
「そんな事いって!本当はヒカルとの関係言いたくないんでしょ!」
「そ、そんな事ないわよ!」
「私だってそんな事ない!」
ぐぐぐ、と睨み合うネプテューヌとノワール。
「何してんだお前らは」
「いた!?」
「ねぷ!?」
すると突然頭上から強烈な衝撃が走り、同時にもの凄い激痛が走った。
「ううう・・・」
「いたた・・・」
「ちょっと騒がしいと思って来てみたら、なんで口喧嘩なんてしてんだ?」
殴ったのはゴミ捨てを終えたユイトだった。
「べ、別に大した事じゃないよ・・・・」
「そ、そうよ、大した事じゃないわ・・・・」
頭を押さえながらなんとか立ち上がる二人。
「それなら良いんだけどな。それとノワール。俺らは終わったから遊ばせて貰うぞ」
「分かったわ。他の所もやっておくから。それと、料理の方は任せたわよ」
「了解だ」
そういって部屋から出ていくノワール。
そして部屋にいるのはユイトとネプテューヌ。
「さて、ゲームでもやるかネプテューヌ」
「ほんと!」
「ああ」
ゲーム機を引っ張り出すユイトに満面の笑みで答えるネプテューヌ。
今は、こんな関係で構わない。ユイトが、『過去』の事を理由に自分の守護者になってくれているのなら、まだ、この気持ちは、胸の奥にしまっておこう。
まだ、その時じゃないから。
ネプギアとムサシの場合。
買い物を済ませたネプギア、ムサシ、アイエフ、コンパの四人。
「いっぱい買ったね~」
「そうだな。全員分はちゃんとあるだろうな」
大量の食材が入った紙袋を抱え、リーンボックスの教会に向かう四人。
「今日は楽しくなりそうだね」
「ああ・・・・・!?」
そこで、ムサシはネプギアの顔を見てしまった。
そこまでならまだ問題はないのだが、その問題というのがネプギアにあるのだ。
眩しい。とにかく眩しい。
ムサシの眼から見れば、ネプギアの笑顔はまさに女神よりも(女神『候補生』だけど)綺麗なのだ。
「・・・・は!そ、そうだな、この食材は師匠が料理してくれるし、クリスさんも言ってたけど、何か面白いゲームとかあるって言ってたし!」
我に返り、慌てて眼どころか顔さも反らすムサシ。
「あ・・・・うん、楽しみだね」
そんな、ムサシの反応にシュンとなるネプギア。
「あ、あれ?ネプギア?」
そしてムサシも何故ネプギアがそんな反応するのか分からなかった。
相変わらずの両片思いの鈍感コンビである。
「ど、どうかしたの?」
「別になんでもないよ」
ムサシが心配そうに声をかけ、ネプギアが大丈夫だというように笑顔を無理矢理作る。
そして、少しの間気まずい無言状態になる。
((ど、どうしよう・・・))
なにか、何かこの沈黙を破る出来事は・・・・
「ん?これは・・・・」
そこでネプギアは、足元に何かが落ちている事に気付く。
それは、×型の赤黒く怪しく発光する宝石。
「なんだろう・・・・これ」
しゃがんでそれを右手で取ってみる。
その瞬間・・・・
バシィィィッ!!
「あっ・・・・」
いきなり体から力が抜け、持っていた紙袋を落とし、地面にへたり込んでしまう。
「ネプギア!」
そのネプギアを慌てて支えるムサシ。
「はあ・・・・はあ・・・・」
「しっかりしろ!ネプギア!」
(何があった!?)
息が荒いネプギア。
そこでムサシは、ネプギアの手に握られている×型の宝石に気付く。
「これか?」
ムサシがそれを手に取ろうとした瞬間、横からネズミの様な何かがそれをひったくる。
「それに触るなっチュ!」
「あ!?」
そのまま走り去るネズミの様な何か。
「ギアちゃん!大丈夫ですか!?」
「は、はい」
そこへ前を歩いているコンパが駆け寄ってくる。
「何があったです?」
「分かりません。ですが、急に力が・・・」
「貧血です?でも、女神さんが貧血なんて、そんな事あるんですか?」
そこで、ムサシはネズミがいった方を見る。
そこには、アイエフもあのネズミの方角を向いていた。
そして、ムサシは考えた。
(あの宝石・・・・・あれが原因なんじゃ・・・・)
「もう大丈夫です。立てます」
「そうですか?」
だが、そんな思考は、ネプギアたちの会話に途切れる。
今は、ネプギアの容態が心配だ。
「大丈夫?」
「うん、ありがとう。ムサシくん」
「ああ」
肩を貸して、ネプギアを立ち上がらせるムサシ。
そして、また歩き出す。
(そういえば、ネプギアの加護も薄くなった様な・・・・)
不穏な気配を感じながら、ムサシたちは教会に向かった。