嘘吐き女は舌を抜かれる   作:空亡 幽忌

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困った時の原作だより
大して早まってない……


第七話

「本当に……か?」

「ええ、此れ……にあった怪……けて下さい……ですから……」

「それじゃ、……束の」

「では今後……私共、信頼……情報源をご贔屓( ひいき)に……」

ん?何か聞こえるな……シェイクスピアの声?

……って僕、縛られてる!??

え?何で!??先刻(さっき)迄久作とイチャイチャしてたのに!僕は怒りを露にし、暴れて少しでも溜飲を下げようとするが、拘束具によって暴れる事が出来ない。

……取り敢えず情報を整理しよう。信用、情報源、シェイクスピア……

シェイクスピアが僕に催眠を掛けて何処かに売ろうとしてるのか?厭々、彼奴(あいつ)はそんな事しない筈…………駄目だ彼奴の今迄の行為から信用することが出来ない。

そんな事を考えていると急に僕の顔に被された麻袋を無理矢理引き剥がされた。僕が困惑していると少年から警戒された眼で睨まれたので、平然を装った。

取り敢えずあのロリコン(シェイクスピア)絶対死なす!

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「ドストエフスキー?」

森鴎外は、眼を落としていた書面から顔を上げ(エース)の方を向き聞き返した。

「ええ、『白鯨落とし』の黒幕です」

「ふむ、もう少し手子摺(てこず)るかと思ったが……どんな男かね?」

森鴎外は少し程興味有り気にAに聞いてみると、Aは暫く考え込み、そして独り言の様に呟く。

「……金髪で凛とした眼をしており、信念を持った様な……」

この時点で森鴎外はドストエフスキーでは無くあの女性だろうと確信していたが、Aの力量を見るために敢えて云わないでおいた。Aが反旗を翻そうと目論んで

いるのは知っていたので、此処等辺で潰して置こうと

するが、どうしたら善いか考えているといると──

「この仕事私に任せて頂けませんか?」

「おやおや、張り切るのう。真っ先に防空壕(シェルター)に逃げた幹部が」

「真っ先に敵組織に捕らわれた幹部より適任では?」

何だか険悪な雰囲気になっていたが丁度善い機会なので、任せる事にした。

「……君の捕らえた鼠、君に任せる」

「恐悦の至り」

そう云ってAはこの場を後にした。

「御手並拝見と往こうか……」

 

△▼△▼△▼△▼△▼△

 

何で僕は地下牢に繋がれているんだろう……

久作が恋しいよ……

靴音が聞こえたので大人しくしていると急に短刀(ナイフ)を突き付けられた。

「私はA、君が人生最後に喋る相手だ」

そう云うとAは短刀を振りかざし、振りかぶってきた。

嗚呼、責めて久作と結婚する迄は死ねないのにな……

厭っ!こんな処で死んでたまるかっ!生きて久作と結婚するんだっ!

必死に僕は避けようとするが拘束具に阻まれて録に動けない。僕は覚悟をして、歯を喰い縛って痛みに耐えようとするが、短刀によって斬られたのは拘束具の方だった。

「え……?」

「客人を冷たい床に転がしておく奴がおるかっ!衣服と飲物だっ!疾くしろ!」

Aは激しく憤慨し、部下らしき人を足で踏んづけてる

何て暴君だ彼奴……

何だか異ぬものを云わさず事が進んで行き、室内で手厚い歓迎を受けていた。

「私は孤独な男でね、マフィアは私を信じていないし、私もマフィアを信じない。私が信ずるのは、札遊戯(ポーカー)、宝物庫の宝石、そして五十人の私営部隊。そして今日、五十一人目を見つけた。」

あれ?僕、若しかして勧誘されてる?

「私と手を組まないか?一緒にあの町医者の首を取ろう。まさか、彼奴も私と君が組んでいるなんて夢にも思っていないだろう」

え……?丁重に断りたい。

「若し断れば、僕は生きて帰れないと……」

「その通り」

「厭だ」

そう云った瞬間Aは激昂し、僕に近くに有った葡萄酒瓶(ワインボルト)を怒りの(まま)に叩き付けてきた。

ううっ、葡萄酒のせいでびしょ濡れだ……

「少々がっかりだ……ドストエフスキー君」

あっ、僕、ドストエフスキーさんになってるの?何で態々(わざわざ)御得意先にならなきゃ善けないんだ……

って云うか僕、失態(ミス)しちゃった?

「善いだろう、状況を理解させてやる」

そう云うとAは僕にも見えるように手を握り、拳を作った。すると部下の一人が急に苦しみだし、横に倒れる。其の後、Aの手から小さな宝石が溢れる様に出てきた。

「“部下の寿命を同価値の宝石に変える”能力。クズの命を価値のあるモノに変換する。実に慈悲に溢れた能力だ」

Aはそう云って扉へ振り向き、先刻の宝石を仕舞う為に宝物庫に往こうとし、一言云ってきた。

「お客人をお吹きしておけ、私が戻る迄に誘いに乗るのなら、生かしておいてやる。心配するな。君にはきっと首輪が似合う」

そう云ってAは出ていった。

首輪?何だ其れ?

僕はそう思い周りを見てみると、部下の人達が首輪を全員着けていた。

部下になるのは厭だなぁ……

「あんた、諦めな。Aには勝てない。生き残るには、此奴を着けるしかないよ。──あんた先刻云ったよな『厭だ』って。正直羨ましいよ、俺も何時かあんな強い台詞を云ってみたい……」

嗚呼、この子は小さな時からAの支配下に居るのか……

「ははっ!悪いな、変な雰囲気にして」

少年はそう云うと、私にワシャワシャと手拭いで葡萄酒で濡れた僕の髪を拭いてくれた。恐らく無理に明るく振る舞っているのだろう……

「俺さ、いつかポートマフィアの首領(ボス)になるのが夢だったンだ……莫迦みたいだろ?其れが今や首輪の奴隷だ──」

「──奴隷から解放されたいかい?」

「え?」

「だから、奴隷から解放されたいかい?」

「……ああ、でも如何(どう)やって──」

「──簡単だよ。僕の異能は何でも出来るからね」

 

△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「勝負?」

Aは僕の提案に少し驚いた様に聞き返してくる。

「嗚呼、君は僕を勧誘したい。然し、勧誘が出来ない場合、君は僕から組織の事や、次作戦を聞かなければならない。よって君は僕を殺せない」

Aは暫く考え込んでいるので、僕は直ぐ様畳み掛ける。

「其処で、()()()()()()()()()で一回勝負だけするのは如何だい?」

「嗚呼、善いだろう」

Aはトランプの束をシャッフルしてから五枚ずつ配る。

「棄てるのは?」

「二枚」

僕はスペードの4とグラブの3を棄て、二枚引く。

「では、私も」

Aはハートの7とダイヤの8を棄て、二枚引く。

「「では手札公開(ショウ・ダウン)」」

僕は(クイーン)とジョーカーのファイブカード

Aは(キング)のフォーカード

「私が負ける……?」

「やったね」

「有り得ないっ!イカサマだっ!オイ!お前達!このイカサマ師を捕まえろっ!」

Aは怒り狂ったかの様に通達用液晶器(インターフォン)に叫ぶが通達用液晶器は暗いまま反応しない。

「無駄だよ。鍵も開かないし、仲間が外を制圧したから」

「挑発も賭けも(すべ)て囮と云うことか……」

「如何する?宝物庫に或る宝石を凡てくれるなら、命だけは保証するけど……?」

「くくっ……嘘だな。此処は首領も知らない秘密基地……其れにお前は云っていたな。『僕の異能は何でも出来る』と、詰まりお前の異能は『自分の頭の中に相手の意識を閉じ込める』能力。この空間は現実では無く、お前の頭の中。だから(カード)の数字も自由自在という訳だ」

「へぇーよく見破ったね。で?見破ったから、何だい?」

「では君は何故此処に拐われる時にこの異能を使わなかった?」

厭々、あのロリコン、急に催眠してくるんだから異能を使うも何も無いと思うんだけど……

「君の異能には突破方法が或る。だから君は異能を使わなかった。私は生まれ(なが)らの王。王となるのは情報を制す者だ。君は愚鈍にもその王に仕える機会を逃したのだよ」

何だかAが格好付けてスペードのK出してきたけど何なんだろう?そういう年頃なのかな?

Aが電気スタンドを取って配線(コード)を付けて首吊り自殺をしようとしているけど、僕は止めない。

太宰さんみたいに自殺耐性が或れば別だけど……

「ではご機嫌よう。ドストエフスキー君」

 

△▼△▼△▼△▼△▼△

 

其の後宝物庫に往ってみると少年に遇い、驚かれた。「あのAに逆らって生きて帰れる筈が無い。どうやったんだ!?」

「何か変に深読みし過ぎて勝手に自殺した」

「はぁ!??」

厭、はぁ、と云われても勝手に自殺しただけだしなぁ

「じゃあね。此れからは自由だよ」

僕はそう云って船板に出ると…………ロリコンが居た。

「シェイクスピア、手前何で僕を使った?」

殴る準備をしながら僕はシェイクスピアに質問する。

「厭、ドストエフスキーさんに影武者を頼まれたから手前なら往けるグハッ!」

「手前の所済(せい)で久作とイチャイチャ出来なかったじゃ無いか。お土産として黒砂糖買うから、代金出せ」

「へいへい……」


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