東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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本日は番外編。クリスマスイブでのお話です。
けどまぁ、いつも通り姉妹中心という()


番外編「聖夜前のプレゼント」

 side Renata Scarlet

 

 ──紅魔館(フランの部屋)

 

 今日は十二月二十四日。

 言わずと知れた聖夜の前日、クリスマスイブである。

 

「オネー様。いい子にしてたら、サンタさん来る?」

「来ますよ。ね、フラン」

「うん。ルナはいっつもいい子だから絶対に来るよー」

 

 どこでもそうなのかもしれないが、紅魔館(ここ)では決まってクリスマスイブの夜中にプレゼントを渡すことになっている。

 もちろん、見た目限定で子供は私達姉妹だけなのだが、私やミアやお姉様、そしてフランまでもがサンタの正体を知っている。唯一知らないのは生まれて間もないルナシィくらいだ。

 と言っても、ルナ以外にも美鈴や咲夜にもプレゼントを渡す予定だ。私達から見ればこの二人も子供のようなものなのだ。

 

「なら、悪い子のフランには来ない?」

「むっ。失礼な。私にも来るもーん。ねぇ、お姉様?」

「......怖い顔で見つめないでください。多分来ると思いますよ」

「多分ってひどーい! 悪い子にもプレゼント欲しいー!」

「悪い子という自覚があるのですか......」

「自覚ないよりはマシだからねー」

 

 毎年プレゼントを貰っているフランと違い、ルナは今年初めてなのだ。

 だからこそ、ルナには今日という日をいい思い出で終わらせてほしい。

 悪魔が敵である聖者の誕生日を祝うのもおかしいが、お姉様曰く遊ぶのに利用できるから、らしい。

 ──結局一番楽しんでいるのはお姉様だから利用されているようにも見えるが......。

 

「ねぇ、ルナー。サンタさんには何をお願いしたの? 妹とか?」

「無茶言い過ぎです......。もう手紙に書いてましたね、ルナは」

「あら。私、出遅れちゃった感じ?」

「書いたけど、どうするか分からないからまだ持ってる。頼んだのは、寒さしのげる物」

「普通ー。ま、そっちの方がサンタさんとしても用意しやすいんだろうけどねー」

 

 フランがこちらを見て問いかけるように笑ってくる。

 今になって思うが、この娘だけにはバレてほしくなかった。

 

「レナー! ここなのー?」

 

 と、その時だった。お姉様がノックもせず、部屋へ入ってきた。

 

「え、お姉様? どうしました?」

「部屋に入る時はノックして、っていつも言ってるでしょー?」

「ちょっと急いでて......ごめんなさいね、フラン。でね、ちょっといいかしら、今」

「私、ですよね? いいですよ」

「オネー様。すぐ戻ってきて、ね?」

 

 クリスマスイブは一緒に寝るという約束をしたのもあり、心配そうな顔でルナが語りかてくる。

 ──相手がお姉様と言えど、約束を破ったりしないのに......。心配性なのは誰に似たんだか。あ、フランか。

 

「もちろん、すぐに戻りますよ」

「レミリアお姉様! あまりお姉様を束縛しないでね!」

「束縛って人聞き悪いわね。ちょっと借りるだけよ。

 じゃぁ、時間もないし......レナ。行きましょうか」

「はいです」

 

 フラン達と別れ、お姉様に付いていった。

 

 

 

 廊下を歩きながら考えてみたが、急ぎでの用事と言えばクリスマスプレゼントかクリスマスパーティーのことしかない。

 クリスマスプレゼントは今日の夜中に渡すことにしている。クリスマスパーティーは明日、クリスマスの日に幻想郷中の住民達も呼んですることになっているのだ。

 もちろん、何人が来てくれるかは分からないが。

 

「......お姉様。もうルナも聞こえないと思いますよ」

「あら。やっぱり何か分かった? でも、幾つかあるのよね。あ。プレゼントの準備は出来てるのよね?」

「もちろんです。咲夜に手伝ってもらいながら、昨日のうちに作っておきましたよ」

 

 私一人で作っても良かったのだが、できれば完璧な物にしたかった。

 それで咲夜に助けを求め、作るのを手伝ってもらったのだ。

 

 ──我ながら良い出来だと思ってる。......けど、何故か嫌な予感も......いや、そんなことないよね。

 

「咲夜にもプレゼントあげる予定じゃなかったかしら?」

「咲夜にはお姉様からなのでいいのです」

「バレている前提でいいのね。......あの娘と美鈴へのプレゼント、本当にあれで良かったと思う? いつもお世話になってるのに簡単過ぎると思わない?」

「お、お姉様からのプレゼントなら咲夜は何でも喜ぶと思いますよ?」

「そうだといいんだけど......」

 

 とは言ったが、実は咲夜達が何を頼んだかは知らない。

 ──せっかくだし、聞かないで明日(クリスマス)のお楽しみにでもしておこうかなぁ。

 

「それにしても、どっちも簡単なお願いで良かったですよね。売り切れ中のゲーム機とか頼まれてもあれですし」

「幻想郷にゲーム機が入ってくること自体少ないわよ。香霖堂で手に入れた赤いおじさんのカーゲームも、ゲーム機本体が無いからできない、って貴女嘆いてたくらいだし」

 

 香霖堂へはよく行くが、ゲームを見つけたのはあの時だけだ。

 外の世界が今何年かは分からないが、そう簡単にゲームが幻想入りすることは無いらしい。

 

 あったとしても、珍しいこともあり、霖之助さんが譲ってくれること自体少ないのだが。

 

「そう言えばあの時泣いてたけど、そんな悲しかった?」

「な、泣いてないです。それに、お姉様達と遊びたかったから......」

「レナ......。あ、ところでお願いがあるんだけど、いいかしら?」

「あれ、思ったより......。まぁ、いいですよ。お姉様の頼みなら」

 

 お姉様の頼み事は簡単な多いものが多い。それは私への配慮なのか、自身のプライドなのかは分からないが、だからこそ私は簡単に受け入れられる。

 

「じゃぁ......ルナって初めてのクリスマスでしょう?」

「はい、そうですね。明日のパーティーも含めて楽しみにしていますね」

「えぇ、そうみたいね。そういうことだから......ルナにサンタさんを見せてあげたいの。レナ、やってくれるわよね?」

「......はい?」

 

 簡単なお願い事は多い。だが、稀に難しい頼み事をするのがお姉様だ。

 あまりにも想定外で、今見ていることが全て夢なのでは、と疑うほどだった。

 

「いや、ちょっと待ってくれません? サンタさん? え? 私、吸血鬼ですよ。悪魔です。どちらかというとサタンさんですよね?」

「そういうのいいから。私の頼み事だから......ね? お願いっ!」

 

 お姉様は私の手を握り、懇願する。

 

 本当に見せてあげたいという気持ちが伝わってくる。が、それでも無理なものは......。

 ──でも、お姉様のために......。

 

「......分かりました。今回だけですからね?」

「やってくれるのね!」

「でも、ただ変装するだけではバレると思いますよ。変身魔法も翼とかを変えることしかできませんよ」

「貴女には能力があるじゃない。それを使って正体だけ有耶無耶にして、サンタのコスプレをすればきっと大丈夫よ!」

「心配しかないです......。でも、ルナに楽しんでほしいのは私も同じですし、本当に今回だけですから」

「優しい妹で良かったわ! ありがとう、レナ!」

 

 と、余程嬉しかったのか、お姉様が勢いよく抱きしめてくれた。

 

「あっ、ぅ......うん......」

 

 温もりを感じるお姉様の肌。

 しばらくそれを感じていたかったが、すぐにその時間も終わる。

 

「じゃぁ、せっかく着替えてみましょうか。あの服可愛いから、きっとレナも気に入ると思うわ」

「き、着替えるって、もう服はあるのです?」

「えぇ、用意してあるわよ。咲夜に作ってもらったから」

「咲夜、万能ですね......」

 

 このイベントでも咲夜に頼りっきりだ。

 私も何か、咲夜へお返しをした方がいいかもしれない。

 

「咲夜は私のメイドだからね。私の部屋に置いてあるわ。早く行きましょう!」

「え、お、お姉様の部屋で着替え......っ!」

 

 有無も言わせず、お姉様は私の手を引っ張ると意気揚々と走り出した。

 

「珍しく乗り気ですね......」

「今日は目出度い日よ。乗り気じゃない方がおかしいわ」

「お姉様ほど乗り気なのも考えものですけどね」

 

 お姉様は私を連れ、真っ直ぐと自身の部屋へ向かった。

 

 

 

 部屋に着くと、お姉様は一目散にクローゼットをあさり、赤い服を二着取り出す。

 

「肩出しとマント付きがあるんだけど、貴女はどちらがお好みかしら。それとも、似合う方を着てみる?」

「......私は着せ替え人形か何かですか?」

「ち、違うわよ。ただ、どっちが好きで、どっちが似合うか分からないから......」

 

 私のことを知っているからか、悲しそうな目を向けられる。

 こういう風なことをされると、私はどうしても強くは言えない。

 

 私のことを知ってくれてる、ということは素直に嬉しいが。

 

「それならいいですけど......。では、まずは肩出しの方から着てみますね」

「えぇ。......」

「......お姉様?」

 

 お姉様は何かを待つように、じっとこちらを見つめていた。

 

 その視線がくすぐったくて、着替える手を止めてまで気になってしまった。

 

「......えっ!? な、何かしら?」

「どうしました? 何か気になることでもありました?」

「いえ、そういう訳じゃなくて......。な、何でもないわ」

「? それならいいですが......。できれば恥ずかしいので、見ないでくれるとたすかるのですが......」

「そ、そうね。恥ずかしがり屋だもんね、貴女。でも、着替え終わったら見せてね」

 

 そう言って扉を開け、外に出ていった。

 ──別にそこまでしなくて良かったのに......。後ろを見るとか、そんな簡単なので......。

 

 と少し残念に思いながら、私はサンタの赤い服へと着替える。

 

 

 

「お姉様ー。二着目も終わりましたよー」

 

 両方とも着替え終わると、外にいるお姉様へと声をかける。

 

「え、二着目? ち、ちょっと! 私一着目見てないわ!」

「必死ですね......。大丈夫です。一度着替えた服は変身魔法で再現できますから」

「あれ? 貴女、さっき変身魔法は翼しかできない、って......」

「翼()()、ですよ。服装くらいは変えれます」

 

 それに、冬だというのにあまり肩を出して冷えたくない。

 お姉様の部屋は来たばっかりで暖房も付けていない。だから部屋の中でも少し肌寒いのだ。

 

「それなら......うん。それにしても可愛いサンタさんねぇ」

「......じろじろ見ないでください。恥ずかしいです......」

 

 今着ている服はサンタでお馴染みの赤い帽子に、赤いミニスカートと長袖の上着。そして、肩を覆うように小さな赤いマントを羽織っている。

 ──サンタさんとは言え、こんな寒い服を着るものだろうか。

 と、疑問にしか思わない。

 

「清楚な感じはするから、レナはこっちの方がいいかもしれないわね......」

「私のイメージ的には、ですね」

「えぇ、そうね。次行きましょうか。次は肩出しね。あれ、肩出し?」

「あってますよ。最初に肩出し着ましたので。では、魔法使いますね。......やっぱり魔法が一番便利だと思うのですよね。私のは想像力が力となるものですし」

「そういうのはまた今度ね。あまり長い間借りているとフラン達に怒られるわ」

「むぅ......。はいはい、分かりました」

 

 と、少し反抗的になりながらも変身魔法を唱え、服装を変化させた。

 

 次のサンタ服は、ほとんどマントと同じだが、こちらはマントが無く、胸から上の肩の部分が全て出ている。

 フラン辺りが着そうな服だ。

 

「......なんて言うか......色っぽいわね。でも好きよ、貴女のそういう服も。

 というか......ふふっ。何を着ても可愛いわねぇ」

 

 お姉様は何を思ったのか、私の頬からなぞるように髪を撫でる。

 

 耳が熱くなり、触らなくても赤くなっていることが分かった。

 

「うぅ......か、からかわないでくださいっ」

「からかってないわよ。......で、貴女はどちらを着たいの? もちろん肩出しよね?」

「マントの方がいいです!」

「ふふっ。冗談よ。さぁ、恥ずかしいなら早く行って、早く終わらせてきなさい」

「は、はい。もちろんです!」

 

 と、勢いよく扉を開け、外へと──

 

「......吸血鬼が写真にでも写るなら一生収めていたのになぁ」

 

 ──出ようとした時に、背後で小さな声が聞こえた。

 

「え? 何か言いました?」

 

 私は何か忘れ物でもしたのかと振り返り、声をかけた。

 

「い、いえ......プレゼントを忘れないようにね。あれを渡さないと、サンタさんとは思われないでしょうから」

「は、はい」

 

 お姉様の助言を受け、私は自分の部屋にプレゼントを取りに行った後、フランの部屋へと走り出した。

 

 

 

 フランの部屋の前に着くと、まず初めに自分の存在と服以外の姿を有耶無耶にする。

 これで私の正体は有耶無耶になり、姿で識別も困難となった。

 

 だが、あくまでも有耶無耶にしただけだ。

 いつ正体がバレるか分からないから、できる限り早くした方がいい。

 

「......やっぱり、緊張する。......スー、ハー......よし」

 

 深呼吸をして落ち着くと、扉をノックする。

 

「はーい。開いてるよー」

「レミリアオネー様かな?」

 

 存在をも有耶無耶にしているせいか、私のことも有耶無耶になっているようだ。

 ──ここまでは作戦通り。後は、なるがままに......。

 

「え? 違っ......あっ」

 

 と、覚悟を決め、扉を開けた。

 

「......ふぉ、ふぉっふぉっふぉっ。私はサンタクロース。い、いい子のところへやってくる......えーっと......」

「あ......。る、ルナ! サンタさんだよ!」

「サンタさん? ......でも、白いお髭が付いてない。どうして? 偽物?」

「そ、それは......」

 

 鋭い眼で私を睨みつけ、理由を聞いてくる。

 ──サンタさんの特徴で、白い髭のことを言わなければよかった。

 

「そ、それは......」

「ほら、前にお姉様が話してたでしょ? サンタさんもいっぱいいるって。

 あのサンタさん、女性のサンタさんだからお髭は付いてないんだよ」

「あ。そっか。......もしかして、その大きな袋がプレゼント?」

「よく気付きまし......気付いたね。そうだよ。これがいい子へのプレゼント。......えーっと、もう渡していいです?」

 

 今まで密かにプレゼントを渡すことはあったが、サンタさんになってプレゼントを渡すことは無かった。

 だから手順が全く分からない。どう渡せばいいのか、もう渡していいのかさえも。

 

「うん。プレゼント、ちょーだい」

「は、はい。では......どうぞ。寒さをしのげる物ですよ。これで寒い日でもいっぱい遊べますね」

 

 と、紅い手袋とマフラーを手渡した。

 最後まで色で悩んでいたのだが、好きな色ということで紅い色にした。

 

 ──姉妹揃って紅が好きなのは吸血鬼だからだろうか。

 

「......フランには? フランもいい子だよ?」

「もちろんありますよ。フランも根はいい子ですからね。

 結局今の今まで聞いてなかったのでルナとお揃いの物ですが......」

「それで充分だよ。ありがとうね、お......サンタさん」

 

 ──......ん? 何かおかしく......気のせいかな。

 

「よかったね。フラン」

「うん。ルナとおそろだよー」

 

 同じ物だと言うのに、フランとルナは互いに見せあって嬉しそうにしている。

 

 私としても、やりがいがあって嬉しい。が、サンタさんに対してのリアクションが少し薄いのが残念だった。

 ──私も恥ずかしいというのに......。今度、逆にこの二人に着させて......。

 

「では、私の役目は終わりましたので......」

「待って。まだお礼言ってない」

「え? 別にお礼なんていいですよ。これが私の役目ですから」

「でも、プレゼントを貰ったらお礼を言うのは当たり前。

 ありがとう......サンタさんっ」

 

 ルナは子供特有の満面の笑みを浮かべ、頭を下げた。

 ──......毎年やってもいいかもしれない。

 

「......サンタさん。早く戻った方がいいんじゃない? ほら、他の子供達が待ってるよ」

「そ、そうですね。......では、次に会うのは来年ですね。ではまた!」

 

 張り切って声を上げ、私は報告と着替えのためにもお姉様の部屋へと戻る。

 

 そして、今日という楽しい日を終えた────




明日も番外編でクリスマスのお話がある予定です。
明日はクリスマスパーティーということもあり、姉妹以外にも焦点が当たる模様。けどやっぱり姉妹が多そう()
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