東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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どうも、お久しぶりです。rickです。
定期テストにより、約二週間ほど姿を消していましたが、これから再び投稿していきたいと思います。

ではまぁ、今回はレナ視点です。お暇な時にでもお読みくださいませ。


11、「紅い次女の戦い」

 side Renata Scarlet

 

 ──地霊殿(玄関ホール)

 

 敵に近付くにつれて、私は不安を感じていった。

 

 地底でも大きな地霊殿を囲むほど多い数の敵。その中には正気を失えど、私よりも力が強く、速い敵だってたくさんいるだろう。

 そんな多勢に無勢な状況で、私はどれだけ時間を稼げるだろう。そして、霊夢や魔理沙が来たとしても勝てるのだろうか。

 

 いや、勝つしかない。これから先、友達や家族を守るためなら、これくらいの敵は倒せないとダメだ。少なくとも、知恵を失った獣くらい倒せないと、お姉様よりも強くなんてなれない。

 

 ──そしてお姉様よりも強くならなければ、お姉様を守ることすらも叶わないのだ......。

 

「......姉より強い妹はいない、なんてよく言います。ですが、今日に限っては姉よりも、誰よりも強くなって、友達を守りたいです。

 ですから......私に力を──」

 

 と、私は両手を胸の前で合わせ、祈る動作をする。

 

 ──今更神頼みなんて、吸血鬼(わたし)に似合わないか。

 

 が、すぐにそれをやめ、魔法の詠唱へと切り替えた。

 

「......やっぱり止めましょう。この世界の神様、信じたら負けな気がしますし。

 ふぅー......『我が手に秘める魔術王の秘宝よ。我が声に答えよ』」

 

 その詠唱によって、擬似的な『ソロモンの指輪』が白く眩い光を放つ。

 

 そして、自分の魔力が高まるのを感じる。

 妖怪としての力を超え、魔法使いとしての力が、自身に巡る魔法少女の力を増幅させていくのが分かる。

 

「そして──『秘宝に封印されしものよ。我が身に流れる妖魔の血に答えよ!』」

 

 更なる詠唱により、指輪の発する光が白から黄色へと変化する。

 

 それにより、指輪と自身に流れる悪魔の血と共鳴し、体の底から魔力が湧き上がる。

 

「後は......『破杖(はじょう)ヴァナルガント』」

 

 魔法を使って自分の背丈よりも少し高い杖を召喚する。

 それは真っ黒で先端には狼の頭に似せた装飾が付いている。

 

「これで準備万端、ですね。......行きますか」

 

 寂しくも一人でそう呟きながら、地霊殿の扉を開けた。

 

「うわぁ......」

 

 そこには大量の正気を失ったらしい、目から光が無くなった妖怪達が待ち受けていた。

 

 一斉に、出てきた私を見ると、今にも飛び出しそうに殺気を放っている。

 

「......数多くないです? 思っていた数の二、三倍はありますよ」

 

 せいぜい百や二百と思っていたが、五百近い妖怪達が地霊殿の入り口を囲んでいる。

 

「百人組み手なら、魔法使っていれば勝てる可能性もあったと思っていたのですが......」

「甘い。かなり甘い」

「......おや?」

 

 正気を失った妖怪をかき分けて、十代前半にしか見えない少年がやって来た。

 

 金髪青眼で西洋風の薄い鎧を身にまとい、小さめの槍を二本、手に持っている。

 そして私と同様の大きな蝙蝠の翼が生えており、吸血鬼であることが伺える。

 

「地底を収めているとか聞くからどんな奴が出てくるかと思えば、少女一人?

 俺達に姿が似ているとはいえ勝てないぞ? かなり舐めてるな」

「......吸血鬼です? 奇遇ですね。私もですよ」

「お前みたいな妖力よりも魔力が高い吸血鬼がいるか! 吸血鬼(俺達)を冒涜するな!」

「むぅー。それを言われたら何も言い返せないです。今日はどのようなご用件でこちらへ?」

 

 いつでも魔法を使えるように杖を力強く握りながらその少年に問う。

 

「あぁ、そうだった。ここを今から俺達吸血鬼の拠点とする。明け渡してもらおう」

「ここは友達の家ですので、お断りします。それと、そういう訳でしたら、この家には一歩も入れませんので......」

 

 と、杖をおおきく振りかぶって──

 

「ご了承を! 神の盾よ! 連なり、壁となれ! 『イージスの盾』!」

 

 ──地霊殿を光り輝く半透明な壁で囲い、覆った。

 

「これで、時間稼ぎは......。あまり傷付けたくないのは同じでしょう。(こっち)ですよ!」

 

 敵を煽るように手をくいくいっと動かし、宙へと避難する。

 

「あの女......! まずは突撃、第一部隊。あの女を殺しにかかれ!」

 

 その声により、最前線で睨みつけていた妖力の低い妖怪達が空へ逃げた私に向かって一斉に飛んできた。

 

「おっと......!」

 

 右手に持つ杖を振って迫り来る敵を払い、攻撃を受け流す。

 

 そして、もう片方の手に魔力を込め──

 

「散りなさい。弱化版『紅魔「ブラッディヴァンパイア」』!」

 

 ──左手に集めた魔力を全て小さな弾幕にし、速いだけの散弾にして放つ。

 

 それは、正気を失っている妖怪への配慮であり、慢心しているわけではない。

 それを受ければ怯み、運が良ければ気絶すると思っていた。

 

「ふしゃぁ!」

 

 ──だがしかし。力加減を間違えたのか、妖怪達は怯むどころか近付いて、鋭い爪で切り裂いてきた。

 

「った!?」

 

 思わぬ攻撃に驚くも、それを偶然払った杖で受け流すことに成功する。

 

「運のいい奴め。第二、第三部隊も続け! 他は奴の結界を壊せ!」

「そうはさせません。『神槍(しんそう)「トライデント」』! 雨よ降れ!」

 

 地底の天に向かってその矛先を向け、力任せに投げる。

 

 槍は形を変え、雲へと変わるとそこから無数の雨を降らし──

 

「傘がないと、動けなくなりますよ?」

「あ......? ぎ、ギィヤァァァ!」

 

 ──命中した全ての敵に苦痛を与える。

 

「弾幕の雨? 俺を守りながら敵を殺せ!」

「......痛いだけとはいえ、長い間受けていれば苦痛によってショック死する可能性もあるかと。弱めに設定はしていますが」

「知るか! 俺の命さえ守られればそれでいい!」

「......どうして、よっ。どうしてここまでするのです? っと。ああもう! 話している最中に攻撃しないでください!」

 

 正気を失っているからか、苦痛からか。獣と化した妖怪達は顔を歪ませながらも攻撃をやめることは無かった。

 

「っ......。遅い。それに弱いです。これなら鬼の百人組み手の方が難しいです」

 

 しかし、知能は無いようで、一斉に攻撃しようにも互いに邪魔をし合う形になっていた。そのせいで、命中するはずだった攻撃も当たることはほとんど無い。

 

「ちっ......。お前に話すわけないだろ! 鬼に会いたいのなら会わせてやる!

 行け、鬼共! 他の奴らは退いて結界を壊すのに専念しろ!」

「会いたいとは......なっ! うわぁ、本当に鬼まで......」

 

 五人の鬼が向かってくる。それと同時に、他の妖怪達は結界へと目標を変えた。

 

 流石に雨だけで凌ぎ切れるわけもなく、鬼以外の妖怪達は這いつくばりながらも結界へと流れ込んだ。

 

 結界はその程度じゃビクともしないが、いずれ攻撃を受けていれば壊れてしまう。こうなれば後は時間の問題だ。

 

「鬼なんて、普段は相手にしたくないです......。あ、でも私と同じくらいの子も......」

 

 大柄な大男の鬼に混じって、小柄で一本の角を持ち、金髪の小さな少女の鬼が目に映る。

 

 ──あれくらいの小ささなら......。

 

 とは思ったが、あの萃香も小柄なのに鬼が四天王の一人だ。

 あの少女もさほど変わらぬ強さを持っているかもしれない。

 

「はぁー......前から一人ずつかかってきてくださいね。そうしないと怪我しますよ?」

「ウォォォォ!」

 

 私の言葉など意に返さず、一斉に飛んだと思うと、鬼達は私に向かって拳を振り上げる。

 

 だが、唯一鬼の少女だけは、向かってくることはせず、ただ私の動きをじっと見ていた。

 

「なっ!? 何をしている! 早く行けよ!」

「グルルル......」

 

 命令をされても動じず、動こうとはしない。

 

 ──もしかして......。

 

「正気を失っても、自我を......いえ、本能を? っと、それよりも」

 

 そう思うのもつかの間。

 

 すぐ目の前にまで敵は迫っていた。

 

「話くらいさせて欲しいです。風を身に纏う。『風の羽衣』!」

 

 即席の風魔法を使い、小さな風の結界を身に纏う。

 

「そんな貧弱な結界など壊されるのがオチだ! 諸共壊してしまえ!」

「それはどうでしょう?

 右手に収めし我が杖よ。我が声に答え......」

「ウォォォァァァ!」

 

 羽衣とは別に、杖が風のような音を静かに立て──

 

「──その概念を伴う力を見せよ! 『破杖(はじょう)「ヴァナルガント」』!」

「がっ!?」

 

 ──杖から発せられた紅い霧が私を覆いながら、迫り来る鬼をも纏った。

 

 その霧に纏われた鬼達は、まるで力を失ったかのように地へと落ちてしまう。

 

「また結界!? おい、守ってだけのそんな軟弱者はすぐに殺してしまえ!」

「出来るといいですね。手遅れですが」

「はぁ? な、何を言って......!? お、おい! 早く動けよ!」

 

 吸血鬼の少年は声を荒げて地へと落ちた鬼達を呼ぶ。

 

「が、がっ......」

 

 だが、その鬼達からの返事はなく、地に突っ伏したまま動くことは無かった。

 

「な......っ!? い、一瞬でやられるわけがないだろ!?

 お、お前は一体、どんな卑怯な技を......!」

「卑怯ではないですよ。ただ、相手にかかっていた能力を()()しただけですから」

「はかっ......はぁ!?」

 

 この杖は私の『有耶無耶にして能力を無効化する』という能力を基礎とし、『破壊の杖』を意味するフェンリル狼の力の概念を上乗せし、『破壊』として広範囲の能力無効化を可能としている。

 実際は擬似的な杖だけでは『破壊』という概念を操れないのだが、それすらも有耶無耶にして曖昧な『破壊』の概念を形作り『破壊の杖』を模している。

 

 一見して強力なこの魔法だが、実は弱点がある。

 

「私は『有りと有らゆるものを有耶無耶にする程度の能力』を持っています。それを利用すれば、一時的に能力を無効化することも、概念を有耶無耶にして捻じ曲げることも可能なのです。......最初に気付いたのミアですが」

 

 一つは能力を使用しているとはいえ、概念を形作るというだけあって、魔力の消費量は他の魔法とは比較にならない。

 私はミアのように得意でもないため、魔力を底上げする詠唱第一段階目の『ソロモンの指輪』を使ってからしか使用出来ないのだ。

 

 そしてもう一つ。広範囲と言っても、半径一メートルほどの範囲でしか使用できない。

 それでも触って有耶無耶にするよりは安全だが、要は近接攻撃かカウンターとしてしか使えないのだ。近接戦闘があまり得意ではない私にとっては、敵に近付くことは危険だ。だから使える機会はそう多くない。

 

「あいつと同じ......っ!?」

「あいつ? も、もしかしてミアです? ミアの居場所を知っているのですか!?」

「ミア? そんな奴は知らねぇよ! 俺が言っているのはルネだ!

 お前、まさかルネと関係あるのか......!?」

「ルネ、さん?」

 

 それは、どこかで聞いたことのある名前だった。

 失礼なことだが、懐かしく思うと同時に、それほど思い入れのなかった名前にも感じる。

 

 しかし考えているうちに、ハッ、と記憶がなだれ込んできた。

 

「......エルジェーベト? ルネ・エルジェーベトです?」

「やはりバカ兄貴の仲間か! いつもいつも邪魔をしやがって......!」

「......えっ? 兄貴? も、もしかして......エルジェーベトさん?」

「そらそうだ! なんだその名前覚えてないのに思い出したかのように演じるのは!」

 

 正直な話、ルネ以外のエルジェーベト家、特にルネの弟なんて全く覚えていない。

 それも仕方ないことで、最後に会ったのは何百年も昔のことなのだ。覚えていろ、という方が無理な話だろう。

 

「だって覚えてませんし......。あぁ、そう言えばまだ名前を言ってませんでしたね。

 私はレナータ・スカーレット。レミリア・スカーレットの妹です」

「スカーレット......!? あ、あの俺達を裏切ったスカーレットだと!?

 通りで卑怯な吸血鬼なわけだ!」

 

 目を見開き驚くその吸血鬼を見ながら、私は多少の苛立ちを感じていた。

 

 ──私は名乗ったのに名乗らないなんて、礼儀知らずな吸血鬼。

 と最初に思い、次に話の内容までも嫌な思いをした。

 

「むっ......裏切った? 地上に住んでいるだけで、裏切ってなんかないです。そもそも味方だったかどうかも怪しいですけど」

「ふんっ、よく言うな! お前は知らないようだが......俺達を裏切り、不意打ちで殺し、自分だけ地上に残ったのがお前の姉だァ!」

「不意打ちで殺......えっ......? 」

 

 ──思い当たる節はある。

 

 幻想入りして迷子になり、帰ってきたその日の夜。

 

 入り口で待っていた血に濡れたお姉様と、その近くで倒れていた二十近い吸血鬼達。あの時はお姉様の言葉を疑わず、ただお姉様の命を狙っていた吸血鬼だと思っていた。だが、今になって考えると、あの時のお姉様は少し様子がおかしかった。

 

「そうだ! お前の姉は、俺の仲間を殺した! あの時はただ見るだけしかできなかったが、次に会った時は必ず殺すと......仲間に誓ったんだ!」

「お姉様が、不意打ちで......」

 

 ──あのお姉様が不意打ちで、同じ吸血鬼を殺した......。

 

「吸血鬼の未来が途絶えたのはお前の姉のせいだ! どうせお前らは、地上で何不自由なく、ぬくぬくと暮らしていたんだろ!

 だが俺達は違う! 毎日毎日死にそうになって、餓えていたんだぞ!」

「......だから、私達に......お姉様に後悔させるために、この異変を?」

「はっ! それもあるが、俺達は今度こそ地上を支配する! 逆にお前らには惨めな生活をしてもらうことになるだろうなァ!

 しかし後悔しても遅い! 全てはお前の姉のせいだ!」

 

 しばらくの間、話に聞き入ってしまい、動くことを忘れていた。

 

 ──お姉様が吸血鬼仲間を殺して、この異変のきっかけを作った。

 

 それは、信じ難い事実だった。

 

 しかし──

 

「......そうですか。分かりました」

「はっ! 姉のした行いを知って自害する気でもなったか!? だけど許さねぇ!

 お前らは、絶対に俺がこの手で──」

「あ、そうではなく。......お姉様が理由もなく同族を殺しません。そして、不意打ちも。したとしても、それは何か理由があります」

「あぁん!? それは自分だけ平穏に......!」

「な訳ないです。というか、さ、最初からそんなことは気付いてましたけどね?」

 

 お姉様がそうする理由は、一つしか考えられない。

 

「お姉様は、私達のためにしたのでしょうね。嫌な思いをしてまで、同族を......」

「なっ......!? 妹のために仲間を捨てただと!? そんなこと! 吸血鬼にとって許されるわけない! 絶対にな!」

「そんな基準知らないですけど」

 

 そして、何より......あの夜の同族の血に染まっていたお姉様を見て、恐怖は感じなかった。

 それどころか、美しくさえ感じてしまった。

 

 ──あぁ、やっぱり......私はフラン同様、多少狂っているのかもしれない。いや、そうではなくただ単に、お姉様のことを......。

 

「っと。お姉様をバカにした報いは受けてもらいます。それにお姉様は殺させません。

 そして最後に。貴方の目的のために地底の妖怪達が、私の友達が! 被害を受ける必要はありません!」

 

 そう言い放つと同時に、『破杖「ヴァナルガント」』を消し去り、新たな呪文を唱え始める。

 

「これこそは闇の妖精が作りし魔剣。

 命を穢し、また我が手も穢す。『魔剣「ダーインスレイヴ」』!」

 

 そして、一筋の真紅色の線が入った、漆黒の剣を作り出す────




年越し前にEXまで書きたい(願望)
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