今回はタイトルから見ても分かる通り、あの人の登場です
side Renata Scarlet
──紅魔館(フランの部屋)
私が約350歳になった時......その事件は起きた。
それは、いつものようにフランの部屋に行っている時だった。
「ふぁ〜......今日はフランに会いに行くのが遅くなってしまいましたね......」
魔導書を読み漁っていたら日の出近くなっていた。いつも、部屋に行くのが遅れると、フランに怒られる。だが、こんなに遅い時間となったら、もう寝ているだろう。まぁ、起きた時に怒られるからあんまり変わらないけど......。
「痛い、痛いよ、誰か......お姉様、レミリアお姉様......助けて......」
フランの部屋に近いているうちに、そんな声が聞こえてきた。
「え? ふ、フラン? ......! い、急がないと!」
嫌な予感がした私はフランの部屋へ走って行った。そして、扉を開け、フランの部屋へと入った。
「......お姉様、レミリアお姉様......助けてよぉ......」
「......ふ、フラン? ......フラン!?」
そこには、眼が狂気に染まり、『自分で自分の翼を捥いでいる』フランの姿があった。そして、フランの周りにはフラン自身の翼、手、足が落ちていた。
私は目の前の光景に唖然としたが、正気を取り戻すとすぐにフランの傍に行き、能力を使った。
そして、フランの眼から狂気の色が消えていった。
「......あ、あれ? お姉さ......っ!? 痛っ!」
「あ、大丈夫ですか!?」
「......う、うん。大丈夫だよ。でも、どうして私のつば、さが......え? もしかして、私自身が?」
フランが自分の手に握られた翼と周りに落ちているモノを見て言った。
「お、お姉様? わ、私......またなの? またお姉様を傷付けちゃったの?」
「いえ、大丈夫ですよ。......本当に私は大丈夫なので、自分の心配をして下さい。フラン、怪我は今すぐ治すので、少しじっとしてて下さいね」
「う、うん。分かったよ」
私はフランの怪我を魔法で治した。
それにしても、フランの狂気は、まだ治ってなかったんだ......。
最近、フランは狂気に染まることがなかったから油断していた。......いや、もしかしたら私が見ていないだけで、フランが一人で悩んでいたのかもしれない。もし、私がいない時に狂気に染まり、悩んでいたのだとすると......フランには申し訳ない気持ちしかない。私が気付けたら、すぐに戻すことが出来るのに......。
「......ありがと、お姉様。もう痛くないから......手、離してもいいよ?」
フランの狂気を戻した時からずっと握っていた手を離した。
「あ、すいません。もしかしたら、強く握っていたかもしれませんが......痛くなかったですか?」
「大丈夫。全然痛くないよ」
フランが無理をしているような笑顔でそう言った。
「......ごめんなさい、フラン。」
「え? ど、どうして? お姉様は何も悪くないでしょ? 悪いのは私の方だよ?」
「いえ、貴女は何も悪くないですよ。悪いのは来るのが遅くなってしまった私の方ですから......」
そう、悪いのは私の方だ。妹よりも魔導書を読むことを優先してしまった私が悪いんだ。もし、いつも通りの時間に来ていたら......フランがこんなに傷付くことなんてなかったのに......。
「だから! お姉様は悪くないでしょ! そんなの......何が起きてるかなんて分からないでしょ?」
「うっ......それはそうですけど......でも──」
「『でも』じゃない! もうこの話は終わり! いいね!」
「うー......分かりましたよ、もういいです」
フランの気迫に押され、言い負かされてしまった。
私......お姉様にもフランにも言い負かされることが多い気がする......。
「レナ、フラン。お邪魔するわよ。......あら? どうしたのかしら? 喧嘩でもした、のかし......えっ!?
レナ、フラン、どうしたの!? 何があったの!?」
お姉様は入るなり、フランの捥がれた翼や腕を見て叫んだ。
「あ、レミリアお姉様。ま、これは、えーと......まぁ、気にしないで。なんでもないから」
「気にしないわけないじゃない! フランが教えてくれないならレナに聞くわ! 一体何があったか教えなさい! 敵襲とかならそいつを今すぐにでも殺しにいくわよ!」
「......お姉様、こんなに深い場所に敵なんて来ませんよ。それに、夜でも美鈴なら侵入者なら気付くと思います」
「うっ......それもそうね。じゃあ、何があったのかしら?」
「......それは──」
「お姉様!」
言いかけた瞬間、フランが私を睨んでそう言った。
「......レナ、話を続けなさい。レナに言わせたくないなら、フラン。貴女が言いなさい」
「......はぁー、分かったよ。私が話す。レミリアお姉様、私、また狂気に染まってしまったの......」
「......そう。だから、こんなに腕や足があるのね......」
お姉様はその一言で全てを察したのか、暗いが納得した表情でそう言った。
「はぁー、レミリアお姉様が来る前に片付ければよかった......」
「フラン、聞こえているわよ? それと、片付けるって言っても、どうするのよ?」
「んー......能力で破壊する」
「下に残った血は片付けれないでしょうけどね」
「それはお姉様に任せるんだよ? お姉様ならそう言う魔法があるでしょ?」
「魔法......レミリア、この娘が魔法を使えるって言う貴女の妹さん達?」
お姉様の後ろから長い紫髪の先をリボンでまとめ、ドアキャップに似た帽子を被った女性が喋った。服は少しボロいが、おそらくこの人は──
「レミリアお姉様、誰この人?」
「あぁ、そう言えば言い忘れてたわね。この人は──」
「レミリア、私から言うわ。私はパチュリー・ノーレッジ。近くの町に住んでいた魔女よ。よろしくね。妹様方」
そう、パチュリー・ノーレッジ。前世の記憶に出てくる『この世界のキャラクター』の一人だ────
side Remilia Scarlet
──紅魔館(門前)
「ふぁ〜......暇ねぇ。何か起こらないかしら」
今は、当主としての仕事が終わり、美鈴の仕事も終わっていたので、暇潰しで門前に来ていた。
「......美鈴はいつもこんな感じなのかしら? ......もう少し時間短くした方がいいかもしれないわね」
「た、助けてちょうだい!」
そんなことを呟いていると、紫色の髪をし、少しボロっちい服を着た女性が話しかけてきた。
「......ここは私達、吸血鬼が住む館と知りながら言っているのかしら?」
「えぇ! 勿論知ってるわ! それを承知で言ってるのよ! 私は......魔女狩りから逃れる為にここに来たのよ」
「魔女狩り? あぁ、最近人間の間で流行っているやつか。あ、と言うことは貴女は魔女ってことかしら?」
魔女か......レナやフランみたいに魔力が分かるなら見た瞬間に気付けるのかしら?
「え、えぇ。そ、それよりも早く中に入れてちょうだい! 私を追ってきてる奴らが来るかもしれないわ!」
「はぁ......来るわけないじゃない。ここは私を含め、三人の吸血鬼が住む紅魔館よ? 人間で来るのはよっぽどの自信家か馬鹿くらいよ」
「た、確かにそうかもしれないけど......」
「『そうかもしれない』じゃないわ。実際にそうなのよ」
今まで、吸血鬼ハンターを名乗る者が現れても、すぐに私か美鈴が片付けるからここに入れる者はいなかった。その噂を聞いたのか、こいつは一番安全だと思ってここに来たんだろう。
「......そ、それなら、中に入れてくれないかしら? 」
「そうねぇ......ただ庇う為だけに入れるのもねぇ」
「そ、それなら、私が今まで集めてきた魔法の知恵を貸すわ。それならいいでしょ?」
確か、魔法使いにとって魔法の知恵は一番大切なものってレナが言ってたわね。それを差し出すくらいに切羽詰まっているのかしら?
「レナの方が長く生きているでしょうし、ここには魔導書も沢山あるからいらないとは思うけど......まぁ、レナ達に聞いてみましょうか」
「レナ? その人も魔法を使うの? それに、魔導書も沢山あるって......」
「あぁ、レナは私の妹よ。もう一人妹がいるけど、そっちも魔法が使えるわ。それと、ここには大きな図書館があってね。そこには魔導書以外にも沢山の本があるのよ」
「......私よりも長く生きている魔法使いには会ったことがないから会いたいわね。会わしてくれないかしら?」
目をキラキラ光らせてそう言った。
......あれ? 目的が変わってないかしら?
「えぇ、勿論会わしてあげるわよ。あぁ、レナとフラン次第で貴女をここに匿うかどうか決めるから」
「いえ、匿わなくていいわ。それよりもここで住ませてくれないかしら? その図書館に興味が湧いたわ」
「はぁ......それもレナとフラン次第ね。二人がいいなら私もいいわ」
「一応、先に言っておくわ。ありがとうね。......あ、自己紹介が遅れたわね。私はパチュリー・ノーレッジよ。貴女の名前は?」
「レミリア・スカーレット。レミリアでいいわ」
「そう、それなら私はパチュリーとでも呼んでちょうだい」
「えぇ、分かったわ。じゃ、部屋まで行くからついてきなさい」
そう言って紅魔館へと入ろうとする。
「ちょ、ちょっと待って。 門番とかはつけなくていいの? ここには門番がいるんでしょ?」
しかし、入る前にパチュリーが話しかけてきた。
「はぁ、大丈夫よ。これから誰か来るっていう運命は無いからいいのよ。それに、美鈴は朝からずっとやってるから疲れているでしょうしね」
「......それならいいけど。それにしても、どうしてここまで追いかけて来なかったのかしら?」
「そんなの決まってるじゃない。私達『悪魔』が怖い。それだけの理由でしょ」
「......それもそうね。私も最初はここに来るのが怖かったわ。『紅い悪魔』と『血に染まった悪魔』の噂は私の町でも有名だったし、私がいた町からここに来て帰ってきた人間はいなかったから」
「あら? ここに来て、帰った人間もいるわよ? 私と美鈴は逃げる相手に攻撃なんてしないから」
まぁ、私は襲いかかってきたら一瞬で殺すから、逃げる間もないんだけどね。
「本当かしら?」
「本当よ。間違いなく、絶対にね。さ、早く行きましょう。もう寝ているかもしれないわ。寝ていたら今日は泊まって、また明日聞くことにしましょう」
「......貴女、本当に悪魔なのかしら? 少し優し過ぎない?」
「あら、そうかしら?」
レナもフランも悪魔だけど、いつもこのくらいなんだけどなぁ。まぁ、私以外だと美鈴くらいしかちゃんと会話してないから、他の人に対しては知らないけど。
「そうよ。とてもじゃないけど、噂とは違う人にしか見えないわ」
「一体どんな噂なのかしら? まぁ、いいわ。さっきも言ったけど、早く行かないと寝ているかもしれないわよ」
「あ、そうだったわね。じゃ、案内をお願いするわ」
「何故か上から目線で言われている気がするけど......まぁ、いいわ」
そう言って紅魔館へと入って行った────
──紅魔館(図書館)
「こ、ここが......凄いわ! こんな量、今まで見たことないわ!」
パチュリーが目を輝かせながら、そう言った。
「そんなに珍しいの?」
「えぇ! それに、あらゆる場所から魔力が流れているわ! 本当に凄い! 今までゴホッゴホッ! ゴホッ!」
「え!? ちょ、だ、大丈夫!?」
パチュリーのテンションが最高まで上がった瞬間、凄い勢いで咳をし始めた。
「ゴホッゴホッ! だ、大丈夫よ......生まれた時から病弱で、喘息持ってるだけだから......」
「私達は病気に強いからよく分からないけど、無理はしない方がいいわよ」
「え、えぇ、死にはしないから大丈夫よ......ゴホッゴホッ!」
「はぁ、レナは回復系の魔法にも精通しているから、会って話をした方がいいかもね......」
「ゴホッゴホッ......ふぅ。えぇ、早く会ってみたいわ。でも、生まれついての病気は流石に治せないと思うわ。まぁ、出来る可能性もあるんだけどね」
......生まれついての病気か。フランのあれは......いや、気にしないようにしないと。最近は全然無いし、もう大丈夫のはず......。
「まぁ、それはレナに聞いてみないと始まらないわね。さ、もうすぐしたら着くわよ」
「......えぇ、確かにもう着くみたいね。かなり強い魔力を感じるわ。なんて言うか......吸血鬼らしく、邪悪な感じがするのと同時に、不思議と優しい感じがする魔力が......。それと、もう一つ、さっき言ったのよりは弱いけど、今の私よりかは強いわ。多分、強い魔力の方に魔法でも教えてもらっているのでしょうね。」
「ふーん、魔女から見るとそんな感じなのねぇ。......で、二つ目の魔力の方は他に何か感想はないのかしら?」
「そうね......邪悪な気がするのはさっきと同じよ。でも、優しいと言うよりかは......純粋で、でも、どこか不思議な感じがするわね。まるで、二重人格のように、全く逆の感じがするわ」
「......そう、教えてくれてありがとう」
「? え、えぇ。どういたしまして」
......もしかして、まだ......いや、あるわけない。絶対に......だって、最近は全然無いし、なる前兆もない。だから、大丈夫。それに、レナもいるから、フランが傷付くことはないはず。
そう思っているうちに、フランの部屋に着いた。
「あ、着いたわよ。貴女は私の後ろに隠れて着いて来なさいよ。じゃないと、最悪死ぬから」
「結構物騒なのね。まぁ、覚悟はしていたし、大丈夫よ。死にたくないから、言いつけは守るけど」
「それならいいわ。ふぅ......レナ、フラン。お邪魔するわよ」
そう言って私は入った。そして、あの現場を見ることになったのだ────
side Renata Scarlet
──紅魔館(フランの部屋)
「よろしくね。妹様方」
そう言いながら、パチュリーが私とフランの前に歩いてきて、握手を求めてきた。
「ん、私はフランドール・スカーレット。フランでいいよ。よろしくね」
「私はレナータ・スカーレットです。よろしくお願いします。」
そう言って私とフランをパチュリーと握手した。
「それにしても、大丈夫なの? それは」
そう言ってフランの捥がれた翼や手足を指した。
「え? あ、うん。今は大丈夫。吸血鬼だからすぐに回復するし、お姉様のお陰でもっと早く治って、痛みもないから」
「お姉様? レナのことね。と言うことはレミリアが一番上で、レナがその次、フランが末っ子なのね」
「うん、そうだよ。分からなかったの?」
「逆に分かる方が凄いわよ。貴方達、背が全然変わらないじゃない」
そう言えば、私もお姉様もフランも、背が違うと言っても1cmくらいしか変わらないから、初めて見た人は全く分からないか。でも、お姉様は頼りになってかっこいいから姉って感じが、フランは可愛くて守りたいって思えるから妹って感じがすると思うんだけどなぁ。
「んー......私がお姉様のお姉ちゃんに......ね。いいわね、それ。お姉様! 明日一日だけ私の妹になって!」
「駄目です。フランは一生、私の妹でいて下さい。......可愛い妹がいるのは嬉しいですから」
「......そ、それならいいけど」
フランが顔を赤らめて言った。
え? もしかして、怒ってる!? ど、どうしよう......。
「え、えーと......フラン、ごめんなさい」
「え? な、なんで!? 急にどうしたの!?」
「え? 怒ってないんですか?」
「......お、怒ってないよ!」
「え? なら、どうして顔が赤く......」
「え!? 赤くなってたの!? って、お姉様鈍感過ぎ! いや、気付かない方がいいから、別にいいんだけど!」
気付かない方がいい? 一体どういうことなんだろう?
「? ど、どういうことですか?」
「レナって鈍感よねー。まぁ、その話は後ででいいわ。貴方達に話があるの」
「ん? どんな話? 」
「パチュリーがここに住みたいらしいの。それと、魔法使いとして先輩である貴方達に色々聞きたいことがあるらしいわ」
「先輩? お姉様みたいな感じってこと?」
「んー......まぁ、そんな感じでいいと思いますよ。パチュリーが住むのに文句なんてないですよ。逆に魔女と一緒に住めるのは魔法の勉強にもなりそうですし、一緒に住みたいくらいです」
「私はレミリアお姉様とお姉様がいいなら何でもいいよ」
んー......フランは自分で何か決めること少ないから、もっと自分で決めた方がいいと思うんだけどなぁ。
「そう、それなら決定ね。パチュリー、今日から貴女はここの住人よ。改めてよろしくお願いね」
「えぇ、よろしくお願いするわね。レミリア、レナ、フラン」
「ん、よろしく」
「よろしくお願いします」
そう言って、もう一度、私達はパチュリーと握手を交わした────
次回はパチュリーの話とフランの翼についての話。
次回は金曜日に投稿予定。......間に合うといいなぁ()