side Kirisame Marisa
──紅魔館(門前)
「いやぁー、人形二つを持ち運ぶのも結構大変だぜ」
異変から二日後。思ったよりも早く人形が出来たから、今は紅魔館に向かっている。
霊夢を連れて来いって言われてたが、なんか悪魔が取り憑いてたんだよなぁー。
関わると面倒そうだから見て見ぬふりをしてここまで来たが......まぁ、説明すれば許してくれるよな。
「そこの金髪の人! 止まりなさい!」
「うわっ!? 急に叫んだらびっくりするじゃないか!」
紅魔館に近付いた時に、赤い髪の中華風の女性が急に目の前に現れた。おそらく、考え事をしていたせいで、話しかけられるまで気付かなかったんだろう。
「え、あ、すいません。じゃなくてですね! この館にはお嬢様達の許可なく入れさせるわけにはいきません。貴女は何の用でここに?」
「あぁ、異変の時にも居た門番か。私が霧雨魔理沙。レナとフランの友達だぜ」
「魔理沙......あぁ、思い出しました。妹様達が言っていた魔法使いですね。てっきり、侵入者かと......失礼しました」
「いや、気にしなくていいぜ。で、レナとフランはどこに居るか知っているか?」
「フラン様の部屋かと思いますよ。あ、妹様達のお客様なので、ここは通って貰っても大丈夫です」
フランの部屋って言えば......あぁ、あの場所か。
「あぁ、ありがとな。そう言えば、お前の名前は?」
「あ、申し遅れましたね。私は紅美鈴と言います」
「美鈴か。よろしくな。じゃ、またなー」
「えぇ、またね」
そう言って、私は美鈴と別れ、フランの部屋へと向かった──
──紅魔館(フランの部屋)
「おーい、持ってきたぞー!」
「んー......あぁ、魔理沙ね......ふぁ〜、まだ昼よ〜?」
フランの部屋に着くと、ベッドでレナとフランが一緒に寝ていた。そして、声に気付いたフランが起きてそう言った。
「あ、起こしてすまないな。......そう言えば吸血鬼って夜に活動するんだったか。朝から霊夢のところにお前らの姉が来てたから忘れてたぜ」
「ふぁ〜......どうせ後数時間くらいで起きるんだし、別にいいよ。......私もこれからは朝に起きようかな?」
「吸血鬼って夜行性なんだろ? 朝から行動しても大丈夫なのか?」
「さぁ? 別にいいんじゃない? レミリアお姉様も今日は朝から起きてるし......お姉様はどうしよ?」
起こすか起こさないかのことか? ......私が知らずに来たから起こしちゃったんだよな。知らなかったとは言え、なんだか申し訳ないぜ。
「まぁ、いいや。それで? 持ってきたの?」
「あぁ、人形のことか? これだぜ」
そう言って、ミアと全く同じ姿の人形と、フランと似ているが、翼が無く、髪の色だけ違う人形を取り出した。
「んー、どうして私のだけ髪が銀色になってるのー?」
「昨日ここにアリスが来たらしいぜ? それで、パチュリーに『ルナシィ』って名前を聞いて、銀髪にしたらしいぜ」
「ふーん、ここに来てたんだ。多分、昼とかに来たのかな?」
「そうじゃないか? まぁ、そんなことはどうでもいいぜ。それよりも、人形に命を吹き込むとかどうやるんだ? 早く見てみたいんだが」
私も魔法使いだが、流石にそんなことは出来ないからな。同じ魔法使いとして見てみたいぜ。
「命を吹き込むってのは違うと思うけど......お姉様が起きないと出来ないよ。やり方はお姉様しか知らないし」
「あ、そうなのか。うーん、それなら仕方ないな。起きるまで待っとくぜ」
「分かった。じゃ、私はもう一度寝るからね。次は起こさないようにしてね」
「あぁ、分かったぜ。起きたら図書館に来てくれ。そこで待っとくぜ」
「うん、じゃ、おやすみ」
「おやすみだぜ。......さてと、私も行くとするか」
そう言って私は人形を置いて、図書館へと向かった──
──紅魔館(図書館)
「おーい、パチュリー居るかー?」
「誰? あぁ、魔理沙ね。小悪魔、追い返しなさい」
「えぇー!? 前は五分で負けたんですよ!? 絶対また負けちゃいますよー!」
「やる前から諦めないの」
「と言うか、どうして戦う前提なんだぜ? 今日はレナとフランに会いに来ただけだぜ?」
「えぇ、知ってるわよ。昨日アリスも来てたしね。人形が出来たんでしょ?」
なんだ、知ってたのか。......小悪魔が驚いているみたいだが、こっちは知らなかったのか? まぁ、いっか。
「あぁ、そうだぜ。まだ寝ているみたいだから、ここで待っとこうと思ってな。で、魔導書が置いてる場所って何処だ?」
「いたるところに置いてあるわよ。自分で探しなさい。それと、持ち出す時は私に言ってね」
「あぁ、分かったぜ。......一つだけ聞いていいか? レナやミアが使っている魔法ってどの魔導書に載ってるか知らないか?」
「今、それが一番多く載っているのはアリスに貸しているわ。でも、レナ達が読んでいた本は他にも沢山あったわよ。と言うか、ここにある魔導書はほとんど読んでると思うわよ。ここにずっと住んでるのに、暇さえあれば今でもここで魔導書を読んでいるから」
ふーん......あいつって今何歳なんだ? 見た目は十歳くらいだけど、多分、何百歳とかだよな?
何百年も魔導書を読むって結構な数の魔導書を読んでるよな? ......結構な数の魔法知ってそうだし、後で色々と教えてもらうか。
「じゃ、そこら辺で魔導書を読み漁っとくから、レナとフランが来たら教えてくれよ」
「えぇ、分かったわ。あ、こあ、紅茶持ってきてくれない?」
「はーい、分かりましたー」
そう言えば、小悪魔って普段は何してんだ? メイドみたいなことでもしてるのかな? ......まぁ、今は紅茶をいれにいくみたいだし、後で聞いてみるか。
それにしても、魔導書以外にも色々な本があるなぁー。まぁ、今は魔導書を読みたい気分だから他のは読まないけどな。
「それにしても、全部の本から微量な魔力が感じられるな。パチュリー、ここにある本って防護魔法とかでもかけてるのか?」
「えぇ。防火、防水、防刃、防弾、魔法障壁......他にも色々かけてるわよ」
パチュリーが本を読みながらそう答えた。
色々かけすぎじゃないか? ......まぁ、多いに越したことはないけど。
「へぇー、凄いんだなぁ......あ、これとかでいっか」
「パチュリー様ー。いれてきましたよー」
「ありがと」
私が魔導書を手に取ったと同時に小悪魔が戻ってきた。
結構早かったな。まぁ、目に見える範囲でやってたけどな。
「あ、小悪魔。一つ聞いていいか?」
「いいですよー。何ですかー?」
「お前って普段はここで何をしてるんだ?」
「パチュリー様のお手伝いとか、この図書館の本の管理とかしてますよ。それと、咲夜さん......メイドみたいなこともたまにしてますね」
「へぇー、思ったよりも色々とやってるんだな。......使い魔って便利なんだなぁー」
アリスも冬には雪かきとかを人形にやらせてるみたいだし、私にも使い魔は一人欲しいな。まぁ、任せっきりになって、運動不足とかになるかもしれないから、ほどほどにしないとな。
「じゃ、私は魔導書を読んどくから、何かあったら呼んでくれよ」
「はいはい、分かってるわよ」
「魔理沙さんも紅茶いりますー?」
「あ、貰っておくぜ」
こうして、私はレナとフランが来るまでの間、魔導書を読んでいた──
──数時間後
「魔理沙ー! 起きなよー!」
「ん? ......ふぁ〜、なんだ? もう朝か?」
「いえ、夜ですよ」
「魔理沙、貴女寝てたのよ」
目が覚めると、目の前にはレナとフランが居た。
んー? ......あ、魔導書を読んでたはずなのに、いつの間にか寝てたのか......。まぁ、結構長いのを読んでたから仕方ないな、うん。
「パチュリー、起こしてくれても良かったんだぜ?」
「気持ち良さそうに寝てたから、そのままにしてあげてたのよ。それよりも、レナとフランが来たわよ」
「あ、あぁ、その二人に起こされたようなものだからな。知ってるぜ」
「さ、部屋に行こー」
「え、ここでやらないのか?」
「ここでやると、パチュリーに迷惑がかかる可能性高いので......魔理沙、貴女にも迷惑がかかるかもしれませんが、着いてきますか?」
ん? あぁ、フランの狂気の方のことでか。......まぁ、人形のが気になるからな。絶対に最後まで付き合うつもりだぜ。
「あぁ、着いていくぜ。おっと、止めるなよ?」
「止めませんよ。でも、命の危険を感じたら逃げて下さいね? 時間は稼げると思いますので」
「おいおい、そんなこと言うなよ。大丈夫だと思うぜ。ルナシィ......だよな? そいつもフランなんだろ? ということは、根は一緒のはずだろ?」
「......あぁ、その発想は無かったです。ということは、大丈夫なのでしょうか?」
「......一回話したら分かると思う。だから、早く行こっ?」
フランが笑顔でそう言った。
......『根は一緒』ってことに、フランは何か気付いていることがありそうな気がするんだけどなぁ。
まぁ、本人は分かってるみたいだし、言わないってことは、大丈夫ってことなんだろうからいっか。
「はい、そうしましょうか。では、着いてきて下さい。魔力はあまり消費したくないので、徒歩で行きますよ」
「あぁ、分かったぜ」
「うん、分かった」
こうして、私達はフランの部屋へと向かった────
──紅魔館(フランの部屋)
「着きましたね。ささっ、フランはこっちに来てください。ルナシィの方から魔法を始めますので」
「......うん、分かった」
フランの部屋に着いた時に、レナがそう言った。
「おっ、早速始めるのか?」
「はい。『善は急げ』って言いますのでね。では、始めますね」
「おう、私は見守っとくぜ」
「あ、その前に......フラン、ルナシィの為に、魔力を使い続けることになりますが、それでもいいですか?」
「......うん、いいよ。これも
「では、ちょっと痛いですけど、我慢して下さいね」
「え、っ!? ちょ、ちょっと......ま、いいや。次からもっと前から言ってよね」
そう言って、レナがフランの手首を爪で傷付けた。そして、そこから出た血を使い、人形に何かの魔法陣を描き始めた。
それにしても、先に言っとけばいい話なのか? ......まぁ、本人がいいならいっか。
「あ、すいませんでした。......多分、魔法陣はこれでいいはずです。後は詠唱と契約だけですね
「契約? なんだそれ」
「簡単に言うと、『貴女にはこれから、半永久的に魔力を注ぎ続けます』って言うやつですね。まぁ、他にも色々あるのですけど、詳しく言うと長くなるので省きます。ちなみに、フランとルナシィに感覚共有は付いてないです。付けるとフランの魔力消費量が多くなるので」
まぁ、何となく分かったからそれでもいっか。それにしても、結構描くの早いな。慣れてるのか?
「......詠唱は出来ました。では、フラン、人形に描いた魔法陣に触れて下さい。
そして、祈ってください。『ルナシィの魂がこの人形に宿れ』......と」
「うん......」
そうして、フランが魔法陣に触れて、祈るように目を閉じた。
すると、魔法陣が赤く輝き、魔法陣から現れた赤い糸のような線が人形にまとわりついたと思うと、その赤い線も魔法陣もいつの間にか消えていた。
そして、しばらくすると......人形の目が動いた。
「......ルナ? 動ける?」
「......フラ、ン? うん、動けルヨ。......でも、マだ少し喋りニクい」
「普段もちゃんと喋れては無かったですし、人形だと少し違うでしょうからね。でもまぁ、すぐに慣れますよ」
「ア、オネー様......オネー様!」
そう言って、嬉しそうにルナシィがレナに飛び込んだ。
「え、あ......ルナ!? ちょ、ちょっと!」
「オネー様......チョットだけ、イタイの我慢してネ?」
「え? っ!?」
そして、ルナシィがレナを吸血し始めた。
......え? これどういうことだぜ? もう訳分からんのだが......。と言うか、人形なのに吸血出来るのか?
「ちょっと! ルナ! お姉様から一回離れて!」
「ン? うるさい。フランは黙って見ててよ」
「え......む、無理! ルナ、一回私の話を聞いて。お願いだから......」
「......ま、まぁ、いいヨ」
そう言って、ルナシィがレナから離れた。
うん、なんか私がいたらダメな気がしてきたぜ......まぁ、聞きたいことは聞くけどな。
「そ、その前に、少しいいか? ルナシィって身体は人形だろ? なのにどうして吸血なんて出来るんだ?」
「うぅ、まだ少し痛みます......あ、それは、魔力を与えてるフランと同じ、吸血鬼になったからですよ。
この魔法の契約は魔力供給している人の負担を減らす為に、元は人形だったとしても、契約した後は魔力供給をしている人と同じような睡眠や食事などを取れるようにするのです。吸血鬼にとって、吸血は食事をする方法なので、自然と出来るようになったってことです」
ふむふむ、なるほど。食事や睡眠は魔力を回復させる役目もあるからな。人形側に自分で魔力を作らせるってことか。だから、分身よりも効率が良いんだな。
「で、フラン。話ッテ?」
「......ルナ、貴女はどうしていつも狂気に塗れてたの?」
「さァ? ワタシにも分かんなイ。タダ......貴女が羨ましかった。妬ましかった。オネー様達とイッショに居れる貴女が......」
「......やっぱり、そうなんだ......」
「デモ、今は違う。もう自由。だから、貴女を羨ましく思うことがあっても、妬ましくは思わないと思う。......貴女がワタシを消さない限りはネ」
「......うん、消さないよ。また身体の所有権取られてもいやだしね」
ルナシィがそう言って、悪魔のような笑みを浮かべた。そして、フランもそれに返すように微笑んだ。
「......なんか、お前達の姉妹が増えたみたいだな。いや、前から居たから、変わらないのか?」
「『気が付かなかった』と言うことなので、変わらないのでしょうね。それにしても、フランと仲良く出来そうで良かったです」
「背は変わらないのに、やっぱり姉なんだなぁー。さて、ミアも召喚するんだよな? 終わったら魔法を色々教えてくれよー」
「私は教えるのが下手なので、すいませんが、それはミアに頼んでください」
元は同じはずなのに、変わるものなのか? ......いや、もしかして、同じじゃないのか?
「なぁ、レナ。ミアって分身に自我が芽生えたんだよな? ......その自我ってどこから来たんだ?」
「......私の中に元々居たのです。ただ、多重人格とは少し違います。......まぁ、今は詳しくは話せません。いつか、お話しますよ」
「ふーん、まぁ、いいぜ」
どうせ話してくれないだろうし、今は聞かなくてもいっか。まぁ、気にはなるけどな。
「じゃ、もういいよネ?」
「え? 何が?」
「え? 吸血だけド?」
「ダメ! お姉様を吸血していいのは私だけだから! これはルナでも、レミリアお姉様にも譲れないからね!」
「フランもやめなさい。......いや、でもまぁ、ミアを召喚した後で、死なない程度なら......二人とも、いいですよ」
「お前、絶対いつか妹に殺されるぞ?」
吸血ってされすぎると吸血鬼でも死ぬよな? それでもいいって......馬鹿なのか? いやまぁ、別にいいけどな。本人がそれでもいいならだけど。
「姉妹に殺されるならそれでもいい気がします。......知らない人に殺されるよりは」
「あぁ、うん。お前が言ってることがよく分からないぜ。死なないならそれが一番だと思うしな。それで、ミアの召喚は?」
「あ、また忘れて怒られるところでした。まぁ、やることは特に変わらないのですけどね」
そう言って、ルナシィを召喚した時と同じことを繰り返した。さっきと同じように魔法陣と赤い糸のような線が現れ、消えた。
そして、ミアの目が動いた。
「あ、動ける。おぉー、これ凄い。自分の身体みたいに自由に動くんだー」
「ミアは普通に喋れるみたいですね。......それにしても、吸血鬼なのに自分の姿が鏡のように見れるってのは変な感じですね」
あぁ、そう言えば吸血鬼って鏡に写らないんだったな。......え? ならどうしてミアの姿が......いや、自分の姿が見れるような魔法を使えばいいのか。まぁ、そんな魔法があるとかなんて知らないけどな。
「まぁ、翼はないみたいだけどねー。それで、貴女がルナシィだよね?」
「うん。そうだよ。......ぎゅっとしていいよネ?」
「え、うん。いいけ──痛っ! 痛いからもう少し緩くして!」
そう言って、ルナシィがミアをギシギシと言うほど抱き締めた。
うわぁ......痛そうだぜ。魔力供給しているレナと同じになったからか、痛覚とかもあるんだな......。
「んー、ごめんネ? 力加減とか分かんないヤ」
「えぇっ!?」
「身体能力は魔力を供給している人と変わらないですからね。おそらく、抵抗しても無駄でしょうね」
「そんな説明はいいから止めてー!」
しばらく会話した後、ルナシィがミアから離れた。
なんか呑気だなぁ。まぁ、日常って感じでいいんだけどな。......次に宴会がある時は、こいつらも呼んでみるか。まぁ、楽しくなる代わりに、霊夢が忙しくなりそうだけどな。
「うぅ......痛かった......」
「ミア、大丈夫? ルナ、謝りなさいっ!」
「......はーい......ごめんなさイ」
「うぅ......大丈夫だよ。だから、別にいいよ」
なんだかフランに妹が出来たみたいだな。
......それにしても、私、蚊帳の外だな。忘れられないうちに言っとくか。
「ミア、少しいいか?」
「え? あぁ、うん。いいよ。さっきレナに言ってたことだよね? 魔法教えて欲しいって言うやつだよね?」
「あぁ、そうだぜ」
「じゃ、図書館に行こー。そっちの方が魔導書とかあって教えやすいしねー」
「おう、分かったぜ! お前達は来るか?」
「......私は待っていますね」
「じゃ、ワタシも待ってるネ」
「ルナが変なことしないように私も待っとくー」
......なんだかこの三人が一緒に居るとなると、嫌な予感しかしないな。まぁ、巻き込まれる前に図書館に行くとするか。
などと考えながら、私はミアと一緒に図書館へと向かった────
side Renata Scarlet
──紅魔館(フランの部屋)
「......行ったネ。じゃ、オネー様。ちょっとイイ?」
ミアと魔理沙が部屋から出た後すぐに、ルナが悪魔のような笑みを浮かべてそう言った。
いやまぁ、一応は吸血鬼だから悪魔なんだけどね。
「なんだか嫌な予感しかしないのですが......まぁ、妹の頼み事を聞くのは姉として、当たり前のことでしょうし、いいですよ」
「少し前、オネー様のお腹を抉った時あったよネ?」
「え、は、はい。ありましたね......」
どうしてその話を......なんだか嫌な予感しかしないなぁ......。
「で、その時の感触が気持ち良かった。だから、もう一回やってイイ?」
「......え? ちょ、ちょっと言ってる意味が分かりません......」
「ルナ、お姉様を無闇に傷付けちゃダメなんだよ?」
「え、そうなノ? でも、オネー様は許してくれるデショ?」
「ま、まぁ、許すでしょうね......」
んー、何かおかしい......もしかして......。
「ルナ、貴女って今は何歳ですか?」
「フランと同じ、10歳だヨ?」
「え......ルナ、私は495歳だよ? え、冗談じゃない......よね?」
「え、え? どういうコト? どうして......?」
......そう言えば、多重人格って、人格によってそれぞれ年齢が違うとかあるんだっけ......。あぁ、だから喋るのも......でも、フランが10歳の時はしっかり喋れてたし......んー、多重人格についてはあんまり知らないからなぁ。
「......ルナ、気にすることはありませんよ。貴女は貴女、フランはフランって言うことなんでしょう。」
「でも......あれ? フランとはズット記憶を共有してなかったッテコト?」
「まぁ、そう言うことになりますね。......おそらく、貴女が表に出ている時と、フランが生きていたごく一部の時間しか記憶を共有していないのでしょう」
そう考えると、やっぱりルナって可哀想なんだなって思う。約490年程の記憶が無いって......辛い記憶、悲しい記憶はともかく、楽しい記憶とかもないんだよね。......これから作ってあげないとね。
多分、フランの中に戻ったら、記憶もまた制限されることになりそうだし、『ルナシィ』って言う一人の妹として接してあげないとね。
おそらくだけど、フランが辛い思いをした時に、代わりになる為に作られた人格なんだろうし、楽しい記憶がない可能性が高いと思うからね......。
「ルナ、先ほども言いましたが、共有していないからと言って、あまり気にすることはありません。まぁ、多少は気にした方が良いかもしれませんが......これからを楽しんだ方がいいと思いますしね」
「......ま、それもそうだネ。でも、オネー様のお腹を抉るのはダメ?」
「ダメですよ。私と貴女とフランの三人で一緒に遊べるのを考えましょう」
10歳って、良い悪いの区別は付くよね? ......まぁ、吸血鬼だから、人間とは違う可能性もあるんだけどね。
ルナには色々と教えてあげないとね、姉として。
「あ、その前に......ルナ、私のこと、『お姉様』って呼んでみて!」
「え、嫌。貴女がワタシのことを『お姉様』って言ったらいいヨ」
「えぇー、一回だけでいいからさー」
「ワタシも一回だけで、いいヨ?」
なんか、私とミアのやり取りみたいに見える気がする......いや、気のせいかな。
「......終わらなさそうなので、もういいですか?」
「あ、うん。いいヨ」
「あ、ごめんね。さて、何して遊ぶ? ルナが決めていいよ?」
「んー、えーとネ......」
こうして、私達三人はしばらく遊び続けることになった────
一応、キャラによって思考等は違います。絶対これが正しいと言うのは無いので、注意して下さい。
次は水曜日に投稿予定です。流石に自分には2日に一回ペースは無理そうなので()