side Renata Scarlet
──紅魔館(図書館)
「さて、始めましょうか」
「えぇ、そうね。さ、早く宣言しなさいよ」
フランと魔理沙の弾幕ごっこが終わって次は私と霊夢の番だった。既に、私と霊夢は互いに一定の距離を保ちながら宙に浮かんでいた。
弾幕ごっこはフランやお姉様の姉妹との遊びならやったことはあるけど、他の人とやるのはこれが初めてだ。
──弾幕に当たりそうになったら蝙蝠になって逃げればいいし、なんとかなるかな。......あ、そう言えば、蝙蝠とかどうやってなるんだろう? なったことないから分かんないや。お姉様もフランも出来てるし、祈ってやればなんとかなるよね。
「ではまずは小手調べと言うことで......必要ない気もしますけどね。ちなみに、数は十枚です。フランと同じ数ですね」
「必要ないわね。そう言うわけで、一枚減らしてくれない? 貴女の姉は六枚しか使わなかったわよ?」
「それはあれですよ。お姉様はお姉様、私は私と言うことで。それに、小手調べは楽しい時間を増やすためなので、必要無くてもしますけどね!
これが一枚目です! 『召喚「吸血鬼をも燃やす小さな焔」』、燃えてください!」
自分の周りに魔力で出来た六つの焔を作り出す。
この焔は、私の周りを回りながら小さな赤い弾幕を六方向にばら撒き続ける。最後以外は特に何の変哲もないスペルカードだ。
「ふーん、本当に小手調べなのね」
霊夢はそう言いながら、簡単そうに軽々と左右上下に避けていく。
もしかしたら能力でも使っているのだろうか。
──それは無いか。霊夢は遊びで本気になりそうな性格じゃないしね。......現実で会ったのはこれが初めてだから違うかもしれないんだけど。
「普通に弾幕をばら撒いているだけですしね。......それでも、もう少し難しそうに避けて欲しいです。あまりにも簡単に避けられるのは......」
「もう少し難しくすれば? 小手調べなんだし出来るんでしょう? まぁ、私はこのままの方がいいけど」
「んー......もうすぐ終わりですし、難しくしましょうか。焔さん達! 行きなさい!」
命令を受けた全ての焔は、弾幕をばら撒くのをやめると霊夢へと向かって行った。
このスペルカードの神髄は、焔が自爆することだ。私から一定距離を離れると自爆して、周りに弾幕を撒き散らす。
──正直な話、自爆は手動も出来るけど少しラグがあるから使いにくいんだよね。やっぱり、私って再現は得意な部類でも、自分で考えて作るのはあんまりだなぁ。
「あぁ、こっちに来るのね。......手っ取り早い方がいいわね。『夢符「封魔陣」』!」
霊夢は四方八方に結界を張ると全ての焔の爆発から身を守った。
「うわっ、爆発した」
──そう言えばそんな方法があったね。小手調べなのに追尾機能あって難しいだろうと思って、一回分しか用意してないのよね......。後二、三回くらい用意すれば良かった。
「......霊夢さん、普通に避けてもいいのですよ?」
「こっちの方が手っ取り早いでしょ? それと、霊夢でいいわよ。さんはつけなくてもいいわ」
「あ、分かりました。皆さん、呼び捨てにされる方が好きなのでしょうか......。
二つ目の召喚魔法です。いえ、本当は召喚魔法を模しただけなんですけどね。『召喚「不可視の吸血鬼」』!
では便乗させてもらって、私も消えますね」
このスペルカードは、私の能力で見えなくした吸血鬼を模した弾幕の塊から、霊夢に向かって色々な方向から幾つもの弾幕を飛ばすと言う簡単なものだ。しかし、どこから飛んでくるか分からない弾幕ほど怖いものはない。
それに加え、私自身も能力で姿を有耶無耶にする。存在ではなく姿を有耶無耶にする理由、は存在を有耶無耶にすると、相手が誰と戦ってるか分からなくなるからだ。
それでは勝負にならないと姿を有耶無耶にするようにしている。
「え? ......あ、本当に消えるの、ねって危なっ! 今どこから飛んできたのよ!?」
「さて、どこからでしょうね?」
「貴女も何処にいるのよ。せめて、貴女だけでも出てきたら?」
霊夢に挑発気味に促されるも、それに乗る私ではない。というよりは、少し怖いのだ。
「出てきた瞬間、弾幕撃たれそうなので嫌です。せめて、次のスペルカードまで待ってください。あ、右から来てますよ」
不意打ちで攻撃しているはずが、不意打ちで攻撃されることが。
「あら? よっ、と。教えてくれてありがとね」
「いえいえ......。あれ? どうして私、教えたんでしょうか?」
「そんなの聞かれても知らないわよ」
もしかして、昔からフランと一緒に遊んでいる時に傷付いて欲しくないからと、手加減しているのが癖になってきてるのかもしれない。直した方がいいかもしれないけが、根っから染み付いた性格は治せない気もする。
──それに、これからもフランやルナとは遊ぶことになるだろうし、直さない方がいいよね。後で痛い目見るかもしれないけど、その時はその時考えればいいだけだし、
「よっ、と。ふーん、思ったよりも避けるのが簡単ね」
「......それにしても、霊夢、どうして来る場所が分かるのですか? 明らか分かっていて避けてますよね?」
「ただの勘よ」
──いやいや、そんなの有り得な......。
と思うも、霊夢の勘の鋭さは異変を解決する時にも使われているのを思い出す。
──あぁ、私って霊夢と相性悪過ぎ。おそらく霊夢が適当に弾幕撃っても、私に当たる気がする。まさか、私の能力が他の能力じゃなくて、ただの勘に破られる時が来ようとは......まぁ、まだ私の場所はバレてないからいけどさぁ。
「そろそろ終わりでいいんじゃない? もう当たらないわよ?」
「勘で避けているだけなのに......、そうですね。次にいきましょうか」
「あ、そっちに居たのね。で、次もまた召喚魔法かしら?」
「魔物の召喚は終わりですよ。でも、次からは武器の召喚ですね。
神話の武器......を模した力! 見せてあげます! 『雷槌「ミョルニル」』! 」
高らかに宣言すると私は、私を中心に天井まで届く高くて大きな雷柱を作る。そして、ついでに『ミョルニル』を模した槌を召喚した。
『ミョルニル』、北欧神話に登場する神トールの持つ武器だ。武器の能力はお姉様の『グングニル』のみたいに投げたら戻ってくると言う武器だけど、まぁ、武器の能力の方はあまり使わない。お姉様の武器も名前だけで、戻ってくるのは見たこと無いから同じという判定でいいだろう。
それで、このスペルカードは、その武器の神様のトールが雷の神様と言うことで、雷柱を模した弾幕を放つと言うものだ。
「なんだか私の封魔陣を外から見てるみたいね。私のは結界だけど」
「さて......進行しなさい! 全てを破壊しなさい!」
「あんた、やっぱり悪魔ね。とっても悪い顔になってるわよ」
私の言葉とともに、雷柱が四つに別れ、黄色い弾幕をばら撒きながら、十字方向に進行して行く。
「なんだ、そのくらいなら簡単ね」
「あ、普通に避けますか......第二波です! はぁっ!」
「え、また来危なっ!」
「......お姉様って、たまに壊れるよね。ま、こっちには飛ばしてきてないから別にいいけど」
「壊れるの、悪いことなノ?」
「え? んー......悪いことではないのかな? よく分かんないや。でも、周りに迷惑かけたらダメだよ? 分かった?」
「......分かった」
遠くで二人の妹が話すのが耳に入る。中が悪そうには見えずに安心するも、戦闘へと注意を戻す。
第三、第四波まで繰り出すが、全て簡単に避けられてしまった。やはり、お姉様に勝っただけはある。
──まぁ、お姉様は私達姉妹の中でも最弱......いや、んー、心の中としても、お姉様を馬鹿にするのは気が引ける。それに、本当に一番弱いのは私だしね。私の取得なんて、魔法しかないし。
「これでお終い?」
「お終いですね。んー、お姉様みたいにミョルニルを投げればよかったのでしょうか......まぁ、終わったことは別にいいでしょう。
それにしても、もう四枚目ですか......早いですね。『双剣「
この双剣は夫婦剣、互いに引き合うらしいですよ? それっ!」
亀裂模様の入ったナイフを、霊夢の背後からは水波模様の入ったナイフを何本も召喚し、放った。
「挟み撃ち? これなら、さっきのどこから飛んでくるか分からないやつの方が難しいと思うわよ?」
「ただの挟み撃ちなら、スペルカードにはしませんよ。あ、他人のスペルカードは知らないですから。それよりも、二つのナイフがもう当たりますよ?」
私がそう言ったと同時に、多数の種類の違うナイフ同士が引き合い、ぶつかって破裂、円状に弾幕を展開した。
「え? それがどうしたの......なっ!? あ、危なっ!」
すぐ近くで破裂したはずなのに、霊夢には破裂するのが分かっていたかのように、それを軽々と避けた。
「え、気付いてから避けるまでの時間が早くないですか? 貴女は本当に人間なのですか?」
「人間よ。何の変哲もない普通の人間。ただ、巫女をやってるってだけよ」
「速さではなく素早さ、ってやつですか? 普通の人間が空を飛ぶのは......幻想郷なら不思議ではないからいいですけど」
「飛べない人間の方が圧倒的に多いけどね」
それにしても、霊夢ってまだスペルカード一枚しか使ってないよね? やっぱり、切り札使っても負けそうだなぁ。今回は切り札を使うつもりはないけど。
「では、次ですね。普通は正午に使うべきスペルカードですし、吸血鬼が使うのは間違ってる気しかしませんが......『魔剣「ガラディン」』!
太陽よ! 現れ、敵を燃やし尽くしなさい! そしてこの剣に、力を与えなさい!」
次はガラディンを模した魔剣を召喚し、自分の真上に小さめの擬似太陽を作り出す。
小さい理由は、室内だから。力は弱まるけど、まぁ、仕方ないね。
ちなみに、ガラディンは日中に威力が高まる武器なので、昼間は寝ている私にとってはデメリットにしか思えない。フランとルナにこれを教えると、二人揃って『どうしてこんなの作ったの?』と言われた。ロマンと言っても分かってもらえなかった。悲しい。
「あんた、一言一言うるさいわね。別にいいけど。そんなことより、吸血鬼って太陽が苦手だったんじゃなかったっけ? だからあんな霧を出してたんでしょ?」
「これは擬似太陽なので大丈夫ですよ。それよりも、自分の心配をした方がいいですよ? はぁっ!」
私はガラディンを一振りし、斬撃に見せた弾幕を霊夢に飛ばした。
そして、合わせるように擬似太陽からも赤い弾幕とレーザーを交互に飛ばす。
「うわっ、よっ。危ないわね」
「そんな苦もなく避けて言われましてもね......。えいっ!」
「遅いわね。もう少しちゃんと狙った方がいいんじゃない?」
「え、これも避けますか。ちゃんと狙っているはずなのですけどね......」
狙って放った斬撃も、無差別に放たれたレーザーや赤い弾幕に当たるように誘って放った斬撃も、全て躱される。
霊夢はスペルカードをまだ一枚しか使ってないし......仕方ない。
「もう次にいきますね。『神槍「ブリューナク」』! はぁっ!」
「え? どこに向かって投げてるのよ?」
私と霊夢の間くらいの位置の天井に向かって、槍を勢いよく投げる。
「......あぁ、なるほどね。そういうこと......」
すると、その槍から弾幕で作られた雲が広がる。
「さて......貴女は、雷を避けることが出来ますか?」
「? それってどういう、え!? くっ!」
私がそう言ったと同時に、雷のような早さで雲から黄色いレーザーが降り注いだ。霊夢の位置と降った場所が少しズレていたせいで、霊夢には掠っただけとなってしまった。
「まぁ、雷だけじゃ物足りないので、私からもプレゼントですよ!」
「あの雷、速すぎない? って、貴女も撃つのね。上からも前からも注意しないといけないのは、少し大変ね」
このスペルカードでは、雷だけじゃ物足りないと思い私も周りに赤い小弾を放つ。
──それでも雷のレーザーは一つしか撃たないわけじゃないし、レーザーだけでも充分かもしれないんだけどね。どこから降るかは雲が光って見たら分かるから、こうでもしないと難易度上げれないから仕方ないね。
「......くっ、上から来るのが厄介ね......そう言えば、上の雲も弾幕なのよね?」
突然、何かを思い付いたように霊夢が質問する。
「え? そ、そうですよ。それがどうかしましたか?」
「いえ、何でもないわよ。......ただ、それなら消せるって思っただけ。『霊符「夢想封印」』!」
霊夢が上の雲に向かって色とりどりの光弾を放った。そして、霊夢の周りにあった弾幕はかき消され、弾幕で出来た雲も全て消される。
「あ、その手が......って、卑怯じゃないですか!?」
「卑怯じゃないわよ。これもスペルカードなんだし」
「うぅ......これでは、『トライデント』も......あ、スペルカードを削れると考えたら、それでもいいのでしょうか?」
「さぁ、次はどんなスペルカードなのかしら?」
「今のスペルカードの強化版です......うぅ、すぐに消される気しかしませんが、『神槍「トライデント」』!」
そう言って、神話の『トライデント』を模した槍を作り出した。
それを私は天に掲げ、次は自分を中心として、再度弾幕の雲を作り出した。
「次は雷じゃなくて雨です。そして、先ほどは私から弾幕を放っていましたが、今回は私に向かって波のように弾幕が向かってくるようにしています」
「あら、どうして急に解説が始まったの?」
「いや、どうせスペルカードで全部消すだろうと思いまして......」
「あぁ、なるほど。......正解よ。『霊符「夢想封印」』!」
こうして、七枚目のスペルカードはいともたやすく行われた『夢想封印』によって攻略された。普通の弾幕なら消されてもまた作ればいいけれど、この雲型の弾幕はあらかじめ大きな弾幕を作って、そこから少しずつ放つので、もう一度作るとなると結構大変だ。ということで、連発はあまり出来ない。多くても、雲系の弾幕は三回以上使いたくないのだ。
「......霊夢、貴女って容赦ないのですね」
「私は妖怪に対しては容赦しないのよ」
「あ、はい、そうですか......。ではまぁ、気を取り直して、八枚目のスペルカードです! 『神剣「クラウ・ソラス」』!」
そう言って、私は『クラウ・ソラス』を模した剣を作り出した。
──これもいれて後三枚だからいいけど、魔法の補助効果を持つ『ソロモンの指輪』がなかったら、このスペルカードも使えなかっただろうなぁ。まぁ、本来の『ソロモンの指輪』は悪魔の召喚なんだけどね。
「また武器? いい加減飽きてきたんだけど?」
「まぁまぁ、後はこれをいれないで一枚だけですので、我慢して下さい。では、輝きなさい!」
「な──眩しっ!」
私がそう言った瞬間に、剣の刀身は眩しい光を放ち、それと同時に真っ白に輝く光弾とレーザーを放つ。
光のせいで見えにくくなった光弾とレーザーは触れれるほど近くに来ないと分からないだろう。そう言うわけで、このスペルカードはミスティアやルーミアのスペルカードに似ていると言えるかもしれない。弾幕の密度や速さが桁違いな気もするが。
「え、いつの間にこんなに近くに!? あ、危なっ! 仕方ないわ! 『夢符「封魔陣」』!」
霊夢は天井まで届くような高く伸びる結界を展開する。
そして、向かってくる弾幕から身を守った。
「流石に、霊夢でもこのスペルカードは難しいみたいですね」
「見えないんだから仕方ないでしょ? あ、切れかかるの早いわね。......『夢符「封魔陣」』!」
「......まさか、二回連続で使うとは......出し惜しみしないのですね......」
さて、一気に五枚目まで使わせることが出来たけど......後二枚じゃ、負けが決定したのと同じようなことだ。
──だが、最後まで全力でやって、楽しむけどね!
「ではまぁ、ガードされては攻撃出来ないので......九枚目のスペルカードです! 『召喚「悪魔を宿した短剣」』」
スペルカードを宣言したと同時に、赤い宝石がついた短剣を召喚し、私の両隣に魔法陣を展開した。そして、その魔法陣から、影のように真っ黒な、二体の人型が現れた。
「......それ、真っ黒で分かりにくいけど、貴女の姉と妹?」
「はい、そうですよ。正確に言うと、私の姉妹を模して作った魔力の塊、通称影です。では、いきますよ! 霊夢に向かって集中砲火です! はぁっ!」
そう言って、私とフランを模した影は赤い小弾を、お姉様を模した影はナイフ型の弾幕を放った。
「くっ、三方向からの攻撃は少し辛いわねっ」
「んー、もう少しで当たりそうだったのですけどね......」
「残念ね。......後二枚なら、出し惜しみしなくてもいいわよね。『夢符「封魔陣」』!」
先ほどと同じように結界を展開し、身を守った。
結界が発動している時間は短いけど、さっきみたいに二回連続とかされたら全部防がれる......。まだ最後のスペルカードもあるから大丈夫とは思うが。
「今、スペルカードを六枚使ったので、後四枚......いえ、勝つなら残り三枚ですね。今回、使ってもよかったのですか?」
「よかったわよ。後三枚なら、攻略出来るようなものだしね。まぁ、あと一回しか使うつもりないけどね」
「ふーん、そうですか......。あ、結界が切れましたね。はっ!」
結界が切れたと同時に、弾幕を放った。しかし、見切られていたのか簡単に避けられてしまった。
「ちっ、やはり無理ですか......。まぁ、どこから来るか分からない弾幕も避けていましたし、今更ですね」
「よっ、はっ、と。えぇ、そうね。......もう終わりかしら?」
しばらく霊夢が避け続けていた後、お姉様とフランの影が消えてしまった。......影だとしても、お姉様とフランが消えるのは寂しく悲しく思う。
「はい、もう終わりです。さて、最後のスペルカードですね。切り札ではないですが、お姉様とフランのスペルカードを見て作ったもので、お気に入りです。私の二つ名というのは嫌いですが。別に血に塗れてないですし。
『紅魔「ブラッディヴァンパイア」』!」
このスペルカードは、赤い大弾、中弾、小弾に別れている。
大弾は何かに当たると破裂、円状に弾幕をばら撒く。中弾は一度だけ跳ね返る。小弾はただ純粋に速い。
この三つの弾幕をフランの『禁弾「カタディオプトリック」』のように放つ。
「......確かに、レミリアとさっき見たあんたの妹の弾幕と似ているわね。くっ、破裂したり跳ね返ったりややこしいわねっ!」
「ちなみに、弾幕自体はフランのを、名前はお姉様のを真似しています。......それにしても、よく初見で避けれますね。
初めは絶対に当たると思うのですが......掠るだけですんでいる......。本当に人間なのですか?」
「人間よ。ただ、能力を持っているってだけ。まぁ、その能力も今までは使ってなかったけど、ね!」
弾幕が後もう少しで当たると言う時に、霊夢は一瞬のうちに弾幕が少なかった私の近くへと移動した。
「え!? 速い!? い、いえ、瞬間移動!?」
「なんでそんなに驚いているのか分からないけど、隙ありね! このままついでに飛ばされなさい! 『霊符「夢想封印」』!」
「あ、卑怯じゃな──」
あ、これ蝙蝠になるの間に合わないかもしれない。
そう思った時には、すでに『夢想封印』の光弾が目の前にまで来て───
「......あ、あら? 本当に飛んでいっちゃった?」
「ちょっと霊夢! 本当にやり過ぎじゃない!?」
「レミリアお姉様、慌てすぎ。お姉様は簡単にはやられないよ」
「あ、大丈夫ですよ。ギリギリ蝙蝠になって避けましたので」
そう言って、私は霊夢の傍に集まっていたお姉様達の後ろに現れた。
──初めて蝙蝠になったけど......うん、なんか変な感じだね。身体が幾つにも別れるけど、痛くはない。霧になったりしたら、どんな感じなんだろ?
「オネー様! 無事でよかった!」
「あ、ルナ。すいません。抱き締めるのはもう少し待って下さい。......霊夢、私の負けです。本当に人間とは思えないレベルの強さですね」
「そう、ありがとうね。それじゃあ、もう帰るわ。いつの間にか、もう夕暮れになってるみたいだし、疲れたし」
「あ、私も帰るぜ。こんなに楽しかったのは異変以来だったぜ。ありがとな。あ、霊夢ー! 置いていくなよー」
そう言って、帰りの挨拶も無しに霊夢達は帰って行く。本当に疲れているのだろう。そう言う私も魔力の使い過ぎで疲れている。
──けど、なんだか寂しくなる気もするなぁ。でも次はこっちから行けばいっか。帰れとか言われそうだけど。
「じゃあ、私も戻るわ。また夕食の時にでも会いましょう」
「うん! あ、お姉様。私達はまだ遊ぼうね!」
「元気ですね......。いいですけど」
「貴女も大変ね。......それじゃ、戻るわね。......レナ、フラン。貴方達も強くなったのね。ルナ、貴女も強くなれるはずだから、頑張りなさいよ」
「分かった。フランよりも強くなる」
「私よりかは無理だと思うけどー」
「喧嘩しないでよ? じゃあ、またね」
それだけ言うと、お姉様が図書館から出ていった。
──お姉様と最近一緒に居ないから、明日にでも部屋に行ってみようかな。
「ばいばいー......それじゃあ、私達も行こっか。ここでこれ以上遊ぶとパチュリーに怒られるしね」
「はい、そうですね。......では、戻りましょうか」
そう言って、私達はフランの部屋へと向かった────
次回からは5章です。
5章はレナ達の幻想郷での日常と、無意識の娘と地底の話と、『春雪異変』のお話の予定。
なお、次は日曜日に投稿となります()