妹がわがまま。姉も意外とわがまま。
看病する時は、自分も伝染らないようにしよう()
これらが大丈夫な方は、暇な時にでもゆっくり読んでくださいませm(_ _)m
side Remilia Scarlet
──紅魔館(レミリアの部屋)
今朝。部屋に来たレナが突然倒れた。
「むにゅ......」
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
近付いて触れてみると熱だと分かったので、今は私のベッドに寝かしている。
「りゃ、りゃいりょうぶ」
「もう何を言ってるのかさえ分からないんだけど......。
昨日は何とも無かったわよね? 何があったの?」
「昨日、部屋に帰ってから頭がぼーっとして......。朝起きて、今日はお姉様と遊ぶ約束があったから急いでここに来たら、こうなってました」
確か、昨日最後にあったのは食事の時。
あの時は、何とも無かった気がするけど......。もっとしっかり見ていれば良かったわ。
そうすれば、こうはならなかったはずだし。
「ねぇ、どうしてこうなるまで放っておいたのよ」
「だって、おねーしゃまと遊びたかったから......」
「あぁ、なるほどね。それだけのためにここまで放っておいたと。
控えめに言って馬鹿。こうなる前に治す努力をしなさいよ!」
「だ、だってぇ......」
私がそうやって叱ると、レナは今にも泣きそうな顔で私を見つめてきた。
はぁー、そんな顔されると、叱れないじゃない。
私、自分でもたまに思うけど甘い気がするわ。特に妹に。
「はぁー、もういいわ。今日はこれ以上何も言わない。だから、今は治すことに専念しなさいよ」
「はぁい......お姉様。ずっと、私の傍に居て......」
「えぇ、今日は居てあげるわよ」
まぁ、とは言っても、食事やら、汗をかいた時の着替えとか、色々と用意しないとダメね。
あ、咲夜を呼べば解決するわね。咲夜って、とっても便利。
「お姉様......ありがとう、ございます」
「ん、あぁ、お礼なんていいわよ。どうせ、今日は貴女と遊ぶ日だったから」
「......ごめんなさい、お姉様。私から遊ぼう、って言ったのに......」
「気にしないで。貴女のせいじゃないんだから。っていうか、早く寝なさいよ」
「......嫌です。目を離すと、お姉様が何処かに行きそうな気がして......」
あら、珍しく我が儘になってるわね。いや、いつもこんな感じだったかしら?
さて、どうするべきかしら。やっぱり、今日くらい、この娘の我が儘に付き合っても......。
「......まぁ、いいわよ。ただし、今日だけよ」
「おねーしゃまぁ......ありがとう......」
「だからお礼はいいって。それよりも、熱のせいでやばくなってない? 大丈夫?」
「だいりょうぶですっ」
顔が真っ赤になってるし、呂律が回ってないし、大丈夫ではないよね?
っていうか、熱で呂律が回らないって、かなりやばくない?
私、熱になったことないから、よく知らないけど。
「そう、ならいいけど。......あっつ!? え、熱すぎない!?」
「えっ、そうにゃんです?」
「割と真面目に喋らないで寝なさい。本当にやばい気がするから」
「......もっとおねえしゃまとお話したい......」
そんな、上目遣いで言われても......って、何この娘。可愛すぎるんだけど......。
だ、ダメよ。この娘、呂律が回らないくらい衰退してるし、早く寝かせないと。
でも、可愛いし、あの医者に見せればすぐに治るだろうし......。
だ、ダメ! 悪魔の囁きに耳を傾け......あ、私は根っからの悪魔じゃない。
「お、おねえさまぁ?」
「......咲夜」
「はい、ここに」
「今すぐ永遠亭に行って、レナに合う薬を貰ってきて。一応、二人分ね。症状は......」
「説明しなくても大丈夫です。既に把握していますので。
お嬢様方。無理はなさらず。では、数時間ほどお待ちを」
咲夜はそう言って、現れた時と同じように一瞬で消えてしまった。
これで、大事に至る可能性は低くなった。とはいえ、危険なのは変わりない。
後は、この娘が安静にできるように......。
「レナ。横、失礼するわね」
「え? ......えっ!?」
「よっ、と。レナ、静かにしなさい。悪化するわよ?」
そう言いながら、私は寝ているレナの横へと入っていく。
そして、レナの首に手を回し、顔を近づけた。
「え、で、でも、熱が伝染るかも、しれないのに......」
「大丈夫よ。貴女と違って病気には強いしね。それに、こっちの方が安心するでしょう?」
「そう言う問題じゃ......まぁ、確かに安心はしますけど。なんてバカなことを......」
「馬鹿で結構。貴女が安静にできて、早く治るならそれでいいのよ」
「だ、だからといって、他にやり方があるでしょうに......嬉しいけど......」
レナは何かぼそぼそと喋っているが、近いのによく聞き取れない。
熱のせいで、余計にレナの声が小さくなっているせいなのか。それとも、わざと聞こえにくくしてるのかは分からないけど。
「さて、もう喋らないでよ。これ以上話していると本当に酷くなりそうだから」
「......はい、分かりました。......その代わり、なにか、話して。おねえさまぁ......」
この娘......どんどん弱々しくなってきてるわね。一緒に寝るのは逆効果だったかしら?
いや、一緒に寝るだけで悪化するなら、前にも同じようなことがあったわよね。
それが無かったということは......まぁ、もっと安静にさせないとダメね。
「いいわよ。さて、何を話しましょうか。......適当な雑談でもする?」
「うん、お願い。......おねえさまぁ。聞こえにくいから、もっと近付いてもいい?」
「これ以上近付くって、抱きしめ......あぁ、うん。仕方ないわねぇ」
そう言って、妹の背に手を回し、ゆっくりとその体を抱きしめた。
そして、耳元で囁くように──
「これでいい? あ、声に出す必要は無いから。頷くだけでいいわよ」
「うん......いいよ」
「話聞いてた? まぁ、いいけど......」
「......おねえさまぁ?」
そう言葉に詰まっていると、レナが突然、抱きしめるのを止めた。
そして、私の目には、心配そうな顔をして顔を覗き込むレナの顔が映っていた。
「え、あ、大丈夫よ。気にしないで。だから、安心して抱きしめていいのよ?」
「......分かりました」
レナはそう言って、再び手を私の背に回して抱きついた。
目前に見えるレナの顔は、熱のせいか、はたまた恥ずかしいからなのか、真っ赤に染まっていた。
とは言っても、何を話せばいいのか思い付かない......。
レナに何か質問するような話はダメだし、他に何か......そうだわ!
昔話とか独り言を......独り言は変な姉に見られそうね。けど、この娘なら分かってくれるわね。
「そうねぇ......じゃ、
私がそう言うと、レナはこくりと頷いた。
こうやっていると、なんだかこっちが恥ずかしくなってくるわね。
私が姉なんだから、しっかりしないと......。
「私ね。こっちに来て本当に良かった、って思ってるのよ。人間に忘れ去られないからとか、力が元に戻ったからとか、じゃ無くてね。
あっちに居た時よりも、貴方達が、みんなが楽しそうに見えるの。嬉しそうに見えるの。
あっちに居た時は安全では無かったから。いつ襲撃されても、いつ忘れられても、おかしくなかったから......」
「............」
顔が赤くて分かりにくかったが、レナの顔をじっくり見ると、静かに目を閉じて聞いていた。
あらま。疲れきって眠っちゃったかしら?
まぁ、安静にできてるならそれでいいんだけどね。
「ふふっ、可愛い寝顔ね」
「......一応、まだ起きてます......。眠いですけど......」
「あ、ごめんなさい。続きを話すわね」
「あ、その前に......もう一度、さっきの言葉を......」
「え? ......可愛い寝顔ね?」
「......ありがとう、ございます」
無意識なのか、レナの抱きしめている力が少しだけ強くなった気がした。
「それくらい、いつも言ってるのに......。で、話の続きね」
「え、ちょ、ちょっと待って。いつも、言ってくれてるの......?」
「驚き過ぎ。っていうか、喋っちゃダメだって言ってるでしょ?」
「あ、ごめんなさい......」
この娘ったら、本当におしゃべりな娘ねぇ。
それにしても、さっきから口調が昔のに戻ったりしてない?
熱のせい? それとも驚いてたから?
「......まぁ、何だっていいわね。
ここに来てから、危険なんてものは無くなった。いや、異変の時は危険、なのかしら?
まぁ、それ以外は特に危険は無いからね。だから、みんな、安心して暮らせている。
本当に有意義な時間だわ。ここに来てからずっと......」
けど、だからこそ怖いこともある。
もしかすると、いつか、この平和な時間を潰されるのでは、と。
表面上は平和でも、水面下で危険が迫っているかもしれない。こんなこと、
もし、そんなことが起きれば......私が守らないと。この娘達を、みんなを......。
「......何故でしょうか。おねえさまの考えてることが、分かる気がする......」
「え? って、だから喋っちゃダメだって──」
「これだけ。これだけは言わせて......。お姉様は、私が守るから。絶対に......」
そう言うと、本当に無意識かと疑うくらい、私を抱きしめる力が強くなった気がした。
「貴女が? 私を守る? ......本当にできるの?」
「できる、できないじゃなくて、絶対に守ります。何があっても」
「......ふっ、ふふっ!」
「え、そ、そんな......笑わなくても......」
ふと顔を見ると、レナは今にも泣きそうな顔になっていた。
「あ、違うわよ? 面白おかしいから、とかじゃないのよ?」
「だ、だったら、どうして......」
「成長したなぁ、って思ってね。つい嬉しくて。
貴女は守られる子供って思ってたけど......気付いた時には、人を守れるくらいに成長してるものなのねぇ」
「わ、私、子供じゃないもん......」
「ふふっ、その言い方が子供じゃないの。全く、変わった妹だこと」
もしかすると、フラン達もこれくらい成長してるのかしらね。
あの娘も、もう子供じゃないのね......。
「......え? 次は、どうして泣いているのです? な、何か悪いことでも......」
「あぁ、違う違う。これも嬉しいからよ。っていうか、少し元気になったわね」
「お、お姉様が笑ったり泣いたりするから......。もう、疲れて眠くなってきちゃいました」
「あら、それは逆に良かった......ふぁ〜。私もなんだか眠くなってきたわ」
もう、一層の事このまま一緒に寝ちゃおうかしら。
何かあれば、咲夜が起こしてくれるだろうし。帰ってきてからになるけど。
「ふぁ〜......お姉様、一緒に寝よっ?」
「......なんだか貴女、フランに似てきたわね。悪魔らしい、誘惑するようなその顔とか」
「え!? べ、別に、誘惑とかそんな気は......」
「知ってるから慌てなくていいわよ。じゃ、一緒に寝ましょうか。あ、抱きしめる力、強かったら言いなさいよ?」
「......大丈夫。お姉様なら、どれだけ強くても......」
レナがそう言うと、私はできる限り弱く、しっかりとレナの体に手を回し、抱きしめた。
熱で温かい体は、吸血鬼である私には心地よく感じる。
結局、無駄に多く喋らしてる気がするわね。......悪化したら、私のせいよね。
悪化したらちゃんと謝っとこ。
そう考えると、私はレナが目を閉じていることを確認してから、静かに目を閉じた────
この後、長女は伝染りませんでしたが、メイドに厳しく注意されましたとさ()