少しだけ、異変に関係している話が出ていたりもする。
1、「姉妹二人の人里探索」
side Renata Scarlet
──紅魔館(レナータの部屋)
短い春が終わり、ジメジメとした大嫌いな梅雨の真っ最中のとある日。梅雨が明けたと勘違いするほど、暑い日のことだった。
「レナ? どうしたの?」
「暇です」
私は、朝ご飯を食べてすぐに、お姉様を自分の部屋に呼び出した。
「私を部屋に呼び出しといて、開口一番がそれは困るんだけど?
一体どうしたのよ。いつもなら、フランやルナと一緒に遊んでいるでしょ?」
「フランとルナは何処かに行っちゃいました。私を置いて......」
「......レナ、そんな悲しそうな顔をしないの。あの娘達も何か考えとかあるんじゃないかしら?」
「......はい、そうですよね。で、お姉様。たまには、二人だけで何処かに出かけませんか?」
「元の調子に戻るのが早すぎない? まぁ、それは置いておいて、今日は私も用事がないからいいわよ。何処に行きたいの?」
よし! 久しぶりにお姉様とお出かけ出来る〜。
......それにしても、本当にフランとルナは何処に行ったんだろ?
まぁ、あの二人はもう子供じゃないんだし、大丈夫だろうから別にいっか。
それよりも、今日はお姉様とお出かけ〜。楽しみだなぁ〜。
「......あら、そんなに嬉しいの?」
「ふぁっ!? え、え? 声に出てました?」
「いえ、出てないわよ。まぁ、顔には出ていたけどね。それにしても、そんなに驚くなんて、何を考えていたのかしらねぇ?」
お姉様が不敵な笑みで聞いてきた。
やっぱり、お姉様のこういう時の顔ってフランに似ているよね。とても悪い顔にしかみえないや。
「い、いえ、何も悪いことは考えていませんよ? ただ......お姉様と一緒にお出かけするのが嬉しくて」
「......嘘は言っていないみたいね。まぁ、私も嬉しいから、その気持ちは分かるわ。
で、何処に行きたいのかしら? 貴女が行きたい場所なら、何処にだって連れて行ってあげるわよ」
「いえ、お姉様は私が連れて行ってあげます。今日は晴れていますしね。それで、行きたい場所ですけど......人里に行きたいです」
「ふーん、人里に......って、貴女、正気?」
うぅ、お姉様の目を見ると、本当にそう思っていると分かるから辛い......。
確かに、妖怪が人里に行ってはいけないみたいな雰囲気はあるけど......案外行ってる人は多いから、別におかしくはないと思うんだけどなぁ。
「正気です。お姉様、私を何処にだって連れて行ってくれるのですよね?」
「うっ、確かにそう言ったけど、それは貴女が......まぁ、いいわ。本当は嫌だけど......貴女もフランやルナと一緒に行ったことがあるから、私にも行けないはずはないしね」
「それでこそお姉様です!」
「え、ちょっ、うわっ!?」
そう言って不意にお姉様に飛び付くと、予期していなかったお姉様は、私の重みと驚きによって後ろへと倒れてしまった。
「あ、ごめんなさいです......」
「い、いえ、別にいいわよ。ちょっと驚いてしまっただけだから。......よし、それじゃぁ、準備が終わったら行きましょうか。
というわけで、離してくれない?」
「嫌です」
「はぁー、どうして貴女は突然甘えん坊になるのよ......。まぁ、このままでもいいわ。部屋までの抜け道を作ってちょうだい」
「はい......出来ました。それでは、行きましょうか、お姉様」
そう言って、私は抜け道を作り、お出かけのために、準備を始めたのであった──
──人里
「お姉様とお出かけ〜」
「......レナ、傘から出ないようにしなさいよ?」
「はーい」
準備が終わった後、すぐに抜け道で人里まで飛んできた。
いつも通り、私はフード付きの服で日光を防いでいて、お姉様はそれが嫌なのか日傘で日光を防いでいる。
なので、私は無理を言って、お姉様の腕に抱き着き、一緒に入らせてもらっている。
「もぅ、本当に歩きにくいわ......」
「えへへー」
「......はぁー、まぁそれも、貴女が嬉しそうだからいいけど......」
ほんと、お姉様は優しいからとっても大好き。
もうこのまま、ずーっと一緒に居れればいいんだけど......まぁ、フランとルナと一緒に遊ばないと、あの娘達はいじけるだろうし、お姉様もずーっと暇ってわけじゃないからね......。
「それで? 何処のお店に行きたいの?」
「宝飾店でもあればいいのですけど......何があるか詳しくは知りませんし、適当に見て回りましょう」
「まぁ、それもいいかもね。それじゃぁ、行きましょうか」
というわけで、私達は人里の中を見て回ることになった。
「......お姉様は何か欲しい物とかありませんか?」
「そうねぇ......私は、今の生活で充分だから、欲しい物とかは無いわね。今の幸せだけで充分だわ」
「あ、いえ、そう言う意味ではなく......。そうですね......」
「む、お前達は......翼が無いが、吸血鬼のところの姉妹じゃないか?」
「え? 貴女は?」
お姉様と話していると、近くのお店から声が聞こえてきた。
声がした方向を振り返ると、金色のショートボブに金色の瞳を持ち、角のような二本の尖がりを持つ帽子を被った女性が立っていた。
九つの尻尾は無いが、この古代中国の人が着ているような服装からして、この女性は八雲藍だろう。
尻尾が無いのは、ここが人里というのもあり、おそらく人間に化けているからだろう。
「八雲藍。紫様の式神だ。お前達とは、宴会で何度か会っているだろう?」
「え、えぇ、何度か会ってるわね......」
「確かに、何度か見てますね。って、お姉様? どうしてそんな嫌そうな顔になってるのです?」
「あぁ、それはお前が──」
「い、言わないであげて! 精神的には、かなり弱いから......」
「え、あ、あぁ。そういうことなら、言わないでおこう」
精神的に弱い? まぁ、確かにお姉様はメンタル弱いしね。......でも、どうして二人とも、こっちを見ているんだろ?
「それよりも、貴女はどうしてここに居るの?」
「いやなに、主人と橙のための買い物をしていてな」
「ふーん、やっぱり、従者って大変なのね。......それにしても、何その量。主人と橙と貴女。三人にしては、多すぎない?」
「あ、いや、これは......」
「油揚げ。好きなのです?」
そう聞くと、藍は少しだけ顔を赤くした。
いやまぁ、油揚げ好きなのは別に恥ずかしいことじゃないと思うんだけどね。やっぱり、最強の妖怪が主人なんだし、プライドとかあるのかな? 分かんないけど。
「あ、あぁ......まぁな。それで、お前達はどうしてここに? 買い物にしても、お前達には従者が居るだろ?」
「えぇ、いるわよ。ただ、今日は二人でお出かけに来ただけよ」
「ほう、やはり、お前達は面白いのだな。......では、私は帰るのでな、失礼する」
「えぇ、また会いましょう」
「バイバイです」
そう言って、私達は藍と別れ、また人里の探索へと戻った。
「......私達以外にも妖怪っているのね」
「まぁ、人里は買い物とかで皆さん来ますからね。お姉様もこれからは、たまにはここに遊びに行きません?」
「いえ、遠慮しておくわ。貴女やミアと一緒じゃないと、人間に化けれないもの」
「一緒に行きますよ?」
「今日はいないけど、フランやルナも付いてくることになるでしょ? 流石に、四人も傘に入れないわよ」
「傘に入るとは限りませんよ? 私は絶対にお姉様の傍から離れませんけど」
例え、フランやルナに変わって欲しいと言われても、絶対に変わりたくない。
お姉様が大好きだし。フランやルナに渡したくない。
「貴女が離れないと、あの娘達も離れないに決まってるじゃない。
だから、あの娘達がいない時だけしか行けないわよ。貴女とはね」
「むぅ......それなら、仕方ありませんね......」
「ふふ、そんな悲しそうな顔しなくていいわよ。またいつか、絶対に行ってあげるから」
「お姉様......ありがとうございます」
やっぱり......優しいお姉様が一番好きだ。
フラン達は可愛いから、守りたくなるけど......お姉様は優しくて、守られたいと思える。
これからも、お姉様達と一緒に暮らしていければ......。
「あら、霊夢と妖夢じゃない。貴方達も買い物?」
「あら、レミリアとレナじゃない。まぁ、そうね。今日は宴会があるから、その買い物よ」
「私も幽々子様に、宴会の準備を任されまして......」
ふと、気が付くと霊夢と妖夢が一緒に買い物していた。この組み合わせは珍しいけど、まぁ、宴会となれば別だ。
宴会は、みんなが仲良く......って、あれ? 私、宴会での記憶ない気が......いや、行ってないだけなのかな?
でも、お姉様達と一緒に......。
「あれ、レナ? どうしたの?」
「いえ、何でもありませんよ。ただ、宴会での記憶が......」
「......レナ、貴女は絶対に思い出さなくていいから。絶対に、ね?」
「え? あっはい」
お姉様に肩を掴まれ、真っ直ぐな瞳でそう言われた。
そんなに思い出さない方がいいことなのね......。一体何があったんだろ?
「まぁ、確かにあれは思い出さない方がいいわよ。それと、貴方達も来る? 宴会に」
「......いえ、今日はやめておくわ。また今度、誘ってちょうだい」
「そ、分かったわ。じゃぁ、まだ行かないとダメな場所があるから。また今度ね」
「バイバイ。あ、霊夢、私だけ荷物多くない?」
「気のせい気のせい」
そんなこんなで、私達は霊夢と妖夢と別れた。
それにしても、よく知り合いと会うなぁ。今日は何かあったりするのかな?
「宴会......また行きたいですね」
「え、えぇ、そうね。それよりも、今日は折角のお出かけなんだし、ゆっくり見て回りましょう」
「まぁ、そうですね」
「あれ、レミリアお姉様? それに、お姉様も......」
「......今日は何かあるのですか? 知り合い多過ぎます......」
声がした方を振り返ると、そこにはフードが付いた服を着たフランとルナ、それにミアが居た。
「あら、貴方達もここに来ていたのね」
「え、あ、うん、まぁね」
「それで? どうしてここに来ていたの?」
「......どうする? 言っちゃう?」
「まぁ、もう買うものは買ったし、いいと思うよ」
ん......これ、何処かで見たことがある光景のような......。
「多分、もう気付いたかもしれないけど、私達、お姉様とレミリアお姉様にプレゼントする物を買っていたのよね。
だから、お姉様にバレないように、ミアに手伝ってもらいながら、ここまで来たのよ」
「そゆこと。この娘達の面倒はいつもレナに任せっきりだし、私もなんかお返ししないとねー、って思っていたら、タイミングよく会ったから、手伝ったの。ついでに、お姉ちゃんにもプレゼントあるからね」
「ついで、っていうのは失礼ね。......でも、ありがとうね。レナ、良かったわね。貴女のために何処かに行ってたみたいよ」
ほんと......お姉様もそうだけど、この娘達が妹で良かった。涙出そうなくらい嬉しい。
けど、前にもプレゼントは貰ったし、今も現在進行形でその紅いネックレスを付けてるから買わなくても良かったのに......。
優しい娘達に育って本当に......本当に良かった。
「で、プレゼントだけど......特注のティーカップだよ。特注と言っても、霖之助さんところで貰ったやつね」
「へぇー、ティーカップ......ありがとうね」
「霖之助さん......あぁ、香霖堂の」
「そそ。その霖之助さんだよ。適当に作ったアーティファクトをあげたら、喜んで交換してくれたの」
「......ミア、貴女も悪いわね。でもまぁ、ありがとう。嬉しいわ」
「そう言えば、これ......お姉様とお揃いの......。大切に使いますね」
あれだよね? これ、ペアカップってやつでいいんだよね?
というか、絶対そうに決まっているね。
「あ、紅魔館の人達、全員の分あるから」
「......お姉様とお揃いなのは変わりませんし、それでも大丈夫です!」
「......お姉様ェ。まぁ、いいや。お姉様達は何してたの?」
「私達? 私達はただのお出かけよ。どうせなら、貴方達も一緒に付いてくる?」
「うん! そうするね!」
こうして、結局五人で見て回ることになった。
だけど、とてつもなく嬉しいから、それは良しとしよう。そう思った私であった────
次回の本編は金曜日の予定。
水曜には日常編かの。