今回は異変の序章です。レナさんはまだ関わらない模様。
side Renata Scarlet
──紅魔館(レミリアの部屋)
「憂鬱......」
強い雨が降る黒い曇り空を見上げ、自分でも驚くほどの気怠そうな声を出す。
事の発端は今日の朝のことだった。
今日も曇りで良いお出かけ日和だと思い、傘だけ手に持ちお出かけしようと外に出た。すると、突然ポツポツと雨が降り、それと同時に暑い日差しが差し込んでいた。狙ってそうなったとしか思えない天気に嫌気がさした私は、これも運が悪かったせいだ、と館の中へと戻っていった。それからも雨になったり霧が濃くなったりするので、この季節は天気が変わりやすいのだと、一人で勝手に納得して館の中を彷徨っていた。
「咲夜ー。紅茶が欲しいですー......」
そして、お姉様の部屋に向かった私は、部屋でお姉様と咲夜、そして私の三人で小さなお茶会を開いていた。
「元気ないわね。どうしたの?」
「だって天気が雨なのですよ? それなのに元気を出せる方がおかしいですー」
「雨でもいいじゃない。動けなくなるだけよ?」
「それはいいとは思えません。それに、雨の日はとても憂鬱になって、なんだかやる気もなくなるのですよね......。早く晴れにならないかなぁ」
晴れも
前世は人間だった私だ。晴れの日ほど元気になる時はなかった......はずだ。
「あら。それは残念だったわね。少なくとも今日は晴れないわよ」
まるで全てを知っているかのように、先を見据えているかのようにしてお姉様はそう話す。
「お姉様......何か変な物でも食べました?」
「失礼ねっ! 運命を操って少し先の
「たまにしか見ません。ですよね。咲夜」
「はい。確かにあまり見ませんね。しかし、お嬢様は見ても言わないからでしょう。先のことが分かっても、あまり言わない方ですから」
「あら。よく分かってるじゃない」
──あ。今日の咲夜はお姉様の味方なのね。......まぁ、別にいじる気もなかったし、いっかぁ。
「そうなのですか。流石お姉様ですねー」
「なんか適当に言われてる気も......でも、悪い気はしないわね。もっと褒めてもいいのよ?」
「調子に乗っているお姉様は大好きじゃないです......。好きですけど」
「あらそうなの? なら控えるわね」
一度話を切るようにして、お姉様は紅茶を飲んだ。それに釣られ、私も自然と紅茶を口にする。
やはり咲夜の入れた紅茶は美味しい。口当たりも良く柔らかくて滑らかで、温かい香りが漂う。
その香りがいずれ室内に広がり、穏やかな雰囲気を作る。
「ふぁ〜、幸せですぅ......。明日もゆっくりしようかなぁ......」
「ふふっ。たまにはそれもいいと思うわ。咲夜。明日は休みにしなさい。休憩も大切よ」
「しかしお嬢様」
「ダメ。貴女はメイド。私はこの館の主。命令は絶対よ。分かった?」
「......仕方ありませんね。分かりました。明日は休みます」
お姉様は妖気を垂れ流し、ほぼ無理矢理に命令をされた咲夜は渋々了承した。
──流石にそこまでして命令することも無かった気がするけど......。お姉様は不器用だから、仕方ないね。でも、これ以上やり過ぎたら私が止めないと......。
「あらレナ。何か心配事でもあるのかしら?」
「え? い、いえ、ないですよ? それよりも、結局今日が晴れない理由とは?」
「あぁ、それなら......いつか分かるから今聞かなくてもいいわよ」
「え、えぇ〜!? 教えてくださいよ〜」
「ダーメ。今日と明日はゆっくりするんでしょ? なら貴女は聞かない方がいいわ。というよりも、しばらくは外に出ない方がいいわよ。ずっと雨だから」
「むぅー......どうしてか教えてくださいよー」
それからも話は逸らされるが、異変に関わらなかった私は平穏な日を暮らせることになる。これから起きることも知らずに────
side Hakurei Reimu
──博麗神社
先の異変で山に立ち入ってから一年近く経とうとしていた。
私の神社の危機も免れ、何事もなくいつも通りの暑い夏が訪れている。
だが、私はあまりにも暑い日照り続きという異常気象に悩まされていた。
しかし、それだけではなかった。
神社が晴れで周りを見やすいのも幸いして、空を飛ぶと幻想郷中の天気を見ることができた。
森では雨が降り続け、湖は常に深い霧に覆われ、夏だと言うのに降る雪。
さらには、稀にいくつかの天気が混ざったかのような、異常気象に陥る場所もあった。
いや、もはやこれは異常気象ではなく、立派な異変にしか見えなかった。
そして、異変を解決するために外へと出かけようとした私に、ある悲劇が起きる。
「......ん。揺れ、たぁっ!?」
突如として、大きく地面が揺れた。
物が激しく音を立てて床に落ち、天井を支える柱に深い傷ができる。
「っ.....!?」
危険を感じ、とっさに外へと出ると同時に、背後で大きな音が響く。
それからしばらく、地面の揺れに耐えることで必死になる。
「お、収まった......? なっ、はぁ......!?」
揺れが収まると、音の正体を探すべく、背後へと振り返った。
そこにあった物は、いつも私が暮らしていた
「......はぁー。最悪。異変に出ようとしたらこうなるなんて......。運が悪いにも程があるわ」
誰に言うわけでもなく、自分の運の悪さを嘆く。
──これからどうやって暮らしていけばいいのよ。早苗のとこにでも......いえ、それはダメね。博麗神社の巫女としての威厳がなくなる。
祭神が分からない時点であるかも疑わしいけど......。
「......やっぱり、見事に壊れているわね。これは掃除でどうこうできる話じゃないわねぇ」
「いやぁ、大変だ。ここのところ雨続きでろくに洗濯もできや......な、なんだこれ!?」
いつもみたいに、魔理沙が神社へと飛んでくる。
そして見えたこの有様に、驚いた様子を見せ、言葉を漏らす。
「なんだこれって、壊れても神社よ。あんたは大丈夫だったの? 大きな地震が起きたけど」
「地震? それは気が付かなかったぜ」
と、会話しているとポツポツと雨が降ってくる。
最近は日照り続きだったからか、雲を見るのも久しぶりだ。
「ああもう、天気まで悪くなるなんて」
「仕様が無いな。ここのところ雨続きだったし」
「雨続き? 最近は日照り続きじゃなかった? あ、でも森は雨続きだったかしら?
でも、地震は滅茶苦茶大きかったのよ? 気付かないわけがないわ」
「と言われてもなぁ」
本当に知らないのか、不思議そうに顔をしかめる。
──魔理沙は知らない......。ということは、やっぱり森は雨続きで、ここだけ日照り続きだった、ってことかしら? いよいよもって本格的な異変ね。
「......やっぱり異変ね。これは」
「奇遇だな。私もそう思っていたところだ」
「それに雲の色も......」
ふと見上げて気が付いたが、雲の色が普通とは少し違う。
やはり、これは普通の異常気象ではなく、意図的に起こされた異変ということに......。
「もし地震も異変が関係しているなら......とっ捕まえて直させないと」
「おっ、行くのか? それなら私も行くぜ」
「いいわ。魔理沙は神社を直してて。異変は私が解決する」
「異変の犯人に直させるんじゃないのか......」
「それじゃ、留守番よろしく」
魔理沙にそう言い残すと、自分の勘を頼りに空へと飛び立つ。
「直せばいいのか、留守番すればいいのかどっちなんだ。......まぁ、少しくらい片付けてやるか」
神社を魔理沙に任せ、私は異変解決へと乗りだした────
side Mia Scarlet
──地底(???)
ここへ来ることを運命付られているかのように、私はまた地底へと降り立つ。
「どこに居るんだろう。見つけて問いただしてそれからは......」
レナに竹林での話を聞いた後、もしやと思い調べてみた。すると想像通り、あれと全く同じ特徴を持っていた。これは幻想郷では不思議ではないかもしれないが、普通だと有り得ないことだ。
あれはレナからの記憶では、本来存在するはずのないモノだ。どの原作にも出てこらず、どの人とも関係は持っていないはずだ。もしかしたら、私がいるから実はレナの記憶とは違う世界、平行世界なのかもしれないし、レナが居るからバタフライエフェクトなるものによって歴史が変わったのかもしれない。
どちらにせよ、それはお姉ちゃん達に危害を加える可能性がある。その前に、誰にも気付かれることなく、誰にも心配させることなく終わらせたい。
そう思い、あいつと会うためにここへ来た。生きているのかも分からないが、もしも生きているならば、あいつが原因の可能性が高い。レナと同じ、あいつの......。
「それにしても人が少ないね。というか、鬼が少ない......のかな」
疑問を口に出すも、答えてくれる人がいないことは分かっている。
ただ、気を紛らすために呟いているだけだ。
もしもあいつが生きているとすれば、その兄弟も生きているかもしれない。
それだけが気がかりだ。私は会ったことはないが、レナに似ているこの容姿ならば、憶えているかもしれない。
──父を殺したあいつらと会うのは吐き気がするから、どうにかして会わないように、あいつと会って......あぁ、ダメだ。あいつもその兄弟なんだ。
「......レナだけでも呼べば......ううん。あの娘も今は同じ姉妹なんだし、危険には巻き込めない。巻き込ませない。記憶も有り難く使わせてもらってるし、たまにはお礼を言わないと......っと、あれだね」
旧都を進んで行くと、魔力の気配を感じた。それを追って先に進むと、尾が蛇の狼らしき何かがいた。普通の狼でなければ、妖怪でもないだろう。あの禍々しいほどの魔力は。
──レナに聞いたモノではないけど、あれもまた同じやつね。流石に全部は召喚できてないだろうし、早く消さないと。運良く周りには誰もいないみたいだし。
「さぁ、いい子にしててね。貴方はここに居てはいけないの。でも、貴方ってあれの中で一番強靭なんでしょ? なら、有耶無耶な存在い襲われても仕方ないよね」
誰に聞こえるわけでもないのにそう言い放つ。
ゆっくりと近付き、そして、首を狙い──
「......ぁ、あれ、目が......最悪......」
あと一歩というところで視界が霞む。
──もしかして罠? なら、早く逃げないと......。あぁ、ダメ。頭の中に何かが入ってくるような感覚。どうして? 誰にも見えないはずなのに......!
「......やはり、ですよね。来ますよね。僕は貴女を知らないですが、私のことなら知っていますよ。貴女も同じなのです?」
聞き慣れない声が背後で聞こえる。
しかし、振り返ることもできずに、私の視界が暗転した────
交わることのない二つの異変。それは、ほぼ同時期に起きていた。