月が世界を照らすこの春先、俺は彼女に出会ったんだ。
凛々しい顔立ち、美しく風に靡く金色のツインテール。
紅く光る、鋭くも優しい眼差し。
これは、聖杯を巡る運命の物語。
「まだ着かないのかよ」
8月1日俺は、電車に乗って神宮市に今帰っている途中だ。
と言っても俺の記憶には街並みや、風景などは一切残っていない。
何故かって?
生まれは確かに神巫島だが育ちは下関市だからな。
無理もないだろ。
「着く訳ないでしょ、なんってたって神宮市は本州から離れた場所にある人工島なんだから」
と緑髪のサイドポニーがよくお似合いの幼馴染、宮音 秋葉が言った。
「離れてるつっても、電車で行ける距離にあるんじゃ世話無いよな」
「そうゆうこと言わない・・あ、島が見えてきたわよ」
秋葉の声に俺はふと、顔を上げる。
そこには、ここからでも解る程、多くのビルが建ち並ぶ島。
島の中央にそびえ立つ大きな山が象徴だと言わんばかりにとてつもない大きさを誇る。
人工島とはいえ、冬木市の大災害後に国がかなりのお金を使い造った島らしい。とは言え冬木市はだいぶ前にもう完全に復興は終わったので、元冬木市の市民は余り居ないらしい。
「・・ろ君・・白君・・
「うるさ!他の乗客に迷惑だろ!考えろよ!」
「何よ!白が私の話を無視するからでしょ!」
「だからって、人の名前をフルネームで叫ぶ事無いだろ」
はぁ、一つため息をつき俺は再び窓の外に顔を向け瞼を閉じた。
その直後「もういいわよ、白の馬鹿」と、秋葉が呟いたのが聞こえたのを最後に俺の意識は深い闇の中へと、誘われた。
酷く辛い夢を見た。
荒れ狂う街並み、もはや元はここが街だったと言うのが嘘のように思えるほど、狂っていた。
そんな、壊れた世界の中でただ一人、黒いコートに身を包んだ、男性が何かを探すよう、はたまた何かに怯える様に歩いていた。
嫌、その様に見えただけなのかも知れない。
しかし、男は何かを見つけたのか瓦礫の山を漁り探し出す。
何かも解らぬ『それ』を見つけた時、男は救われた様な顔をしていた。
眼が覚めると丁度、電車は神巫島に着いたらしく、他の乗客員はもう降りようとしていた。
わがままお嬢様の秋葉様はまだ、お寝んねの途中の様でぐっすり寝ていらっしゃる。
(黙っていたら、相当カワイイのに勿体無いな、)
とか何とか思いながら、秋葉をおんぶして荷物を手に掛けて電車を降りる。
神巫島にようやく上陸し、寝ている秋葉を起こさぬように今日から、住む事になるマンションへと足を運ぶ。
もう契約や部屋の鍵などは貰っているので後はマンションまでただ歩くだけである。
島は思ったより、田舎な部分もあり田んぼや牧場などもあった。
10分程歩き、ようやく目的の地へと着いた。
その時、
「・・・ん、んー、ん!」
ようやく、お嬢様が起きられたようで、
「ななな、なぃ、何してんのよ!?」
「人の背中で暴れんな!今下ろすから!」
秋葉を下ろし、俺は秋葉へと振り向く。
「あ、あんた変な事して無いでしょうね!」
「何だよ変な事って、て言うかお前、ここまで連れて来てやった俺にもっと感謝の気持ちや言葉とかは無いのか!?」
「無いわよ、この変態!」
「お前は一体何が言いたいんだよ?だから、なんもしてねーよ!」
「本当に?」
「本当だ」
それから暫くの沈黙が続き、部屋に行くまでの間、言葉は交わされなかった。
部屋は別々なのでそれぞれ別の部屋に入った。
秋葉が308号室、俺は309号室だ。
新しい我が家に来た所で、特にすることが無い。
比較的にテレビは見ない方なので、いらなかったし。
ベットは元々付いてるし、そもそも要るものは引越し業者の人に運んでもらい、既に設置もしてくれている親切な世界だ。
ともあれする事もないので、歩いて来た道を真っ直ぐ戻り、都会って感じの場所まで来た。
本屋に寄って何冊かのライトノベル、いわゆるヲタクが見る様な本を何冊か買い漁る。
数時間が立ち、大量のラノベと共に帰宅しようと思い、帰る時海沿いを通って帰っていた。
「にしても、寒いな」
今は春だが思ったより、寒い日が続く。
(早く帰って、エアコン付けてあったまろう)
そう思いながら、マフラーに顔を半分埋めながら、海岸に沿って歩いていると、
(こんな真夜中に小さい子が1人でどうしたんだろう?)
月夜に1人照らされ防波堤に座って只々月を眺めている少女がいた。
髪は銀色の長髪で目は紅眼のとても美形の少女だ。
(とりあえず、無視して帰ろう)
そう思い、通り過ぎようとする瞬間。
何かが俺の周りを、囲んでいた。
「貴方は聖杯を望みし者?」
彼女は月から目を離さずに俺に対して質問をして来た。
それと共に、彼女と会ってから・・否、彼女を見てから右手がやけに熱くなるのを感じる。
「聖杯?それって一体何なんだ?」
ここは落ち着いて話し合う、多分だが周りを囲んだ奴らは彼女に関係がある者達だと推測したからだ。
だから、下手に打って出るよりは、まずは、会話をして何か助かる方法を見つける事が大切だ。
「聖杯は聖杯、本当に知らない?」
「あぁ、本当に知らないんだ」
「そう、ならーー
その少女から考えられない程、冷淡に残酷な恐ろしいぐらいに冷たい一言が放たれた。
ーー貴方は要らない」
その一言、たった一言に俺は恐怖し彼女と距離を取る。
本能が危険を察知し距離をとったのだ。
「貴方は、知らなくていいことを知ってしまった、私を見て話してしまった、だから貴方には今ここで死んでもらう」
「ふざけんな!!いきなり話しかけて来たのはお前だろ!?」
少女に対して大人げも無く怒鳴り散らす、だがそれは仕方ない事なのだ。他人の目からしたら大人気ない様に映るだろう。
しかし、それは断じて違うのだ。
実際はもっと惨めで哀しいもだ。
命が惜しいものが、弱者が強者に殺られる時に発する文句。
負け犬の遠吠え、それに近い何かだ。
「そう?ごめんなさい」
彼女はようやく月から目を離し俺の方を見た。
彼女の目には光が灯っておらず、本当に人を殺しそうな目をしていた。
「でも、死んでもらう」
少女の意見は変わらない、そう変わるはずもなかった。
なら俺が取る行動は唯一つ。
(逃げるしか無い!!)
そう決断し、森の方に、海の反対側に振り向き恐怖に耐えるように目を瞑り歯を食いしばって男達の間を走り抜ける。
振り返った瞬間見てしまったのだ、周りを囲んだ奴らの顔は魚だった。何を言っているのか自分でも解らない。
だか本当の本当に身体は人で顔は魚だったのだ。
その時、後ろから、
ピチャ、ピチャ
そんな不快な音と共に何かが迫ってくる。
嫌、だいたいの予想はついている。
おそらくは、あの魚人だろ。
(追いつかれたら、殺される!)
本当に殺されるかは解らない、しかし、本能が叫ぶ。
危険だと、
死のサイレンが聞こえてくるように。
ーーどの位走ったか、森を抜けられないまま俺はまだ走り続ける。
奴らはまだ俺の命を追い追ってくる。
「ハァ、ハァ 、なんで俺がこんな事に巻き込まれないといけないんだよ!!」
これはきっとあの少女に向けられた言葉ではない、理不尽な死の宣告と、『それ』に対する恐怖から来たんだと思う。
そんな事をふと思った時、
ドサッ!!
大きな、木の根に足元を取られ転倒した。
それと同時に開けた場所に出たが所詮森の中、人なんかひとりもいない。
居るとしたらそれは、俺を追ってくる魚人達だけだ。
人が転けたのを良いことに魚人達は俺を囲む。
そいつ等の手には黒光する鋭い槍。
明確な殺意を持って一匹の魚人は槍を振り上げる。
「俺は、まだ死にたくないんだ、だから待ってくれ!」
「・・・」
ギョロッとした目はこちらをただただ見つめるだけで助けようという気は無いらしい。
(死にたくない!まだ生きたい!)
鼓動が早くなる、冷や汗が身体を覆う、右手が火傷しそうなくらい熱い、そして痛い、そんな中、俺は誰も居ないはずの森の中で叫ぶ。
「誰か俺を助けてくれぇぇぇぇ!!」
その時、奇跡は起きた、くらくて気づかなかったが俺の足元に書かれた魔法陣が赤く紅く光り出す。
その瞬間、
バシュゥ!
魚人が何者かに次々となぎ倒されてゆく、反撃をしようとしたのも無意味な位に実力が違った。
魚人達を一瞬でなぎ倒した人物はこちらを振り返る。
月明かりに照らされて姿がハッキリとする、
凛々しい顔立ち、美しく風に靡く金色のツインテールはまるで太陽のようで、紅く光る鋭くも優しい眼差し。
身体には不釣り合いな鎧を纏い、手には装飾が施された槍と盾。
(助けてくれたのか?)
口から言葉は出なかったが、そんな疑問を持ってしまうのも無理はない。
「質問です、あなたは私のマスターですか?」
彼女はますっぐこちらを見て言う。
(マスター?よく意味がわからない、聖杯とかマスターとか、俺は一体何に巻き込まれたんだよ!?)
皆さま、初めましての人は初めまして、知ってる人はお久しぶりです!
最近、働いてなかったので頑張らせていただきました!
と言うわけで、温かい目で見守って下さい!
よろしくお願いします!