小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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ダビデの幕間の物語良かったですね。
思わず書いてしまいました。

注・このエピソードにはダビデさんの幕間の物語と終局特異点のネタバレが含まれています。
それでもイイゾイイゾな方はご覧ください。


イスラエルの王

 あれは確か、第六特異点を修復して間もないころだったと思う。

 アーチャーのサーヴァント、イスラエル王ダビデが突如「気になることがある」と言い出し、修復の完了した第六特異点にレイシフトすることになった。

 

 ダビデさんはいつもの調子だった。

 「神殿を建てる」などと言って俺たちを惑わしていた。

 この人はいつもこの調子だ。

 

 同行した俺とマシュとぐだ子はダビデさんの困った人ぶりに頭を悩ませながら彼の話を聞いていた。

 神殿の話が終わるとダビデさんは突然、マシュの顔を凝視し始めた。

 マシュが「あの……?」と困惑していると

 

「もしかして、と思ったけど確信に変わったよ。きみはアビシャグ、そう、アビシャグじゃないか!」

 

 この人はまた訳の分からないことを。

 注釈するとアビシャグとは老年の頃のダビデさんが連れていた美少女のことらしい。

 

「髪型とか体型とかぜんぜん違うけど、それはそれだ。どこからどう見てもアビシャグだ!」 

「ダビデさーん、そろそろ怒りますよ?」

 

 マシュが困っているので俺は割って入った。

 

「む?彼女はぐだ男の佳い人か。悲しいな……ではアビシャグではないのか……

アビシャグだと思ったんだけどな」

 

 この人は天然なのか計算なのかどっちなのだろうか……

 残念そうにしていたのも束の間。

 ダビデさんは今度はぐだ子の顔を凝視していた。

 

「もしかして、と思ったけど確信に変わったよ。きみはアビシャグ、そう、アビシャグじゃないか!」

 

 ぐだ子は心底から呆れかえった顔でダビデさんを見返していた。

 

「髪型とか体型とかぜんぜん違うけど、それはそれだ。どこからどう見てもアビシャグだ!」

「ダビデさーん。記憶喪失ですか?彼女はマスターのぐだ子ですよ」

「ううん。見た目は全然似てないけど、間違いない。アビシャグだ」

 

 ぐだ子は心底から深くため息をついた。

 

「ダビデさーん。私たち召喚のとき一緒でしたよね?おじいちゃん、ボケちゃったのかな?」

「む……確かに君とは契約のつながりを感じるな。悲しいな……ではアビシャグではないのか……

アビシャグだと思ったんだけどな」

 

 ……ひょっとして、アビシャグは固有名詞ではなく何らかの一般的な単語なのだろうか?

 

「ダビデ王。用もないのに現界したのなら帰還してもらえるかな。このレイシフト一回で職員の日給が消えるんですからね」

 

 回線の向こうからドクター・ロマンが話しかけてきた。

 遠い昔に思えるがドクターはまだこの頃カルデアの一員だった。

 

 ドクターの突っ込みにダビデさんはいつものように意味深な微笑を浮かべた。

 

「いや、用はあるとも。ドクターくん。では行こうか」

 

 ダビデさんはレイシフトの目的を巨人ゴリアテだと言っていた。

 実際出てきたのはでっかいスプリガンとでっかい幽霊とでっかい猪だった。

 

「おや?巨人かな?」

「どう見ても巨人ですよ?」

「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。

巨人に見えるけど、もし違っていたら?非効率的だと思わないかい?」

 

 その場にいたダビデさん以外の三人、そして回線の向こうにいるドクターはその時間違いなく同じことを考えていた。

 「……こいつ、めんどくせえ」と。

 

「ぐだ男くん、ぐだ子ちゃん。そのおっさんの言うことは聞かなくていいぞ」

「おっさんとは失礼だな。お兄さん、もしくはおじいさんと呼んでくれたまえ」

「はいはい。お兄さん。言動にもう少し若者らしさを持ってくださいね」

「いいとも。ドクターくん」

 

 回線の向こうのドクターのツッコミはダビデさんの面倒くさい言動で軽くいなされた。

 

「うーん。そうだ。ぐだ男、ぐだ子。あれが巨人か巨人でないか議論して決めないかい?」

 

 隣のぐだ子が「ハァ……」と深くため息をつき……等身が縮んでリヨ形態に変化し始めた。

 

「ダビデさん。

……そろそろ殴るぞ。グーで」

 

 彼女の静かな狂気にダビデさんは一気に顔面が蒼白になった。

 

「あ、ごめんなさい」

 

 ダビデさんはこんなのだが最高ランクの英霊だ。

 レアリティは星3だが……いや、何でもない。とにかく強い。

 

 ダビデさんが宝具にまで昇華させた投石は一撃で巨大エネミーを沈めた。

 

「なんだか今回はいつもより疲れた気がする。主にダビデ王のせいで」

 

 俺たちがレイシフトから帰還する旨をドクターに伝えるとドクターは回線の向こうでぼやいた。

 きっといつもの困り顔をしているのだろう。

 

「そうだね。疲れたねえ。では、神殿の建造はまたにして帰還するとしよう。今回は僕のかっこいいところを見せるのが目的だったからね」

 

 ダビデさんそう言ってはいつもの涼やかな笑みを浮かべていた。

 

 こうしていつもの微小な特異点の修復は終わった。

 ダビデさんの最後の発言が少し引っかかったが、ダビデさんのことだし特に意味は無いのだろうとその時は思っていた。

 

×××××××××××××

 

 あれは度々ある微小特異点修復の一つだった。

 ダビデさんはいつもの調子で、ドクターもいつもの調子だった。

 でも、今改めて思い出すとこれは大事な一時だった。

 必死に思い出してみたがドクター・ロマンとダビデさんがまともに会話したの見たのはこの時だけだった気がする。

 

 ソロモンの宮殿での戦いが終わった後もダビデさんは残ってくれた。

 

 「僕は君たちに『もういい』と言われるまではいるつもりだよ。僕は君たちのサーヴァントだからね」

 

 ダビデさんはそう言ってくれた。これだからこの人のことは嫌いになれない。

 

 今日は非戦闘時にはいつもやっているサーヴァントとの面談だ。

 今日はダビデさんの番だった。

 マシュはダ・ヴィンチちゃんのお使いで手が空かず、俺とぐだ子だけで面談した。

 

 俺たちは思い切って「ロマニの正体に気づいていたのか」を改めて問いただしてみた。

 ダビデさんは以前、同じことをマシュに問われて「僕はぜんぜん気づいていなかった」と言っていたがどうにもそれが本当だと思えなかった。

 

「君たちの執念も中々だね。そんなに僕のことが気になるのかい?」

「気になりますよ。だって俺たちはダビデさんのマスターですから」

「うん、そうかい。嬉しいな、ぐだ男、アビシャグ」

「ダビデさーん。私、アビシャグじゃないですよ」

 

 ダビデさんの爽やかな笑顔が少しだけ真剣さを帯びたように感じた。

 

「そうだね。そこまで言われては仕方ない。でも、今から言うことは聞いたらすぐに忘れてくれ。

――僕はね」

 

 イスラエルの王、ソロモンの父、ダビデ王は言った。

 

「息子にかっこいいところを見せたかったんだよ」

 

 ダビデさんはいつもの胡散臭い爽やかな笑顔に戻っていた。

 

 この人は……

 だから憎めないんだ。

 

 聞いてしまったものは忘れられないけど、誰にも言わないでおこう。

 俺たちはそう誓ったのだった。




ダビデさんの幕間の物語良かったですね。
こういう原作再構成は好きじゃないんですが、思わず書いてしまいました。
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