小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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もはや『小説でわかる幕間の物語』というタイトルが完全にタイトル詐欺なこのシリーズですが、今回は珍しく本当に絆クエストのシナリオが元ネタです。
持ってる方はご存知と思いますが、モーさんの幕間の物語のタイトルそのまま。
その改変バージョンです。
アポクリファのアニメが佳境なのでこのチョイスにしてみました。



キング・オブ・キングス

「おう、ぐだ男、ぐだ子。暇か?

暇ならちょいと付き合ってくれ。忙しかったら、その用事をキャンセルしてくれ」

 

大分前のことだ。

 その日。いつもの3人、俺とマシュとぐだ子がマイルームで無駄話をしていると、乱暴な感じで訪問者があった。

 円卓の騎士の1人、モーさんことモードレッドだった。

 ロンディニウムの特異点で縁を結んだ彼女は、その後まもなく召喚に応じてくれた。

 まだこの頃は人理償却の阻止どころか最後の特異点すら特定できていないような状態だったがすでにモーさんは古参の部類だった。

 

 モーさんとは良好な関係を築くことが出来ていた。

 俺はモーさんの訪問の理由を俺にとって不都合な事実がバレたことだと早とちりし、「俺とモーさんの仲だし、許してくれるだろう」と意を決して正直に告白することにした。

 

「……ひょっとしてモーさんが食べかけで放置したス●ッカーズを『モーさんの唾液おいしいなぁ……』ってちゅぱちゅぱしながら食べたこと……怒ってる?」

 

 隣のぐだ子にゴミでも見るような目で睨まれた。

 マシュの視線も冷たい。

 

 そして、当のモーさんは

 

「……おい。その話、詳しく聞かせろ」

 

 額の筋肉をピクピクさせていた。

 俺は墓穴掘った事に気づいた。

 

 こういう時に動揺を見せると逆効果だ。

 俺は慌てず騒がず、動ずることなく言った。

 

「モーさんが俺の目の前で食べかけを放置したからネタ振りだと思った。正直スマン。

……痛い!痛い!モーさん、グーは止めて!グーは止めて!普通に痛い!普通に痛いよ!」

 

 

 俺がしこたまモーさんにグーで殴られ、マシュが宥めてようやく事態が収まるとモーさんは訪問の理由を話し始めた。

 なんでもロンドンで微小特異点が発生したのを感じたとの事だった。

 モーさんは「オレはロンディニウムで召喚されたせいか、異変があると頭にビビっと来る」のだそうだ。

 モーさんは高ランクの直感を持っている。

 俺たちはその直感を信じることにした。

 

「あ、そうだ。モーさん、見て見て!」

 

 実務的な話を終えるとぐだ子が引き出しから何かを取り出した。

 ぐだ子はその何かを持ってモーさんに駆け寄った。

 彼女の手からはドロドロに変化した名状しがたいナニカが出てきた。

 

「……バレンタインにモーさんからもらった食べかけのブラッ●サンダー、大事にとっておいたんだ。

これからもずっと大事にするからね……」

 

 モーさんは当然の反応をした。

 

「止めろ!そんなもん取っておくんじゃねえ!さっさと捨てろ!」

 

××××××××××××

 

「まったく!バカマスターめ!オレがついてないとどうしようもないじゃないか。まったく!まったく!」

 

 モーさんといつもの調子でレイシフト先に行き、すぐにロンドンで何かが起こっていることが明らかになった。

 彼女の直感は正しかった。

 敵は大したものではなく、モーさんは最強クラスのサーヴァントだ。

 事態はあっさり解決した。

 

 マシュの考察によると特異点の元凶は「王であるという自我によって彷徨っていた亡霊」らしい。

 

 モーさんは王に反逆して最期をとげた英霊だ。きっと思うところはあったのだろう。

 亡霊のシャドウサーヴァンをあっさり一蹴し、彼女は屈託なく笑っていたが「じゃあ帰ろうぜ」と言って俺に背を向けたとき、モーさんの横顔には微かな陰が差していたように感じた。

 

×××××××××××××

 

 その翌日。

 誰かが俺の部屋をノックした。

 部屋を訪ねてくるのはマシュかぐだ子のどちらかだ。

 ぐだ子はたった今、俺の横でコーラを飲みながら一緒に無駄話しているところなので俺はインターホン越しに「マシュ?」と訪問者に問いかけた。

 

「違ぇよ、バカ。オレだ、オレ」

「カタカナ表記で一人称がオレ?……中二病から目覚めたエミヤ?」

「違ぇよ!お前にはオレの声はあんなに野太く聞こえるのか!?似ても似つかねえだろ!」

 

 彼女は乱暴だが素直な性格だ。

 からかっても普通に乗ってくれる。

 隣で静観していたぐだ子は俺たちのやり取りを聞いて調子に乗ったらしく、続けた。

 

「え……?じゃあ、意表をついてジークフリート?」

「お前らわかってやってるだろ!?オレだよ!いいから開けろ!」

 

 少しからかい過ぎたか。

 俺がドアを開けるとやっぱり訪問者はモーさんだった。

 

「悪ィ。ちっと勝手に喋るから。そっちは適当に答えてくれ」

 

 いつもの通り彼女は乱暴に訪問してきて乱暴に話し始めた。

 

 内容は彼女の昔話だった。

 

 円卓の騎士、アーサー王の不義の息子、モードレッドはアーサー王を元に生み出されたホムンクルスだ。

 その出自からモーさんは自身が王に相応しいと思っていたが、いざその問いを投げかけるとアーサー王は「貴公には。王としての器が無い」と否定した。

 モーさんはその呪われた出自からアーサー王が自分を憎んでそんな回答をしたのだと思い、死後、英霊になってからも王になることを諦めなかった。

 だが色々あって(詳しく知らないけど、別の聖杯戦争で何かあったんだろう)それを諦めた。

 

 そこまで一気に話し終えると、モーさんは一度、深く息をついた。

 そして、いつもと違う、らしくない沈痛な面持ちになった。

 

「王になるやつの動機は色々だ。権力欲に駆られる奴もいるし物欲に駆られる奴もいる。……でも、アーサー王は多くの人が笑うため、その身命を捧げた。オレは、どんな王よりも騎士王の志を尊いと思うし、正しいと思う。

……だから、魔術王なんて名乗るような連中に負けやしねえ。絶対にだ」

 

 前々から思っていたことだが、モーさんは――円卓の騎士モードレッドは時として悪として語られるが、俺はモーさんのことを「悪」だと思ったことは一度もない。

 乱暴だし粗野だし、強引だけど行動を共にするたび、やっぱり正しく英雄なんだなと思う。 

 

 ひとしきり話終わったモーさんは俺をしっかり見据えていた。

 彼女の目には確かな英雄の意志が宿っていた。

 

 しばらくそうして見合っていたが、モーさんは真っ赤になって後ろを向いて最後に付け加えた。

 

「ああ、クソ!勢いで恥ずかしいこと口走っちまった!オレがこんな話してたなんて、絶対に触れ回るなよ!特に他の円卓の奴らの前では絶対に言うなよ!」

 

 モーさんは「反逆の騎士」なんていう物騒な称号と裏腹に素直な性格だ。

 それでもここまで自分の裡にあったものを吐き出してくれるなんて、それこそ信頼がなければ無理な話だろう。

 俺はそれが嬉しかった。

 

「モーさん」

 

 なので、部屋を出ていこうとする彼女を呼び止めた。

 

「じゃあ俺も勝手にしゃべるから。興味がないなら聞き流してくれていいよ」

 

 モーさんはドアの前で後ろを向いたまま立ち止まった。

 

「大分前に聞いたんだけど、アルトリア(アーサー王)は選定のやり直しを願ってたそうだよ」

 

 後姿の彼女の頭がピクリと動いた。

 素直な性格のモーさんだし、穏やかではいられないんだろう。

 

「色々あって、結局アルトリアは選定のやり直しを願うのは間違いだったって悟ったらしいんだけどね。

それで、ここから先は俺の解釈なんだけど――アルトリアは王様だった頃から心のどこかで『自分は本当に王に相応しいのか?』って思ってたんじゃないかな?

モーさんはアルトリアに似せて作られた存在なんでしょ。

だから、モーさんに『王としての器が無い』なんて言ったんじゃないかな」

 

 モーさんは一度も振り返ることなく、相槌を打つこともなくただ聞いていた。

 

「独り言、終わり」

 

 しばらく何の反応も返ってこなかった。

 ……余計なことを言ったかな?

 

「……マスター」

 

 モーさんは静かに口を開いた。

 

「……ありがとよ」

 

 そう言ってモーさんは、こちらに顔を見せることなく扉を開けて出て行った。




珍しくシリアスになってしまった。
反省です。
次回はまたホームズが主役の予定です。
ちなみに、最近、課外活動の映像制作を行いました。
ここに書くようなことでもないので、チラリとで興味を持った方は活動報告かツイッターをご覧ください(ツイッターのアカウントはプロフィールを参照ください)
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