小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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前回ですが酷いド下ネタだったのに結構コメントがあって驚きました。
実は皆さん下ネタお好きなんですかね……
今回は今更ながらアポクリファのネタです。
何気にシェイクスピアが初登場です。


体育会系には敵わない

「つまり、ジャンヌの記憶を元につくった世界でジャンヌに精神攻撃を仕掛けたと?」

「はい!実に簡潔な説明!しがない一流作家の吾輩も感服です!」

 

 いつもの皮肉な笑顔を浮かべてキャスターのサーヴァント、ウィリアム・シェイクスピアは肩をすくめた。

 

「シェイクスピア、今度私に宝具を使ったら、出るとこに出てもらいましょうね! 私にも、限界がありますから!」

 シェイクスピアが召喚された当初、過去の聖杯戦争で縁があったというジャンヌ・ダルクは彼に嚙みついた。

 今日、こうしてシェイクスピアを呼び出し俺たちいつもの三人、マシュとぐだ子と俺が話をしているのはその意味をいまさらながら確認しようと思ったからだ。

 

 あの温厚なジャンヌを怒らせたのだから相当なことをしたのだとは思っていたがやはりだった。

 なんでもシェイクスピアの宝具は「劇団」と呼ばれる幻影を呼び出す魔術を操り、対象を混乱させるものらしい。

 

 サーヴァントとしての直接戦闘能力はゼロに近いシェイクスピアはジャンヌと真っ向から戦っても敵うはずがないとよくわかっていた。

 それで早い話が精神攻撃に出た訳だ。

 それを聞いた俺たち三人は一様に同じような感想を述べた。

 

「最低ですね」

「お前、最低だな」

「お前、クズだな」

「んー!なんと衒いのない低評価!マスターの吾輩への信頼がよくわかりますな!」

 

 俺たちの罵詈雑言にシェイクスピアは肩をすくめた。

 ちなみにジャンヌ曰く、シェイクスピアの宝具で心折られかけたところをある人が助けに来てくれたらしい。

 その「ある人」の話をするときジャンヌはほんのり頬を赤らめていた。

 なので、それ以上聞くのはヤボだと思ったのでそれ以上のことは聞かなかった。

 

 そのことを話すとシェイクスピアは「んーそれ、だいぶ端折った説明になってますな」と首を傾げた。

 

 なので「何か弁明ですか?クズ」とぐだ子が問いかけるとシェイクスピアは事の真相を勝手に話し始めた。

 

××××××××××××

 

 吾輩の策略はマスターたちにもお話したとおり。

 あの聖女の心を折ることでした。

 より具体的には彼女が大事に思うものをほかならぬ彼女が死に導いたと思わせること――あのホムンクルスの少年を死地に追い込んだのが自身だと

思わせることでした。

 そのために吾輩がキャスティングしたのがジル・ド・レ元帥でした。

 

 ホムンクルスの少年の首を持ったジル元帥の姿……それはマクベスを角躱す3人の魔女のように聖女を惑わしました。

 あとは一押しです。

 吾輩は言葉のナイフを以って彼女の肺腑を抉りました。

 

「貴女は、彼を利用せざるを得なかった。

何故なら、彼のサーヴァントとしての力こそが、我々に対抗するのに必要だったからだ!

そう、あのホムンクルスを此処に辿り着かせたのは彼の選択ではない!

貴女が選択したのだ、貴女が彼を殺すのだ!」 

 

 ジャンヌ・ダルクは吾輩の言葉に膝を折りました。

 

「ジル……」

 

 彼女は俯き、力なくジル元帥の名を呼びます。

 

「はい。何でしょうかジャンヌ?」

 

 それにこたえるジル元帥。

 ――そして

 

「はっ!!!!!!」

 

 意外!それは目つぶしッ!

 ジャンヌ・ダルクが突き出した二本の指は墓穴よりも深く、ジル・ド・レの飛び出しがちな目玉を貫いていたのです!

 

「ンギモッヂィイイ!!!」

 

 ジル元帥は転がりながら悶絶!

 吾輩は狼狽!

 

「タンマ、タンマ!吾輩の筋書きと違……」

「覇ッッッ!!」

「オワッ!」

 

 「ビリビリ!」という擬音語を幻聴しそうな莫大な声量が、今度は吾輩の鼓膜をクリティカルヒット!

 

「私を見くびりましたね!この程度の精神攻撃がこのジャンヌ・ダルクに通じると思いましたかッッ!

……ウィリアム・シェイクスピア。私は慈悲を以って言葉であなたを制しようと思いましたが、どうやら無駄だったようですね!

ここからは憤怒を以って肉体言語であなたを制します!」

 

 左様!聖女ジャンヌ・ダルクは……吾輩の予想をはるかに上回る、ウルトラ体育会系だったのですッ!

 

「覚悟なさい!あなたの血は何色ですかーーーッ!」

 

 ヤバイ、殺られる。

 吾輩の人間観察から得た直感を如実に彼女の殺意を感じ取っていました。

 

「下がっていなさい。キャスター」

「マスター!?」

 

 その時、吾輩にも援軍がありました。

 吾輩の当時のマスターだった天草四郎時貞殿です。

 

「江戸幕府への憎悪の念に駆られたまま冥府魔道を彷徨っていた我が魂は、禍々しき暗黒神・アンブロジァの手により、その使徒としてこの世に復活しました」

 

 吾輩も初耳の設定を話し始める我がマスター。

 吾輩またもや困惑。

 

「マスター、それ『サムライ●ピリッツ』……」

「ですが、私に憤怒の情はありません。聖女、ジャンヌ・ダルク、あなたが俺の願望を否定するというのであれば……秘宝パレンケストーンより得たこの力によってその身を亡ぼすまで!」

 

 吾輩、引き続き困惑!

 

「いや、ですからそれ、『サ●ライスピリッツ』……」

「いいでしょう!では、こちらも相応のものを以ってあなたを迎えましょう!貴方の罪を数えなさい!」

 

 賢明なマスターはお気づきでしょう。

 そう、天草殿はバリバリの現役中二病だったのです!

 

紅蓮の聖女!(ラ・ピュセル)

汝、暗●入滅せよ!(ツインアームビッグクランチ)

 

 こうしてジャンヌ殿と天草殿は必殺技の名前を絶叫しあいながらただひたすらに正面からド突きあいました。

 ちなみにその「ある人」が駆け付けたのは天草殿とジャンヌ殿が散々ド突きあって半死半生状態になった後でした。




こんなのでごめんさい。
明日、もっと短いのを投稿する予定です。
では、また。

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