小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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今回は短いやつの二本立てです。
本分に書くには短すぎるので後書きに二本目を書きました。



争いは同じレベルでしか起きない

……そろそろか。

 

 俺とぐだ子はある事態に対処するため揃ってマイルームで待機していた。

 

 ノックも無く勢いよくドアが開く。

 想定通りだ。

 俺とぐだ子はニヤリと笑って見合った。

 

 アヴェンジャーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルク・オルタが怒りで顔を真っ赤に上気させて立っていた。

 

「あんたたち……やってくれたわね!!!」

 

 彼女は怒りのあまり声が半ば裏返っていた。

 必死すぎて逆にかわいい。

 

 「えーなんのことかわからないなぁ!?ぐだ子困惑」とぐだ子は思い切りすっとぼけた。

 

 オルタちゃんことジャンヌ・ダルク・オルタは怒りのあまり声にならない声を発しながら事の顛末を話し始めた。

 

 

「成長した私、聞きたいことがあるのですがちょっといいですか?」

 

 ジルの部屋に行こうとしたオルタちゃんをジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ(通称ジャンタちゃん)が呼び止めた。

 オルタちゃんとジャンタちゃんは根っこは同一の存在だがオルタちゃんは悪(笑)属性、ジャンタちゃんは本家ジャンヌ寄りの真面目っ子だ。

 なので二人はいつもいがみ合っている。

 オルタちゃんからしてジャンタちゃんに呼び止められ、何かを聞かれるのは意外だった。

 

「メアリー・スーとは誰ですか?」

 

 ジャンタちゃんはとんでもない質問をブッこんだ。 

 オルタちゃんは呆気にとられた。

 

「おかしいですね……成長した私ならこの質問に答えられると聞いたのですが……」

 

 ジャンタちゃんはオルタちゃんの反応に首を傾げた。

 ジャンタちゃんは真面目で素直なので人を疑うことを知らない。

 

「……誰に唆されたの?」

 

 オルタちゃんは怒りに震えながら問いかけた。

 

「トナカイさんたちです!トナカイさんたちはとっても物知りですね!メアリー・スーは奇跡を起こす人だと言っていました。つまりは聖人のようなものですよね!」

「……なんでそれを私に聞くわけ?」

「トナカイさんたちが、成長した私がメアリー・スーに関する本を書いていると教えてくれました!」

「殺す!焼き殺す」

「あ!待ってください、成長した私!私もそのメアリー・スーという人の事を知りたいです!ずるいですー!」

 

 そしてここに至る。

 

「え?でも実際、オルタちゃん、よくメアリー・スーの本書いてるじゃん」

「そうそう。『監視官ジャンヌ・オルタ』面白かったよ!監視官で免罪体質とかマジで無敵キャラだね!」

「殺す!焼き殺す!」

 

 俺たちの発言がオルタちゃんの怒りの火に油を注いだ。

 よし。頃合いだ。

 

 ぐだ子が一転して真剣な表情になった。

 

「オルタちゃん。エミヤお手製のガレット、ジャンヌとジャンタちゃんの分まで食べたでしょ?しかも本人の前で」

 

 オルタちゃんの手が止まった。

 反転しているとはいえ、元は聖女。

 バツが悪いらしい。

 計算通りだ。

 

 俺が畳みかける。

 

「そういうの良くないと思うよ。二人のことが嫌なのは仕方無いにしても嫌がらせはよくないと思うよ」

 

 オルタちゃんが「ぐぬぬ」と唸って止まった。

 

 そこへ「バン!」と音がして扉が開いた。

 

「もう!トナカイさんたち、酷いです!」

 

 顔を真っ赤にしてジャンタちゃんが飛び込んできた。

 

「お師匠さんからメアリー・スーの意味を聞きました!恥ずかしいです!黒歴史です!

騙すなんて酷いです!」

 

 そのまま俺の懐まで踏み込んできたジャンタちゃんは俺の胸元で手を振り回してポカポカし始めた。

 かわいいなー癒されるなーでも5発に1発ぐらいかなりいいのが混ざってるのはなんでかなー 

 

「もう!酷いです!嘘つきです!」

「でもねジャンタちゃん」

 

 俺の一言にジャンタちゃんは我に返った。

 

「オルタちゃんがメアリー・スーの本、書いてるのは本当だよね?」

「……確かにその通りです。論理的です。論破されてしまいました……」

 

××××××××××××

 

「成長した私、触らないでください!中二病がうつります!」

「このクソガキ!これでも喰らいなさい!」

 

 ある日の光景。

 いつものようにオルタちゃんとジャンタちゃんが何か廊下でいがみ合っていた。

 何が口論のきっかけか知らないが口論はいつの間にかただの姉妹喧嘩に変化していた。

 

「触らないでって言ったじゃないですか!バリア!バリア!」

「残念でした!バリアを突き抜ける攻撃!」

「あー!ズルいですー!」

 

 ホント、争いって同じレベルでしか起きないんだな……。

 俺はそう思ったのだった。




オマケです。


淫獣
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「フォウ!フォウ!」
「フォウさん!?またついて来てしまったのですか?」

 マシュと戯れているモフモフした毛並みとネコのような肉球を持ったその小動物はカルデア内を闊歩する謎の生き物だ。
 通称はフォウくん。
 性別はどうやらオスらしいが、誰もその正体を知らない。
 カルデアにいつの間にか定住していたフォウくんはマスコット的な存在になっている。

 いつも気づくとレイシフトにいつの間にかついて来ているのだが、ある時、俺は気づいていしまった。
 それはフォウくんが隠れている場所のパターンだ。

 マシュの胸元。
 ぐだ子のスカートの中。

 気のせいではなく、毎回必ずこのうちのどちらかから出現する。

「フォウ!フォウ!」
「アハハ!フォウさんくすぐったいです」

 一見、じゃれているように見える今も――フォウ君の両足は確実にマシュのおっぱいを捉えている。

「フォウ!フォウ!」

 ポヨン。ポヨン。
 クソ、羨ましい!

 その時、フォウくんと目が合った。

「フォウ!フォウ!(ニヤリ)」

 俺にはフォウくんがニヤリと笑ったように見えた。
 コイツ……やはり知性があるな。

「あ、コラ!フォウ、スカートの中入っちゃダメだってば!」
「フォウさん、そこは駄目ですよ!あ、もう悪戯っ子ですね!」

 こ……この淫獣め!
 マシュとぐだ子は小動物と戯れているだけのつもりのようだが、俺だけは絶対に騙されない。
 そう誓ったのだった。

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お後がよろしいようで。

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