小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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久しぶり投稿です。
今更ながらバレンタインネタ。
セミ様はじめapocrypha勢が出てきます。


乙女ですから

「サーヴァント、アサシン。セミラミスだ。さて……まずは玉座を用意せよ。話はそれからだ。無いのであれば仕方ない、汝が椅子になるが良い」

 

 バレンタインで色々あった後、アッシリアの女帝、セミ様ことセミラミスが召喚に応じてくれた。

 逸話の通り、セミ様は高飛車な態度で召喚早々いつもの三人、俺とぐだ子とマシュになんか色々と命じた。

 

 カレデアに居る古参のサーヴァント達の中には別の聖杯戦争でセミ様と縁があったのが何人かいるらしい。

 まずはカルデア内を案内したが、カルデア内で遭遇したサーヴァントの中で最初に反応したのがモーさんだった。

 

 「ッゲ!カメムシ女じゃねえか!あいつをオレに近づけるなよ!フリじゃねえからな」

 

 モーさんは俺たちと一緒にセミ様がいるのを見ると、そう言って逃げるようにその場を立ち去った。

 

「セミラミス。マスターたちの召喚に応じたのですね。また会えて嬉しいですよ」

 

 次に反応を示したのは天草四郎だった。

 天草も別の聖杯戦争でセミ様と縁があったらしい。

 

「我は汝など知らぬ。少なくともこの我はな。その顔を見ても何の感慨も湧かぬわ」

 

 セミ様は高飛車に答えたが、天草はそれに対してただ笑顔を浮かべるだけだった。

 

「最古の毒殺者とどういう関係だったか、ですか? 残念ながらそれは……秘密です。ふふ」

 

 後になって天草に聞いてみたが、彼は穏やかな笑みを浮かべて俺たちの質問を躱した。

 

 〇

 

「セミラミスも一緒か、

丁度いい。お前に問いたいことがあったのだ」

 

 カルデア内を周り、俺たちは食堂に向かっていた。

 食堂についたところでカルナさんが話しかけてきた。

 カルナさんも別の聖杯戦争でセミ様と縁があったらしい。

 

「何だ?申してみよ。答える保証はせぬがな」

 

 セミ様は高飛車な感じで答えた。

 

 カルナさんは何事にも動じない。

 なぜならカルナさんはド天然だからだ。

 ド天然なカルナさんはド天然に生真面目な口調で尋ねた。

 

「教えてくれ。鳩とは赤子のような口調で話すものなのか?」

 

 斜め上の方向の質問が飛んできて、俺とぐだ子は顔を見合わせた。

 マシュはポカンとしている。

 

 そして、セミ様の方を見ると……

 

「ききききさまななななにをいっている」

 

 セミ様は完全に目が泳いでいた。

 ……嘘へたくそかよこの人。

 

 生真面目ド天然で常にマジレスなカルナさんはいつもの感じでマジレスした。

 

「お前こそ何を言っている?オレの言葉の意味が通じなかったのか?鳩とはお前の使い魔たちのことだ。庭園で垣間見ただけだが、使い魔の鳩に話しかけていたではないか」

 

 以下、カルナさんの証言に基づく構成。

 

 〇

 

「お前たちはよく働くな。褒美に我手ずから名前を付けてやろう」

 

 くるっぽー

 

「ふむ……お前は四郎……お前は時貞だ」

 

 くるっぽー

 

「そうでちゅか、気に入りまちたでちゅかー」

 

 くるっぽー

 

「うれしいか?うれちいでちゅかー。そうでちゅかーお前たちは愛い奴でちゅねー。四郎、時貞」

 

 くるっぽー

 

 〇

 

「まず偶然とは言え覗き見のような真似をしたことを謝罪する。オレも用があってあの場にいたのでな」

 

 セミ様は真っ赤になって口をパクパクさせている。

 カルナさんはド天然だが、ありとあらゆる嘘を見抜くスキルを持っている。

 嘘が通じないことをセミ様は知っているので言い訳しようがないのだ。

 

「それで疑問だが……神代を生きた魔術師であるお前がわざわざ赤子のような言葉を使っていたのだ。

それには何か意味があるのだろう?教えてくれ。今後の戦闘において重要な問題だ」

 

 セミ様は真っ赤になって口をパクパクさせている。

 

「なぜ口ごもる?オレの問いは答えに窮するような深遠な問いなのか?」

 

 注釈しておくが、カルナさんに悪気は全く無い。

 ただド天然なだけだ。

 

 セミ様は相変わらず真っ赤になって口をパクパクさせている。

 

「……カルナさん」

 

 可哀そうになったのか、マシュがカルナさんに耳打ちした。

 

「何?ただの趣味だと」

 

 カルナさんは驚愕して、マシュのせっかくの耳打ち(配慮)を台無しにした。

 

「それならばそうと言えば良いだろう。どのような趣味であれ、オレはそういうものとしてただ受け入れるだけだ。

そのような単純な答えになぜ窮するのだ?」

 

 セミ様は何も答えなかった。

 そして、ド天然カルナさんはまたしても爆弾を投下した。

 

「そうか。では、もう一つ疑問がある。

天草四郎にチョコを渡したとき『拾った』などと虚言を弄したのは何故だ?」

 

 セミ様の口から意味を成さない音が漏れた。

 

「ば、ばばばばばばばば……」

 

 俺とぐだ子はニヤリとして見合った。

 

「「カルナさん……それ、詳しく聞かせて」」

「命令とあらば」

 

 以下、カルナさんの証言に基づく構成。

 

 〇

 

「まったく我を待たせるとは何事だ。早々に現れぬか(モジモジ)」

「おや、セミラミス。奇遇ですね」

「……汝か。奇遇だな(キョロキョロ)

「誰か待っているのですか?」

「だ、誰も待ってなどおらぬ!ましてや汝のことなど待っておらぬのだからね!(モジモジ)」

「そうですか、ではごきげんよう。セミラミス」

「ま、待て」

「これは?」

「そこで拾ったのだ。通りがかったのだから汝が責任をもって処理するがよい(モジモジ)」

「そうですか。それは責任重大ですね。では、私が処理させてもらいましょう(ニコニコ)」

「フ、フン!では、さっさと行くがいい。我は後処理で忙しいのだ(モジモジ)」

 

 〇

 

「まず偶然とは言え覗き見のような真似をしたことを謝罪する。オレも後処理であの場にいたのでな。

――それで、疑問だがなぜおまえは『拾った』などという虚言を弄したのだ?お前は一刻以上前からあの場にいたし、チョコレートも事前に準備していたではないか。天草四郎があの場を通るのも計算の内だろう。

あのような明らかな虚言を弄したのはどういうことだ?何か魔術的な意味があるのか?」

 

 繰り返すがカルナさんはマジだ。

 ただ天然なだけで悪気は一切無い。

 

「は、はわわわわわわわわわわ……」

 

 セミ様は真っ赤になって口から意味不明な音節を垂れ流している。

 

「……カルナさん」

 

 さすがに可哀そうになったのか、マシュがカルナさんに耳打ちした。

 

「何?素直で無い――俗に言う『ツンデレ』だと?」

 

 カルナさんは驚愕して、マシュのせっかくの耳打ち(配慮)を台無しにした。

 

「それならばそうと言えば良いだろう。どのような趣味であれ、オレはそういうものとしてただ受け入れるだけだ。

そのような単純な答えになぜ窮するのだ?」

 

 セミ様は相変わらず意味不明な音を口から発している。

 

「は、はわわわわわわわわわ……」

 

 俺とぐだ子はニヤリと笑って見合った。

 俺たちは――新しいおもちゃが手に入ったことに気付いた。

 

 そしてセミ様に静かに近づいて耳打ちした。

 

「……もう、セミ様ってば、オ・ト・メ」

「……やだーセミちゃんかわいいー」

 

 〇

 

「「ジャンヌーーーーー!たぁぁすけてぇぇぇぇ!!!!」」

 

 俺たちはセミ様が(照れ隠しに)召喚した魔物から全速力で逃走し、ジャンヌ・ダルクに助けを求めた。

 ジャンヌはとっさに俺たちの前に立った。

 

「待ちなさい!セミラミス!何があったか知りませんが、彼らは私たちのマスターですよ!」

 

 ジャンヌは旗で魔物を打ち払うと、筋力Bでセミ様を羽交い絞めにした。

 セミ様は真っ赤になりながら必死でもがいて叫んだ。

 

「離せ!離さぬか忌々しいルーラーめ!殺す!殺す!!こやつらを殺す!!!

こやつらを殺して我も死ぬ!!!」

 

 セミ様は何とかジャンヌが宥めたが、そのあとしばらくセミ様は口をきいてくれなかった。

 乙女心って繊細だな、と俺は思った。




最後までお読みいただきありがとうございます。
では、また

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