古典部に懸る月   作:指切りの約束

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『愚者のエンドロール』はあのまま原作通り進むので一話でおしまいです。少しだけ付け足しました。


次、つまり今回はは『クドリャフカの順番』となります。




第2話

 1★

 

「はいっ!始まりましたっ!!!」

 神山高校文化祭一日目。ちょうどお昼の時ぼくは放送室に連行された。文化祭が開催される3日間にはお昼にラジオと称して放送が行われる。パーソナリティーとゲストの二人で行われるのだが、普通ゲストは今来ている部活や有名な人を呼ぶものである。しかし、ぼくは今ゲストとしてここにいる。

「神山高校文化祭、通称カンヤ祭一日目のゲストはこの人つ!!知らない人はもぐりか転校生。後者なら優しくしてあげてね。千反田けいだっ!!」

 わぁパチパチとSEが聞こえる。そこまで言うかな?正直言ってどうしていいのか分からないので、その場の雰囲気に流れを任せる。

「想像以上に褒められてびっくりしているけいです。でも、ここって部活に所属している人が来るでしょ?どうしてぼくが呼ばれたのですか?」

 当たり障りのない返答に成功。あまり人との会話は得意ではないので、質問することによって沈黙を回避。きっと相手はそういうのに慣れているので、ぼくはおんぶに抱っこで行こうと思う。

「そんなご謙遜を。結構有名だよ、けいくんは」

「信じられませんがね」

「そうかな?この事件あの事件どこもかしこも後ろには君の姿あり、なんて言われてるのに」

「なんですかそれ……?ぼくはそこまで裏に立っていられる人じゃないですよ」

 むしろ遠くから見てたい人です。

「うーん。いきなり爆弾を投下するけど」

 一体何だろう。そこまで秘密と言われることをやってないかと言われればNoなのだが、それが知られているとは思えないし。

「『女郎蜘蛛の会』会長さん。貴方はこのカンヤ祭で何をするつもりですか?」

 ばれてるよ。こんな放送でバレてしまったら誤魔化すことはほぼ不可能なので、ここは開き直って強気に行こう。そっちのほうが内容的にも盛り上がって面白そうだし。

「へぇ。情報ソースは教えてもらえるかな?」

「否定しない、と」

「本当のことを否定したら嘘つきになっちゃいますから。ちなみに、計画していることはそれと交換で」

 嬉しそうに相手は笑う。結構な盛り上がりを見せる神山高校文化祭だが、放送室まではあまり熱気が来ないのだろう。ミキサーの子も楽しそうにしている。

「それくらいなら。元壁新聞部の部員からのタレコミでね、そう聞いたんだ」

 絶対遠垣内だろ。あいつ、折木に一発やられた時にぼくが助けなかったことをまだ引きずっていたのか」

「あはは。それでわかっちゃいましたよ」

 さて、それでは文化祭で計画していることを話しちゃいましょうか。言わなくても成り立つが、言ってしまったほうが案外面白くなるかもしれない。

「我々『女郎蜘蛛の会』は広く神山高校に糸を張り巡らせている。簡単に言ってしまえば、少人数なところ以外のあらゆる部活に会員はいる。くくく、驚いたかい?」

 数年前までは本当に七不思議の一つとして存在していなかったのだが、どこかの阿呆が事実にしてしまいぼくまで引き継がれている。

「この度会員にはある事をそれぞれの部活でしてもらう、もしくは既にしてもらっている。本来ならば会員のみが参加するものだったが、僕の正体を見破った彼に賞賛の意を表明するために参加者はここにいる全員としよう」

 最初は数人だったらしいが、ぼくが入ってきた年の会長が一気に勢力を活動した。それは元となる女郎蜘蛛の様に太い糸を張ろうとしていたからだろう。

「僕が直々に指示を出し、その結果完成した蜘蛛の巣がある。その巣を構成する糸を辿って行ってほしい。しかし、その全てが正解と結びついてるとは限らないけどね」

 頭をひねるような問題からひらめきや直感が絡むものもある。正解に結びついているものだけを狙っても、ヒントが足りなくて解けない場合もある。

「ただし。ぼくらは犯行声明を残さない。もしそれがあったら、ぼくたち以外にも何か企てている人がいるんだろうね」

 

 

 

「もしもこの巣の招待を見破れるものがいたならば、その人を次期会長にしてあげよう」

 

 

 

 2★

 

「やぁいりっちゃん」

 前に入須に話しかけた時と近いところで声をかける。折木に脚本をかんがえさせ、考えてもらった映画を上映している視聴覚室の前で彼女に声をかける。突然話しかけられ驚いた顔をするが、すぐに呆れるような表情になった。

「けい、君は何をしている」

「何って散歩?部活にも入ってないし、クラスでも何もしてないし」

「そう言うことではない」

「じゃあどういう?」

 周りの人からすれば珍しい事のようだが、ぼくの前ではよくする困った表情になる。普段の凛々しい感じとのギャップが結構大きい。ギャップ萌えのぼくには危険だ。さすが女帝、

「『女郎蜘蛛の会』の事」

「あれね。うん。ラジオでも言ったように本当は黙っておくつもりだったんだけど、どこかの遠垣内がタレコミしたらしくて。仕方なくだよ」

「たしかに君らしい」

 口に手を当てて笑う姿は絵になっている。ここ最近入須のことが気になりすぎていると思う、気のせいだろう。そうだろう。

「遠垣内には既に仕返し的なことはしてあるからいいのだけれどね」

「ほう」

「蜘蛛の子は何処にでもいる。それは壁新聞部は例外ではない。ちなみにここもね。ウィットに富んだ娘が一人いるんだ」

 置いてある2-F『万人の死角』のパンフレットを開く。一枚のB4の紙を2つ折りにしたそれは、外側にタイトルと出演者や関係者の名前。内側には物語のあらすじや撮影場所の事、制作秘話などが書かれている。

「コレがどうした?」

「よく見てみて」

 そう言われた入須はまじまじとパンフレットを見る。じっと見て、裏を見て逆さにして。しかしそれでも見つからないようで顔をしかめる。

「これはラジオで言ったからいりっちゃんだけに対するヒントじゃないから聞いて欲しいのだけれど、よく見ることは大切だけど大きく見ることも大切だ。そこまでやって分かるわからないの問題は、ひらめきや運になるってくる」

「ダメだ。私には分かりそうにない」

「ダメだなぁ入須は」

 睨まれた。何だよ、イリスのクラスのおもしろキャラの羽場の真似をしただけなのに。悲しい。

「ほら、ぼんやりと見てご覧。目を細めるとなお良し」

 教えられたようにして改めてパンフレットを見る。すると、モザイクアートのように一つの文字が浮かんで来た。それは。

「これは『巣』か?」

「正解。数十個ある中で結構有力なヒントだよ」

 漢字とひらがなやカタカナなどの文字の密度を使って漢字を表していた。言われれば気がつく程度の物であるのだが、案外気が付かれないものである、

「しかしこれは」

「これを作ったのは江波だよ」

「アイツがか?この件に関しては何もしていなかったような」

「何を言ってるんだい?きちんと古典部と2-Fを繋ぐ役割として参加して、更に広報班とのコネクションを得ていただろ?」

「そこまでやるか…」

「これはぼくの最後の演目さ。ぼくの後継者を選ぶ事なんだから本気を出すよ」

 こんな感じで話をしていると、騒がしい廊下からより一層騒がしい声が聞こえてきた。

「おっ!ついに始まったか」

「また何かをしたのか」

「文化祭の最中、ここで起きるおかしなことの大半はぼくら『女郎蜘蛛の会』の仕業だよ」

「号外号外っ!!!壁新聞部の有志が勝手に作った臨時新聞だよっ!お代は一回目は只だよっ!!!さささ、そこのお嬢さんも一枚どうだい」

「壁新聞部に紛れ込ませた子蜘蛛。ぼくを陥れようとした罪は重いんだよ」

「遠垣内が言わなければどうしてたんだ?」

「それは隠れて発行してもらうつもりだったよ。でもあんな事をされたからね。思いっきり表立って行動してもらうことにしたんだ」

 今新聞を配り歩いているのも女郎蜘蛛の会の会員。壁新聞部以外にもやってみたいと言っていたので、秘密裏に新聞のレイアウトを考え、記事を考え、印刷機の手筈も整えた。

「お兄さんとお姉さんもどうぞ」

「お疲れさん。調子はどうだ?」

「あっ!会長さんっ!!結構いいですよ、たくさんの人が見てくれてますしっ!!それにもう沢山の感想来てるんですよ」

「それは良かったな」

「はいっ!ではまた配ってきますね」

 嵐のように少年は去っていく。

「何をやってるんだ、本当に」

「あはは。面白いでしょ?」

 呆れられずにはいられないというのがひしひしと伝わってくる。仕方ないじゃないか、楽しそうだと思って本気で手伝ったのだから上手く行ってるかを聞きたくなったのだから。

「あの子、普通に文章書くのが上手いから内容は面白いと思うよ」

「読んでいないのか?」

「壁新聞は予めのことは決めてるみたいなんだけど、こっちはレイアウトのみ。蜘蛛たちがあちこちを歩いて面白そうなことを彼に伝える。そして彼一人でこれを作るんだ」

 第一号は女郎蜘蛛の会をトップ記事に置き、それぞれの部活で起きた事件のことを書いている。古典部の予想以上の部数のことも書いているので、少しは手伝いになったのかもしれない。

 他には物がなくなってそこに犯行声明が残されているというのを、真ん中のあまり記憶に残らないとこに書いている。うまいな。ぼくらの事件を見せるために、十文字怪盗を目立たせないつもりなのだろう。なかなかやる。

「とまぁこんな感じですよ」

「相変わらずこういう事には本気を出すのだな」

「そこんとこは楽しまなくちゃね」

 上映している間しばらく入須と話そうと思っていると、携帯にメールが来た。振動する携帯をポケットから取り出し内容を見る。

 

『件名:会長逃げてください!

 

 壁新聞部が会長を捕まえたら、壁新聞の一部を広告として利用していいと生徒に言い伝えているそうです。一部文化部なのに、力が有り余っている方々が会長を探し回っているのでどうかご無事で。私も私で裏工作をしてくるので、それでは!』

 

「げっ」

「どうした?」

「これをどうぞ」

 入須にも携帯を見せる。一読した後顔を上げ呆れたような顔をしている。

「これからどうするの?」

「僕を探す声と激しい足跡が聞こえるから逃げるかな」

 どうやら、ぼくはえると同じように耳がいいのです嫌でも僕を探している人たちが近づいてくるのが聞こえてしまう。

「そうか。それでは仕方ないな?」

「何が仕方ないの?」

「何でもない」

 いくら耳がいいからと言っても言われてない言葉を聞き取ることは出来ない。何でもないと言われると余計気になるが今はそれどころではさそうだ。

「ぼくは逃げるね」

 窓をガラリと上げサッシに足をかける。ここは二階、それなら大丈夫だろう。

「そこから行くのか?」

「ここから行ける全てにいそうだからここからね」

 下に人は居ないし大丈夫だろう。

「それじゃ。あっ、そうだ。明日の午後時間あったらちょっと付き合ってね」

「なっ!!?」

「ほんじゃ」

 二階からダイブ。着地と共に前転をして衝撃を逃す。制服は汚れるがこれはやむを得ないない犠牲(コルテラルダメージ)として割り切る。さてと、これからどう動こうか。僕自身が見つかる事は想定していなかったので急いで思考を働かせる。

 

 3☆

 

「入須さんっ!」

「える。どうかした?」

「いえ。委託した分がどうなったのかと気になってしまいまして」

 少し照れ臭そうにえるは笑う。けいとえるは従兄弟なのだがあまり笑い方は似ていない。女性と男性の違い以上に何か根本から違うような違和感がある。

「パンフレットと共になかなか売れている。この調子なら今日中にも渡された分は売り切れるだろう」

「良かったです…」

 お昼前に古典部の文集の量を伝えられたときは驚いた。私も手伝うと言ったものの、あの量はパンフレットと一緒に売る程度ではどうこうできるものではないの思う。

「ところで先程まで兄さんいませんでしたか?兄さんの名前を呼んでいる方と『ここには居ない、どこかに逃げたか』と叫んでる方がいたもので」

「いたよ。そしてここから逃げていったよ」

「ここって、わたしが来た方向以外逃げ道が無いのですが」

「他にもある」

 換気の意味で開けっ放しだった窓に視線を向ける。えるは少し考え込んだあと、分かったらしくいつも大きな目が更に大きくなったように感じきらきらと輝いているようにも見える。

「兄さんはこんな高いところから降りて無事だったのでしょうか。わたし気になりますっ!」

「無事だったよ。華麗に着地をしてこそこそとどこかに行ってしまった」

「そうでしたか。でも、兄さんならそのくらいしてしまいそうですね」

 けいはえるの家で何をやらし着ているのだろう。その疑問が尽きない。

「それではわたしも失礼します」

「そうだ、える」

「なんでしょう」

「けいに『楽しみに待っている』と伝えておいてくれる?」

「はい?分かりました。伝えておきます」

 

 




思ったより多くの人に見られているようで、嬉しかったです。今後共よろしくお願いします。

誤字脱字があったらすみません。誤字脱字報告の方からお知らせください。
まだ、原作が手元にないため入須の口調やその他人物の1人称2人称がおかしいと思われます。その場合も教えてくださるとありがたいです。
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