魔法少女リリカルなのは 転生ホムンクルス編   作:青木 虚空

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10話過去を振り返れば(狂也)前編

視点は狂也になります。

いま俺は、忍の期待の目をうけながら、遠い目をしていると思う。

最初、シンさんとの出会いは最悪だった。

しかも、いま思えば、数年前なのに、黒歴史決定の時期でもある。

いま考えれば、あの当時は、つねにイライラしていた。

いくら練習しても、上達しない剣術。

父さんに追いつこうとしていて、追いつけない大きな背中。

がむしゃらに追いかけても、遠くなるような背中を見ていたのだと思う。

しかも、あの約束すら忘れていたのだから……

「……おら!」

「……ぐぅ」

俺は荒れていた。

俺の目に入るもの、逆らう者、社会にも。

「……クッソ!この狂犬め!……俺たちが何をしたというんだ。……狂犬、貴様には手出しもしていないはずだぞ」

俺の目の前には5人の不良が片膝をついたり、倒れ伏していたりしている。

「……ふん。ただ、目障りなんだよ」

俺は、一言で不良の言葉を両断する。

「……な、なめてるのか!……ッグ!?」

「……弱い犬ほどよく吠える」

俺は口うるさい不良を足蹴にして黙らせる。

そして

「……これ以上ぼこされたくなかったら、不良なんかやめちまえばいい。・…好きばっかやってるんじゃねぇよ」

そう、俺はこんな毎日を送っていた時期でもある。

「……うわ、いまの狂也とは思えないわ」

横で話を聞きながら、忍が何か言っているが、話を続ける。

まだシンさんと出会った話をしていないのだから。

そんな毎日を送っている、ある日。

その日も、不良をボコしていた。

「……ひぃ!?も、もう止めてくれ!そいつらが、死んじまう」

不良の一人が俺の足にしがみつきながら、俺を止めようとしている。

目の前には、血を出し倒れている不良どもがいた。

俺はその時手にしていた、鉄パイプをさらに強く握り直し

「何言っているんだ?俺を殺すつもりじゃなかったのか?人数も揃えて、俺を殺すと言ってたじゃないか?それなら、返り討ちにされても文句はいえないよな?」

俺はそう言うと強く握りしめた鉄パイプを、足にしがみついた不良に振り下ろそうとする。

だが、その振り下ろしは突然止められる。

「……君。それ以上はやりすぎだ。もう、止めなさい」

いつの間にかに誰かが俺の後ろに立ち、俺の腕をしっかりと握っていたのであった。

「……邪魔するんじゃ……」

俺が、後ろのやつに反撃でまわし蹴りをしようとした瞬間、ものすごい殺気が俺を襲う。

いままで、受けたことがない濃密な殺気。

俺は動くことができなくなった。

だが、足にしがみついている不良には、何事もない。

そう、その殺気は俺だけに当てていた事がわかった。

その時、俺は全身に寒気が走った。

俺は後ろのやつに勝てないと……

「……やっと、止めてくれたようだね。足元の君も、倒れている仲間を連れて行きなさい。まだ声をかければ、動ける子はいるとおもうから」

後ろからの殺気はトマラナイが、なぜか声はおだやかな男性の声が聞こえる。

その言葉を聞いて、足にしがみついていた不良は、倒れている仲間たちのところに行き、まだ無事な者たちを起こし、まだ起きる事をできない者を、互いに支えながら、俺たちの前から去っていった。

「……さってと、邪魔者がいなくなったみたいだな」

後ろのやつはそう言うと、殺気を放つのをやめ俺の腕も離す。

その時、俺は回し蹴りをするが、空を切る。

「っち。やっぱ避けたか」

「……そんなもの当たるわけないじゃないか?最初から何をするかわかっているのだから」

俺は、回し蹴りの勢いで後ろを振り返り、後ろにいたやつを睨みつける。

後ろにいたやつは肩をすくめながら軽く流す。

その時、やっと俺の目に後ろにいたやつの全身が見えたのは

「……その時ね。シンお兄ちゃんと出会ったのは。……でも最悪な出会い方」

忍は話を聞きながら、呆れたように言うが

「しょ、しょうがないだろう。本当にその時期は、今と違って……」

「はい。ストップ。狂也の事はわかっているわ。それよりも、そんな狂也が、どうやって、今のようになったかの方が、気になるわ」

俺が恥ずかしそうに、忍に反論しようとしたが、口に人差し指を押し付けられ、それ以上は言えないようにされた。

「……ね。狂也、続きをお願い」

忍はニコッと笑顔を作り続きを催促してくる。

(まったく、しょうがないなぁ)

俺はそんな忍の顔を見て、あきらめたように続きを話し始める。

そう、あの時がシンさんとの出会いだったとは、あの時の自分は思わなかった。

何か、全てを知っているような、ムカつく態度。

俺の全てを見とおされるような視線。

そして、実力の差がありすぎての、余裕の差。

すべてが、その当時の俺には、敵として認知するのは当然だった。

「……余裕そうだな」

「……そうだね。君の言う通り、自分は余裕があるね」

俺は睨みつけ、シンさんは力を体から抜き、リラックスした状態で応じてくる。

「はぁぁぁっぁあ!」

「よっと」

俺は一気に左からのけさぎりでシンさんに迫るが、簡単に避けられてしまう。

そこからは、連続で俺のすべてをてつパイプに乗せ、切りつけていく。

横薙ぎ、突き、切り上げ、振り下ろし……

すべてが、避けられていく。

俺の努力を、すべてを、拒否するように……

どのくらい経っただろうか、俺は息を切らし、立つのがやっとになっていた。

しかしシンさんには一度も届かなかった。

「?もう、終わりかい?」

「はぁはぁ……そ、そんなことは、な、ない」

シンさんは服の乱れも、息の乱れも、何事もなかったように立っている。

それに対して俺は、大きく行きは乱れ、体力は尽きかけている状態。

強気に応えるのができる程度だった。

「ふむ。筋は多少いいが心が、乱れすぎているな。……けん師としては最悪だな」

シンさんは手を顎に当てながら、俺を突然、評価してくるが

「……!!なにが、最悪だぁぁあぁ!」

俺はシンさんの言葉を聞いて、最後の力を使い鉄パイプを振り下ろすが

「ふっほ……」

動作を大きくしてしまった為、ガラ空きになった俺の胴体に、シンさんの拳がめり込み、俺はその時点で意識を失った。

「……一撃なのね。いまと、あんまりかわらないんじゃないの?」

「う、うるさい。シンさんが強すぎるんだよ。……いまはやっと剣が届くようになったんだ。あの時とは違うからな」

忍のつっこみに、ついつい反応してしまう。

たしかに、いまだにシンさんが少し本気を出せば一撃だけど、やっと届くようになってるんだから茶化さないでほしい。

「まぁ、なんだ続きを話すぞ」

俺はちょっと恥ずかしそうに早口でそう言うと、話の続きを語り始める。

そう、あの後の記憶は道場に寝ていた所から始まるのか。

俺が目をさますと、どこかは知らないが、道場の隅で寝かされていたのはわかった。

周りを見渡しても、見覚えのない道場だった。

そして、周りの状況を確認していると、先ほど見た時には、いなかったはずの人間が、道場の一番奥一段上に挙げた場所、その中心にシンさんが正座で座っていたのは。

「……やっと、目が覚めたようだね。……いやぁーあの後、君を気絶させた後に気づいたんだけどね、君の家がわからなかったんだよね」ははは

シンさんはそんな風に軽く言うと、後頭部を手でかきながら笑ってごまかそうとする。

「……っく」

「まだ、無理しないほうがいい。倒れてからそんなに時間が経ってないから、体はすぐには動かせないよ」

俺は立ち上がろうとしたが、体が思いのように動かず、前傾姿勢で倒れてしまう。

そんな姿を見て、シンさんは声をかけてくるが、そんなのは先に言って欲しかった。

そして、シンさんは、いつの間にかに俺の目の前に、立っており、一つの紙切れを渡してきた。

「その紙にはこの道場の住所が書かれている。いつでも、ここに来なさい。今度は君の実力を見てあげよう。……まぁ帰れるまでの体力を回復するまで、まだ時間はある。それまで、考えておきなさい。……それと、帰りたかったら勝手に帰ってね」

シンさんはそう言うと道場の出入り口から外に出て行った。

そして、わけもわからず、俺はその道場に一人、残された。

その後は、なぜか覚えていない。

気がついたら自宅の自室にいたからだった。

なぜ、そうなったかは、わからない。

ただ、自分自身にわかったのは、敗北感と空虚感だった。

それから、俺は部屋に閉じ籠った。

それからは、あんまり覚えていない。

ふらふらと、気がついたらシンさんの道場の前に立っていた。

そして、道場の中で、シンさんといつの間にかに対峙していた。

「……そんな感じで、自分と対峙できると思うのかい?

「……」

俺はなにも答えることはできない。

なぜここにいるか、なにをしているか、わからないからだ。

「……ふむ。自分の進むべき道を無くしたようだね。……それでも、ここに来たのは、何かの答えを探しにきたのではないかね?」

シンさんはあいかわらず、穏やかな口調で俺に語り続けてくる。

「まずは、君が、なぜ?剣士になったかを思い出すのが一番だね」

俺は、シンさんの言う通り、なぜそんな事をっと思ったが、なぜか、思い当たる事を思い出す。

それは、俺がまだ幼い時。

いまの母さんの桃子さんでは無く、本当のお母さんとの思い出。

そう……あの時は

「これで、狂也も、お兄ちゃんね。ちゃんと、みゆきの事守ってあげてね」

「……うん」

おぼろげな記憶、その一言は覚えている。

そして……

「……ごめんね狂也。お母さん、もう狂也とあえないの……お父さん見たく、かっこよくて、やさしくて、強くなった狂也を見る事ができないの」

「……そんな事は無いよ。……僕は絶対にお父さんみたいな剣士になるから、お母さんも見ていてよぉ」

そうだ。

この場面は母さんが亡くなった時の最後の会話だ。

「……そうね。狂也なら、なれるわね。お母さんは遠いところに行くけど、狂也の事はみているし、お父さんからも聞くから、そんな悲しい顔をしないで。……狂也はもうすでに、やさしくて、かっこいい子なのだから……」

どんな話をうる覚えで全ては覚えていない。

だけど、この時約束した事は覚えている。

いま、はっきりと、思い出した。

「……お母さん。僕、絶対に、お母さんが言うような、やさしくて、かっこよくて、みんなが守れる剣士になるよ。そして、お父さんも守れるようになるよ」

そう、そう言ったんだ。

病床で寝ていた母さんに、からなず守るって

「……何か、思い出したようだね」

俺がそれを思い出し、意識がはっきりするとシンさんが俺に聞いてくる。

「……ああ、思い出したよ。……なんで、忘れていたかわからないけどな。……あんた、俺に何かしたのか?」

「いや、していないよ。ただ、君を見ていて、昔の自分を見ているようでね。……経験者として、君の大事な事を思い出すように、誘導しただけだよ」

シンさんは俺の問いに、にこやかな笑顔をして応える。

「……まぁ、何か迷ったらまた、ここに来なさい。お兄さんが聞いてあげるから」ははは

シンさんはそう、軽く笑うと、道場を出ていく。

俺は、そんなシンさんを見ながら

「……迷ったらか」

そう呟いた。

「……それ、絶対に何かされてるわよ狂也」

忍は訝し目な目で、俺をみるが

「……そうだな、いま思うとそうかもしれないな。でもな、別の意味で助けられたのかもしれないな」

俺は、あの時の事を思い出し、苦笑いをしたのであった。……

別視点

自分は大きな木を吐くと、道場の入り口を見つめる。

なぜ?自分はあの少年を木にするのだろうか?

たぶん、自分に似ていたからであろうか。

そんなことを思っていると、自分に声をかけてくるものがいた。

「……あまり、使わないほうがいい」

声をかけてきたのは、ザフィーラだった。

「……わかっているさ、ザフィーラ。使用したのも最低限の幻惑魔法さ。……まぁ、自分らしくないのもわかっている」

「……それならいい。シン、あまり自分を追い詰めるな」

ザフィーラは、一言二言いい自分から、離れていく。

「……自分らしくないか……そうかもな。自分も素直になるべきか……」

自分は、立ち去る、ザフィーラの背中を見ながら、そう思うのであった。

 




今回も、長くなったので前編と後編に分かれます。
それと、活動報告のほうもよろしくお願いします。
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