俺と忍の話は続いていた。
「・…それで、シンさんの所に通うようになったのね?」
「・…そうだな。・…なんだかんだ言いながら、通うようになっていたなぁ」
俺はそんな事を言いながら、当時の事を思い出す。
たしか、あの当時は強くなりたかった。
だけど、それだけでは、だめだったんだよな。
そう、シンさんに言われていた事以外にも、桃子さんにも教えられたんだよな。
まだ、桃子さんの事は、よくは思っていなかったけど、あの事件がきっかけだったのか・…
母さんと認める事が、出来るようになったのは・…
「はぁぁぁぁぁあ!!」
俺の声が道場に響き渡る。
気合い全力の一撃が、シンさんに襲いかかる。
シンさんは、表情を変えずに
「ほいっと」パシィィン・…ガァン
軽く木刀の腹を叩き、剣筋を逸らし、ほとんど動かずに、上段からの振り落とした木刀を避けてしまう。
「・…ふみこみも、良くなったが、剣筋がなぁ〜」
シンさんは頭をかきながら、そう言ってくる。
「・…まだ、甘いのか?」
俺は、木刀を振り落とした体制から、一歩下がり体制を立て直し、シンさんに対峙しながら聞く。
「・…うーん。そうだな・…剣に気持ちが乗ってい無いんだよね。・…そのせいで、剣が軽くなっているんだ。気合いも入っているが、それ以上に剣の迷いというか・…うーん?なんと言うんだろうなぁ〜・…そうだなぁ〜自分としたらになるけど、なんの為に力を使うのか、何を守るのか、なんの為に力があるのか、悩んでいる状態かな?といった感じかな?」
シンさんは首をかたむけ、考えるような感じで応えてくる。
「・…迷いか」
俺は先日、シンさんのおかげで、なんで剣士を目指すのかを思い出した。
それからは、シンさんの所に通い、父さんのかわりに、稽古をつけてもらっていた。
「・…迷いか・…」
もう一度、俺はつぶやく。
父さんの事は、いずれは乗り越え、父さん以上に強くなって、父さんやみゆきの事を守りたい。
これは、約束だし、すぐにこたえは、すぐにでてきた。
そして、桃子さんは?なのはは?
そこで、俺は迷った。
桃子さんは義理でも母親。
なのはは、俺の妹。
そう、なのはは、妹で、すごくかわいい。
きょとんとした時とか「にぃたんぃたん」とか言われた時なんかは特に・…
俺がそんな事を考えていた時
「・…!?急にニヤついて、どうしたんだい?」
シンさんの不思議そうな声で、俺ははっとする。
「・…い、いや。なんでもない」
俺は、意識を現実に戻し、シンさんの問いに応える。
それでも、なのはは、何が何でも守りたいと感じた。
だが、桃子さんはどうだろう?
そこで、迷いがあるのが感じたが、そんなので、剣に迷いが生まれるのだろうか?
俺は自問自答して、意識は再び思考の渦に沈み込んで行こうとする。
「・…狂也君、思考にふけるのもいいけど、いま、稽古中なんですが・…まぁ、話を振った自分もいけませんが・…」
シンさんはあきれた感じでそう言うと構えを解き、俺の方に移動してくる。
「・…狂也君が、何に迷っているかは、わから無いけど、何か相談して欲しい事、聞いて欲しい事があったら、聞くよ」
シンさんは穏やかな声で、俺の肩に手を乗せ語りかけてくる。
「・…それと、自分が感じた事だけど、狂也君といままで話して感じていた事になるけど、その迷いは、誰かに対して、どうしたらいいのか?どう接したらいいのか?悩んでいる感じがあるんだよね。そう、その人に対して、どうしたいのか決まってい無い感じかな?それで、自分の考えと言うか、約束事にその人が入るのかが、迷っているといった感じかな?」
シンさんは自分の感じた事をまとめるように俺に伝えてくる。
「・…誰かを・…その人・・」
俺はシンさんに言われた事を、つぶやくように言葉に出し、考える。
たしかに、シンさんに言われたように、桃子さんにどう接したらいいかとか考える時がある。
俺が、守りたい人ではどうだろう。
そこがわからない。
そうして、俺がまた、思考の渦に沈み込んでいると
「・…悩みは、深いようだね。でも、それは狂也君自身が出す答えだね」
シンさんはそう言っていたが、俺には全部聞こえている感じはしなかった。
それ以上に思考の中で、桃子さんに対しての考えがまとまらなかったからだ。
そう言った事があってから、自分の答えを見つけるように、答えを探すように、自分の迷いが桃子さんにあるのなら、桃子さんと話してみようと思いついた。
そして、いざとなるとどう話したらいいか、どうしたらいいか、わからなくなり、話しかける事が出来ずに時間は経っていった。
「にぃにぃたん。・…にぃたん」
なのはが小さい両手を大きく広げて、とてとてと俺に向かって、走る?歩いて向かってくる。
「どうしたんだい、なのは?」
俺はそんな名の葉を見て、笑顔を浮かべ、なのはを抱っこするように持ち上げる。
「にぃたん、ムズカチィ顔してたなの」
なのはは、そう言うと、俺の顔を小さな手で、ぺちぺちと叩くように?触るように、俺の頬を手で触る。
「・…そうか?ニイちゃんは、難しい顔をしてたのか?」
「うん。ちてたなの」
俺は腕の中にいるなのはに聞くと、なのはは小さくうなずく。
俺はそんななのはを見ていて、自分が難しく考えていた、事が、バカバカしくなっていた。
「・…そうだな。ニイちゃんはちょっと、考えていた事があったんだ。でも、なのはのおかげで、解決できそうだよ」
俺が満面の笑みで、なのはに答えると
「わーいなの。なのは、にぃたんに褒められたなの」
なのはは俺の腕の中で、うれしそうにはしゃぐ。
そして、俺は
「そうだ、なのは。桃子さ・…お母さんのところに行こうか?」
「いくなの。にぃたんといっちょにいくなの」
桃子さんの所にいく事にした。
・
それから、俺はなのはと一緒に桃子さんの所に行き、話をする事にした。
そして、話をしていくうちに
「・…そうしたらね、史郎さんったら、いろんなひとが、周りにいるのに、そんなのかまわず。・…「俺は、桃子と結婚できてよかった。愛している」っていうのよ・…もうね・…」
なぜか、父さんのノロケ話になっていた。
「zzzzz」
俺の膝の上で、なのはは、寝てしまっているし、俺は逃げる事が出来なくなっていた。
そうして、ノロケ話をうんざりしながら、聞いていると
「・…でもね、狂也君、今日は狂也君から、話をしてくれるとは思わなかったわ。・…私も、何か狂也君が悩んでいるのは、わかってわいたけど・…私も、狂也君にどうしたら、話をしたらいいかわからなかったのよ。それで、狂也君も、私と同じで、どうしたらいいかわからないって、わかった時、私もほっとしたのよ」
桃子さんは、急に真面目な顔をして話をする。
そして、最後は、俺に笑顔を向けてきた。
その言葉を俺は聞いて、俺はなぜか心の中にあった、何かのつっかえがとれた気がした。
そうしたら、自然と
「・…ッップ」
なぜか、吹いてしまった。
「!!なにがおかしいのかな?狂也君」
その姿を見た桃子さんはジト目で俺を見てくる。
「い「・…でもね。狂也君、何かあったら私にも相談してね。悩みでも、困った事でも、私が聞いてあげるから、相談してね。・…一応、狂也君のお父さんが選んでくれた、奥さんなんだからね」
桃子さんはそう言うと胸をはりながら「えっへん」と言わんばかりの顔になっている。
「・…はい、その時は話をします」
俺は、そんな桃子さんにすこし驚いたが、俺は肯定の返事をするのであった。
「ふーん。桃子さんとそんな事があったの?私から見ていると、そんな風に見えないけどな〜」
忍は、すこし驚いた後に、そう言うと
「でも、その後、どうなったの?」
忍は俺の言葉を言う前に、続きの話を催促してくる。
「・…はいはい、じゃあ続きを話をするぞ」
俺は、あきれながらも、話の続きをし始める。
そんな事があって、俺と桃子さんの関係はすこしずつだけどよくはなっていった。
そうして、日が経ち、父さんが仕事から一時的に帰ってきた。
今回の仕事は、いつものように要人警護仕事らしいが、なぜか長引いているそうだ。
詳しい事は、仕事にも支障が出るので、父さんは話しはしないが、俺の予想だと、何かしらのトラブル、事件が起きていると思った。
そんな事を感じながら、その日は、父さんの帰りをお祝いして、ちょっと豪勢な食事を作り、プチパーティーを開いたのであった。
次の日、俺と父さんは、道場で組手、稽古をしていた。
そうして、父さんとの稽古が終わり、父さんが話しかけてきた。
「狂也、剣筋がかわったか?・…だいぶ良くなっている。・…今までのように、剣に迷いがあったが、今はだいぶ良くはなっている。迷いが晴れてきたのか、構えを変えたのか・…どちらにせよ、よくがんばったな」
父さんはそう言うと、満面の笑みで、俺の頭をその手でわしゃわしゃと、撫でてくる。
「・…そうか、良くなったか」
父さんの言葉を聞いて、俺は嬉しくなる。
そんな中
「・・ブウゥ」
なぜか、みゆきが頬を大きく膨らませ、ふくれっ面の顔になっていた。
「ははは、みゆきも良くなっていたよ。私がいない間に、二人共によくやったな」
そんなみゆきをみた、父さんはみゆきの頭もわしゃわしゃと撫でるが
「・…最近、お兄ちゃん、私と稽古してくれないんだもん。・…いつも、別の道場に行っちゃうから、私一人で、がんばったんだからね」
みゆきはプイっと顔を横に向けながら、俺にそんな事を言ってくる。
「・…ほぉ、狂也が・…それは、詳しく聞きたいな」
俺は、そんな父さんの言葉を聞いて、シンさんのところで、稽古をさせてもらっている事、いろいろ教わっている事などを父さんに話をした。
「・…なるほどな。狂也の剣筋の変わり方はそういった事か」
父さんは納得したようにうなずく。 「じゃあ明日でも、私はシンさんという人にお礼をしなくてはいけないね」
父さんはそう言うと、再び俺とみゆきの頭を撫でるのであった。
・
そんな事もあり、次の日は父さんが、シンさんのところに行き、俺はみゆきと道場で稽古をしていた。
最初はみゆきが不機嫌だったので、稽古自体は進まなかった。
しかし、時間が経つにつれ、そう言う事はなくなり、お互いに稽古に向き合い、本格的に剣を振るっていった。
そんな時だった。
「・…!?」
「・・?どうしたの、お兄ちゃん?」
俺は、突然家の周りの雰囲気がかわったのを感じ、剣を止めてしまう。
その事で、みゅきも剣を止め、不思議そうに俺に聞いてくる。
俺は、徐々に家の周りに感じる違和感を強く感じ、みゆきに
「みゆき、ちょっと家の方を見てくる。みゆきは、道場で続きをしていてくれ」
俺は、強くなる違和感を感じながら、道場から家に向かって走り出す。
俺が、家の縁側につき、靴を脱いで家に入ろうとした時
「・…なのは!!こっちにおいで・・…」
「お母さん!!」
桃子さんの悲鳴に似た声と、なのはの叫ぶ声が聞こえたのは同時だった。
その瞬間、俺は靴を脱ぐのをやめ、家の中に走り出す。
縁側がある客間を抜け、廊下に出る。
廊下を走り、声が聞こえた、リビングの方に全力で走る。
リビングに入ると、なのはに手を伸ばす不審者と、桃子さんをはがいじめにしている不審者が目に入った。
俺はまず、なのはに手を伸ばそうとしている不審者に飛び蹴りを食らわし、吹き飛ばす。
そのまま、なのはの前に着地し、なのはを抱っこすると
「なのは、飛ぶぞ」
俺はなのはにそう言うと、桃子さんの方に向く。
その時、不審者は、突然の乱入者に気が取られ、動きが止まっていた。
その瞬間に、桃子さんは不審者の手から離れ、すこし不審者との間が開く。
その時を俺は逃さず、俺は一足で跳躍し、片手に持った木刀で不審者を上段から斬りかかる。
しかし、不審者は、俺の攻撃を後ろに飛び避けると、ナイフを逆手で持ち、体勢を立て直しかまえる。
「・…なのは、桃子さんのところに。桃子さん、ここは俺に任せてください。なのはをお願いします」
俺は、だっこしていたなのはを下ろすと、桃子さんのところに行かせる。
そして、桃子さんになのはを任せると、目の前の不振さと対峙する。
不審者は二人いたが、最初の一撃で一人の不審者は、のびている為、警戒には入れない。
警戒するのは目の前の不審者だ。
俺の目から見ても、暗殺などに使われている流派独自の構えをしている。
しかし、俺は
「・…いくぞ!雷光!」
俺はつい先日、シンさんから教えてもらい、やっと習得した雷光を使うことにした。
雷光は、木立二刀流の中にある、瞬歩より早く走る手法だ。
元は瞬歩を利用し、体の中にある気を循環させ、その気を足全体に行き渡らせ、さらに足の裏で気を爆発的に放出させ、音速並みの速度をだす、歩法である。
しかし、俺はまだ使えるようになっただけで、まだ音速の域までにはなってはいないが、常人では目に捉えることもできない早さ、玄人でも、見えても対応するには早すぎる速度はだせる。
「はぁぁぁぁあ!」
瞬く間に俺は不審者の目の前まで移動し、全力の一撃を、さらにスピードに乗せ不審者に横薙ぎで食らわせる。
「・…!!」
不審者はその一撃を防ぐことも、対応することも出来ずに、まともに喰らい、横に吹っ飛ぶ。
そのまま不審者は窓ガラスを突き破り、外に飛び出していく。
俺は、そんな不審者の事は気にせずに、桃子さんの法に振り返り
「桃子さん、大丈夫ですか?なのはも、大丈夫かい?」
俺は、桃子さん達の前まで移動し、怪我をしていないか確認する。
「・…ええ、大丈夫よ。なのはも無事みたいだし」
桃子さんは多少動揺しながらも、俺に応えてくれる。
なのはは、桃子さんの腕の中でカタカタと震えているが、俺の目からも怪我をしているようには見えない。
「!!そうだ、みゆき・…桃子さん、道場に行きましょう、みゆきが、まだ道場にいます」
「!!・…わかったわ。狂也君の後をついていくわ」
俺は、みゆきの事を思い出し、桃子さんにその事を言うと、桃子さんは強い光を目に灯し、俺に応えてくる。
おれは、それを見て、大きくうなずくと
「何があるかわかりません。出来るだけ俺に、離れないでください」
俺はそう言うと、廊下に出て、道場に向かって行くのであった。