視点はかわり、みゆき
「はぁぁぁああ!」
私の気合の一線が空を切る。
私はいま、一人で道場にいた。
宴が終わり、1日の終わりにしている日課の稽古をしていた。
「・…ふう」
私は、剣を振った状態から、中段の構えに戻し、一息をつく。
そして、ふっと思い出す。
シンさんと初めて出会った日。
そして、シンさんに恋をしてしまった日を・…
・
その日は、久々にお兄ちゃんと稽古をしていた。
お父さんも久々に帰ってきて、稽古を見てくれた次の日だった。
お兄ちゃんが急に稽古を止め、家の方に向かって急いで行ってしまった後の話だ。
私は、急な事で、何が何だか分からず、不機嫌になった。
せっかく、お兄ちゃんと稽古ができて、楽しかったのに。
しかもだ、今までとは違って、お兄ちゃんはかなり剣筋がかわっていた。
前までは、剣術のみだったのが、体術などを組み合わせて、私と対峙してきた。
さらに、今まではフェイントもほとんど無かったのが、今回はかなり混ぜてきたのである。
お兄ちゃんは、木立二刀流は、私でもかなわなかったけど、一刀流なら今までは互角だった。
しかし、今回は完敗だった。
でも、それ以上に、いろんな技が、出てきて、それを受け流し、受け止めるのが楽しくなってきたところだった。
そんな時だったのに
「・…もう!お兄ちゃんったら、なんで、一人にするのよ。それだったら、私も一緒に連れてってくれればいいのに」
その時の私は知らなかった。
家の周りの違和感に、異常な雰囲気に
「・…もういいもん。勝手に行くから」
私は、誰に言うのか、一人でつぶやくと、木刀を片ずけ、道場の外に出て行った。
そうして、外に出て、お兄ちゃんが、外に出て行った、家に戻った理由がわかった。
家の周辺に感じる、この違和感。
「・…!!さっき!?」
そうつぶやいたとたん、右腕、右肩に激痛が走り、体が吹き飛ばされる。
私はその勢いで、家の庭を転がる。
「ぐっあ」
私は、その衝撃で、肺にある空気をすべて吐き出してしまい、次の行動が取れない。
それ以上に、右肩、腕にかけての痛みが強くなり、思考が痛みに支配されていく。
「あらら、まだガキだったのかぁ〜ちゃんと、確認しておけばよかった〜」
私の耳に男の声が聞こえてくるが、息が苦しくて、何もできない。
そして、足音が私のところに来ると
「まぁ、ガキでも〜人質だよなぁ〜」
男は私の髪をつかむと、そのまま引きずるように家に向かって歩き出す。
「うわぁぁぁぁぁぁあああ・…いたいいたい!!は、はなしてぇえええ!」
私はその痛みで暴れる。
「あら〜うるさいんだなぁ〜」
男はそう言うと、足を止め、私の胸を蹴り上げてくる。
「ぐぅぅいぃぇぁぁあやぁぁぁぁああ!」
私はその蹴りで、痛みと苦しさで声にもならないような叫び声をだす。
そうして
「みぃぃゆぅぅぅぅぃぃきぃぃぃいい!!」
お兄ちゃんの声が聞こえ、男の蹴りが止まる。
「あらあら〜お兄ちゃん?登場?いやだわぁ〜」
男はお兄ちゃんを見て、剣を私の首元につける。
「いやだわぁ〜動いちゃうとぉ〜死んじゃうよぉ〜大事じゃないのかなぁ〜」
「・・っぐ」
男は楽しそうに、お兄ちゃんに脅迫する。
そして
「・…おそいわよぉ。何してたの?」
男は庭の奥を見ながら言うと、一人の不審者が現れる。
不審者は何も言わずにお兄ちゃんの方に歩いていく。
「わかってるわねぇ〜その子、殺しちゃってぇ〜」
男がそう言うと、不審者はお兄ちゃんい向かって、ナイフで斬りかかるが
「・…当たるか!」
お兄ちゃんは軽々と、不審者の攻撃を避ける。
「!!あらら〜だめじゃない。よけちゃあぁ〜この子がどうなるかなぁ〜?」
男が不機嫌な声を出しながら、私の首元に押し付けた剣を少し動かす。
すると、私の首に暖かい感じがするものが流れ出すのがわかった。
その瞬間、私は恐怖が支配した。
下からは暖かいものが流れ出すのが、足を伝い、下に流れるのがわかる。
そして、私の姿を見て、お兄ちゃんの動きが止まり、お兄ちゃんが、ナイフに、左肩を切られる。
「・…わかってるわねぇ〜あはははぁは。そのまま、切られて、死になさいな」
男は私を、不審者に任し、お兄ちゃんの方に向かっていく。
そうして、男がお兄ちゃんの目の前に行くと
「おまえみたいな〜ガキは嫌いなんだよ。・…特にその目がなぁ」
男はそう言うと、剣を大きく振りかざし、お兄ちゃんに斬りかかるが
「・…!!」
「・…桃子さん!?」
「・・・お母さん!!」
私の目には、お兄ちゃんを突き飛ばし代わりに背中から切られる姿が目に入った。
・
視点は狂也にかわる。
俺が、今から飛び出し、道場の方を見ると、みゆきが男に胸のあたりを蹴られているところだった。
俺はおおごえを出しながら男に迫るが、男が突然剣をみゆきの首元に押し付ける。
俺はその姿を見て、動きを止めてしまう。
そして、庭の奥から一人の不審者が現れ、俺に攻撃をしてくるが、俺はカル区避ける。
そうして、さらに男の脅迫が強くなり、俺は左肩をナイフで切られて、左手を使えなくされた。
そうして、男が俺のところに来て、剣を振りかざした時、俺の体が横に飛ばされ、俺の目に、俺の代わりに、桃子さんが、背中から、男に、切られる、姿だった。
「・…桃子さん!!」
俺は、いまどうなった?突き飛ばされた、代わりにどうなった?桃子さんが、切られた。
俺の思考は、いまの俺と桃子さんの事で、一杯になっていく。
「
・…!!あらぁ〜みがわり?無意味なのにねぇ〜」
男は、桃子さんを一度見ると、剣をもう一度振りかざそうとする。
その時だった
「もぉぉもぉぉこぉぉぉぉおおおお!!!」
父さんの声が聞こえたとたん、男に向かい一筋の剣線が走る。
「!・…父さん」
男が剣線を避け、大きく後ろに跳躍すると、その場所に父さんが降り立つ。
「・…狂也、遅くなった。でも、よくがんばった。後は父さんに任せなさい」
父さんはチラッと母さんと、俺の方を見ると、男を睨みつける。
それと同時に、シンさんが父さんの横に、みゆきを抱きかかえながら、跳躍してきた。
・
また視点はみゆきになる。
私は、母さんが切られるのをただ見る事しかできなかった。
その時、私は自分自身の無力さを呪った。
私のせいで、お兄ちゃんが切られ、そのせいで、次はお母さんが・…
「あ、あ、あ、あ゛あ゛あ゛」
私は声を出そうとしても、はっきりと発音できない。
怖くて怖くて、もう、何をしていいかわからなくなってくる。
そんな時だった、ふわっと何か暖かいものが、私を包む。
黒い布のようなものが私の司会を奪う。
そうして
「大丈夫かい?」
穏やかで暖かい声が上から聞こえたのは。
それと同時に、私のカラ中にあった痛みが、消えていくのがわかった。
かわりに、何かポカポカするものが私の中に流れ込んでくるのがわかった。
そして
「ちょっと、抱きかかえるよ」
穏やかな声がそう言うと、私は優しく抱きかかえられる感じがした。
そうしたら、私の視界を奪っていた黒い布がとれ、光が私の目に入ってくる。
そして、私の目には、白く長い髪、目は細く赤い瞳、整った顔の西洋人の顔、そんな人が私を抱きかかえていた。
私は、そんな人の顔を見て、顔が熱くなるのを感じた。
「よくがんばったね。苦しかったね。でも、もう大丈夫だから。君を押さえつけていた不審者はもういないから。・…さぁ、みんなの所に行こう」
その人は、私をさらに強く抱きかかえてくれると、お兄ちゃんとお母さんの方を向き、跳躍する。
その時、私の目にはお父さんがものすごい勢いで、男に斬りかかる所だった。
そうして、私は、白い人に抱きかかえられたまま、父さんがいる場所の横に降り立つ。
「・…士郎さん。こっちは、大丈夫でしたよ。後は、なのは?ちゃんですか?そちらは、ザフィーラとシャマルの二人に任せれば、大丈夫です」
白い人は、私を優しくおろすと、お母さんと、お兄ちゃんの方を見ながらお父さんと話をする。
「・…わかった。シン、家族をを頼む。・…私はあいつを・…斬り伏せる!」
お父さんは鬼の形相で、男を睨んでいる。
「・…わかりました。後は任せてください」
白い人はそう言うと、お母さんの横まで行き、片足をついて、お母さんの状態を確認する。
その時、私の目には見えた、白い人の手から、薄く青く光っているのを。
お母さんの傷が塞がっていくのを。
私が、その光景に目を奪われていると
「ザフィーラ、狂也君を見てくれ。・…シャマルは桃子さんを観てくれないか?傷が、思ったより浅いが処置によっては傷が残ってしまう」
私は、ザフィーラと呼ばれた男性と、シャマルと呼ばれた女性を見る。
ザフィーラと呼ばれた男性は、お兄ちゃんの方に行き、お兄ちゃんの体の状態、傷の具合を見ている。
シャマルと呼ばれた女性は、腕の中に、気絶しているなのはを抱きかかえていたが、そのなのはをシャマルと呼ばれた女性は、優しくお母さんの横に寝かせると、お母さんの容体を確認し始める。
そして、シャマルは、服のポケットから、手のひらサイズの丸いケースを出すと、蓋を開けて中にある、濃い緑色のジェルみたいな物を、お母さんの傷口に塗っていく。
「・…シャマル、悪類が、桃子さんを見たら、その子も観てくれないか?」
「ええ、わかったわ」
シャマルは、白い人にそう言われると、軽くうなずき、私の方に移動してくる。
そして、私の前で立ち止まると、両足をついて、目線を私に合わせてくる。
シャマルは笑顔を私に向け
「・…痛い所はない?違和感を感じる所はない?それと、一応体を観せてくれる?傷がないか確認したいから」
シャマルさんはそう言うと、黒い布越しに、私の体を優しく撫で、私を確認する。
その時、私は気づいた、私にかかっていた黒い布は、トレンチコートだったのは。
それに気づいた私は、なぜかぎゅっと服をつかんでしまう。
あらら、とりませんよ。・…」
シャマルさんは、そう言うとトレンチコートをずらし、私の体を確認する。
「痛みはない?私の見た目だと、骨折や打ち身はないみたいね」
私の顔を見ながら、頭を撫でる。
「・…シン、この子は大丈夫よ。特に問題はないわ」
シャマルさんはシンさんと呼ばれた、白い人に、私の状態を教える。
「・…シンさん・…シンさん」
私はシャマルさんの声を聞いて、トレンチコートをぎゅうっと強く握り、白い人の名前をつぶやく。
名前をつぶやくと、なぜか顔が熱くなり、鼓動が早くなる。
そして、私がそんなことを考えながら、シンさんと呼ばれた人を観ていると
「・…おわったか」
シンさんがそう言うと、私はシンさんが見ている方向を見ると、お父さんが男の人を、斬り倒しているところだった。
男は、口から血を吐き、胸を押さえ倒れていった。
お父さんは、剣についた血を、一振りして血を飛ばすと、私たちの方を向いて、歩いてくる。
「・…士郎さん、お見事。本当に第一線をそれでも、退いたのですか?」
「・…いや、相手が未熟なだけだった、だけの話だよ。それよりも、家族は?・…もも子は・…」
シンさんは肩をすくめながらお父さんにそう言うが、お父さんは私達を見てから、お母さんを見る。
「大丈夫、見た目はかなりの出血があったように見えますが、傷は浅く、うちのカミオカ印の傷薬で治療できる範囲でしたので、命にも、別条もないし、傷跡も残りませんよ。・…ただ、いまは切られたショックで、気絶していますけどね。それでも、数時間は寝ているかもしれませんが」
シンさんはお父さんの横に立ち、お父さんにそう言うと
「・…そうか。・…よかった」
お父さんは、お母さんの横にしゃがみ、泣きそうな声で、シンさんに応えるのであった。
・
私は、目を開け、道場の中を見渡す。
「・…そういえば、あのあと大変だったな」
私は、さらに思い出す。
あの後、お父さんは、お母さんの名前を連呼しながら無くし、それにつられて、なのはも無くし、お兄ちゃんも泣いていたっけ。
あ、私もか。
でも、徐々にみんな冷静になって、お父さんとシンさんは、男や、不審者とかの後かだずけに行き、お母さんはシャマルさんが看病してくれることになり、部屋のベットに寝かせ、経過をみることに。
なのはは、いままでの騒動で疲れてしまい、いまはソファーの上で寝ている。
お兄ちゃんは、傷の手当を受けてからは、自室に入り、部屋から出てこない。
私は、いろいろしてしまったので、お風呂とか着替えをすることになった。
そうして、私がお風呂から出てくると、リビングにはみんなが集まっていて、お父さんが、お母さんが、お兄ちゃんが、なのはが、みんな抱き合って泣いていたっけ。
私も、その中に混じって泣いたっけ。
でも、その後がなぁ〜
いくら、お母さんが心配でもお父さんが、泣きながら、お母さんの背中を観る為でも、背中側の服をめくり、傷を見ようとした時、服の前側も捲れてしまい。
お母さんの胸が出てしまった。
しかも、一応治療をしていたので、下着もしていなかったので、もろに出ていた。
それを、まともに見てしまった、シンさんは鼻血をだして、、倒れてしまい。
お父さんは、お母さんの全力パンチを喰らい、窓ガラスを吹っ飛ばし、庭に向かってぶっ飛んで行った。
まぁ、その後、お兄ちゃんは、お母さんに何か話をして、泣きついていた。
私は、そう言った事を思い出していた。
「・…でも、鼻血をだして倒れているシンさんを、蹴飛ばしまくちゃったっけ」クス
つい、思い出し笑いをしてしまう。
あの時は、なんでそんな事をしたのか、わからなかったけど、いまならわかる。
嫉妬していたと。
そう、あの顔が熱くなったのも、胸の鼓動が早くなったのも、シンさんに、私が一目惚れをしていた事に。
・
場所は月村邸、忍自室。
「・…なるほどねぇ〜そんなことがあったのかぁ〜」
「ああ、あの時、父さんとシンさんが来てくれなかったら、どうなっていたか・…」
俺と忍は話の継ぐ気をしていた。
「・…まぁ。なんだ。その時、桃子さんになんで、俺を月となしたのかも聞いたんだ」
「へぇ〜なんか、言うことはわかるような気がするけど」
忍はそう言うと、キラキラした目をしながら俺に迫ってくる。
「もも子さんから言われたのは・…」
俺は当時のことをふりかえる。
「・…狂也君、私は士郎さんの奥さんよ。なのはは私がお腹を痛めて産んだ子供。・…あなたや、みゆきは、私が産んでいなくても、士郎さんの奥さんになった時点で私の子供と一緒よ」
桃子さんはそう言うと、優しく俺の頭を撫でてくれる。
「だからよ。私の子供が、危険な目にあっている。命が危ないと思ったら、親はね、命に代えても、自分の命で子供が助かるなら、平気で命を差し出すわ。・…狂也君は、私達の大切な子供よ。それは、なのはも、みゆきも一緒よ」
桃子さんは急に俺を抱き寄せる。
「・…だからね。・…そんなに自分を責めないで、もし狂也君じゃなくて、みゆきでも同じことをしたわ。だから・…」
「・…ごめん。で、でも・…」
俺が桃子さんの声を遮り、言おうとすると、桃子さんはさらに強く抱きしめてくる。
「でも、じゃないわ。・…たしかに、私は士郎さんほど強くない。狂也君にもかなわない。でもね、私はあなたのお母さんなのよ。義理でも、私があなたのお母さんなのだから、あなたの事を守らせて。・…普段士郎さんがあなた達の事を守れなくても、私が近くにいる。必ず守ってあげるから、気にしないで。親はね、子供を守るのがああたりまえなのだから」
桃子さんは俺を強く抱きしめながら、そう言ってくる。
俺はそんな事を桃子さんから、言われ目が熱くなってくる。
俺は、心が安らいでいくのがわかった。
俺は、ただ、甘えたかったのか?安らぎが欲しかったのか?俺を見て欲しかったのか?
いろんな考えが頭の中を走り巡る。
そうして、俺はこんな暖かい人を守ろうと、悲しまないようにしようと、感じた。
「・…もも子さんらしいわね」
忍はそう言うと、ふうっと息をつく。
「・…そうだな。それからは、今のような関係をもてるようになった。さらに、シンさんにも剣は良くなったと言われたけど、桃子さんには、絶対にかなわないよっても言われたんだよな」
俺は、その事件の後に言われた事を思い出す。
「?なんで、かなわないの?」
忍はその言葉を聞いて、俺に聞いてくる。
「それは、心の強さが違うっていわれたのさ。相手を思う気持ち、守りたいという思い、それが、その人の本当の力だって教えられたんだよ」
「なるほどねぇ〜シンお兄ちゃんらしいわ。本当に、お兄ちゃんは・…」
忍は俺の話を聞いて、思いをめぐらせながら、俺に応える。
そんな話をしながら俺も思う。
シンさんからはいろんな事を教えてもらった。
それでも、言われるのは心の強さ。
そうして、それを実際に見せてくれた桃子さん。
その人に対しての思い、守りたいという気持ち。
そう、人は守る人がいる人ほど、強いという事を、2人から教えてもらったっと俺は思うのであった。
・
ちょいおまけ
あのトレンチコートはどうなったかというと、みゆきがしっかり回収?奪い、シンは
「自分のいっちょうらんがぁぁ」
「フラグをたてたあなたが、悪いです」シャマル
「・…あきらめろ」ザフィーラ
「むふふふふふふふふふ」アリシア
「・…ほう、シン。後で話をしよう」士郎
遅れました。
本日は2話連続投稿しました。
楽しみにしていた方、遅れた事すみませんでした。
これからもよろしくお願いいたします。
それと、この小説でみゆきが、狂也の事をお兄ちゃんと呼んでいますが、本当は、とらハ3になるのですが、狂ちゃんなんですよね。
書いている途中で、気づいたのですが、もうここまで来ると、全部修正ができないので、お兄ちゃんのままで行きたいと思います。
設定知っている方とか、違和感を感じている方、お許しを