VividStrikeScarlet!   作:tubaki7

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♯14

「いいかアスカ。お前には弱点がある。まずは炎熱変換だ」

 

 手のひらにボウっと炎を出しながらアギトが言う。

 

「これはお前の持ち味であって、最も欠けている部分でもある。ちょっとやってみろ」

 

 言われて足元に魔法陣を展開する。掌を上にして、そこに淡く灯す・・・・具体的にはロウソクに炎を灯すイメージで意識を集中させ、少し間を置いて炎が出る。

 

「遅い。実戦での活用を考えるなら1秒と掛かる前にやれ。最悪0,5秒だ」

「俺は宇宙刑事かなんかですか!?」

「言い訳はよせ。・・・・フロガは呼吸をするよりも当たり前にやっていたぞ」

 

 フロガ・スカーレット。古代ベルカに実在した、”炎帝”の異名を持つ凄腕の騎士。アスカにとっては先祖にあたるその人物の名前を出されて、少しムッとなる。さらにやる気をだしたようでアスカは再度手のひらに意識を集中させる。しかしその僅かな精神の乱れが、コントロールを鈍くさせ必要以上の火力で炎を灯してしまう。さながらフランベでもしたかのように火柱が上がり驚いて尻もちをつく。

 

「炎熱変換はコントロールが最も難しい。現在確認されている電気、氷結、そして風・・・希少価値の度合いはあれど、最も魔力コントロールを要求されるのがこの炎熱だ」

「一歩間違えれば自分が燃える。援護のつもりが仲間を燃やしちまう・・・言ってみりゃ、くじでハズレを引いちまったようなもんだ」

「自滅については他の属性にも言えることだが、炎の大きさや温度と言った細かな所まで考え、コントロールしなければならない」

「けど、それをモノにすりゃあアタシやシグナムみたいな戦い方だってできる。合宿の時、もしお前がこの力を使いこなせていたなら・・・そう思う場面は何度もあった。自分でもわかるな?」

 

 アギトの問いに静かに頷くアスカ。

 

「魔力とは言っても、それもエネルギー体の一種だ。そう言ったものは全て”熱”から始まる。我らの力は、その熱を”炎”という概念に変えて形と成している。それを極める事が出来れば、砲撃魔導師の最高難度技術(エクストラスキル)である収束も今よりもっと速くなるだろう」

「それに、威力も増す。普通に収束砲をぶっ放すのと炎の属性変換を付与させてぶっ放したのとじゃ全っ然違ってくるんだぜ」

「・・・つまり、使いこなしてさえいれば、あの砲撃戦も」

「ああ。ティアナの”スターライトブレイカー”を相殺させ、なのはの”スターライトブレイカー”を通すことも夢物語というわけではない。・・・ま、わかっていてもあの規模は私とアギトでもどうしようもないがな」

「マイスターでも出てこない限りアレはムリゲーだよな」

 

 どこか遠い目で話す二人。何故か知らないが地雷を踏んだらしい。ともあれ、二人の言いたいことはよくわかった。――――要は、「使いこなせなきゃ勝ち上がるのはまず無理」ということだ。選考会はまだいい。大半の大型魔法が使えないし、体術が基本だからだ。が、予選や本戦はそうはいかない。使いこなせなければ、即敗北・・・・。

 

 

  約束を守る。強い自分になる。後戻りなど、する気はない。

 

 

「・・・教えてくれ。俺に、全部」

「・・・良い顔になった。では、特訓を再開するぞ」

「押忍ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッ!」

 

 毒づきながら、エルスは鎖を操作して対象を追う。リングの中を縦横無尽に駆け巡り、寸でのところでいつも回避される。捕縛系魔法を使う身としては、これほど厄介極まりない回避の仕方はない。動かないと思って速度を上げて拘束しようとすれば、急に動かれて停止の命令が追いつかずに空ぶって次につなげるのにロスが生じる。懸念されていた展開ではあったが、ここまでとはエルスも予想はしていなかったようでイマイチ攻めきれない。

 一方、それはアスカも同じであった。近づこうにも行く手を阻まれて、しかも強引に突破しようとすれば相手の思う壺というわけだ。でも、隠し玉がないわけではない。しかしそれをこんなに早く使っていいものかどうか・・・・。

 

 思考するアスカに、ベルト型になって腰にその割っている相棒から激が跳ぶ。

 

『何を躊躇っているのですか』

《ブレイブ・・・》

 

 思念通話で愛機の言葉に耳を傾ける。

 

『貴方は開会式の時、私に言いました。上に行こう、と。なのに今は、それを躊躇っているように見えます。貴方の想い、貴方の夢・・・貴方の強さは、こんなものですか?私は・・・こんなものでは、ありませんよ』

 

 ――――炎熱変換に限らず、魔力変換はデバイスにも負荷をかけることになる。

 

 訓練の際、シグナムが言っていたことを思い出す。力は確かに力だ。しかし、それを手なずけるとなれば話は変わってくる。自分一人でも力は使える。しかし、それを”制御”するにはまだアスカはあまりにも幼い。

 

 故に、必要なのだ。自分と共に戦い、高みを目指せる”戦友(とも)”が。そして今、自分はその友と一緒に戦っている。

 

(そうだ・・・戦っているのは、俺だけじゃない)

 

 回避に徹していたアスカがその動きを止める。そして迫り来る鎖。観客席では、まさかの光景に息を呑むヴィヴィオ達。

 

「・・・行くぜ、相棒」

『オーライ、バディ』

 

 エルスの魔法が、遂にアスカを捉える。腕、足、腰、首。四肢の全ての自由をエルスが手中に収めてしまった。

 

「先輩ッ!」

「アスカ、どうしたのよ急に!?」

「こらアスカ!お前こんなとこで負けたら承知しないかんな!?」

「・・・アスカ先輩・・・」

 

 躊躇う必要はない。教えてもらったことは、ちゃんと自分の中にある。恐れるな・・・今度は、ちゃんとできる。うまくやれる。だって俺は・・・・いや、俺達(・・)は。

 

  ――――一人じゃ、ない。

 

 腕と脚の装甲が赤く、淡く輝く。そこから炎が鎖を伝って走り・・・分解する。捕縛魔法は常に使用者の演算処理を要求される。この理論は主にデバイス側で処理するのだが、多くの魔法を同時に発動、使用するには術者である人間の方にも高度な演算能力が求められる。エルスの場合、デバイスと術者であるエルス自身がその能力に秀でている為より高度で強力な魔法の行使が可能となっている。しかし、それはあくまでも彼女が冷静であったならばの話だ。

 バインドの拘束から脱出するには主に二つの方法が用いられる。一つは、使用者よりも高度な演算処理で魔法の処理を上回り、瓦解させる。もう一つは・・・ただ単純に、破壊(・・)すること。幸いなことに”ブレイブハート”もアスカも演算能力は高い方ではない。故にバインドの使用頻度も成功確率も低い為、多用はできず、捕まってしまえばそこから抜け出すには時間もかかる。逆に破壊しようとすれば、ダメージ覚悟でやらねばならない。

 

  しかし、今の彼は違う。破壊という手段を行使したとしても、炎熱変換能力を使いこなせばこの程度のことはたやすいのだ。

 

 想定外すぎる行動に、エルスは一瞬あっけにとられてしまう。そしてその一瞬は、アスカにとって最大のチャンスであった。

 

「抜剣ッ!」

「いけないっ!」

 

 伸びきっていた鎖を素早く手元に戻す。再度捕らえようとした――――その時。引き寄せた鎖に、紅い粒子が付着しているのが目視できた。それも、大量に。それはエルスのジャケットにも付着する。それを見たアスカの顔が・・・・笑っていた。その笑みに悪寒を覚えたエルスだったが、もうその時にはアスカの術が発動している。軸足とは逆の右足を回し蹴りの要領で振りぬく。そのモーションがスイッチとなり、散らばっている魔力の粒子が燃えて蹴りの軌跡を描き出す。離れている距離であっても、目視できるのであれば術の行使が可能だ。一種の起爆魔法で少量であれば威力は大したことはないが、今はアスカの体に接触し、且つ魔力に当てられている。それが今、ほぼゼロ距離で燃え盛る。さながら本当に蹴りの直撃を喰らったかのような衝撃は防御するよりも早くエルスへと叩き込まれ、その華奢な体をリングの外へと叩きだした。

 

《・・・な、なんということでしょうか!触れてもいないのにエルス選手の体が突然爆発に吹っ飛ばされリング外に!》

「クッ・・・・やってくれますね・・・!」

「なんの。本当の勝負はこっからだぜ!」

 

  第一ラウンド。エルス、場外。第二ラウンド・・・・開始。




 ※特訓中の一コマ

シグナム「男なんだろ」
アギト「グズグズするなよー」
アスカ(・・・火をつけろってことか?)

 ボッ!←丸太人形に炎を付ける

アギト「ああ!?ヴィータ姉御のお手製丸太人形が!?」
シグナム「誰が燃やせと言った馬鹿者ッ!」
アスカ「え?だって今火を付けろって」
アギト「そこは”胸のエンジンに”って歌詞だったろうがッ!」
リイン「みんな、差し入れ持ってきたです・・・ってわーッ!?」

 その後、めっちゃ錆にされたアスカであった。
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