VividStrikeScarlet!   作:tubaki7

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投票受付は今日までとなります、お早めに。そしてここからはすこーしだけ、日常回的なものになります


♯22

 激動だったインターミドル第三回戦も滞りなく行われ。敗者と勝者に振り分けられた選手たちは、それぞれの日常へと一端戻って行く。ヴィヴィオとミウラの後に行われた三回戦最終試合であるリオ対ハリーの試合は、まさに見る者を文字通り”圧倒”する戦いだった。

 

  そうして、ひと段落が終えた頃。八神家ではルーテシア、ミウラ、そしてアスカの三人の祝勝会が行われていた。

 

「よぉしミウラ、飲め!」

「いやあの、先輩これオレンジジュースですよね?なんで酔ってるんですか」

「うるちゃいうるちゃいうるちゃい!それともなにかぁ、きみはぁ、ボクの淹れた果汁百パーセントジュースが飲めないんですかぁ?」

「はやてさんなんとかしてください!」

「んー、パス」

「あっさり見捨てられた!?」

 

 まったく、と溜息をついてミウラからアスカを引きはがすルーテシア。そんな彼女に抗議の目を向けるも一瞬にしてそれを反らし、「スミマセン」と何故か片言になってソファで正座する。よほど怖かったのだろう。その後もガヤガヤと賑やかな喧騒は続き、時刻は日付変更まで針がまわっていた。夜の星と、寄せては返す波の音だけが響くテラスでアスカは一人、浜辺に腰掛ける。これまでの事を一つ一つ思い出しながら、考えることは次の対戦相手の事と――――自身のこと。

 炎帝、フロガ・スカーレット。古代ベルカにおいて無敗を誇った騎士にして、自分の先祖だ。そんな偉大な人から受け継いだ力は、今こうして自分の物となっている。記憶はまだまだ薄っすらと霧がさしているように見えることは叶わないが、それでもこうして思い返してみると彼の生きた時間のほんの一部を追体験できる。それは温かくも、少し冷たい。愛しい人達と笑いあった時間。守りたいものの為、血を流した時間。そんな二つの時だ。

 

「なーにふけってんのよ」

 

 そこへ皿洗いを終えたらしいルーテシアがやってくる。

 

「ここいい?」

「ああ」

 

 隣に腰掛け、アスカと同じように星を見上げる。温かく心地よい風が紫の髪を攫う。

 

「・・・俺、あの子とどう接していいかわからなかった」

「ヴィヴィオのこと?」

 

 肯定の意を示すように静かに頷く。

 

「負けた後、今まで積み上げてきたものを全部失くしちゃうんじゃないか。もうあの子の笑顔を見れなくなるんじゃないか・・・・そう考えたら、凄く怖かった。そりゃ、ミウラが勝ったのは嬉しいぜ?でも・・・」

「優柔不断ね、相変わらず。あたしが施設にいた頃もそうだった。毎度毎度遊びに来ては一緒にご飯食べてさ、覚えてる?その時サラダにかけるドレッシングを和風にするか中華にするかって些細なことでずっと悩んでたでしょ」

「あー、そんなことあったなそういや」

「結局、あたしが見かねてゴマかけたのよね」

 

 渇いた笑い。こういう時は、この子には敵わないと舌を巻くアスカ。

 

「アンタが考えてるほど、あの子達は弱くないわ。きっと、もっと強く大きくなってまた次に繋げてくる」

「・・・ああ。そうだな」

「んで、そういうアスカの悩みはまだあるんでしょ」

「なんでわかった。エスパーか!?」

「おいなんでそんなに距離を置く」

 

 もの凄い勢いで距離を空けたアスカにツッコミをいれつつ、「アンタの事ならアンタ以上に知ってる自信あるわよ」と付け加えて自爆する。サラッと勢いで言ってしまった言葉にこれじゃ告白と変わんないじゃないと一人後悔とパニックに陥る。そんな、アスカからしてみれば急に悶え始めた奇天烈なルーテシアをいぶかし気に見つつ再び空を観る。

 

  満点の星空だ。こんな空も、ベルカでは観ることができたんだろうか。

 

「そんなに気になるんなら、後で無限書庫でも行って調べてみれば?」

「けど俺、古代文字とかわかんねーし。精々グロンギ語が読解できる程度だし」

「ちょっと待てなんでそれわかってベルカ語読解できないのよアンタ」

 

 ヘンな方向にステ振りを全開しすぎている、もはや相方と言われても否定できないまでの関係にまでなってしまったことに軽く絶望しながらもツッコミをいれるルーテシア。アハハハ、とまた乾いた笑い。やはり今日のアスカはどこかおかしいと、直感で悟る。

 

「あたしはそーいうのよくわかんないけどさ、そこまで気にするほど?だってアスカはアスカ、先祖は先祖でしょうに」

「そりゃそうなんだけどさ」

「それに、そう言ってアインハルトに論破したのに今更それ真に受けるっての?」

「そん時は、まさか自分が古代ベルカの騎士の末裔だなんて知らないし・・・」

 

 ブツブツと小声でいうアスカ。

 

「・・・聖王家を裏切った反逆者。そうヴィクターから聞いた」

「ヴィクター・・・たしか、ヴィクトーリア選手よね。シャンテと戦った」

「ああ。詳しい事はわかんねーけど、ご先祖様が残した書物にはそう書かれてたらしいぜ。まぁ、だからってわけじゃないんだけどさ・・・・時々、ほんの時々だけど、恐くなるんだ。俺も、ひょっとしたら誰かを裏切るんじゃないかって」

 

 珍しく弱弱しい事を言うアスカ。そんな彼の言葉をただ黙って待つ。

 

「ハルちゃんがクラウスの記憶に引っ張られそうになる時があるって言ってたんだけどさ。今になってわかるよ。俺もそうだ。自分が自分で無くなる気がする。それでもしかしたら・・・・って」

「・・・・”きみはきみだ。他の誰でもないきみ自身だ”。アインハルトから聞いたわよ。まったくよくこんなクサい台詞言えるわよねアンタ」

「い、いいじゃんかよ別に」

「だったら、そんなウジウジしてるんじゃないっ。あたしの知ってるアスカ・スカーレットは、とんでもないバカでお調子者で、それでいて優柔不断で鈍感で」

「あの、ルーテシアさん?それってフォローになってな――――」

「――――だけど、あたしの事を助けてくれた。今でも忘れられない、ヒーローみたいな人・・・・ね」

 

 立ち上がって、此方に振り向きながらそういうルーテシア。星に混じって、一際明るく輝く月。そんな月を水面に映しながらも揺蕩う波は、空からの光を反射しながらより一層その美しさを際立たせる。そんな幻想的な風景も余ってか、アスカの目にはルーテシアがとても魅力的に見えた。

 

「・・・よ、よせよバカ、何がヒーローだよまったく」

 

 そう言って慌てて立ち上がって着いた砂を払うアスカ。踵を返すも砂に足を取られてよろめくが、なんとか立て直してそそくさと家へと戻って行く。そんなつっけんどな態度をみて、ルーテシアは顔を烈火の如く赤くしながら声を荒げる。

 

「なによそれ!折角ひとが褒めてあげてんのにその態度はないでしょ!?」

「ハっ、おまえに褒めてもらわなくてもヴィヴィちゃんの笑顔みれば一発で元気百倍アソパソマソだぜ!」

「言ったわね!?もう絶対心配なんてしてやるもんか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事があったので今は喧嘩中です」

「私の赤裸々な事情を暴露された上にどうして先輩はこう、間が悪いと言うか空気が読めないというか。兎に角あとで謝ってくださいね」

 

 昨夜の事を学校帰りで偶々出逢ったアインハルトに話す。最寄りの喫茶店で一息つきながら、アインハルトは少し甘めのアイスコーヒーを一口飲む。

 

「それにしても、なんだか新鮮な感じですね。先輩の制服姿」

「これでも学生だからな。来年には受験だけど」

「将来のこととか、もう決まってるんですか?」

「んー、それがまだぼんやりと。ただ、格闘技は好きだし、魔法戦技競技もやっていきたいってのもあるし・・・多分、第一志望としてはプロかな。あとはギンガさんとゲンヤさんからウチの隊に正式所属しないかって話もあるね」

「で、また優柔不断発動中と」

「そーなんだよねー・・・」

 

 ぐったり、とテーブルにへ垂れ込む。

 

「でもさ。やっぱ今一番気になるのは自分のことなわけよ」

「炎帝・・・フロガのことですか」

「そ。さっすがに記憶を持ってても何も知らないってのは・・・ね」

 

 ストローでアイスティーの氷をグルグルとかき回しながらそう呟く。

 

「・・・知らない方が、幸せなこともありますよ」

「それは、経験からかな?」

「一応、先輩よりは経験してますから。・・・・だから、ですかね。それだけにあの時言ってもらった言葉が凄く嬉しかったです」

 

 ――――”きみはきみだ。他の誰でもないきみ自身だ”。

 

「あー・・・・いやはや、なんというか」

「その言葉と、出逢った人たちの支えがあって今の私がいる。そう実感できるんです。戦いの中だけでなく、今こうして先輩とお話している自分。ヴィヴィオさん達と一緒にトレーニングに励む自分・・・どれもみんな、おんなじ私なんだって」

「・・・ハルちゃんもそういうこと、割とサラッと言うよネ」

「そうでしょうか?感謝の気持ちを素直に表しただけなのですが」

 

 恥ずかしい台詞禁止っ!と言ってやりたいがこれ以上やりとりを続けると周囲の生暖かい視線がさらに生暖かくなるのでこれ以上は精神衛生上よろしくない、そう考えたアスカは慌ててアインハルトを連れて店を後にする。道中、いつもの調子を取り戻そうとボケを放ってみるもやはり空回りしてしまいあっという間に二人はアインハルトの住む部屋があるマンションまでやってきた。

 

「今日はありがとうございました」

「いやこっちこそ。ゴメンね、なんか愚痴っちゃって」

「いえ。なんだかいつもとは違った先輩の一面をみれたので、楽しかったですよ」

「ははは・・・そう言ってもらえると助かるよ。じゃ、またね」

「はい。・・・・あの!」

「ん?」

「・・・・今週の日曜日、何か予定はありますか?」

「ないよ?」

「でしたら、その・・・・つ、付き合っていただきたいのですが!」

 

 精一杯。本当に、これが精一杯だと、アインハルトは心臓が口から飛び出しそうな程バクバクしているのを堪えるが如く、スカートのをギュッと握り締める。皺になるとか、そんなことに気遣える余裕など今の彼女にはなかった。ややあって、アスカが口を開く。

 

「喜んで」

 

 ・・・・なぜだかこれ見よがしにキリッ、という効果音をつけてキメ顔をしてきたのが非常に納得がいかないがそれでも了解はもらえた。そのことに内心ガッツポーズをしながらもアインハルトは嬉々とした表情で別れを告げ駆け足でマンションへと入って行った。

 

「・・・・ひゃっふぉい美少女とデートだヒャハーッ!」

 

 ただ一人、無駄に浮かれるアスカを残して。




 ~アスカ、ルーテシア。夜の浜辺にて~

ルーテシア(何やってんのよあたし!今のは告白する流れでしょーがッ!)
アスカ「あの、なんでみんなしてニヤニヤしてるんでしょうか」
八神家一同「(・∀・)ニヤニヤ」
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