VividStrikeScarlet!   作:tubaki7

41 / 43
♯33

 もし、この世に〝楽園〟と呼べるものがあるとするならば。そこには天使がいるのだろう。

 

 もし、この世に〝かわいい〟以上にその姿を褒め称える言葉があるならば。この哀れな少年に教えて欲しい。

 

 もし、この世に〝バカ〟と形容できるものがあるとするならば。それは間違いなく彼だろう。

 

「くうううううううううううううぜんっ、ぜつごのおおおおおおおおッ!超絶怒涛n————」

「————やかましいッ!」

「フェニックス!?」

 

 いつぞやのアスカ並の手刀を今度はルーテシアが叩き込む。脳天に直撃を受けて蹲るアスカだが、今日のこの男は一味も二味もクセが強い。一瞬のうちに復活し、今度はどこぞの変態科学者よろしく高笑いをする。周囲の目もいよいよ険しいものになってきた。

 

「滾るぞプリティ!漲るぞライフ!震えるほど・・・ジャアアアスティイイイイイイイイイイスッ!」

「はやてさん」

「泣くのはアカンでルールー。泣いたらそれこそ乙女心を否定してまう」

 

 はやての励ましと同行しているヴィクターとミウラの慰めもあってなんとか正気を保つルーテシア。この二人がいなければ、きっと彼女は心折れて今までの恋心全てを否定していただろう。そんな校門前でのコントもひと段落し、5人は校舎の中へと入って行く。今日は年に一度のst.ヒルデ魔法学院の学院祭。言うなれば、文化祭だ。こちらの学校は魔法を基礎から学ぶという特色もあって魔法を使った一味違う催し物が多い。単に喫茶店と言っても、その風貌は様々である。例えば・・・・そう。ヴィヴィオ達のクラスではゴーレムを使ったファンシーな雰囲気溢れる可愛らしいものがある。他にも様々な思考を凝らした展示品やイベントなど多種多様なもので、まるでテーマパークにでも来たかのような錯覚を覚える。

 

「おろ?ヴィヴィオのクラスは満席みたいやね」

 

 お目当てのヴィヴィオのクラスの前まで来てみたはいいものの、そこには長蛇の列――――とまではいかないまでも、店内は既に満員状態。加えて今はショータイムとだけあって中の様子を一目見ようと立ち見の客すらいる状態だ。

 

「ぐぬぬぬ・・・だから言ったじゃないですかはやてさん!早く行こうって」

「あんなアスカ。早朝の5時から来たところで誰一人として学院内におらんどころかそれ地球の運動会の風習やん、なんでそんなこと知っとるん?」

 

 あ、そういえば俺って転生してるんだったとはやてのツッコミで思い出すアスカ。今まで色々なことが一度に起こりすぎて忘れていたが、そういえばそうだったなとふと物思いにふける。

 

  自分も学生の頃、文化祭が楽しみだったなぁ・・・・あ、俺の行ってた学校文化祭なかったわ。

 

 そんなどうでもいいことはさておき、このまま立ち見では勿体ない。とのことで出入口付近にいたリオを見つけ声をかける。

 

「先輩、皆さんも来てたんですね!」

「リオちゃんかわいいんでお持ち帰りしていいよね。答えは聞いてないッ!」

「せめて聞いてくださいよ!?じゃなくって、実はうちのクラス、隣のクラスとも提携してるんですよ。良かったらどうですか?」

 

 言われるがままリオに案内される。そんな彼女の顔は着ているメイド衣装とは似つかわしくない何ともイタズラを企んでる感あふれる笑みを浮かべていた。教室の扉には〝ストライクデビル〟と書かれている。ルールを読み込んでいくと、つまるところ的当てゲームのようだ。モードが幾つか別れており、それぞれのステージをクリアすると個々に景品もあるらしい。ちなみにその中でも最上級のエクストラはとんでもない位難しく、未だ達成者0人とある。なんでも、隣のクラスから(・・・・・・・)超強力な助っ人を呼んでいるとか。

 

  そこで、この男が動いた。

 

「この助っ人・・・感じる!これはきっとヴィヴィちゃんのことだそうに違いないというかそうじゃなかったら俺切腹するわ」

「何を感じ取ったのかはさておき、まあ十中八九そうでしょうね」

「じゃあ外れたらマジで切腹な?シグナム監修で」

「ちょ、その監修いらないっていうかジョークっすよジョーク。HAHAHA」

「くだらないことやってないでとっとと入るわよ・・・」

 

 中に入ると、ルート別に通路が別れている仕様のようで選択したエクストラハードモードの方へと案内に従って進む。と、そこには小悪魔を催したメイド服を着たヴィヴィオが待っていた。

 

「・・・・・・・」

「は、はやてさん!先輩が気絶してます!」

「あまりの可愛さに失神したんやなぁ。わかりやすい子やねぇホンマ。けどそれやとせっかくのヴィヴィオのおめかしがもったいないからここは戻ってきてもらおか」

 

 そう言って軽く手刀を首元に叩き込むはやて。それで意識を取り戻したアスカはこれまでにない位のだらしない顔でヴィヴィオを見る。

 

「ど、どうですか先輩・・・?」

「ヴィヴィちゃん、マジで結婚しよう」

「ハイハイ、現実に帰ってきなさい」

 

 今一度後頭部にビンタをくらうアスカ。その様子を後ろから見るヴィクターは驚愕する。そのツッコミの容赦のなさと身内とは思えない扱いの酷さに。

 

「ねえミウラさん。アスカというか、貴女の身の回りっていつもこんななの?」

「あははは・・・まあそうですね。でも今日は輪をかけて酷いかもです」

 

 もはやフォローする気にもなれないミウラ。それはさておき、今はゲームをしに来たのであってヴィヴィオの可愛らしい姿をいつまでも見続けているという訳にもいかない。軽く改めてルール説明を口頭から受け、トップバッターはミウラが務めることとなった。

 

「ミウラ、アレやってみよか」

 

 そうはやてが耳打ちする。

 

「あの、このボールって蹴っても大丈夫ですか?」

「いいですよ。ガンガン来ちゃってください!」

 

 ヴィヴィオの自信たっぷりな様子から察する限り、絶対にセーブするという確信があるのだろう。それを見取ったミウラは手加減することもなく、ボールを宙に一端放り、落ちてきたところを思いっきり蹴り抜く。魔力を帯びたそれはヴィヴィオの横斜めを弧を描いて飛んでいく。が、しかしそれはいともたやすくキャッチされてしまった。

 

「ええ!?」

 

 こちらも自信ありで蹴り抜いていたミウラも驚く。周囲のざわめきも大きくなり始めたところで、ここが一番盛り上がるだろうと今度は全員一斉にと許可を出す。

 

『どう思いますかマスター』

「ん?防ぐとおもうよ。今のヴィヴィちゃんなら、これくらいはやってのけるさ」

 

 一目見ただけでわかった、彼女の瞬発力。以前よりも格段にアップしているのは間違いない。今日まで、きっと彼女は沢山練習してきたのだろう。格闘技に向いていないとわかっていても、それでも自分を信じて教えてくれたコーチの為、共に切磋琢磨する仲間と一緒に強くなる為に。小さな少女の頑張りに、つい頬が緩んでしまうアスカ。

 

「すごい、まさかアレを同時にさばき切るなんて・・・」

「さて、まだ終わりじゃないですよね。・・・先輩!」

 

 誘われて、乗らない手はない。嬉しくなると同時に、闘争心に火がともる。

 

「・・・・行くよ」

 

 ミウラ同様、蹴りで攻めるつもりらしい。ボールを宙に放り、蹴り抜く。赤い魔力を帯びたそれは、まるで放たれた矢の如く飛び的を目指す。

 

「甘いですよ、先輩!」

 

 しかし当然の如く、ヴィヴィオはキャッチしてしまった。

 

「お見事」

 

 が。それで終わらないのが、この男である。

 

「けどヴィヴィちゃん。それ、囮なんだよね」

 

 「え?」と、ヴィヴィオが声に出すよりも速く後方の的が射抜かれた音がした。振り返ると、そこにはボールが。じゃあ、これは?とヴィヴィオが手の中にある光る球体を見るとパン、と弾けて消えてしまった。

 

「ルールはちゃんと読んだし聞いてたよ。ボール以外の物を飛ばすのは禁止だよね。でも、一度に投げていいボールの制限は5球までだ」

「ってことはさっきのは!?」

「もちろんボールだよ、注意を引きつけるために魔力込めすぎちゃったから弾けちゃったけどね。で、さっきのはヴィヴィちゃんが一球目にくぎ付けになってる間に投げたボールさ」

 

 ニッシッシ、と笑うアスカ。汚い手だとヤジが飛ぶも、れっきとしたルールにのとってやっているので文句は出しようがない。クリアとホロウィンドウで表示されるとどこからともなくクラッカーが鳴らされる。

 

「あっちゃー、クリアされちゃった」

「さすがアスカ、汚い」

「ちゃんとルールにのっとってのプレイです」

 

 はやての抗議の目などどこ吹く風で受け流すアスカ。

 

「おめでとうございます先輩。それじゃ、景品の授与ですね」

 

 そう言って渡されたのは、お手製のメダル。なんとも手作り感あふれる品物で、裏には証明書付きだ。

 

  そして。

 

「・・・・えっと、先輩。もう一つ景品があるので、その・・・しゃがんでもらえますか?」

「お、何かな?ひょっとしてデビルヴィヴィちゃんからお菓子のあーんとかしてもらえたり――――」

 

 言い切る直前。何やら柔らかい感触が頬に触れたのを感じ、アスカは固まる。

 

「な、ななななな、ヴィヴィオ貴女・・・ッ!?」

「えへへへ、これぐらいはいいよねルールー。だってルールーは大会期間中は先輩と一つ屋根の下なんだもん」

「だからって、貴女キ、キキキキ、キスってぇ!?」

 

 キスと言っても、頬にだ。唇ではない。しかしそんな細かなことなど乙女心には関係がない。してやったりと笑うヴィヴィオのその姿は、まさに小悪魔のようだった。

 

「はやてさん、今度は心肺停止してますよ!?」

「それホンマ洒落にならんやつやん!?」

 

 st.ヒルデ魔法学院学院祭。まだ、宴は始まったばかりである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。