♯35
〝春光拳〟————それは、ルーフェンという星に古くから伝わる古流武術である。リオの使う特徴的な動きや技の全てはこの春光拳からなるものであり、ヴィヴィオ達は彼女の実家のあるルーフェンまで赴いている。
の、だが。
「なぁんで俺は留守番なわけ」
一人愚痴を垂れる哀れな少年が一人。
「しゃーないやろ?学校のテストなんやから」
「せやかて工藤!こんな中途半端な時期にテストとかこれも何かの陰謀としか!」
「工藤やない、八神や。ま、それもこれもインターミドルとドン被りやったのが原因」
「学校行事ですから、疎かにするわけにはいきませんからね」
シャマルがトドメと言わんばかりにアスカに向けた言葉はキッチリとダメージを与えたようでその体はガクッと床に倒れる。
「せめて・・・せめてヴィヴィちゃん達と一緒に修行できないまでも遊びたかったってばよ」
「雑誌の枠を超えてのコラボしとる場合ちゃうよアスカ」
「そーだぞ。お前今日ティアナに付いてロストロギアの簡易的な回収任務があんの忘れてねーか?」
「げ、そうだった」
時計を見ればあと数十分ほどでティアナが迎えにきてしまう。いそいそと準備を終え、何とか間に合いティアナと合流し任務へと着く。
「ったく、はやてさんも人使い荒いよ。いくら局の仕事にも興味あるっていってもティアさんみたいな敏腕執務官の調査依頼に俺みたいなド新人で、しかも嘱託の魔導師なんてつけないでしょフツー」
「仕方ないでしょ?未だに人手不足なのは否めないし、ましてや貴方みたいな貴重な人材は覚えさせておいて損なんてないんだし」
本局にある次元港から専用の艇に乗り込みながらもアスカの愚痴は続く。
「こーいう時だけ優秀って言われてもねぇ・・・」
「つべこべ言わないの。それに八神司令から聞いてるでしょ?例の話」
「そりゃ、まあ」
「〝特務六課〟・・・・まだまだ部隊立ち上げには足りないものだらけだけど、アスカだって数には入ってるんだもの。期待されてるのよそんだけ」
「・・・・そう言われると、なんか複雑・・・」
はやてが語って聞かせてくれた夢。その夢が、今再び形になろうとしている。彼女の嬉しそうに話す顔が脳裏をよぎった。その為それ以上アスカが何かを言えるわけでもなく、むしろ感謝の念すら湧き出てくるのを否定できなかった。自分を拾ってくれて、あまつさえこんな貴重な経験をさせてくれる。それだけでも、はやてがアスカの将来を考えているということは明白だ。
ゆえに、応えたい。あの人の期待に。
「・・・さ、見えてきたわよ」
「えっと、たしか名前は・・・・————」
————エルトリア。かの地は始まりの地にして悲劇の場所。そして・・・・高町なのはの、初めて墜ちた場所でもある。
◇
その場所は、かつては最先端の技術が幾つも試験的に運用実装され栄えた都市があった。多くの研究員が家族とともにここで暮らし、作業に没頭した場所。しかしながら現在はとある事故によりとてもではないが人の住める土地ではなくなってしまっている。以前二人がジークを迎えに行った惑星とは違い、ここは文字通り何もない場所となってしまっている。
「惑星エルトリア・・・管理外世界の中で最も文化レベルが低い星で、昔はミッドと並ぶ程に栄えた星・・・か。それが今じゃ、こんな殺風景になっちまったってわけ」
調査団の艇から現地局員と合流しキャンプ地へと向かう車中で資料を読みながら、アスカがそんな事を呟いた。
「ええ。それに、まだなのはさんが駆け出しの新人魔導師だった頃・・・初めて、墜落した場所よ」
それを聞いて資料から顔を上げて外を見る。そこには腐敗した人工物の破片が無数に散らばり、無機質な世界で唯一人の痕跡らしきものが残る光景だった。そんな近くに設けられたテントの近くで車は停車し、二人は下車する。迎えの局員と軽く挨拶を交わしてから早速ロストロギアの回収へと向かう。
「しっかしなんでこう、お決まりかのようにこんな遺跡みたいな場所ってあるんですかねー。ま、これはこれでゲームの世界っぽくて俺は好きですけど」
「そう?あたしは割とイヤなのよね。こういう時は決まってよくないことが起こるし。〝マリアージュ事件〟の時もたしかこんな場所だったわね」
「ちょ、アレクラスは勘弁してくださいよ。流石に殺人鬼と命のやり取りを何度もするなんてイベントはアレだけでお腹いっぱいです」
「あたしだって本音は同じよ。でもこれは仕事。さ、早く回収してさっさと終わらせましょ」
互いに愚痴をこぼしながら遺跡のような場所を散策する。ここが発見されたのはつい最近の事で、その時から今まで施設内部から微弱ではあるが魔力反応にも似たエネルギーの発生が確認されている。今回ティアナが来たのは内部で何かが起きた時の対処の為でもある。
「んー・・・ん、なんだこれ」
歩いていると、ちょうど足元に何かを発見した。アスカはそれを拾い上げると、誇りを軽く手で払って裏返す。
————フローリアン家、家族写真。
「・・・・お、かわいいなこの子達」
「・・・アスカ、あんたそーいう趣味?」
「いやなんでそうなるんですか。いくら小さな女の子たちが笑いながら映ってる写真みてかわいいって言ったからってロリコン判定とかそんなの理不尽です」
「矢継ぎ早に言わないでも冗談よ冗談、でも確かになんだか微笑ましい写真よね。・・・・きっと、ここに住んでいた人のものだったのかもしれないわ」
感傷に浸るティアナとアスカ。引き続き探索を続けていると、今度は中央に置かれた遺跡のようなものに触れる。見たところ、ここから件のエネルギーが発せられているようだ。
「クロスミラージュが反応を検知したわ。これで間違いなさそうね」
「けどこんなデカいのどーやって――――」
————タスケテ
「・・・ティアさん、今なんか言いました?」
「ちょ、そういうオカルトとか私勘弁よ?」
「いや、今しっかりと声が・・・————」
————タスケテッ!
瞬間。遺跡から光が溢れ出す。異常なまでの数値をデバイスが示し、一刻も早くこの場を離れようとティアナはアスカに促す。段々と光はその光量を増していき、今にも爆発でもしそうなほどこの空間を満たしていく。やがて眼も開けられないほどに視界が白に染まった後、その奔流は時間をかけて徐々に消えていき、やがて元の静寂が訪れた。
「なんだったの今の・・・アスカ、大丈夫・・・・・・・・アスカ?アスカ!?」
隣にいたはずの少年に安否の確認をしようと振り返れば、そこには彼の姿はなかった。
「・・・・うそ、でしょ?」
◇
俺、フライアウェイ。なう。
「そんなこと言ってる場合じゃねええええええええええええええええええええええええ!?」
急に眩しくなったと思ったら今度は足元が無くなり気づいたら空の上。急展開と言うには実に生ぬるいような出来事にアスカは完全にパニックに陥ってしまう。
「落ちるッ!ママ落ちるぅ!?飛行石はいずこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
『姿勢制御、お呼び飛行術式を展開します』
ブレイブハートのアドリブのおかげでなんとか落下は免れたアスカ。が、パニックなことに変わりはない。
「ここはどこ、私は誰!?お前は誰だ!?俺の中の俺~・・・」
『完全にパニックですね』
一向に冷静さを欠いたままの主に代わり状況把握に努めるブレイブハート。しかしどう検索をかけてもこの場所がヒットしない。ということはここはエルトリアでも、ましてやミッドではない未知の土地ということになる。
ここは一体何処なのか。そう考えているところに、何者かが接近してくるのを検知する。
『後方700m先に接近する反応があります』
「うそ、今度は何!?」
『サーチ開始・・・・これは』
「————あの、そこの方!」
愛機が何かを報告する前に、その物体との距離がはっきりと見える距離まで接近してしまっていた。しかし、此方に語り掛けてくる声にアスカは僅かばかりの覚えがあるのに気が付く。振り返ると、そこには。
「えっと、今はメンテ中で他のサーバーからはアクセスできない筈なんですが・・・何処からアクセスしてきてますか?」
久しぶりの投稿、内容改変。根詰まりに根詰まった挙句消去された話は、いったいどこへ。そしてこの作品の舵を切った先に、tubaki7が生み出した物とは。
次回、~GOD編と言ったな。アレは嘘だ~